第20話 山へ向かおう
本日から本編に戻ります。
Side:サキ
翔太達を見送った後。あたし達もガラー山へ行くために、最終チェックをしてます。
「まあ、準備はこれくらいかしら?」
「そうですね、大丈夫でしょう」
隣にいたファイさんが、手伝ってくれてますよ。後ろではジュビアン神官様が、旅の準備をやってます。
さて、今回のメンバーは、他にもいるんですよ。
そう、あのじゃんけん大会で白熱の勝負をして勝ち残り、優勝した二人。
「ローグ・ジェメオスです!」
「ジーク・ジェメオスです!」
『宜しくお願いします、サキ様!』
うん、息ピッタリ。
名前を見ればお分りかと思うけど、この二人は双子。緑の髪に金目を持つ。見分けが付かないくらいに瓜二つ。唯一の見分け方は、前髪の分け方。右に分けてるのが、ジーク。左がローグ。
ついでに、二人は男爵の息子らしいんだけど、何とこの家、双子が生まれやすいみたいで、叔父さんや叔母さんにも双子がいるんだって。自分達の父も双子らしく、たまに使用人さん達が間違えてるみたい。
……………大変だな、使用人さん達よ。
そういえば、見分け、家族でもつくのかしら?
「で、二人は何の武器が得意なの?」
待ち時間に二人に聞いてみる。今は実は暇。荷物は無限収納袋に全部いれておいたから、そっちは問題なし。ちなみにこの袋、武器の契約の時に一緒に契約したもの。残りの三人も持ってます。
暇な理由は簡単。ガラー山へのルートを、ファイさんとジュビアンさんで町の人に話を聞いて、地図を作ってるため。あたしも双子君も無理な作業だから、任せてこっちに来てお話し中なわけ。
「僕もジークも剣を使います、支給品ではなく、給料を貯めて自分達で勝った奴なんですよ!」
ローグよ、キラキラした目で、あたしを見るのはいいが、何を期待してるんだい!? あぁ、何だかおっきなワンコの残像が見える。何か懐かれてないかな?
「ローグばかりズルいよ! この剣はね、有名な職人さんにお願いして作ったんですよ! 僕達の自慢の品なんです」
あぁ、ジーク………君にもワンコの幻影が見えてくるんですが…………。
って、あたしの方が年下の筈なんですけどね。
「そ、そうなんだ…………かっこいいね」
『そう思いますか! サキ様!!』
肯定なんてするもんじゃなかった。どうやら、あたしにとっての地雷を踏んでしまったらしい。二人の中で何かスイッチを押してしまったみたいなんだよね。
「やはりサキ様は素晴らしい!」
「僕達の感性を感じられるなんて!」
は、はい〜!? ちょっと待て!! 待っっってぇぇぇ!!(涙)
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・。
それから、ファイさんとジュビアンさんが呼びにくるまで、あたしは二人の武器自慢を延々と聞かされましたよ…………。話をするときは気を付けましょう。マジで! あたしみたく燃え尽きちゃうよ(涙)
さて、呼びに来た二人は、気遣わしげだが、確認する事があるらしい。
「サキ様、本当に馬車の用意をせずともいいのですか?」
不安そうなファイさんには悪いけど、これからいく場所は山。馬車は入れない場所である。なので勿論、徒歩。
しかしあたしは、この前のドラゴンとの戦いの所為で歩けないんだよねー。何で、あたしは乗るものが必要な訳です。
「大丈夫、ちゃんと考えてるよ」
これからの反応を思うと、ちょっと笑える。
「サキ様……?」
うろんげな視線を送って寄越すジュビアン神官さん。うん、何かをやらかすと感じてるんですね………。信用無いな(笑)!
「山に入ると我々もサキ様の手助け出来るかどうか…………、どうかどうやって行くのか、我々に教えて下さいませ!」
ファイさんや、頼むからあたしにそんな期待をした目を向けないで!!
「ファイさん、わざとやってる?」
「何をですか?」
問い掛けると、キョトンとしたファイさんに逆に問い掛けられてしまう。本気で疑ったけど、素でそれをやるんですかいっ!!
「…………うん、いいんだけどね、移動はさ、この子を使うから大丈夫」
そういってバックから御札を取り出す。五枚の御札の中から一枚を抜き取ると、霊力を込め空中に放つ。
「龍、お願いね」
あたしが呼び出したのは、青色の獣姿の式神。背中の翼は今は折り畳んでおり、虎に似た体付きのため、優美な姿を感じるあたし自慢の式神なのです♪
「…………成る程、その手がありましたか」
なにやらガッカリしているファイさんには悪いけど、そろそろ出発しましょうか。
「それじゃあ、しゅっぱーつ!!」
◇◇◇◇◇
森に入ってから、どれくらいたったか。多分感覚的に2時間くらいかな?
