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第167話 悲劇の令嬢は複雑です

お待たせいたしました!

あれから、数日。

魔術師達から要請を受けて、あたしも血縁の証明を出すお手伝いをする羽目になり、忙しない日々を過ごしていた。お陰さまで、パーティーまで準備万端するために、徹夜する事に・・・。

うわぁーん、まさかこんな大事になるなんて!! この手の話題は、貴族にはかなりまずいらしい。何せ、血筋こそが大切らしいからね、かなり。理由は知らんけど。フランツ様も、この前の説明で、直系か傍系でも血が大切とか言ってた。王族なら分かるけど、何故に貴族も? って、疑問に思ったけどね。

はあ・・・・・、徹夜でお肌はボロボロ、最愛のヒマリとも、昼間はお昼くらいしか会えない日々。あたしの大切な癒しは、最近では優香ちゃんに懐いているし・・・。あたしが飼い主のはずなのに! このジェラシー、どうしてくれよう!!


「咲希、ちょっと和磨と冒険してくるわ」


あたしがイライラしてるときに、翔太がフラリと現れて、のほほんを言い放った。あたしの目の前で!! 書類やら何やらがいっぱいになった、あたしの机の前で。


「あんたらねぇ、あたしの忙しさを、何だと思ってるのかしら・・・・・?」


思わず、半眼で二人を見れば、流石に悪いとは思ったらしい和磨君から控えめなフォローが入った。


「翔太、ちゃんと言わないと咲希さんに通じないよ? 咲希さん、睨まないで? 今回の冒険は、殿下から頼まれてなんだ、表向きは僕の実践トレーニングで、本当は、咲希さんの見つけた物の証拠固めなんだ」


あら、それじゃあ、あたしのお手伝いか。でも、理由が分かっても、納得は行かない訳で。


「ふーん、でも楽しそうね?」


思わず文句を言ってしまうのは、許して欲しい。だってねぇ、あたしはしばらく、お城で缶詰状態確定なのよ。ありえないわ・・・・・。


「しゃーねーだろ? お前が蒔いた種なんだ、しっかり摘み取らないとな?」


うぅ、ファイさんに楽させるつもりが、あたしの首を絞める行動になるなんて・・・・・。でも、記憶の整理がついたのか、シャナリーゼ嬢は復帰して、今は一手に引き受けてくれており、ファイさんも本来の任務に戻れて、ほっとしてるって聞いたから、良かったのかしら?


「分かってるわよ・・・、まさか似たような事が起きていて、ここまでなるなんてね」


そう、貴族の世界で一番怖いのは、噂だ。そして、今回の騒動で、似た事をしていた家が、急に騒ぎ出したのが、今回の大事になった真相だ。つまり、騒いでしまえば、自分の家が疑われないとでも思ったんだろうね。まあ、逆に首を絞める結果になってるから、意味がないけど。既に、家での冷遇などをしていた奥方や主人、家族などが、蟄居され、社交界では混乱の極みにあるらしい。その所為で、派閥にも影響が起きていて、王家はそこをついて、狸といわれる方々をどうにかしようとか、考えてるっぽい。

まあ、あたしらは、そこは関係ないけど。代わりに、あの伯爵家の子だけは、あたしが何とかしないといけないけどね。


「パーティーまでには、帰ってくるよ」


「ええ、お願いね」


さてさて、あの二人、何を掴んでくるかしら? これからが楽しみね。・・・・・その前に、これ、減るのかしら? 明らかに増えている書類を前に、あたしはため息をつくのだった。

減らないよ~~~~!!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


Side:???


最近、私の周りがおかしくなってきました。

あの日、優しい声が私を悪夢から助けてくれた、特別な日。

今まで、私についていたメイドが、急に甲斐甲斐しく尽くすようになり、その子以外にも、メイドが増えました。今まで、妹付きになっていたメイド達です。

更に、今まで、睨むことしかしてこなかった父が、急に私に会いたいと言い始め、部屋を訪れました。殺風景で、家具も最低限しかない私の部屋を見て、急に父が、すまなかった! なんて謝り始め、更には。


「私の娘はお前だけだっ!」


なんて叫んだ後、土下座ーーーーー勇者様が伝えたらしいーーーーーを披露して、見たくもない、いい年した男の涙まじりの独白を聞きながら、私は思います。

今更だと。

まあ、父が謝罪したいならさせておきましょう。今まで、散々、私は要らない子としてきて、今更の手のひら返しに、眩暈がしそうです。

更には、私の部屋を一番いい部屋に変え、模様替えすると言い出し、その立派な部屋を好きにしていいと言われました。ドレスもそうです。今までは、妹優先だったのに、急に私を優先するようになりました。妹が持っている、当家の家宝とも言える宝石や調度品が来た時は、本気で顔がひきつりました。

流石に、これは継母が怒るのではと思いましたが、私が起きる前から、妹と二人、ずっと床に臥せっているそうです。これには驚きました。だって、鋼の心でもあるのでは? と思う程に、二人は堂々としていたのですから。


「お嬢様、デザイナーが来ております、お嬢様の採寸と、ドレスを作るご相談があるそうで」


最近は体が楽になり、動ける範囲も広くなりましたし、何よりも、誰もが私を気にかけてくれるのです。正直、慣れなくて、戸惑いが多いのですが。一度、妹付きのメイドに、何故急に私付きになったのか聞いてみたら、意外な答えがありました。


