第176話 お約束と不穏な始まりです
お待たせしました。今回は、カオスなお話(笑)
別室にて、あたしら四人と、スザリオン王子は椅子に座り、グリズー団長殿はスザリオン王子の側に控えていた。勿論、勇者の侍従達も、今回は参加してるわよ?
何せ他国の王子様だからね、スザリオン王子。あたしらだけになるはずがないわね。勇者といえど、異国の人間。何かあったら、双方が困るわ。
「すいません、我が儘を言いまして・・・どうしても、帰国前にご挨拶したかったんです」
美少年の言葉に、翔太は苦笑い。多分、翔太が彼の内面に気付いたが故だろうけどね。あたしと、和磨くんは、まだお話したことないから、このご挨拶は、優香ちゃんと翔太に対してだろう。以前、将太は彼の戦い方を見ている。間接的に、あたしに迷惑をかけたのは、記憶に新しいわ。あの結界、直すのマジで大変だったんだから!!
「あー、何だ? 一応、他の二人にも、挨拶してもらえると助かる」
翔太の珍しく(←ここ重要!)、気のきいた発言に、和磨くんがビックリしてた。うん、分かるよ! その反応! 馬鹿な行動や、珍事件を起こす翔太が、気のきいた発言をするんだもん。誰だってビックリするよねー。
「あ、そうですね! ウエステリア国勇者、スザリオン・デル・ウエステリアです、宜しくお願い致します」
軽くだけど、頭を下げた姿は、あんまり王子様らしく無い気がするわね。
「本来ならば、色々とご挨拶しなければいけなかったのですが、勝手に動く訳にはいかなかったものですから」
それは仕方ないわね。ここは、彼にとっては他国だもの。勝手に動けば、色々と問題になっちゃうし。
・・・・・いや、既に問題を起こしていたっけ。あの結界騒ぎは、本当に大変だったもの。
「こっちも、挨拶しないとな! 咲希、和磨、頼む」
うん、やっぱり翔太が仕切ると、違和感が・・・。まぁ、バカをしないでいるんだし、良かったと思うべきよね。
「じゃあ、僕からーーーーー白鳥 和磨です、宜しくお願いします」
「あたしは、天城 咲希よ、宜しく」
二人で挨拶したんだけど、あれ? スザリオン王子の反応がおかしい、ような?? こう、此方を見て、固まっている気がするんだけど・・・・・。えっ? あたしも和磨君も、おかしな事はしてないわよ? ご挨拶、だけよね? もしかして、態度が悪かったのかな・・・・・?
何かやらかしたかと焦って、スザリオン王子をガン見したら、ん? スザリオン王子と視線があった。こう、何か熱っぽいような、熱い視線を受けているんだけど・・・・・??
皆もおかしいと思ったようで、スザリオン王子を不思議そうに見ていた。
「・・・・・スザリオン王子よ、咲希が何か?」
不機嫌を隠そうともしない翔太の質問に、ハッとしたらしいスザリオン王子だけど、やっぱり何か変。ブツブツと何かを粒やいてから、ガバッとあたしの両手を捕まれた。異様な雰囲気だったから、固まってしまって、逃げられなかった。式神様も、お札の中で困惑してるみたい。だって、敵対心とかそういうのは、ないもの。
が、次のスザリオン王子の言葉で、見事に室内の空気が凍り付いた。
「勇者サキ殿、一目惚れをしました、僕と結婚を前提に付き合って下さい!!」
「「「「「はぁ(えっ)・・・・・・・・・?」」」」」
・・・・・・・・・・・・・・・。
幼い勇者のプロポーズに、勿論、あたしは固まったし、辺りは間抜けな顔をして、フリーズしちゃったわよ? けれど、次の瞬間。いち早く復活したのは、スザリオン王子の保護者役。グリズー隊長でしたよ。うん、流石、お目付け役。耐性は培われていたみたいね。
「す、す、スザリオン殿下!? な、何を言ってるんですか!!? じぃは聞いてませんぞぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~!!」
あ、うん。察したわよ・・・・・。やっぱり、混乱はしていたのね? 明らかに動揺しまくってるし、言葉がおかしいわ。グリズー団長、頑張ってよー!
「え、サキ様に、求婚・・・・? え? え?」
あら、我らがしっかり者、ファイさんまで、目を見開いてブツブツ呟いていた。端から見たら、怖いわよ? 大丈夫かしら・・・・・?
「勇者サキ殿! 絶対に幸せにします!」
固まっていたら、スザリオン殿下から追撃が。嘘っ、まだ子供よね? 今時の子は、マセテルノネ・・・・・・。
「スザリオン殿下! かっ、勝手な事は、なりませんぞ!?」
・・・・・最初に言ってほしかったわよ、グリズー団長!!
「・・・・咲希、ロリコン?」
翔太の一言に、瞬時にイーリスをハリセンに変える。
ーーーーーーバシンッ!
「いてっ!?」
翔太よ、一言多いわよ!! しかし、素晴らしい音だわ。叩きがいがあるわね(笑) 勿論、内緒だけど☆
「・・・・・カオス?」
和磨くんが、黄昏ていたわ。だよねー、この謎の空気、どうしよう? まぁ、あたしも見事に混乱してるかも。まさか、年齢一桁の年下に、告白通り越して、求婚されるなんて、誰が思うわけ!?
と、カオスな空気に、救世主が現れた!
「・・・・これは、どんな状態だい?」
様子を見に来たらしい、フランツ様。流石に、この状態は予想外だったみたいで、顔は驚きに満ちていた。珍しいわね、ビックリ顔なんて。
因みに、フランツ様の質問には、和磨くんが答えてた。多分、ここでまともなのは、和磨くんだけなんじゃないかな?? かくいうあたしも、未だに動揺が収まらないけどね!!
「えー、スザリオン殿下が、咲希さんに求婚しました、それで皆、パニックになりまして、こんな状態になってます」
「あー、うん、カズマ、ありがとう、うん、こうなった理由が分かって、納得したよ」
淡々とした和磨くんの説明で、フランツ様は大体の理由を察したらしい。流石、頭の回転が早いわね。
「スザリオン王子? 申し訳ないが、国としては勇者であるサキを、他国に渡す訳にはいかないんだよ、理解してくれるかい?」
あ、確かに・・・・・。
多分、この場の誰もが、同じことを思ったみたい。だよねー・・・、スザリオン王子の一言は、場に見事な爆弾を落としてくれたからね。皆、見事にパニックになったのよねー。
「で、でも! 一目惚れしたんです!」
多分、彼も上手く伝えられないんだろうけど、一生懸命に、気持ちを伝えている。
「あぁ、君の気持ちを不定してる訳じゃない、そこは間違えないでくれ、私が言っているのは、サキを連れていかれては困るということだ、国の勇者だからね、彼女は」
ん? これって、気持ちに関しては、丸投げされてるわよね!? おいっ!? どうせなら、断ってよ!! あたし、年下に興味ないから!! ロリコンじゃないからね!??
違う意味で、あたしがパニックだわ!!!
と、また、場がカオスに成り始めていると、ふいに、知らない人の声がした。
『こんにちは! 勇者さん!』
場にそぐわない元気な声に、場がまた、シーンとなったのは、仕方ないと思う。
お読み頂きまして、ありがとうございます!
今回は、見事にカオスなお話になりました。いやー、中々に書きやすかったです。
キリが良かったので、今回は短めです。
次回もカオスは続くかもです?