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第164話 もう一人のお嬢様です?

お待たせ致しました☆

さぁ、咲希ちゃんによる無双を初めますよー!

さて、あたしはこの場を優香ちゃんに任せ、ユリーさんだけを部屋から連れ出す。


「あの、サキ様? 僕に何の用でしょうか?」


「勿論よ、ユリーさん、単刀直入に言うわ・・・あたしに、言ってない事あるでしょ?」


直球で聞けば、ユリーさんの表情が僅かに驚いたものになる。やっぱりね、おかしいと思ったのよ。彼は昔の話はしたけど、最近の話はしていないんだよ。普通におかしいから、それ。


「いつから、気付いたんですか?」


「さっきの屋敷の皆の態度」


「はっ? それだけですか?」


「特にお付きのメイドさんの反応ね、誰も驚いてなかった・・・それってさ、昔からこうなってた、って事でしょ? 対処も出来たはずなのに、誰もしてない、何か理由があるんでしょ?」


そう聞けば、何故かユリーさんの表情が暗いものになる。まあ、あの様子を見るに、家族思いの彼らが何もしていないとは思えないけどね。


「はぁ、僅かな事でそこまで気付きます? まぁ、正解であり、ハズレでもあります、手段は探さなかった訳じゃないんです、手を尽くしたけど無理だったが正解ですね、高位の神官様も呼びましたが、全く効果もなく、逆に諭されましたよ・・・上手く共存してるんだから、いいのではないかとすら」


彼だって、姉を助けたくて頑張っていたはずだ。でも、この世界の魔法では、内側に入り込んだアレを引きはがす手立てがなかった。多分、彼女が勇者の文官に選ばれたのは、偶然か必然かは知らないが、賭けたんじゃないだろうか。まあ、結果は見ての通り、上手くいったんだから、大丈夫だろう。-----こっちの家は。


「後の事は、侯爵様がしてくれるみたいだし、優香ちゃんをお願いね?」


そう言ったら、キョトンとした顔をされた。まあ、そうなるわね。何にも言ってないし。


「? サキ様はどちらへ?」


「この魂を返してくるよ、ちょっと嫌な予感もするし」


「僕も行きます!!」


「いや、無理だから」


「勇者の侍従です! ダメと言われてもついていきますから!!」


・・・・・はあ。多分、ダメの理由を言わないと、絶対に付いてくるわね。仕方ない。


「これからやるのは、この魂を元の体に返すことよ、それには陰陽道を知っていること、そして浄化の力を持っていることが条件になるの、恐らくだけど、この子の体から、瘴気が漏れ出てるはずだから、浄化が出来ないユリーさんを連れて行くことはできない」


ここまで言われれば、流石に彼も気付くだろう。かなりの危険に、あたしが飛び込むことに。そして何より、隠密行動するつもりであることに。


「せめて、誰か連れて行ってください!!」


「今回は本当に無理よ、連れていっても多分、足手まといでしょうね」


こんなに長く魂が体から離れていたら、間違いなく体の方はヤバいはず。利用された形跡がない以上は、何かのきっかけでシャナリーデ嬢の所へ行ってしまった彼女の魂は、何かがあったはずだ。全く、生霊になってまで逃げるって、どんな家よ・・・。正直、放った式神様の返答次第では、かなり大暴れする予定である。

最近、暴れてないのよねー。ずっと、お仕事ばかりで、主に翔太とか、和磨くんとか、スザリオン王子とか、フランツ様とかがからんでるけどね!!! あたしの貴重な時間を返せや!!


「サキ様・・・?」


おっといけない、ユリーさんのこと忘れてたわ。ストレスを貯めるのはダメね。思考が変な報告へ行っちゃったわ。


「何でもないわ、とにかくお願いね、ユリーさん・・・お姉さんはもう大丈夫なはずだから」


「・・・・・はい! ありがとうございます、お気をつけて」


内心、ホッとしつつ、誰にもバレない様に細心の注意を払いながら、あたしは外で龍に乗り、魂が共鳴する方へと向かっていく。


『今回の事、宜しかったのですか? 皆様に言わなくて』


珍しく龍から問うような、気遣うようなそんな質問に、苦笑しか出なかった。この感覚は、あちらに居た頃、何度かあったものだから。


「言えないでしょう? 家族の団欒と、勇者様が居るのよ? 暗い話題は言わなくてもいいはずよ」


あたしは、陰陽師である。人の闇を、嫌でも見てきた。そんなあたしは、この魂の悲鳴を、助けた時に一番身近で聞いてしまった。多分、誰も気付かなかったはずだ。だって、闇を知っているあたしが、拾った声は、絶望に満ちていたから。


「ここまで闇に堕ちたのは、原因があるはず、家族は勿論として、後は周りね」


人を傷つければ、それは誰しも、巡り巡って帰ってくる。自分や、自分の身近な人へ・・・。だからこそ、人は”因果応報”という言葉を、作り上げたのかもしれない。


「今頃、この魂の体には、瘴気が充満してそうねぇ・・・それに、家族もいい感じに復讐されてるでしょうね、恐らく原因となった全ての者へ」


原因は分からなくても、陰陽師である。大体の察しは着いたし、何より急がないと、被害が拡大しそうなのだ、今回。


「ねえ、龍・・・浮気した男と、浮気相手の女性、無事だと思う?」


『・・・・・全ては、因果応報でしょう、恐らくですが、相当・・・ねじれてるかと』


「だよねー、面倒だわ」


こういう生霊騒ぎは、意外と面倒なのだ。主に、被害の方のフォローが。大抵、ろくでもない男が多く、正直、仕事でもそういった輩には、かなりの脅しをかける。その方が案外、上手くいくのだ。そして、そんな男と付き合う女もまた、ろくでなしが多く、こちらは手を出さない。大抵、そういう人は、助けてもいい事がないため、基本的に放置が多いのだ。業界も、いろいろとあるのである。

