第172話 結果こうなりましたとさ(笑)
お待たせしました! 今回、ちょっとシリアスです。
いやー、会場のあちこちで、悲鳴やら笑いやら・・・。
王家の皆様は、この会場で断罪をまとめて、してしまうつもりらしい。今まで虐待されてきた皆様も、これで安心はするだろう。まぁ、各家は今現在、大変な最中にいるみたいだし? いやー、大変だね、これから。
あたし? あたしは、先程の元婚約者をお相手してからは、優香ちゃん達を遠目に見ながら、フランツ様とダンス中だよ!
何 で こ う な っ た ! !
おかしいでしょ!? どう考えても! 確かに、王家からの各家に対する処罰めいたものはない。ないけどさぁ?
あたしは何で、フランツ様と踊ってるのかな!? 関係ないよね!?
「すまないね、サキ」
「そう思ってるなら、訳をどうぞ」
明らかにジトッとした視線を送ったら、苦笑いされた。一応、悪いとは思ってるらしい。
「アハハ、やっぱり騙されないか・・・・・今回、各家はパニック状態になったよね? 子供を虐待していたんだから」
「そうですね、似たり寄ったりな家は、かなりの傷になったはずですし、それに貴族の義務を放棄した訳ですから」
貴族の夫人は、例え養子だろうと、ちゃんと我が子として育てなければならないんだよ。大半の家は、きちんと養育していたから、今回は傍観者となってるけどさ。まぁ、愛人に貴族の血を引いた子供を産ませた主人も、同罪だけどさ。そういう部分は、気を付けないといけないんだよねぇ、色々と。貴族は血の意味をちゃんと知らなすぎ。教育を疑うレベルである。じゃなきゃ、愛人を持っても、子供を作る事はしないだろう。
「・・・・ハハッ、だよね、父上も側室持つ側だから、頭を抱えていたよ、貴族に愛人を許可出来ない訳を、知らせない訳にはいかないからね」
この国の貴族の闇を、あたしは暴いちゃったんだよねぇ。実際、オリビア嬢の事例みたいな事は、ままあるらしく、引き取る際は、血を必ず調べるらしい。大抵は、貴族の血を引いているから問題ないが、まれにすり替えたりするバカがいるそうな。今回、バレなかったのは、伯爵がやらかした。
「だからこその、この場ですか?」
あたしとのダンス、ついでに話題提供ってところか。確かフランツ様は、優香ちゃんを狙っていたからね。あたしは違いますけど。
「おや、ダンスが終わったみたいですね」
くぅ! 何で時間がくるかな!?
「フフッ、では、話の続きは母上のところで」
「へ!?」
何で王妃様? もしかしなくても、これを狙っていたって事か! あたしとした事が・・・、まさか嵌められるなんて。
向かった先には、面白そうに此方を見ている楽しそうな王妃様。うん、待ち構えていたって感じかな?
「母上、お連れしましたよ」
「ごきげんよう、王妃様・・・楽しそうですね?」
「えぇ、楽しいわ! 貴方と仲良く話をしたかったのよ」
・・・・・あたしと、楽しく話を? 王妃様、何かを考えての会話ですよね!? 普段、エリー様との茶会には、王妃様は来ないからね。忙しいのと、あんまり仲良くするのは不味いみたいで、エリー様とフランツ様だけなのよね。他の王子様や王女様は、基本的にあたしらに近寄らない。まぁ、異世界から来た人間を、政治に関わらせない為には、仕方ない処置なんだそう。二人は、責任者みたい。
「今回の社交界の話題、勇者サキはどう思うかしら?」
王妃様、めちゃくちゃ楽しそうですね? てか、勇者にそれを聞いていいの? 結構な人目があるんですがね!?
「ウフフ、気にしなくてもいいわよ? だって、政治に関わらない勇者様ですら分かる事が出来ない方々がいるんだもの、貴族として恥ずかしいでしょう?」
ニッコリと、えげつない事を言いましたよね? え、王妃様、実はお怒りですか!? ・・・・・そういえば、オリビア嬢のお母さんと友達とか言ってたような?
