閑話 その頃の皆様は( 1)
今日から閑話です。
色々と漏れてます……。
Side:空の神
「あああぁぁぁぁぁ―――――――――!! どうすればいいわけぇぇぇ〜〜〜〜〜!? 何でこう次々とぉぉぉ――――――!?」
空の神が、空のど真ん中にある椅子に腰掛けながら、机にぐったりとしていた…………。年頃は15、6歳くらいの青年で、綺麗な空色の長い髪は今は青年に合わせるかのようにへたっており、美しい程の不思議な色合いの瞳は今、不機嫌を表すかのように、下をむいていた。整いすぎた端正な顔立ちは、まさにこの世の終わりのような顔をしていた。
「もうドラゴン達、全部上級にしたら、サキちゃんに睨まれちゃうしー、つーかドラゴン子供だから、旅に連れていけないしー、どうすれば言い訳!?」
もう口調が変わるくらい、荒れに荒れていた。と、そこに一人の女性が現れた。何やら怒っているようで、目が三角形に釣り上がっている程なのだが、空の神は気付かない。
「もう! 空の神!? さっきから煩いわよ!? 私の所に苦情が殺到してる…………って、どうしたのよ?」
余りの空の神の姿に、今来た女性は目を見開いて驚いていた。
「ん…………あぁ、風の神ですか、実は……」
斯く斯く然々。説明を始めた空の神は、涙目で風の神へと淡々と現実を説明していく。
「そんな訳で、困っているんです」
しょんぼりした彼に、風の神はクスクスと笑っていた。
「あら、そんなの簡単じゃない! そのアマテラス様のお気に入りの子に、新しい式神を付けてあげればいいじゃない!!」
空の神の目が点になる。
「あー、その手があったか……」
今までの疲れが一気に取れたかのように、彼は生き生きしていく。
「その式神、風がいいなら、私の所の下級神を出すわよ?」
「あ、それは無理なんです……」
「何でよ!?」
「彼女がアマテラス様の愛娘だからです」
「え゛っ!?」
風の神の頬が盛大に引きつった。神からの加護には、強さによって呼び名が変わる。下から“神の加護”、“神の申し子”、“神の愛し子”、“神の愛娘(息子)”と上がっていく。つまりだ、最高神の一番上の加護“神の愛娘”の巨大な加護を受けている咲希は。
「下手したら、下級神が中級神か上級神になっちゃうわよ!?」
風の神は、見事に顔を引きつらせる。
「…………分かったわ、風の神獣辺りにでもしてみるわ……」
「最悪、下級神を付けましょう」
ゲンナリした様子の風の神。もうこの際、献上という名の生け贄を出した方がいい気がして来た二人である。
「しっかし、アマテラス様もよく彼女を、この世界に行く事を許したわね?」
そう言った風の神に、空の神は苦笑いするしかなかった。当然である。
「だってアマテラス様は、あの子を助けるために、この世界に寄越したんですから」
「なにそれ? どういう事?」
「彼女はね、アマテラス様と異常な程に波長というか、こう力が伝わりやすいみたいで、最初は“2番目”の加護だったらしいんですけどね…………、時と共に加護も強くなってしまって、下手したら死んだ後に神格を得てしまう状態になってしまったんですよ」
「うわっ……、それは………」
昔ならいざ知らず、今は滅多にない事態である。つまり死後、輪廻の輪から外されてしまうのだ。
「あー、成る程、だから“この世界”に喚ばせたのね? このままでいられるから」
この世界には、加護を貰う人が多くいる。その人達は死後、きちんと輪廻転成の輪に戻る事にある。死後、神になる事が絶対にない世界なのだ。
「そういう事、さてと神獣探しと自分の仕事をしますか、風の神、助かったよ」
「どういたしまして、頑張ってね!!」
こうして、二人は自分の仕事に戻った。新たな仲間となる神獣を探しに。
◇◇◇◇◇
Side:和磨
咲希さんと翔太が、国王様に勅命を受け、ここから旅立った。とはいえ、馬で一日の距離だから、何日間か開けるとは聞いていたんだけど…………。
正直な話、問題を解決してから出発して欲しかったよ!! 特に翔太っ!!
「ヒマリちゃん、ご飯ですよ〜♪」
「キュウッ!!」
優香さんのご飯ですよ発言に、普段は咲希さんといるヒマリは、尻尾をブンブン振って喜びを表している。うん、素直で大変たすかるよ!
一方、翔太から預かったカイトは、僕が世話しているんだけど…………。
「ほら、カイト、ご飯だよ」
そう言って、水の属性を多く含んだ魔力を食べさせようとするんだけど、何故か食べるのを拒否するカイト。既に何回か試した後だったりする。
「キュウッキュウッ!!」
体全体を使って拒否されてしまう。
…………翔太、一体どう説明したわけ?? 何でこんなに拒絶されるかな!? 僕っ!!!
「カイトちゃん、食べないね?」
「うん、やっぱり翔太みたいに上級属性の氷が無いと嫌なのかな? だれか知ってる? 優香さん」
「んー?? 誰かいたかなぁ?」
そういえば僕達、城の人達と仲良くなったけど、魔法属性までは知らなかった。
「あ、エリー様に聞いてみたらどうかな?」
優香さんに言われ、確かにと思う。エリー様なら知ってそう。
「行ってみよう、カイトに早くご飯食べさせないと」
このままだと、カイトはご飯を食べられない。帰ってきて、翔太から怒られるのは御免だよ。
◇◇◇◇◇
「え、氷属性ですの?」
ハテナマークが飛んで行きそうな程、キョトンとしているエリー様。偶然、廊下で会い、先程の事を聞いたら、こんなリアクションを受けた。
「エリー様、知りませんか?」
優香さん、不安そうだし。僕としても必死です。翔太から怒られるのは御免だしね。
「そうですわねぇ? ジュビアン神官殿とジークが確か……氷属性でしたかしら?」
…………その二人、今、王宮にいないんだけど。
「エリー様? 今現在、城にいる者でお願いします」
そう僕が指摘すると、あっ、となったエリー様。そこまで考えてなかったんですか。
「そうですわね…………、後は………お兄様かしら?」
「えっ!? フランツ王子ですか!?」
知らなかった。フランツ王子って、落ち着いたイメージがついていたから、勝手に風だと思ってた。
「ええ、お兄様は氷属性を持っていますけれど、果たして上手くいくでしょうか? カイトちゃん次第ですわね」
とにかく手掛かりは見つけたんだから、後は行動あるのみ!
