閑話 天の国へ参ります7
お久しぶりです・・・。
優香ちゃん視点は、もう少しです。難しいです・・・。
さて、攻略には、長さま達の力を借りなければなりません。
敵は黒い風に守られていますから、まずは風をどうにかしないといけませんね。どうも、自ら攻撃に動く事は、今はないようです。
「ねぇ、魔霊武器って、他のもあんな感じに、風を出したりしてるんです?」
ちょっと気になって、ソールとムーンに聞いたら、二人はフルフルと、首を横に振りました。
『『違うよ』』
『特性によるんだ』
『あれは風の聖霊武器だったのかも』
成る程。そういうのがあるんですね。属性があるなら、風が苦手な属性とされる物を出せば良いんでしょうが、生憎と私には思い付きませんでした。
「風の苦手な属性って、何でしょう?」
うーんと悩みますが、そういえば、苦手な属性とかって、勉強しなかった気がします。
「ユーカ殿、結界に閉じ込めては?」
長さまから提案を受けますが、それは多分、ダメな気がします。閉じ込めても、力の使いすぎで死んでしまいそうですし、やはり、剣を手離して貰うのが一番だと思うんです。
うん、やっぱり、考えるのは性に合いません!
「やはり皆さんで、光属性で辺りを浄化してもらえますか? あの方も助けたいのです」
天族の方々は、生まれつき、光属性を持っています。更に、ここに居るのは、トップクラスの力を持つ長様達。
「それだけで宜しいのですか?」
サクラ様の怪訝な声は、当たり前ですが、そこは仕方ないと思います。だって、接近戦が恐らく、皆様それほどでは無い感じなんですよね・・・。足の運び方や、動きを見てれば分かります。皆様、魔法特化型の方々です。
「はい! ヤツの攻撃は、私が相手をします! 問題は、ヤツから放たれる黒い風なんです、瘴気を含む風ですから、この辺りに影響が出るかもしれなくて」
あれは、長時間、浴びてはいけない危険なものです。だからこそ、三人で浄化して頂ければ、ヤツの動きも封じ、一石二鳥を狙えます!
「成る程、我々に浄化や補助に専念して欲しいんですね?」
流石、長さま! その通りです。察しが良くて助かります!
「では、参ります!」
長さま達の浄化は、私には効きません。場を浄化する物ですし、敵にのみ、ダメージが行く物です。
私は足に力を込めて、一気に相手へ踏み込みます。やはり、直前まで、敵は動きません。魔力の流れ、音、殺気、視界、いくらでも考えはありますが、近くに来たから、とりあえず対処していると感じました。
と、近くに行く私へ、魔霊武器から攻撃が来ます。最初は横殴りに、鋭い風の刃が放たれます。
「効きません!」
足に風の魔力をまとわせて、高くジャンプして、回避します。それを狙ったのか、空中の私へ、風の刃が集中して放たれますが、そんなの予想済みです!
「はぁっ!!」
気合いと共に、私に当たる刃のみ、同じ風の魔法で、相殺します。風属性なら、私も持っています! 避けた風の刃は、誰も居ない空中へ抜けていきました。
そのまま私は、勢いを殺さず、敵へ近付いていきます。
とうとう、風の刃が間に合わず、剣が私の聖霊武器と触れ合います。甲高い音と共に、衝撃を剣を滑らせる事でそらします。
「はぁ! やぁ!」
一撃、また一撃と、追撃してみますが、単調ながらも、剣によって阻まれます。意思がある魔霊武器は、厄介です。どうやら、完全に持ち主を支配しているらしく、剣が勝手に動いています。私の攻撃を、いなし、反らし、更には反撃までしてきますが、近すぎるからか、風の刃は出してきません。
私はとにかく、剣を離してもらうために、隙を狙います。
「いい加減にっ!」
段々と単調になる攻撃は、魔霊武器ゆえか。それとも、今の持ち主が、剣を鍛えていないからか・・・。有段者の私からしたら、隙はあるように見えますが、どうも、違和感を感じてしまい、私は様子を見ている状態です。
手放せる為に、剣を叩くか、手元を叩くか、悩んでしまいますが、何だか私の勘が今では無いと言っています。
出来るはずなのに、何故、違和感が付きまとうんでしょう?
