閑話 町でのドラゴンフラグ4
本日もありがとうございます(^O^)/
Side:翔太
マジか…………。
「あっれぇ〜? 魔物さん達、倒されちゃったのぉ〜?」
現れたのは、紫色の髪をツインテールにした少女。ヒラヒラした紫色のゴシック服を着て、少女は濃い紫色の日傘をくるくると回しながら、めんどくさそうにキョロキョロと周りを見ている。特筆すべきは宙に浮いている事だろう。
どうやって浮いてるんだ?
「いやーねぇ〜、また呼ばなきゃいけないじゃない、仕事ふえちゃったぁ〜」
ブーッと頬を膨らませる姿は、可愛らしい仕草に見えるが、俺の本能が警鐘を鳴らしている。
こいつ、見たままの強さではない。
「あんた、誰だ?」
自然と俺の声は低くなる。その声に気付いたのか、こちらを見た少女は中々の美少女だった。しかしその顔は汚い物を見るかのように、眉を寄せ、顔が歪んでいる。
………美少女って、どんな表情でも綺麗なんだな。
「…………はぁ? 何でわたくしが人間ごときにぃ、名前を名乗らなければいけないのですぅ?」
本気で分からないというように、怪訝そうな顔までしている。
「翔太様!! そいつは魔族です!」
ブラオさんの叫びで、ようやく繋がった。こいつはこの魔物達の襲撃に裏で関わっている奴だ。
「もぉー! 煩すぎっ! 全くぅ、爵位持ちのわたくしに歯向かうなんてぇ、何て礼儀知らずなのかしらぁ!! サクッと消しちゃいたいわぁ!」
癇癪を起こし、苛立たしそうにじたばたと動く少女は、あろうことかその手に黒い闇の球体を作り始める。
「消しちゃえば、イライラも消えるわよねぇ♪」
こいつどんだけぶっ飛んだ思考回路してんだよっ!?
「全員退避しろっっ!! 優香っ、和磨っ、聖魔法でここいら一体に、結界はれっ!!!」
俺は指示を出しつつ、この物騒な娘を倒すべく、フリーレンを腕輪から大剣に戻す。闇属性は俺も持っているが、あれはそうこう出来る物ではない。俺の勇者の感がそう言っている。
だったら、やることは一つ。
「相殺、させるしかねぇよな……」
残念ながら俺は、光系統の呪文は全て使えない。
だが、実は前の世界の呪文は、光が使える。あちらは属性は重要視されていないために、俺は全ての属性を使えるのだ。
背に腹は替えられない、か…………。
俺は覚悟を決め、左右の手をクロスさせ、あの魔族のはた迷惑娘に向かって、本気で魔力を練り上げる。
「我は乞う
天を統べる全ての方に
遥かなる悠久の時の中に忘れた
古よりの盟約と約定をもって
今ここに盟約と約定の締結を一時的に乞う
闇は闇へと帰り
光は全ての者への祝福と
全ての者への幸福を乞う
大地に現れし闇を
全ての祝福において払い清め
天へと送り返さん
汝、祝福の時
全ての闇よ 主人の元へ」
呪文詠唱と同時に、翔太の手には光々と輝く光が現れていた。それはさながら太陽のように輝き、闇と対を成すもう一つの神秘的な象徴のようだった。
さあ、これが俺の出来る最高の見せ場だ!!
『永久華幻光輝・天鏡!!!』
まさに俺が光を放った瞬間、少女も闇の光線を放った。
『暗影の夜想曲!!』
二つの相容れぬ光が、空中でせめぎ合う。接する二つの光は、お互いへ向かおうと動き、暴れだす。
「人間ごときが、わたくしに反抗するなんて不愉快ですわっ!!」
「あんたこそ、これで全力なんて呆れるなっ!(笑)」
実際、俺はムネリアで覚えた呪文の中でも、人の限界と言われた破壊級を一人で当たり前に操れる。こちらで神級と呼ばれる呪文とほぼ同じ効果であるのだが、相手は侮っていたようだ。俺は全力を出してないんだからなっ!!
