第171話 御披露目は自爆を呼んだようです?
お待たせしました! やっとこさ、書き上げました!
side:白鳥 和磨
きらびやかなホールにて、王族との挨拶も無事につつがなく終わり、僕らは楽しげに歓談していた。予定通り、オリビア嬢とパートナーである、ジークフリート殿とだ。優香さん、最初はガチガチに緊張したみたいだけど、今はオリビア嬢と楽しげに話している。
気があったみたいで何より。
「カズマ殿と呼んでも?」
「構いませんよ、では、僕もジークフリート殿とお呼びしても?」
「勇者殿に呼んで頂けるとは、光栄だよ、今日は宜しく頼む」
僕らも、握手をかわす仲にはなったよ。ジークフリート殿、好青年なんだよね。会話をしても、楽しい感じの人で、ちょっと驚いたけど。それでも、流石公爵家の人間だなって思うよ。動きも洗練されたものだし、会話も巧みなものだしね。会話に気を付けないと、何でも話してしまいそうだ。
と、会場がざわついた。あまり大きな物じゃないから、何があったかまでは、分からない。辺りを見渡して、ようやく分かった。ダンスホールで、何やら起きたみたいだということに。
・・・・・そして、咲希さんが盛大にやったという事に!! ちょ、咲希さん!? どうやったら、あそこまでひどくなるの!? 僕はムリだよ? フランツ様の時にやったけど、あそこまで酷くはなかったと思う。・・・・多分。
「和磨君」
優香さんに呼ばれて、僕も気付いた。僅かに殺気がすることに。・・・・・実は、この殺気を感じられるようになったのは、咲希さんのお陰なんだ(笑) 咲希さん、無意識に殺気を出すから、気配を覚えちゃったんだよね。意外なところお役立ちしてるけど。本人は不本意だろうしね。
と、殺気の人物は近付いてきてるみたいだ。だから、僕は二人に注意をしたんだけど。
「お二方とも、ご準備を」
僕に言われて、二人はお互いに顔を見合わせて、大変素晴らしい笑顔で礼を言ってくれた。
「大丈夫ですわ、カズマ様」
「お手は煩わせませんから」
ん? いや、僕は注意したよね? 何で二人とも、笑顔なのかな?? 妙に威圧を感じるのは、気のせい・・・じゃないよね!? あれ、僕、何か間違えた!?
「頼もしいね、和磨君」
「優香さん・・・そうだね」
これ以外、何を言えるだろうか? 咲希さん、こっちに人、いらないんじゃないかな?? 思わずそう呟きそうになるくらい、オリビア嬢はしっかりしてるよ。えっ? 僕達いる?
「来たみたいです」
優香さん、気配に聡いから、殺気の持ち主が此方に来たのが分かったみたい。僕も見えたよ。一応、取り繕ってはいるけど、明らかに目で此方を睨み付けている女性を。
確か、血の繋がらない、オリビア嬢の妹だった子だよね? 離婚が正式に決まったって、フランツ様が話していたし。・・・・・圧力かかったりしてるのかな? 離婚が貴族なのに、異様に早かったから。王様が、伯爵家は潰せないって言ってたから、それも関係してると思うんだ。
「ごきげんよう、お姉さま!」
可愛らしい笑顔で、こちらに来た元妹君。なお、ドレスは、男爵家が着るには、派手な物である。鮮やかな赤い布地に、これでもかと金色の縁取りがされていて、腰の部分に、巨大なリボンがついており、キラキラと反射している。チカチカして目が痛い。胸元は開いていて、これでもかと胸を強調しており、正直言って、あまり品は良くない。どうやら周りの女性人達の噂では、リメイクした物みたいだ。リメイクして、これって・・・。顔は可愛らしいけど、明らかに目が笑っていない。うわぁ、隠しきれてないから、不気味の一言につきる。メイクも濃いし。
そんな元妹君の隣にいるエスコート役の男は、間違いなく、オリビア嬢の元婚約者だろう。元妹と婚約したと聞いたけど、元妹よりも美しく着飾ったオリビア嬢を凝視している。もしかしたら、元サヤになんて、考えてそうだな。顔立ちは、それなりに美形なんだろうけど、ジークフリート殿を知った今、物足りなさが目立つ。優雅さっていうか、気品を帯びてるジークフリート殿に対し、元婚約者は何て言うか、中途半端に見えるんだよね。
これが生まれながらの差なんだろうなぁ。まぁ、今現在は、咲希さんとお相手して、心が折れちゃったみたいだけど・・・。咲希さん、容赦ないからなぁ。
「あら、ごきげんよう、残念ながら貴女とは既に、姉妹ではなくなっておりますわ、今さらお姉様と呼ばれても・・・」
今まで、姉とすら思ってなかった妹さんが、いきなり馴れ馴れしく呼ぶなんて、本来ならあり得ないこと。既に、姉は次期女伯爵となり、王家公認の婚約者もいる。対して、男爵令嬢となり、将来はパッとしない、王家に睨まれた状態の伯爵家の次男を婚約者とする元妹。立場が全く違うのだ。
「酷いですわ、お姉様! 確かに私は血が繋がっておりませんが、家族として一緒に暮らしたではありませんか! 婚約者の方を譲って頂きましたが、その様に仰らなくても!」
目に涙を浮かべ、庇護欲を持たせるような、可愛らしい顔で、責める元妹。うん、言ってる事、中々にヤバいんじゃないかな??