考えている今も、攻撃をいなし、かわし、反らし、相手の隙を狙っています。
辺りはいつの間にか、浄化されてきて、美しく光輝き、辺りは穏やかな世界です。私と、この目の前の存在だけが、戦っている、唯一無二の場所。
そして、この浄化の光は、ついに目の前で黒い瘴気のベールに包まれた人物にも、影響を始めます。
「えっ!?」
余りの驚きに、私はうっかり、大きく後ろへ飛び退きます。風の刃が追撃して来ますが、そちらは冷静に同じ風の刃で対処します。
・・・・・しかしまさか。
私が相手をしていた人物が、全体的に細く、明らかに戦いに向かないような、華奢な方なので、驚いてしまいました。そう、相手は瘴気の中に居たために、気付かなかったのです。瘴気のベールを剥がして、ようやく相手が、私と変わらないくらいの、“若い女性である”と気付いたのです。お陰で、ビックリしてしまい、距離を取ってしまいました。
明らかに、剣に、魔霊武器に、意識を乗っ取られているのでしょう。女性の目は閉じられ、操り人形のようです。着ているのは、動きやすそうな、シャツとパンツです。オシャレな感じの品物です。髪も緩やかにウェーブしていて、腰まで伸ばしていて、首元でリボンで結んでいます。顔立ちもかなり綺麗な方です。
だからこそ、魔霊武器に操り人形にされた姿は、気分が悪くなります。早く、解放してあげないとっ!
「黒い霧は消えていますね」
今なら、行ける筈です。もう、姿を隠す霧はありません。それに、先程から、風の刃が来てはいますが、どうも威力が弱くなっているような・・・?
ならば、チャンスですよね!!
「今、助けます!」
また、接近します。一気に迫った私に、剣が勝手に動いて、私へ向かって来ますが、それが狙いです!
「さっさと離れて下さいっ!!」
思いっきり、私は剣を持つ手に、私の剣の塚を叩き込みました。ゴツッと凄い痛そうな音が響きましたが、私にも手応えがありました。相手の手から反射的に力が抜けて、魔霊武器が手から一瞬離れます。
ーーーーーこれを待っていました!!
「いっけぇぇぇ~~~~!!!」
思いっきり、私は剣で横殴りに振りかぶり、魔霊武器を私の聖霊武器で遠くへ吹き飛ばします。素手で触って、私が魔霊武器に乗っ取られたら大変なので、剣で吹き飛ばす手段を取りました。
魔霊武器は、カランカランと高い音を立てながら、遠くの草原へ吹き飛んでいきます。これで、近くには誰も居ない状態になります。とはいえ、油断はしません。手放したからといって、支配が解かれるとは思えませんから。
一秒、二秒、三秒・・・私の荒い呼吸だけが、辺りに響きます。そのまま、辺りを見ますが、変わりはなく、華奢な魔族女性は、ゆっくりと倒れ込みます。
『ユーカ! 先に魔霊武器を浄化して!』
『この人は、天族の人にお願いしよう!』
ソールとムーンが、魔霊武器の方へ私を誘います。離れた場所に居た、長さま達にこの方を任せ、私は魔霊武器の元へ向かいます。治療のエキスパートたる長さま達になら、安心して任せられます。
一歩、また一歩と慎重に近寄ります。
「浄化するだけでいいんだよね?」
『『うん!』』
沈黙を貫く魔霊武器に、警戒しているんですが、何も起きません。でも、油断はしません。
だって、私が浄化をしないと、終わらないのですから。