閑話 町でのドラゴンフラグ1
お読みいただきありがとうございますm(__)m
Side:翔太
俺達は、咲希達とは領主の館で別れ、俺、和磨、優香さんの他にブラオさん、ブラオ部隊に所属の魔法使い達、青の騎士団のメンバーに神官達という、とんでもなく豪華なメンバーである。
これ、相手するドラゴンが不憫かもしれないと、チラリと考えた。が、魔物(一部を除く)に憐れみはいらないか、と考え直した。
「なあ、和磨」
隣で分厚い本を読んでいる和磨に、俺は話し掛けた。
「なに? 翔太、今さ、呪文の暗記してるんだから、あんまり邪魔はしないで」
気のない返事だが、討伐が決まってから、和磨は焦ったかのように、何かに追い詰められたかのように、必死に勉強を始めていた。その隣にいる優香さんもだ。ずっと勉強を続けている。
「咲希の奴、大丈夫かな?」
その言葉に、ピタリと二人の手が止まった。
「そうだね……、咲希さん、大丈夫なのかな?」
「うん、咲希ちゃん、体が本調子じゃないのに……無理しないといいけど」
いや、絶対する。何となくだが、予感がした。あいつは絶対に俺達が考えた以上の厄介な何かをする。
「でも、僕達は咲希さんより、これから行く町を心配しないと」
確かにそうなんだよな。俺達がこれから行くのは、ルピーの町。中規模の町で、町の全てが赤い石で出来た頑丈な町だそうだ。これは隣にいたブラオさんからの知識。俺達が行くまでは、何とか保っていてほしい。
「……咲希さんには、ジュビアン神官がついていますから、安心してください、不安があるのも分かりますが」
後半、本音がダダモレだよな!? いいのか? おい……。
「ルピーには、タイミングよく軍の演習で青の第五部隊がおりましたので、彼らが只今奮闘しているはずですから、陥落はしてませんよ」
何故だろうか。何だか微妙に黒い部分を感じた気がしたんだが……何か恨みでもあんのか!?
「随分くわしいな、ブラオさん」
この人、魔法部隊の人だよな?
確か、紫は高位の魔術師を表し、逆に一般の魔術師は緑の宮廷服を着ている。
ブラオさんは紫だから、高位の方のはずなんだがな。
…………何か恨みでもあんのか?
「あの部隊は貴族のお坊ちゃんの中でも二流の者達がいましてね、我々の様に努力して上にいる者達を目の敵にしているという、脳内にお花しか咲いてないような部隊なのです」
根に持ってたんだな、ブラオさん達。何でか知らないけど、周りの馬に乗ってる奴らが、いい笑顔なんだよ。どんだけ恨まれていたんだ?! その部隊。
言い切ったブラオさんも、心なしかいい笑顔だし。
「よく軍に入れましたね、その人達」
優香さん、まさかの直球かよ。
「確かに、お飾りの部隊には丁度いいかもね、お偉いさんも大変ですね、青二才のボンボンのために」
………和磨よ、お前もさらりと酷い事言うな。まあ、俺も庇う気はないが。
「本来ならば、一部隊が丸々いる場所ならば、余程の事がないかぎり、余所に助けを求める事など有り得ないのですがね、本当にお飾りの部隊とはいったものです、式典にしか参加が無い時点で、無能だと気が付けばいいものを…………」
うわ、あれか。お飾りの場所しか役に立たないとかのレベルか。俺の顔も、その事態を徐々に理解し、引きつっているし。
「ちなみに皆様にも被害が出たら大変なので言っておきますが、あの部隊には絶対に関わらないで下さいね、バカが移ったら大変ですから」
…………………そこまでのレベルか。これは、心して行こう。
「見えてきましたよ、あれがルピーの町です」
ブラオさんが馬車の中から指をさす。
「あれが……」
赤い石の町、ルピー。
俺達勇者の初めての大きな仕事の場所。
だが、まさか町についてすぐに問題が発生するとは、未だ到着していない俺達は、知る由もなかったんだ。