「なっ!? なんなのよっ、あんた!! こんな魔術見た事無い!」
慌てたように力を強めるが、甘い甘い! 砂糖に蜂蜜を混ぜるくらいには甘い!
勿論、俺は油断なんてするつもりはない。油断したが故に、前の世界では色々と大変な思いをしたのだから。
「っざけんじゃないわよ!? 何で人間ごときに押されなきゃいけないのよ!」
癇癪を爆発させたかのように力も強まるが、この呪文よりもやはり弱い。
つまり――――――。
「きゃあああぁぁぁぁぁ――――――っ!!」
俺の余裕勝ち〜☆
魔族の少女は、空中からそのまま落下。地面にべちゃりと落ちる。どうやら、生きてはいるらしい。まさかの、リアル足ピクピクが見れるとは…………。
「どんだけ頑丈なんだよ…………まあ、いいや、あんたさっき、爵位って言ってたけど、魔族には爵位制度があんのか?」
一応、警戒しながら様子を見ると、無傷とはいかないが、動ける程度の傷らしい。魔族って丈夫なんだな。
で、気になった爵位を、聞いてみる。
少女はブルッと震えると、涙目になりながら悔しそうにこちらを睨み付けていた。どうやらトラウマになったらしく、体が震えていた。マジで恐かったらしい。
…………やべ、可愛いかも。
内心、そう思うが顔には出さなかった。
「……そうよ、魔族は実力主義だから、強い奴は爵位を貰うの、わたくしは伯爵を貰ってるのに…………何でっ、何でっ人間に負けなきゃいけないのよぉ―――――っ!!!」
とうとう我慢出来なくなったらしく、エグエグと泣き出してしまった。
ポロポロどころかボロボロ泣き始める少女に、周りは若干引いていた。
確かに、美少女だけあって、これは残念にしか思えない。
「あんたなんかぁ――、魔王様に倒されちゃえばいいんだーぁ!!」
散々罵倒し、また号泣。
あ、何かイラッとしたかも。
と、少女は何かを感じとったのか、またしてもブルッと震える。
やべっ、殺気がもれたかも。
「んー!! どうせ……えぐっ……あんた達が守る城な…んか消えちゃうんだからっ! 公爵様が更地にしてくれるもんっ!」
またビエーンと泣くが、おいおい、今なんつった!?
「まさか、王都に魔族が攻め入るつもりなのか?」
「ひっく……公爵様は強いんだもん! ひっくひっく、………絶対にあんたなんかに負けないもん!」
…………やべぇ、マジで滅亡フラグ立てちまったかも。
「和磨、優香、悪いが直ぐに王都に帰るぞ、ここは囮だ!」
「……えっ? 囮って……」
優香さんは戸惑っているが、今回は本当にヤバい。
「分かった、翔太、引継ぎをして、すぐに帰ろう」
流石、和磨は飲み込みが早いからか、すぐに周りに協力を仰いでいる。
そんな中、泣いている魔族の少女は虚ろな目で、何やらつぶやいていた。
「ひっく、今頃……侯爵様が、ひっく、ガラー山の古代龍を……ひっく……退治して、ひっく、エーネルを助けに来てくれるもん、ひっく」
その中で、気になるワードが入っていたためか、ガヤガヤしていた周りが一瞬にして氷つく。
「ガラー山? エンシェント・ドラゴン?」
意味が分からないように、優香がつぶやくが、一番近くにいた俺は気付いてしまった。
咲希の身に危険が迫っている事に―――――。
おいおい、何でフラグがこんなに乱立すっかなぁー!?
どうも、秋月煉です!
本日は何とか翔太君視点で、書けました!
何だか謎の少女が出てきました。どうかな〜、また出るかな?(笑)
本日は忙しいので、この辺りで。
感想、ご意見、誤字脱字、等々いつでもお待ちしております。なお、甘口でお願いしますね。メンタル激弱なので。