閑話 天の国へ参ります8
お待たせ致しました!
目の前には、沈黙したままの魔霊武器があります。ソールとムーンをイヤリングに戻し、警戒したまま、私は全力で光の魔法を発動させます。
『浄化の光!!』
剣にのみ、範囲を限定して行うこれは、バッチリ効いているようです。最後の抵抗とばかりに、黒いモヤモヤが出てきますが、出た端から浄化していきます。
『ユーカ、もう少しだよ!』
『頑張って!』
ソールとムーンから励まされ、更に力を入れます。しばらくしてから気付けば、黒いモヤモヤは見えなくて、美しい一振りの剣になりました。一般的な剣に見えますが、銀色の持ち手に、美しい彫刻があります。柄の部分にも、細かい彫刻がされていて、控えもながら、美しい一振りです。
「・・・これが、元の姿」
何て綺麗な一振りでしょう。キラキラする輝きは、私の光の魔法によってなのだとしても、間違いなく、素晴らしい品物です。
『やっと、休めるね』
『うん、そうだね』
何故かソールとムーンの口調が、とても優しいもので、思わず彼等を見てしまいます。いくら鈍い私だって、気付きますよ? 優しい理由くらいは。
『『おやすみ』』
そう、彼等が告げた辺りから、元の輝きを取り戻した筈の聖霊武器は、少しずつ薄く透明になってきて、驚く私を置いてきぼりにしながら、消えてしまいました・・・。
これが、聖霊武器が眠りに着くということ。存在が消えてしまう事だったんですね・・・。何だか、よく分からないうちに、思わず涙が溢れてきます。ポトリ、ポトリと、私は何で泣いているのかすら、よく分からなくて、でも、ポッカリと穴が空いたような、そんな悲しみを感じて・・・。
『ありがとう、ユーカ』
『あの子の為に泣いてくれて』
『あの子は、眠りについたんだ』
『力が回復したら、起きるんだよ』
『『だから、大丈夫だよ!』』
二人の声が、とても優しくて、更に涙が溢れます。きっと、二人だって、仲間が眠りについたから、複雑な気持ちの筈なのに。私、持ち主、失格ですね・・・。直ぐに泣いちゃうし、悲しいです。何だか、失われたように感じて・・・。
でも、それと同じくらい、今の私は、悔しいです。だって、だって!
「絶対に、絶対にっ! 許せませんっ・・・・・聖霊さんは、悪くないのにっ、こんな、こんな事に使うなんてっ・・・許せるわけないっ!!」
間違いなく、この魔霊武器を作った人に、怒りを覚えます。何にも悪い事なんて、してないのに。何で彼等が、犠牲にならないといけないんですか!!
『ユーカ、僕達も許せないよ』
『あの子だって、きっと待っていたはずだよ』
彼らは、契約者が居なければ、外へは出れません。必ずではないそうですが、大抵の場合は、各国にある勇者専用武器庫に保管されているそうです。
『あの子は多分、喚ばれたのかも』
『誰か、相応しい人に』
「えっ? 喚ばれた・・・? どういうこと?」
彼らの会話に、違和感を感じます。聖霊武器を使うのは、勇者だけかと思いましたが、どうやら違うらしいです。
『僕達はね、相応しい人に喚ばれると、その人と契約する事があるんだ』
『強い思いだったり、願いだったり、純粋な心に喚ばれると、少しの間、力を貸す事があるんだ』
つまりは、勇者だけではなく、相応しい人に喚ばれた場合、契約するか、一時的に力を貸す事があるという事のようです。・・・・・滅多に無いそうですが。
「じゃあ、喚ばれた人に・・・?」
こうされたと言う事でしょうか? 何だか、釈然としません。何となく、違うような気がします。勇者が使う武器ですよ? 喚ばれたからと、ヒョイヒョイと喚べる物ではないでしょう。相応しい者だから、力を貸すんですよ。
という事は、喚んだ人と、こんな事をした人は、別なんじゃないでしょうか?
「ねぇ、魔族さんに喚ばれて、反応する事はあるの?」
『『分かんない!』』
ズルッ。思わず、こけちゃいましたよ!! 分からないんですかっ!?
『だって、喚ばれても、それが誰か知らないし』
『種族って関係ないよ?』
キョトンとした二人に、さっきまでの感情のうねりが、急激に下降していきます。感情の起伏が有りすぎて、一気に脱力しちゃいました。咲希ちゃんに報告というか、相談したいです。上手くいったら、和磨くんや翔太くんともお話したいです。
「今は、謎って事ですか・・・」
分からないのは、ちょっとモヤモヤしますが、仕方ありません。
「ユーカ殿!」
突然、呼ばれたので、そちらを見れば、少し離れた場所に、長さまと、サクラさま、ツバキ様が居ます。
・・・・・そういえば、魔族の方を、あちらに任せたままでした。
頭からスコンと抜け落ちていました。いえ、言い訳は失礼ですね。だって、魔霊武器に完全に集中していたんですもの。
慌てて駆け付けたのは、言うまでもありません。
「すいません、こちらをお任せしてしまって・・・」
まさか、頭からスコンと抜け落ちていたなんて、恥ずかしくて言えません。
「いえいえ、魔霊武器は我々の手には余りますから、助かりました・・・さて、呼んだのは、こちらの方についてです」
長さまの目が、険しい事に気付きます。サクラ様も、ツバキ様も、それは変わりません。
魔霊武器から解放された方を、改めて私は確認します。
私と変わらない姿の女性です。顔立ちだって、かなり整っています。動きやすそうなシャツとパンツは、お洒落なものです。緩やかにカーブした紫色の長い髪を、リボンで結んでいます。
ただ、改めて見ると、ぐったりしていますし、顔色も青白く、呼吸をしている胸の動きが無ければ、見間違えてしまいそうです。
「魔力を感じませんし、かなり無茶を強いられたのでしょう、体力も命も吸われ、かなり危険な状態です」
「・・・命? 魔力だけを吸っていたんじゃ・・・」
余りの言葉に、私は固まるしかありませんでした。青ざめていたかもしれません。どうして、魔霊武器が危険とされるのか、ようやく理解しました。
ーーーーーー強い力を出す代わりに、全てを吸い付くす、諸刃の剣だったからなんですね。
「・・・幸い、命はそこまで吸われた訳ではありません、しばらく安静にしていれば、目をさまされるでしょう」
彼女は魔族です。不法侵入をしたわけですが、流石に、罪人にするには、抵抗があります。自らの意思でやったのか、それとも、誰かにされたのか・・・。
今は様子見をするしかないみたいです。
我々は、取り敢えず、一番島に帰り、今後の話し合いをする事にしました。
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます♪
今日は久しぶりに、ミニ小話復活です♪
ネタが降りてきました♪♪
咲希:お久しぶりです♪
和磨:今日は僕らでやります!
翔太:いい加減に、暇だ!
咲希:翔太、真面目にやれ!
翔太:無理!
和磨:だよね・・・分かってた。
咲希:何か、本編は次は翔太らしいよ?
翔太:マジか? てっきり和磨かと。
咲希:秋月が煮詰まったらしいわ(笑)
和磨:じゃあ、獣人さん達の話になるの?
咲希:みたいね。文化は江戸みたいな感じらしいわ。
和磨&翔太:!?
咲希:翔太のお土産が今から楽しみよ♪
秋月も頑張りますよ~♪
てな訳で、今後とも、テンシロを宜しくお願い致しますm(_ _)m