閑話 天の国へ参ります5
お待たせ致しました!
緊急事態です! 四番島にて、正体の分からない敵と、天族の騎士隊が戦っているそうです。
「分かりました、直ぐに向かいましょう・・・誰か、お客様を迎賓館へ!」
これには、私が慌ててしまいました。お客様である我々が、戦いに巻き込まれたら不味いのは、私でも分かります。でも、何となく、行かなきゃいけないような、呼ばれているような、そんな感じがするのです。
「待って下さい! 私もそこへ連れていって下さい! お願いします!」
自分でも、我が儘を言ってる自覚はあります。実際、ウィリアム王子と、ルキさん、グレンさん、侯爵様の視線が痛いです。後ろに控えていたリリーさんからも、あまり良い顔をされていません。でも、この勘は、間違いなく、従った方が良い勘です。それだけは、分かります!
「お客様を危険にさらすわけには・・・」
やはり、天族の皆様には、難色を示されました。お客様である我々を、危険な場所へ行かせる等、本来あり得ない事です。
「それに、四番島には、飛んで向かわないといけません、翼無き方々には、無理でしょう」
勿論、飛べない我々では、違う浮島に行けないのは、分かっています。しかし、我々には、文明の利器、絨毯があります! ちゃんと、準備をしてきました!
「絨毯を持ってきています! だから、大丈夫です! お邪魔になる事は致しません、お願いします!」
私の勘が訴えています。行って、私が見なければならない物があるんだと。
「ーーーーー分かりました」
しばらくの熟考の末、長さまの許可を頂きました。次席や、恐らく高位の方々からは、口々に止める言葉が来ますが、長さまが右手を上げると、皆様は口を閉じました。
「私も、これは何かの運命ではないか・・・そう思うのです、私の勘がそう言っています! さぁ、戦える者は直ぐに準備を! 非戦闘員は、お客様を案内なさい!」
キッパリと言いきった長さまに、誰もがビシッと頭を下げるさまは、一種の式典を見ているような、そんな光景に見えました。
勿論、私も直ぐに自分のバックから、鎧等の一式を出し、装着します。外に出た頃には、既に皆さんは準備をしており、飛ぶばかりとなっていました。私に気付いた長さまが、此方へ来ます。
「勇者ユーカ殿、参りましょう」
「はい! 足手まといにならないように、頑張ります!」
絨毯を出すと、一部の方々が、ギョッとしていましたが、私が空を飛ぶ方法は、これしかありませんし、今は緊急事態です。そちらの方々に、構っている暇はありません。
因みに、私に付いた勇者の侍従さんは、リリスティーヌ・カレンディーさん。通称リリーさん。今回は、お留守番をお願いしています。魔術師の彼女には、何かあった時に、殿下達を守る人は、多い方がいいですからね。
「・・・・・人は、面白い発想をしますね」
サクラ様の、どこか、呆れを感じる言葉は、知らんぷりします。だって、私はこれの原理とか、分かりませんし。絨毯の操縦を習っておいて、本当に良かったです!
「彼処です!」
誰かの声がして、そちらを見て、何だかゾワゾワした物を感じました。そこは、何処までも続く、平原に見えました。一番島に比べれば、半分にも満たない大きさですが、かなりの広さです。恐らく、広いそこは、家畜の放牧場なんでしょう。名も知らない草花が、風に揺られる平和で長閑な島のようです。
しかし今、その島の中心辺りに、人によって輪が出来ています。
「・・・あれは、何でしょう?」
一緒に来ていたサクラ様が、訝しげに呟いています。幸いにも、風が強くないため、飛びながらでも会話は出来ています。
輪の中心、そこには、黒い風を巻き上げながら居る、“何か”が居ました。その風により、人々は近付けないようです。
「あの色は、魔族・・・でしょうか?」
風の中にはためく、特徴的な紫色を見ました。周りの方々は、足止めの為にか、攻撃を各々がしてますが、風によって、攻撃が届いていないようです。
『ユーカ!』
『ユーカ!』
耳飾りから、急に声が上がってビックリしました。
「ソール、ムーン、どうかしたの?」
『あれ、危険だよ!』
『そう、危険!』
危険を連呼する二人に、意味が分からずに、困ってしまいました。
「何が危険なの?」
黒い風を巻き上げる以外、特に動く事もない魔族の方。気配や、私の勘が、危ない、危険だと訴えてはいますが、現状は特に危険は無く。
『あれは、魔霊!』
『聖霊の反対!』
訴えてくる二人ですが、説明がよく分かりません! ピンチです!
「あの、魔霊って何でしょうか??」
初めて聞きます。と、私の声が聞こえたんでしょう。長様が、驚いた顔をしています。どうやら、魔霊を知っているようです。
「今、魔霊と言いましたか!?」
「は、はい! 今、私と契約してくれている聖霊さん達が、教えてくれたんですけど・・・」
何せ、説明が上手く出来ていないため、今一理解が出来なくて・・・。一生懸命に頑張ってくれるソールとムーンに、申し訳ないです。
「魔霊とは、聖霊が魔に落ちた時になるのが、魔霊と言います、確か、魔霊に落ちると、聖霊には戻れず、消えてしまうとか・・・」
「えっ!? そうなんですか!?」
驚きの説明に、かなりの声で驚いてしまいました。消えてしまうとか、物騒過ぎますよ。
『そう! 魔に落ちるとなるの!』
『消えるんじゃなくて、眠るの!』
耳飾りから、二人の声がします。ただ、消える訳ではなく、眠るみたいですけど・・・。ふと、私は気付きました。二人を武器として出せば、会話出来る事に。
何をやってるんでしょうか・・・。
「二人とも、出て来て下さい」
スッと光ると同時に、二つのそっくりな剣が私の前に現れます。そして、同時に二人の幼い子供の姿が現れます。ソールとムーンです。金髪で赤い瞳のソールと、銀髪で青い瞳のムーンは、顔立ちがそっくりです。服装も色違いのため、双子に見えます。
「ソール、ムーン、魔霊は眠ると聖霊になるの?」
早速、質問します。少しでも情報が必要だと思うのです。だって、あの黒い風を巻き上げながら居る、魔族の方は、どう見ても動いていません。何故か、不気味な程に沈黙しているのです。
『うん、浄化したら眠るの!』
『眠って力を回復させてから、起きるの!』
ソールとムーンにとっては、当たり前の事みたいです。でも、二人のおかげで、この状況を打破出来るかもしれません!
いつもお読み頂き、ありがとうございます♪♪
久しぶりに、ミニ小説が浮かびました♪
~咲希&翔太~
咲希:久しぶりです♪
翔太:だな! こっちじゃ、本編すら出演してないからな。
咲希:秋月、すっかりスランプみたいよ?
翔太:優香の話に、頭を抱えていたからな(笑)
秋月:次の、翔太と和磨くんの話も、頭を抱えてますよ!! 浮かばなくて!
咲希&翔太:ダメじゃん!?
秋月:すいません、最終回の話もありまして、頭を悩めてます。お盆過ぎのおかげで、忙しいんだけど・・・。
咲希:何とかしなさい! 作者でしょうが!
キャラクターに叱られる作者。作者の沽券や威厳はどこに!?
次回も宜しくお願い致します。