てな訳でやってきました、フランツ王子の執務室。
「これは一体………?」
とんでもなく忙しそうなんだけど。執務室からは、ひっきりなしに人が出たり入ったり。皆、忙しそうに早歩きで足早にどこかへ向かっていく。僕達、邪魔じゃないよね?
「おや、和磨様、優香様、カイト様まで…………何かご用でもありましたか?」
偶然、執務室から出て来た宰相様と会った。そうだ! 彼に聞いてみよう!
「実は………」
カイトの事を説明すると、まさかの一発で許可が出た。
「お邪魔します」
執務室に入って、宰相様が許可した理由はすぐに分かった。
部屋は、山のように折り重なった書類の束が占拠していた。うん、占拠が正しいと思う。10山までは僕も確認できた。そのもっとも低い山は、恐らく片付けている最中なんだろうね。真ん中にいるフランツ王子がギリギリ見えるくらいだから。フランツ王子の目がヤバイ。
「王子、和磨様と優香様がいらっしゃいましたよ、少し休憩いたしましょう」
宰相さんが声をかけて、ようやく僕達がいることに気付いたらしいフランツ王子。げっそりしてるけど、大丈夫かな?
「どうかしましたか? カズマ」
王子とは呼び捨てで、名前呼びの仲になった。けどさ、げっそりしているフランツ王子に頼んでいいのかな?
「実は………」
カイトがご飯を食べないため、変わりの人を探している事を言うと、何故かフランツ王子の目が輝いた気がした。
「私が、私があげてもいいんですか!?」
唾が飛ぶ勢いで僕に向かって来たフランツ王子に、かなり引いたけど、何とか愛想笑いでやり過ごした。
「お、お願いします…………」
そう言う事しか、この時の僕には無理だった。
「はい、カイトちゃん♪ ご飯ですよ〜」
優香さんが抱っこして、フランツ王子の許へ連れていくと、カイトは見ているこちらが分かるくらい目を輝かせはじめた。
…………僕の時と態度が違くない!?
「キュ、キュウ〜♪♪」
ご満悦のカイトは、ソファーでお昼寝タイム。それを見て、フランツ王子が頬を緩める姿を見て、そして部屋の惨状を視界の端に入れて、王子の仕事の過酷さを知った僕。
「あの、フランツ王子? 忙しそうですけど、普段からこうなの?」
毎日だと、体が心配だよ。
キョトンとなるフランツ王子の顔が、ふっと優しくなる。
「心配してくれてありがとう、カズマ、今日は来月ある式典で忙しくてね、まあ、来週には落ち着くから大丈夫だよ」
そう言ってるけれど、来週までこれが続くの? ちゃんと休憩取らないと、過労で倒れてしまうよ! 病院の子供として、これは見逃せないね!!
「フランツ王子! 他に回せないのですか? このままいったら、過労で倒れてしまいますよ!?」
僕の勢いにビックリしている王子には悪いけど、休める時に休まないと大変な事になっちゃうよ!
「カ、カズマ!? 本当に大丈夫ですよ? 父上は倍の仕事をこなしてますし、これくらいなら僕でも出来ます、下の者で確認済みの物は、印があるので僕は読むだけですし、殆んど簡単な仕事しか来てませんから…………睡眠時間もきちんと確保出来てますから」
だから、大丈夫だと言うフランツ王子。
言ってもいいだろうか? 前の世界で病院を経営していた両親から生まれた僕。将来も勿論、医者のコースを敷かれていた僕に、この僕に!!
「フランツ王子? 言っときますけど、きちんと体調管理が出来なくては意味がありません、肝心な時に体調を崩していてはダメなんですよ!?」
「和磨くんは、お医者さんの息子だから、気になるんですよ、フランツ王子」
優香さんがクスクス笑いながら、僕の言葉を補助してくれた。僕はたまに、夢中になると言葉が足りなかったりして、伝わらない事がある。優香さんがいてくれて助かったよ。
「そうだ! カイト殿を、しばらく僕があずかってもいいかな? ご飯とかで休憩できますし、何より癒されます!」
このフランツ王子の妙なテンションに、僕は押されてしまい、結果しばらくの間、カイトはこちらにお邪魔する事になった。
…………本当に、早く帰ってきて、翔太。僕の胃が保ちそうにないよ…………。
お読み頂きありがとうございますm(__)m
本日は閑話をお届けしました〜!
何やら心の声が漏れてますが(笑)
さて、次回からは翔太Sideの閑話です。果たしてどうやって帰るんでしょうか??
楽しみですね!
さて、ミニ小説をば。
和磨:こんにちは!
翔太:今日は俺達で送るぜ。
和磨:何だかようやく、青い炎編らしくなってきたね。
翔太:あぁ、だがさ? 何故に気絶するかな!?
和磨:確かにね……。大丈夫かな?
翔太:マジでめんどくせー。
和磨:翔太? 適当なノリはダメだよ?
翔太:分かってるよっ!
青ざめた翔太の説得は大変でしたとさ。めでたし、めでたし。
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