「メイド長と、執事長の判断です、旦那様も反対されませんでした」


確か、この子は妹のお気に入りのメイドでしたね。よく、妹と一緒に居たのを覚えています。


「貴方はいいの? 妹のお気に入りだったと記憶しているけれど・・・」


そう聞いたら、何とも微妙な顔をされてしまいました。当然ですよね、心から仕えていた主を、当主都合でいきなり替えられたんですから。そう思い、同情気味に返答を待っていたのですが。


「いきなりだったのには驚きましたが、正直に言ってしまうと、此方にこれてホッとしております・・・その、妹様は、機嫌が悪いと、物や人に当たってしまわれますので・・・」


あら、そういえばそうでしたね。最近は静かでしたから、忘れてました。前に家宝のガラス人形を壊して、その時、父から初めて雷を落とされてから、だったかしら? 私はその時、父の祖父母のところに行っていたため、巻き込まれなかったのです。見つけた父に、執事長から説明が入り、継母も言い訳が出来なかったのです。

これは確かに、微妙な顔になりますね。


「あの、お嬢様、客室にデザイナー達を待たせておりますので、そろそろ・・・・」


呼びにきたメイドに礼を言って、鏡で確認してから部屋を出ます。これからどうなるのかしら? 何て不安を余所に、父は予算を気にしないと言ったらしく、珍しく興奮したデザイナー達と一緒に、思わぬ楽しいひとときを過ごしました。

妹のドレスも作るそうですが、私と妹では顔立ちが違いますので、デザインはいつも違うものです。素材等も今までは妹が優先されてきましたが、今回は私が優先されるそうです。

本当に、父に何があったのでしょうか? 気味が悪いです。夢でも見てるみたいに・・・。


「何事も起きなければいいけれど・・・・・」


そう呟いたまさに数日後、予想は嫌な方に当たり、当家では今だけは歓迎できない、勇者様お二人が来訪されました。

・・・・・あぁ、これから、どうなるんでしょう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


side:天上 翔太


俺と和磨は、フランツからの極秘依頼を解消すべく、表向きの理由、和磨の修行のため、ギルドに来てた。

ここは、王都にあるだけあって、建物は立派だし、清潔感があって俺としても安心だったりする。前の世界では、小説や物語に出てくるような小汚ない場所もあったが、やはり現実として、誰しも綺麗な場所がいいと思うのだ。


「翔太、こんな依頼とかどうかな?」


俺の隣で、真面目に依頼を見ていた和磨が、一枚の依頼を俺に見せる。和磨は、ギルドランクAを貰ってるから、依頼も難しいやつが多いんだよなぁ。それでも、和磨には何とか経験を積ませてやりたい。優花にも経験させてやりたいが、今回はタイミングが悪かった。まさか、優花にも咲希と同じように、血縁者かを判断する鑑定を頼まれるとは思わなかったんだ。


「薬草採取じゃなく、今回は魔物退治を選んでくれ、お前の経験にならん」


俺のダメ出しにも、和磨はけろりとしたまま、頷いてまた掲示板に探しにいく。その斜め後ろを陣取りつつ、和磨と小声で会話する。


「なるべく、例の場所を通るか、そこから依頼されてるやつを探してくれ」


「うん、分かってるけど、やっぱり薬草が無難かも、ちょうどBランク依頼がその場所から出てるよ、あ、翔太、これは?」


和磨が最初に見せたのは、薬草の依頼。その次の依頼を見て、口元がニヤツクのを押さえられなかった。


「よし、この二つやるか」


もう一枚は、まさに、その向かおうとしている場所から出ている依頼であり、とある魔物の討伐依頼で、ギルドランクB以上が推奨との注意書きがされていた。さらに、その下に。Bでは厳しいため、Aランクを推奨なんて、まさに渡りに船! な、依頼だった。ここ、王都にはあまり、高ランクのやつらは居ないのだ。ここはどうしても、依頼が低級のランクが多いためである。勿論、高ランク依頼もくるが、大抵は名のある奴らが行ってしまう。よって、ここで指名のない高ランク依頼は、少ないのだが・・・。今日は珍しく、それらしい依頼がチラホラ見える。高ランクのやつらが、不在なのかもしれない。


「受付さん、頼むぜ~」


俺は、顔なじみになりつつある女性に、二枚の依頼書を渡し、俺のギルドカードと、和磨のギルドカードを渡す。パーティーを正式に組んでるわけじゃないから、仕方がないんだが。

・・・・・流石に、ここでだせないだろう? 勇者の正式パーティーの通知!! あれ、国王の判まで押してある正式なやつだから、出したら色々と不味いのだ。


「はい、承知致しました、こちらの依頼は、既に二つのパーティーが受けておりますので、早い者勝ちになります、お気をつけください」


魔物依頼には、どうやら向かったやつらがいたらしいが、仕方ない。こいつを鍛え上げないと、なぁ。


どうも、作者の秋月煉です。

ようやっと、続きがだせました。おかしいですよね、本来ならば、魔王誕生編になっていたのに・・・。何故に、脱線したんでしょう?

まあ、これが終れば待望の最終章。魔王誕生編です。コレを書きあげたら、多分、泣いているかと思います。何年も書いてますからね、愛着があるのですよ。

さあ、頑張るぞー!!

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