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第35話 蟻退治はお仕事です

お読み頂きありがとうございます。

本日はやや短め。

異世界、こんな事もあります。


「怒りの(ショック)!」


あたしの手から広範囲に渡り、弱い電流が放出される。それはねらいを外さず、只今戦っている相手、ブラック・アイアントに向かっていく。

この呪文、攻撃力はほぼ無いが、変わりに直撃した相手をマヒさせる効果がある中々使える呪文なのである。


「助かるぜ、譲ちゃん!」


嬉々として敵に向かっていく筋肉隆々の大男、今回の講師役兼サポート役の筈なのだが、その嬉々として向かっていく姿に、何故かデジャブを感じるのは気のせいか? 最近、似たような光景を見たことがあるような…………?


「咲希様、余計な事は考えず、サポートに徹して下さいませ」


考え込んでいると、(たつ)に現実に戻された。てか、あたし主人なのに、立場逆じゃないか!?


「いつもの事では?」


「何故わかったし!?」


「顔に出ております」


「oh……マジですか」


落ち込んでいるあたしを余所に、戦闘は佳境に入っていたみたい。ひどいな、皆。落ち込んだ人間は無視か…………。いやね、分かるよ? 今が漫才やってる場合じゃない事くらいね?

うん、何かすいません。


「あっ、ヤバいっ!?」


と、ライラさんが叫んだの同時。



キィィィィィ――――――!!




何だか金属がこすれるような、とんでもない音が辺りに響く。例えるならそう、自転車のブレーキ音みたいな音。それも大音量!


「きゃっ……」


思わず小さな悲鳴と共に、慌てて手を耳に当てる。

勿論、鳴き声を出した固体は、ジョージさんがさっさと倒しちゃったけど。


「こりゃ、連戦になるね……」


ライラさん、悔しそうに言いましたね、今。


「あの、ライラさん? 今の音、何ですか?」


まだ耳の奥がおかしい気がするよ………。


「あぁ、あれはブラック・アイアントが仲間を呼ぶ時に鳴らす鳴き声でね…………最初に喉を潰しとくんだった」


今にも舌打ちしそうなライラさん。余程、悔しかったんだねー。


で、その横で手慣れた様子で解体しているジョージさん。と、翔太。

…………二回目勇者は伊達では無かったんだね。めっちゃ手慣れてるし。


「お、あったあった、ライラッ!これ飲んで機嫌なおせ!」


そう言ってジョージさんがライラさんに渡したのは、パイナップル位の大きさの琥珀色の物体。

何? これ??


「ジョージさん、これ何ですか?」


声をかけると、ジョージさん。ビックリした顔されました。え? 何で??


「マジか? まあ、いい、これはアイアント系の魔物から取れる蜜袋って呼ばれてるものでな、一体から一つ取れるものだ、まあ、甘いジュースみたいなもんで、よく屋台で売ってるやつさ」


へー、どうやらこちらでは子供から大人まで大好きなポピュラーな飲み物みたいだね。日本でいうサイダーみたいな?


「お嬢ちゃんも飲んでみるか?」


「うん、飲む!」


意気込んで肯定すると、何故かにっこりと微笑まれた。何でだ?


「何て言うか……ガキだな」


幸いにも翔太の呟きは、小さ過ぎて、あたしには聞こえなかった。聞いていたら、プチ呪いくらいかけてやったのに(笑)


「ほらよ!」


渡された物はライラさんと同じくらいのもの。匂いは特になし。しかしどうやって飲むの?


「ライラさん、どうやって飲むの?」


既に飲み終えたらしいライラさんは、あたしから蜜袋を受け取ると、手慣れた様子でダガーで、上にある細い部分を切る。


「ここから吸えば飲めるよ」


「ありがとう! ライラさん!」


「どういたしまして」


クスクス笑ってるライラさんは上機嫌だ。もしかしてライラさんのお気に入りなのかな? 何だか視線が生暖かい気がするけれど。そう、例えるなら、小さな子供がおやつを食べる微笑ましい姿を見るような……………。もう、今更だよね?


「あ、美味しい……」


言われた通り吸ってみる。口の中に入ってきた液体は、味はハチミツをレモンで割ったような、そんな味だった。思ったよりあっさりしていたため、ごくごく飲める。うん、確かにこれは美味しいわ。


「ご馳走さま」


さてさて、休憩もどうやら終わりだね。


「ライラ、どうやら来たようだぜ!」


ジョージさんの迫力満点な声がかかる。やる気満々って感じだねー。隣では翔太もフリーレンを用意して待機中。

しかしさ、あの量をあんな短時間で捌いて終わるなんて…………、どんだけやる気なんだ、こいつら。


「咲希様! 数は6体です」


(たつ)の声が辺りに響いた。流石、下級とはいえ神様。気配は完璧に掴んでましたか。


(はる)、念のために出て来て」


霊力を込めて、お札から(はる)を喚ぶ。優しい光を(まとい)ながら顕現した(はる)に、またしてもジョージさんが険しい顔を見せているけど、ごめんなさい! この子もあたしの式神様なんです。だから捕って食おう的な視線は辞めて下さいませ!


「ジョージさん、来たぜ!」


翔太に呼ばれて、ジョージさんはすぐに前線に視線を向けた。凄い、既に戦闘モードに入ってる。

さて、あたしはその間に、辺りを調べてしまいますか。既に彼等だけで大丈夫だと把握済みですから、安心してますが。

本当は式神様を使えば早いんだけど、ちょーっと使うのはマズいみたいなんだよね、ここ。さっき、入り口の所で式神様を放したけれど、この綺麗な魔法光に邪魔をされてるみたいで、調べにくいみたい。放した子が珍しくシュンとなってしまって、帰ったら一杯構ってあげよう♪

あ、話がそれた。

まあ、そんな訳で、ここはあたしがマッピングとかしないと行けないんだけど…………。


『オン……』


あたしの意識が体から離れて、辺りを調べはじめる。どれくらいたったかしら? 多分、感覚的に一分かそこら。

はて、さっきから自棄に強い力を感じるんだけど?? 場所はこの洞窟の最奥。ダンジョンボスが控えているといわれた辺り。

…………でも、何だろう? 違和感があるんだけど??