「オリビア嬢? 彼女は?」
あ、ジークフリート殿も参戦するみたい。彼に気づいた元妹さん、明らかにハンターの目になった。でもさ? 相手は公爵家の人間だよ?? 君は男爵令嬢だって、分かっているのかな・・・?
「お恥ずかしながら、私の“元”妹ですわ、父は離婚しましたし、元継母の方と、ご実家の男爵家預かりと聞いていますわ」
オリビア嬢、丁寧に紹介してるが、何だろう? 妙に他人行儀なうえ、いや、最初から他人なんだけど、視線が怖い。元妹さんより、迫力があるかも。それにしても、男爵もよく引き取ったよなぁ。
「お姉様! そんな紹介、失礼ですわ! 初めまして、私、システィーヌ・スダンですわ、宜しくお願い致します♪」
因みにだが、スダン男爵家には、ちゃんとしたご令嬢がいる。一緒に入ってきた時、彼女は婚約者の方と仲良くしていたが、こんな従姉妹が居ては、先々が、大変そうである。男爵も顔色が悪かったし。継母と元妹、システィーヌ嬢を社交界に連れてなど行きたくなかっただろう。あんな夢を見たのだから。それでも、何か理由があって、妹であるらしい継母を受け入れた男爵。余りにも哀れである。
「あぁ、貴女があの例の夢の! 非常識な妹でしたか! いやはや、私ではあんな夢を後で、人目のある場所には出れませんよ! 貴女は、随分と勇気があるようだ」
多分だけど。意訳すると、例の夢の非常識娘は、やはりバカだったんだな。普通なら、この場所には来ないだろ? アホの頭には分からなかったか。
じゃないかな?? 多分、意味に気付いちゃった優香さん、扇子で口元を隠してるけど、固まってないかな!? ジークフリート殿、流石、公爵子息・・・、顔が笑顔だけに、反応に困る。
「・・・っ! ま、まぁ、勇気だなんて、オホホホ」
それなりに社交経験があるシスティーヌ嬢も、顔が強張っているし。
「婚約者殿も、これから色々とあるでしょうが、姉より妹が良かったのでしょう? 本当にお似合いのお二人ですよ! 社交界では今、お二人は時の人ですからね!」
意訳:お前も大変だろうが、妹を選んだんだから、諦めろ。社交界で笑い者に成ってるからな!
だと、思うんだけど。ジークフリート殿、容赦ないなぁ。さっき、咲希さんに遊ばれて、次はジークフリート殿って。こいつ、ある意味、大物を釣り上げちゃってるよ・・・。小物ぽいのに、何て贅沢な。
「時の人、ですか?」
どうやら、知らなかったらしい。まぁ、咲希さん曰く、この二人は、喉元過ぎれば暑さ忘れるタイプらしいから。
「君達も見たでしょう? あの夢をーーーーーあれ、似たような事をやっていた家でも、色々ありましてね? 今は王家が指揮を取り、詳しい調査をしている所ですよ」
ジークフリート殿が色々教えてあげる度に、二人の顔色がみるみる青くなっていく。多分だけど、今回のパーティーって、断罪の意味もあるんじゃないかな??
咲希さん、本当に僕ら、いらなくないかな!?
お読み頂きまして、ありがとうございます♪
軽い読み物のはず・・・。何で路線が、シリアスに!? もうちょっと、コメディ路線に行きたいわ。
よしっ! 次回はコメディ路線で頑張ります!