第180話 色々と決めてしまいましょう
お待たせしました~♪
何かいつも言ってますが(笑)(;^_^A
今回は、ゆるり笑いの回です。
微妙な空気をまといながら、無事に協定は結ばれました。
とにかく、最速で、あたし達勇者と王族の誰かがペアになって、獣族、天族、ドワーフ族のところへ、協定の提案をしに行かないとね。
はぁぁぁ、間違いなく、問題が起きるわよねぇ・・・? 勇者って、何で問題に愛されてるのかしらね?!
「ふむ、取り敢えず、一度、休憩しようか・・・ふむ」
王様の言葉は、色々いっぱいだったこの場では、救世主のような言葉だったわ。
「何だか、疲れたわね・・・」
「だな・・・」
どかりと、部屋のソファーに座り込む。礼儀もへったくれもなく、疲れたからダラーンとしているわ。この部屋には、あたしと翔太、和磨くんと優花ちゃん、離れたところには勇者の侍従たる、ファイさん、ユリーさんがいる。
ここは、あたしら勇者の休憩部屋。他の皆さんも、それぞれに部屋で休憩してるわ。今頃、今後の話し合いでも、してそうよねー。
「翔太、あんたの狙い通りに、平和協定は結べたわ・・・でも、腑に落ちないのよ、あんたは何を狙ってるわけ?」
そう、翔太の狙いだと思っていた、平和協定は、多分、手段の一つに過ぎないんだ。あたしだって、流石に気付く。こんな取って付けな協定なんて、強い効力は結べない。正式な協定は、多分だけど、まだまだ、先になるはずだわ。
「あー・・・やっぱり、咲希は気付くよなー」
何よ、その気付いて欲しくなかった的な言葉は。聞かなきゃ、この先の取れる行動が、限られちゃうのよ? 聞くに決まってるでしょう?
「うん、もう少ししたら話すつもりだったんだが、やっぱり無理か・・・分かった、話す」
諦めたように、降参のポーズを取る翔太。うん? やけに素直ね?
「まぁ、巻き込むつもりだったからな、最終的には」
「・・・それって、巻き込むのが、早くなったか、遅くなったかの違いよね?」
「そうとも言う」
悪びれる様子もなく、あっけらかんと言った翔太に、思わずいつものように、イーリスをハリセンに変えて、おもいっきり振りかざした。
「うおっ!? 危なねーな!?」
ヒョイッと簡単に避けた翔太に、やっぱり頭にくる! こんな時ぐらい、受けなさいよ!
「避けるな!」
「おまっ、その威力はヤバイ! イーリス、バチバチってあぶねーだろっ!」
ハリセンに向かって、翔太が文句を言う。なお、バチバチは見たまんまの、電気である。久しぶりだからか、イーリス、もしかして張り切ってる?
『大丈夫です、ちょっと痛いくらいに調整してますから、ご安心下さい』
イーリスが透けた状態で、綺麗な礼をしている。流石、あたしの契約武器様♪ 分かってる~♪
「安心できるかぁぁぁ!!」
まぁ、確かに?(笑)
「二人とも、話が進まないから、そろそろ戻ってくれない?」
冷たい声に、二人揃ってそちらを見れば、笑顔なのに、目が笑ってない和磨くん・・・。
「ごめんなさい」
「すまん!」
直ぐに止めたのは、何かヤバさを感じたから。和磨君、いつの間に覚えたの? マジで怖かったんだけど。
「・・・何か久しぶりだね? こんな感じ」
優香ちゃんの意外な言葉に、あぁと納得した。確かに、しばらく皆で集まること自体がなかったわ。
「でも、何か落ち着くわ、これ」
「「「確かに」」」
あたしの言葉に、そのまま皆で笑う。クスクスみたいな、優しい笑い。最近は何か殺伐としていて、こんなふうに笑う事すらなかった。
・・・・・どんだけ巻き込まれてるんだ、あたし達。
「さて、話を戻すが・・・狙いは“あった”んだがな・・・・・まさか、他に種族があるなんて知らなかったからなぁ」
「「「あぁ・・・」」」
これには同情しかない。何せ、翔太自身、上手くいく予定で組んだのに、新たな情報で待ったがかかったのだから。
「最初は、仮でも、上手く協定を結べばなんとかなるかなぁと考えていたんだがなぁ」
「あんたねぇ、そんな簡単に行く訳ないじゃない」
こればっかりは、仕方ない。あたしも、翔太の考えが途中までは分かったけど、不確定要素がありすぎである。
「ねぇ、翔太くんは何を狙っていたの?」
優香ちゃんの疑問は、しごく真っ当なもの。いや、優香ちゃん、もしかしなくても、策略系は向かないよね。
「そうね、あたしも気になるわ」
「うん、僕も気になる」
てな訳で、翔太よ。説明してもらうわよ♪ 勿論、話すまで離さない♪
「咲希、無駄に笑顔は止めてくれ、マジで怖い」
が、翔太の一言にイラッときた。
「失礼ね!?」
やっぱり、イーリスでハリセンするか!? 準備をしようとした矢先、ふと、翔太がとある方向を見て、固まったのが見えた。うん?
向いた先には、笑顔の和磨くんがいた・・・んだけど。
「「ごめんなさい!」」
あたしと翔太の声がハモった。うん、和磨くんが怖かった・・・。あれは、駄目だ。逆らったら駄目なやつ!
「ゴッホン、えー、つまりだ、今回の協定は、これから先に必ず起きるだろう、“黒き魔王との戦い”の時に、役に立つだろうってのが、まず一つ」
「一つって、まだあるの?」
きょとんとした優香ちゃんの質問。確かに、必要さは感じるけど。
「あの白き魔王を認めさせる必要があるが、今回の協定で、達成するだろ? あいつ、間違いなく同郷だからな、ちょっとは力になってやりたかったのが、二つ目」
へぇ、翔太にしては考えてるじゃん。確かに、あの白き魔王くんは、可哀想すぎる。神様も、必死みたいだけど、本当に何があったのやら。
「で、これが重要な三つ目なんだが、ーーーーーーー忙しさを分散させるため、だ」
「「「はい?」」」
ハテナいっぱいで答えたあたしら、絶対に悪くない。多分、視線から察するに、ファイさんとユリーさんも、目が点になってるだろう。
「翔太・・・? 忙しさの分散て、なに?」
何とか質問した、あたし。偉いよ! 他の皆は、まだ付いていけなくて、固まってるよ?
「ん? あれ、簡略しすぎたか?」
「うん、いまいち分からない」
「うーん、ほら、例えばだが、それぞれ、徹夜もあったりするだろ? 妙に忙しくて、自分の時間とか最近は取れてないだろ? 俺達まだ未成年者だぜ? カイトやヒマリ、アカネやヒスイもいる、ある程度の時間は確保しないとな、俺達は勇者だが、何でも屋じゃないんだからさ」
・・・・・え? マジで真面目な回答だったぞ? 翔太って、たまに分からなくなるわ。
あたしと同じ事を思ったらしい一同、優香ちゃん、和磨くん、ファイさん、ユリーさんの目が、あたしと同じく、点になっていた。うん、だよね!? 予想外だよね!?
「・・・おいっ、その反応はないだろう!?」
いやいや、そう言われても。
「翔太だし?」
思わず言った言葉に、皆は一斉に頷いたのだった。
「何でだよ!?」
翔太の叫びが、虚しく響き渡ったのだった・・・。もう、魔法の言葉に思えてきたわ。