「咲希、終わったぞー?」


翔太に声をかけられて、あたしは術を解いた。

うーん、やっぱり馴れない術は辞めるべきねー。無属性魔術のサーチ使った方が楽かもしれない。只あっちは入り込んでしまうから、今回の術のようには融通は利かない。使いどころを間違える訳にはいかない術である。


「何か分かったか?」


期待を込めた翔太の視線がウザイ。しかし、ハリセンぶっぱなす訳にもいかないので、結論だけ述べる。

後で覚えとけ!!


「取り敢えず、しばらくはアイアント系の魔物しか遭遇しないと思われます、ただ……」


あの違和感を、どう伝えたものか…………。


「何かあったか?」


あたしの戸惑いを感じたのか、翔太の視線が真面目なものとなる。こういう目を普段も見れたら、もしかしたら真面目に付き合えたかもしれないけど…………最初の出会いであれを見てしまったら、残念過ぎて無理になったわ。


「ん? 俺の顔、何かついてるか??」


これだもんなー、翔太は。にぶちん!


「なんでもない」


どうやらあたし、無意識に翔太をガン見してたもよう。すまん。

まあ、誤魔化したけど。


「えーっとね? 一番奥の部屋の気配が変なんだよねー」


「「「「「はぁ!?」」」」」


あー、やっぱり? そんな反応になるよねー。


「おいおい………、このメンバーだけでやるのか? ボスは戻ってギルドから誰か呼んだ方がよくないか?」


ジョージさんは、流石だね。先々をきちんと考えてる。だからこそ、冒険者として生きていけるんだろう。いや、生きてこれたんだろう。

だけど――――。


「本来は、そうした方がいいのかもね」


彼が言った事が正しいのも事実なんだけど…………、実はあたし達、戻れない所に来ていたりする。


「あー、帰れないから、このままボス部屋かな?」


「「「「はぁ〜!?」」」」


「咲希様!? どういう事ですか!?」


ファイさん、近い近い! まあ、顔はあたし好みだから、近いのは嬉しいんだけど(笑)

じゃなくて!!


「どうもアイアント達が外に、正確には旧蛍火の洞窟エリアに集まってるのよ」


そう、あの石できちんと舗装されたエリアに、何故かアイアント達は集まって来ている。しかし、外に出る気配もなく、只集まっている。


「何だそりゃ」


翔太は首を傾げる。だけど、ジョージさんは、マジかー……って、天井に向かって目頭を押さえてる。あれ? これってマズい事なの?


「アイアント系はな、外には出れないんだよ、体がもたないらしいからな、んでマズいと思うと、本能的に敵から一番遠い場所に逃げようとするんだよ」


つまり、アイアント達が集まっている場所の、反対側に逃げる原因のものが、咲希達が向かっている先にいるわけで…………。


「あー、変なフラグがたったかー?」


翔太の小さな独り言。けれどあたしにははっきりバッチリ聞こえている訳で。

内心、あたしもなんですけど!?





何で立った!? 変なフラグよ!!


本日もありがとうございますm(__)m


秋月煉です。


まだまだ暑さが残る今日この頃、皆様、どうお過ごしでしょうか?

秋月は見事に体調を崩しております…………。梨で腹壊すとは思わなかった。まあ、食べ合わせが悪かったみたいです。気を付けないと。


さて、小説はようやっと、青い炎編に相応しく、トラウマたる過去へ向かい始めます。皆さん、気になりませんか? 咲希ちゃんが言わない過去を。ようやく、ようやく! 出せますよ♪ まあ、そのまま済し崩しにシリアスシーンに行く…………はずですが、そこはほら、秋月が作る小説たる『てんしろ』です。んな普通のシリアスシーンになるわけないのですよ? まあ、ややシリアス路線はかわりませんが(^o^;


さて、本日のミニ小説行ってみましょう♪





翔太:よっ!

スパ〜〜〜〜ン!!

咲希:真面目に挨拶せい!!

翔太:いってーな!? 悪りーけど、絶対にやだ!

咲希:はあ、こんにちは(・∀・)ノ 本日は、あたしとこいつでお送りします…………。

翔太:何か投げ遣りだな!?

咲希:今、メチャクチャ疲れてるのに、あんたの所為で、やる気が起きない。

翔太:…………それって、陰陽師の技つかったからか?

咲希:まあね〜……。苦手な奴は使い所を間違うとこうなるわけ。気をつけた方がいいわよー。

翔太:って、おいっ!? ここで寝るな! 寝ないでくれー!?

咲希:だ……いじょー……ぶ…………スピー〜。

翔太:こ、こいつ本番中に寝やがった!? え、俺がつれてくの!? 無理、無理だ! え? ファーストキスやっただろって!? いや、あれは緊急事態で! 

咲希:………ムニャ……しばき倒す〜♪………ムニャ

翔太:寝言こわっ!?



ちなみにこの後、何だかんだ言いつつ、咲希ちゃんを運ぶ翔太の姿があったとか。


次回は9月17日お昼です。お楽しみに!



感想、ご意見、誤字脱字、いつでもお待ちしております。気が向いたら、リクエスト下さると嬉しいです。なお、甘口で下さいませね?

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