「では、遠慮なく・・・・・今回の事は、貴族の家を預かる夫人やご令嬢達の、教育の問題があるかと」
確かこの国は、貴族の子供には王都の学園に通うとする義務があったはず。各家から、7歳で寮に入れられるのだ。だから、基本的に貴族の義務や責任に関して、ちゃんと学ぶはずなのである。女性側、男性側で、学ぶ教科が違うとはいえ、理解しないバカは何処にでもいるもので。
「そうよね? まぁ、男性側の教育にも、愛人を持つべきではないと、ちゃんと教えているんだけど・・・」
王妃様の視線の先を、あたしも見れば、教育されたはずの人々が、シリアスな場面を起こしていた。勿論、優香ちゃん達がいる、オリビア嬢の場所も、だ。
まぁ、敏い方々は気付いてるけどね。この場所の意味を。
だって、ここには他国の人達が居ないからね。身内だけなんて、何かあるって、普通は気付くよ? 今現在、このクラリオン王国には、ウエステリア国の王子で、現地勇者のスザリオン王子と、ヴァストークの召喚勇者、西藤一心さんが滞在中。
彼等が呼ばれない理由を考えたら、普通は気付くよ?
「あの、学園では、成績が悪い場合、どうしてるんですか?」
「あら、そういえば、知らなかったわね? 勿論、成績次第では、留年もあるわよ? 真面目にやらない能無しに、卒業なんてないわ」
楽しそうですね、王妃様・・・。王妃様の言葉を聞いていた皆様、頷いたり、悩んだり、忙しいわね。まぁ、こんな騒ぎを起こした家に、未来はあるのか、かなり気になるけど。
「そうなんですね? ならば、彼らは何を学んできたんでしょうね?」
「それなりに成績は良かったはずなんだけど、やはり、貴族としての責任を理解していなかったのかしら?」
お互い、ニッコリと話してるけど、会話はかなり物騒なもの。意味を理解出来ちゃった皆様は、騒ぎを起こしている方々の先を知って、沈黙した。うん、だよねぇ。自国の王妃様が、庇わない時点で、彼らは道を失ったに等しい。オリビア嬢みたく、直系の人ならば、助けられたけど、養子の中には優秀な人もいるので、完全にケースバイケース状態。
「本当に、困った方々だこと」
上品に笑っているのに、目は笑っていない。王妃様、かなりお怒りだったそうだからね。こんな公の場所で、王妃様が不愉快さを隠さなかった、というのは、彼らの信頼が潰えたという意味。これからを考えると、お付き合いはかなりシビアになりそう。
「サキ様? 何だかお仲間の方が騒がしいけど、宜しいの?」
「えぇ、大丈夫ですわ、私は仲間を信頼しておりますから」
あの二人が居れば、大抵の事は何とかなるはずだ。更にオリビア嬢達が大変やる気らしく、此方は大丈夫だろう。
その後、王様からお話があり、今回の騒ぎを起こしている各家は、厳重なお叱りを受けた。家をちゃんと管理しろっ! ってね。オリビア嬢の家も、当主がしっかり叱られていた。
ふん! ざまぁみろっ!
ーーーーー内心で思ったのは内緒だ(笑)
◇◇◇◇◇
side:白鳥 和磨
僕の目の前で、婚約者共々、青い顔になりながらも、元妹さんは、まだ諦めていなかったらしい。逞しいなぁ、何故それを、教育とかに活かせなかったのか・・・。
「お姉様ばっかり、ズルいわ! 私が可愛がられていたの! 私の方が可愛いでしょ!? 何でお姉様ばっかり、おかしいわ!」
あぁ、妹の中に溜まっていたドロドロしたものが、吹き出し始めたんだと思う。彼女は今までに、実の父親と思っていた養父から、溺愛されてきたのだ。今まで、ずっと一番だったのに、何でも叶えて貰えたのに、それが急に変わった。勿論、咲希さんが介入したからだ。
彼女が介入しなければ、オリビア嬢は最悪、死んでいただろう。
「おかしいも何も、貴女は既に私の妹ではないし、我が伯爵家とは、縁もない、男爵家の人間よ、爵位は一番下よ? 既に貴女と私は、立つ位置が違うのよ、いい加減に理解しなさい」
うん、怒っている人間に、ストレートに正論を吐くオリビア嬢。逞しい! 物凄く逞しい! 咲希さん、暗示が効きすぎてるよ!!
「見苦しいよ・・・男爵家の分際で、伯爵家に喧嘩を売るのかい? 婚約者なら、諌めなくてどうする?」
あ、ジークフリート殿が参戦した。まぁ、婚約者を諌めたら? って、彼に伝えるのは常識だよね。自分より上の身分の人に、役立たずって言われたに等しいけどさぁ。彼も公爵家を敵にまわしたって、理解できてるみたいだしね。
とりあえず、騒ぎを聞き付けた彼の親が引き取りに来たから、解決でいいよね?
男爵様が、卒倒したのは、可哀想だったけどね。
お読み頂きまして、ありがとうございます!
やっとこさ、書けました(笑)
シリアスは書きにくいので、次回はゆったりお笑いシーンにしますね。秋月にシリアスは難しい。
次回も宜しくお願いいたします!