お坊ちゃんの意味を、もう少し考えておくべきだった…………。
◇◆◇◆◇
Side:和磨
町が見え始めて、もうすぐ着くという時に、何故か僕達を乗せた馬車が停まりました。
「これ以上は近寄れませんね、これ以上は魔法の射程距離に入ってしまいますし」
「どうやって入っていくんです?」
僕が聞くと、ブラオさんがとてもとてもいい笑顔なんだが、何故だろう? 周りもノリノリな気がします。
キョトンとしているのは、僕達だけです。
いや、若干一名、同じようにニヤリと笑う人物が。
「ねえ、翔太、何で笑ってられるの? これから戦いがあるのに」
内心、僕は複雑になって言ったけど、何故かブラオさんも、翔太も笑うだけ。意味が分からない。
「あのな、和磨、俺達は今、ドラゴンの後ろにいる、つまりだ、奴らの敵がい心は俺達じゃなく、町へと向いているのですよ!」
最後、口調がおかしかったが、確かに言っている事は理解できる。なのに、何だか嫌な予感がする。
「つまりだ、俺達は何の心配もなく、堂々と“後ろ”から戦いを挑めるのさ!」
翔太、どこが正々堂々なのかな? 僕は翔太の中にある“正々堂々”という言葉を論議してみたい。あわよくば矯正したい!
「和磨? 何か漏れてくる気配が怖いんだが…………」
「気のせいだよ」
ニッコリ微笑みを浮かべてみたけど、まわりが一気に引いた。おかしいな、完璧な笑みだったと思うんだけど。
「さあ、皆様、そろそろご準備を」
ブラオさんに促され、僕達は馬車の外へ出た。
装備品は既に着用済みなので、武器を出すだけです。
「ソール、ムーン!」
優香さんが呼ぶと、彼女のつけているイヤリングが僅かに光り、次の瞬間には二人の幼い子供達が現れる。二人ともが肩までの短い髪型のために、色違いと別で全く性別が分からないのだ。
本当にどっちなんだろう?
「フリーレン!」
翔太の声に、彼の手首についた美しい腕輪から光が溢れ、すぐに大人の色香を出した女性が現れる。翔太にしなだれかかる女性に、隊員の何人かが頬を染めるけど…………これから戦いなのに、大丈夫かな?
「グランツさん」
僕が契約した槍の聖霊、普段はペンダントに成っている彼は、僅かな光の後、僕の隣に姿を現した。僕には無い落ち着いた老人の姿の彼は、戦いの猛者であり、知識を持つ賢人でもある。
「昨日ぶりじゃのう、カズマよ」
「はい、昨日ぶりです、グランツさん」
何故か僕は、自分の契約した聖霊に対し、呼び捨てが出来てない。というより、日本人として、年上の姿の方(実際、僕達よりも凄い年上である)に対し、呼び捨ては出来なかった。
まあ、彼が渋いおじいさまって感じだからなんだけど。
「さて、皆様、これより戦いますが、どうか無理だけはなさらないで下さいませ」
ブラオさんの声が、僕には大きく響いた。
どうも、秋月です!
桜も咲き始めて、春真っ盛りですね♪
お花見が楽しみです(笑)
ちなみに秋月は花より団子派なので、食べる方ですね。
さて今回は、閑話をお送りしました。
都合により、二人しか入りませんでしたが、そこはご勘弁を(;^_^A
はあ、早く本編のサキちゃん視点に行きたいです…………。
しばらくこちらの閑話が続きます。お付き合い下さいませ。
サキ:どうも、サキです♪
ユウカ:こんにちは、ユウカです。
サキ:今日から閑話が始まったわね。
ユウカ:うん、そうだね。始めてだね、二つに分かれるなんて。
サキ:まあ、話的に必要だったからねー。言っとくけど、あの作者だから期待はしないわよ?
ユウカ:サキちゃんて作者さんには厳しいよね?
サキ:…………まあ、色々ね。
ユウカ:次回は、バトルだって♪
サキ:えっ? 何でユウカちゃん、楽しそうなの!?
ユウカ:てへっ☆
感想、ご意見、誤字脱字、いつでもお待ちしております。なお、甘口で宜しくお願いします。