当初、先頭はファイさんに頼むはずだったんだけど、本人が断固として拒否するものだから、仕方なく双子君に頼む事にした。
「随分、静かですね…………」
最後尾に着いたファイさんがポツリと呟く。薄々、皆が感じていた事なんだけど、ね。森には普通、虫の声や動物の気配、鳴き声……そんなふうに聞こえる筈の音等が、一切きこえない。感じない。
『やっぱり変ですよ!』
双子よ、君達のシンクロ率、凄まじ過ぎないか? あたしも双子は沢山見てきたけど、ここまで息がピッタリな双子は初めて見たよ!?
「ローグは左を宜しく!」
「ジークは右を宜しく!」
お互い、息を合わせて前に進むので、恐らくこの双子を先頭にして正解だったかもね。
「しかし、こうまで魔物達がいないとは…………やはり、山頂で何かあったのでしょうか?」
あたしの隣にいるジュビアン神官も、辺りを警戒しつつ会話に入ってくる。ジュビアンさん、何げに武道派なんだね。優男のイメージがあったから、ちょっと意外だった。
『サキ様、油断は禁物ですよ!』
だから双子達よ、シンクロ率が高すぎるだろう! 内心、凄く突っ込みたいけど、今は真剣な時なので我慢。
「龍は何か感じる?」
こういうとき、あたしは良く式神達に意見を聞く。だってさ、彼らの方が五感が鋭いからね。こんな時の意見は重要だったりするから、馬鹿にならない。
「近くには何も―――――しかし、ここからかなり先に行った場所から、かなり強い力と気配を感じます」
うわっ、嫌だな。そういうの、フラグが立つんだよ? 立っちゃうんだよ!?
何故か分からないけど、全身の毛穴が開いたかのような、ブワッとした物を感じた。ヤバい、あたしの感が告げてる。陰陽師として培ったあの予感。
ま、まさか、こんな時にくるなんてダレが思いますか!?
「サキ様? 顔色が悪いようですが…………」
「大丈夫…………皆、悪いけどいつでも戦えるように準備………してるわよね〜」
注意しようとして、はたと気付いた。皆はあたしの護衛の意味もあるため、常に警戒心はマックスだという事を。
…………あたしは馬鹿か。
「あー、この先に、とんでもないのがいるから、本当に気を付けてね!」
勿論、あたしもいつでも戦える準備をしておく。御札と数珠と魔術をいくつかセット。
うん、問題なし!
「サキ様…………、本当にいるのですか? 気配なんてしませんが」
『僕達も感じません』
「失礼ながら、私も全く」
四人とも、疑ってるな? しかし、どうやらそうも言ってられないみたいだよ?
「くっ!?」
『うわっ!?』
「なっ!?」
何かの波動?みたいなものが、あたし達の向かっている先から、通り抜けていった。まるで、強風みたいな感じで、一瞬だったけど。
「咲希様、ご無事ですか!?」
龍が気付いて間一髪で障壁を築いてくれなかったら、危なかったかも。主に落下の意味で。
「へーき、ありがとう、龍」
感謝の意味を込めて、そっと背中を撫でる。
「でもさ? この四人、どうしようか?」
あたしの前、正確には前後左右に皆様、気絶してるんですが。はてさて、どうしましょうか?
読んで下さり、ありがとうございます(^O^)
本日からやっと、咲希ちゃん視点、本編に戻ってまいりました!!
お待たせ致しまして、恐縮です。
さて、ゴールデンウィークも終わりを告げ、本日からいつもの時間が流れます。
秋月はゴールデンウィーク中は、実家に帰省してました。船で行くのですが、まさかの大混雑! 只でさえ船酔いしそうなのに、人酔いもしそうでした。まあ、実家はいつものごとくって感じで、のんびりしてきましたが(笑)
さて次回ですが、5月14日に更新します。
サキ:お久し振りです!
翔太:おう! 久し振りだな!
サキ:作者がスランプ中だから、書けなくて大変だったみたいよ?
翔太:相変わらずだな?(笑)
サキ:それにしても、話も複雑になってきたわね?
翔太:そうだな、しっかし召喚系は出ないよなぁ〜。俺はドラゴン召喚してみたい! 前の世界でも出来なかったしな!
サキ:もしかしたら、出たりして(笑)
作者:さあ、作者もそれは分かりません!
こうしてまたしてもドラゴンのフラグが立ちました。
…………作者の負担が増えてないか?
感想、ご意見、誤字脱字、いつでもお待ちしております。なお、甘口でお願いしますね。