今回は、これが、この魂の持ち主の、婚約者と浮気女に当たる。


「あそこね、・・・・・マジでここまで被害出てるのね・・・」


恐らくは、瘴気に含まれる彼女の意思が、そうさせてるんだろう。あたしの目でさえ、はっきりと見えてしまってる、この状況。

お屋敷自体に、真っ黒い煙のようなものが、しっかりと巻き付いている。黒い煙からは稲妻が時折、バチバチと放電してるし。庭は元気がなく、木が枯れている。それに、時折姿を見せる使用人たちも、顔色が悪い。これ、相当な期間がないとならない、末期に近いタイプの状態だったりする。


「うわー・・・、えっ、あたし、これを祓うの? 自業自得よね、これ」


原因は、魂から読み取らせてもらったけどさ。

まず、この子の母親は他界している。父親は、これ幸いと愛人を自宅に呼び、その愛人との間に生まれた女の子だけを大切にしている。・・・クズだ、この男。

使用人も、伯爵に倣えのこの家で、一人寂しく居るこの子。・・・クズよ、この男は! それに、この子の婚約者も、妹に好意を抱いているらしい。

やっぱり直ぐに祓うのは辞めたわ。


『主様?』


訝し気にあたしを見る龍をしり目に、あたしはチャンネルを出す。勿論、かけるのはこの人しか居ないだろう。頭に来てるし。


『どうしたんです、サキ殿』


出たのは、フランツ王子の側近である、リゼス氏。そう、この回線は、王子へ直通のものである。


「こんにちは、あのねー、伯爵家一つ、潰していーい?」


『・・・・・はっ?』


多分、この「はっ?」には、その場の全員が驚いたはずだ。だって、あたしの目がマジだもの♪ このクズ男、あたしが直接屠りたい♪


『いやいや!? サキ!! 何がどうなってそう結論だしたのか、きちんとした説明を頼む!! そもそも君、侯爵家に居るんじゃないのかい??!』


フランツ様の声がした。まあ、簡単には報告したよ? 悪いのが憑いていたから祓ったら、それが伯爵令嬢で、それも家族がクズしか居ないと来たもんだ。


『サキ、待ちなさい、それだけで伯爵を罰する事はできないからね!?』


ギョッとした声がして、慌てた様子でフランツ王子がチャンネルを奪ったらしい。画面がリゼス様から、フランツ王子に変わる。


「クズ男なんて、要らないでしょ? 娘を殺そうとでもしない限り、こんなふうにならないから!」


『だからって、潰すのは駄目だよ! まぁ、そこの伯爵家は、父親は婿養子だからね、家を継ぐのは長女の・・・・・オリビア嬢じゃないかな? 伯爵は、妹を溺愛してるとは有名だからね、でも、妹君は家を継げないし、オリビア嬢が死んでも親戚に移るだけなんだけどね、伯爵位が』


へぇ、それは良いこと聞いたわ。血に拘るみたいね、継承権は。伯爵は、知らないか、もしくは愛人さんが、勝手にやってるのかもしれないけど。

でも!!


「虐待するような輩に、伯爵位なんて、要らないでしょう?」


ニコニコニッコリ☆

あたしの大変可愛い笑顔に、フランツ様達の顔色が悪い。


「大丈夫よ? 勝手に自滅するように、あたしが手をまわすから、勿論、オリビア嬢には手を出すようなまね、させないから♪♪」


だから、ね。今回の事、悲劇として、社交界で白い目で指されたらいいのよ。親と愛人と妹は。


「フランツ様、分かりました、潰すのは無しでいきます!! 代わりに貴方に願うのは、オリビア嬢の新しい婚約者です、まともであり、彼女を愛してる、もしくは大切にしてくれる人を願います」


それくらいは、してやれや。これじゃ、彼女が報われないわよ!! こんなクズ男なんて、成人してるわけだし、追い出しちゃえ☆


『・・・・はぁ、分かった、あ、そうそう、サキ? 良いこと教えてあげるよ』


フランツ様の話した内容に、あたしはニヤリと笑い、フランツ様も、共犯のような黒い笑みを浮かべていた。


「翔太や和磨くん、あ、優花ちゃんにも、教えてあげないとね・・・?」


だって、この国では血がモノを言うんでしょう? きっと、妹は因果応報・・・素敵な報いが待っている☆

さて、それはそうと。


「フランツ様、宜しくお願いします!」


まだ、お祓いが待っていたっけ。こちらは、ちゃんとやるわよ? 後が残ると面倒になるし、なによりここは、幸せがいっぱいの場所に変えるつもりだから。

クズなんて、要らないわよね?


お読み頂き、ありがとうございます。

本日は如何でしたでしょうか?

咲希ちゃん無双が、久しぶりに始まります!


咲希:秋月、計画するのはいいけど、ちゃんとできるの?


え? 頑張りますよ? クズ男には天誅します! 

咲希ちゃん、正義のヒーローよろしく! あ、ヒロイン?


咲希:あたし、何をさせられるんだろう・・・?


次回も宜しくお願いします!

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[一言] ありゃあ… 生霊… こりゃ厄介ですなぁ…
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