第162話 突撃☆ 隣の侯爵様邸へ!
ごめんなさい! 更新、お昼に間に合いませんでした・・・。
あの後、我に返ったらしいユリーさんに、詳しい話をして、優香ちゃんを巻き込み、詳しい内容を話し合い、とある口実を作り出し、あたしと優香ちゃんは、今現在、ガタゴト揺れる馬車の中に居ます。向かいの席には、ユリーさんと、疑惑の令嬢文官、シャナリーデ嬢が座ってます。
「楽しみね、侯爵邸の庭!」
「咲希ちゃんもですか? 私もなんです! 昨日は緊張して中々寝れませんでした♪」
恥ずかしそうに言う優香ちゃん! 可愛すぎる!! 向かいに座ってるユリーさんのほっぺが赤いのは、気にしないでおこう。時にはスルーする優しさも必要だよ、うん。
さて、皆さんも見て分かるとおり、誘ってもらう理由として、庭の花を利用させてもらった。勿論、侯爵様にも事前に通告済み。手紙は、ユリーさんに直に持って行ってもらったけどね。あくまで秘密裏に。侯爵様、やっぱり疑っていたみたいだけど、証拠がなくて、見て見ぬふりをしてたみたい。基本的にいい子だったようで、多分、実際に見ないと分からないものだと思う。特に、男親は、娘を溺愛しやすいみたいだし・・・。
「お二人を招待出来て、此方こそ嬉しいですよ、今の季節は、うちの自慢の庭で、母はお茶会をしてますし」
「ウフフ、わたしもお二人とお話出来て、光栄です! きっと、我が家の庭も気に入っていただけるでしょう!」
こうして改めて見ると、姉弟だけあって、多少の色の濃淡はあるものの、顔立ちなどはよく似ていると思う。まあ、ユリーさんが女装が似合うくらい、可愛らしい顔立ちをしていたからなんだけど。今日の装いも、シャナリーデ嬢は若葉色の可愛らしい感じのドレスで、訪問用らしく、露出はあまりない。勿論、あたしらもちゃんとした、訪問着を着ている。これは怪しまれないための、小道具扱いだけど、優香ちゃんはノリノリだし、相談したエリー様も、ノリノリになった結果。二人で色違いの御揃いのドレスとなったのだ。
あたしは、水色。優香ちゃんは、淡いピンク。正反対の色なのに、デザインが同じな所為か、違和感なく御揃い感が出てしまっている。こう、何か恥ずかしいのよ。ムズムズして。
「あら、ありがとう」
「私も仲良くできて、嬉しいです」
私たちのこの言葉に、シャナリーデ嬢は嬉しそうに微笑んだ。確かに、この子、小動物みたいに可愛い感じの子で、思わず守ってあげたくなるわ。でも、この無垢で無邪気な部分は、令嬢としてはかなり危険だろう。あたしが知る令嬢は、プライド高い、計算高い令嬢や、優しさと凛とした姿勢を見せる、社交界の花たちだ。だから余計、彼女の行動に違和感が募る。まあ、魅了体質は、無意識に出てるみたいだし、効かないあたしたちからしたら、意味ないのだけど。
どうも、彼女の魅了は微妙な威力らしく、効く人、効かない人がいるみたい。それに、好意を持たせるだけで、操ったり、望目的になるような状態でもないみたいなのよね。うん、本人の性格的に、宝の持ち腐れ状態かしら?
「それにしても、お二人とも、今日は素敵なドレスですね! お揃いで素敵だわ!」
おっと、避けて行こうと思っていた話題に、彼女が触れた・・・。そう、これは、あたしの趣味じゃない。もっとシンプルなドレスを希望したのに!! 盛り上がったエリー様監修のもと、素敵な可愛らしいドレスに仕上がっていた・・・。あたし、更に年下に思われてしまいそうなんだけど!?
「そう思います? エリエンヌ王女様に、ご用意していただいたんです、我々ではこの国のマナーや常識がイマイチ分からない部分がありますから」
なんとか、それらしい言葉をはいたあたし、偉い! つーか、この会話とかしんどい!! さっきから、ユリーさん我関せずなんだもん。おいこら、真面目に仕事しろや!! 苦手な姉と一緒でも、会話くらいなんとかせい!!
「サキ様、何か僕の顔に付いてますか?」
あら、視線に気付いたらしい。わざとらしくそう聞く彼に、勿論、あたしもそれらしい笑顔で答えてやった。仕事をしない彼には、ちょっと現実を見てもらおうじゃないか!!
「あら、付いてないわよ? 会話に入ってこないから、馬車に酔ったのかしらと思って」
流石、彼には意味がしっかりと伝わったらしく、片眉をピクリと動かして、視線を少しだけ険しくした。そう、あたしが言った意味を正しく拾ったからの、反応である。
『酔った』はつまり、サボるである。意訳すれば、会話に入ってこないけど、サボる気かい? ってこと。
「ご心配なく、楽しそうに会話されていたので、男の僕は遠慮していただけですよ」
さらりと、なんと流し目までオプションをつけて、ユリーさんが宣ったけど・・・、君、あたしらより、年下だよね。うっかり、彼からの色気に至近距離で受けてしまった、あたしと優香ちゃんは、固まるしかなかった。ユリーさん、恐ろしい子!! てか、貴族って、情操教育、どうなってんのよ!?
・・・・・あたし、年下にときめきたくないんだけど。これ以上、ネタになってたまるか!!
「おや、見えてきましたよ、あれが我が侯爵家自慢の、白亜のお屋敷です」
ユリーさんの言葉に、現実に引き戻されつつ、あたしが窓から見たそれは、正しく立派な貴族のお屋敷で、優美という言葉がぴったりな、現乱豪奢な白いお屋敷でしたよ。
「綺麗・・・」
「凄い・・・」
それ以外の言葉が出てこないほど、とても立派なお屋敷のエントランスに馬車は無事に到着し、我々は、ユリーさんに馬車を降りる際、手を借りて、ようやく地に足を付けた。いくら近いとはいえ、馬車で片道、40分は流石に遠いわ。領地が近いとは聞いていたけど、こんなにかかるとは聞いてない。王都のお屋敷で良かったと、今更ながらに痛感したわ。
「ようこそ、勇者様がた、当家の当主で、マックス・ナイルゲーンと申します、遠路はるばる、ようこそおいで下さいました」
そこには、中年の紳士が立っており、威厳もさることながら、若い頃はさぞやモテたんだろうと、その年をとっても変わらぬ、いや、深みをました姿に、しばし見とれた。あたしが普段相手にする、狸貴族とは違う、真っ当な貴族を見て、ちょっと感動してしまったわ。
「今日はお招きに預かり、光栄ですわ、侯爵様」
「今日はありがとうございます」
あたし、優香ちゃんの順で、丁寧に礼をする。この礼も、エリー様監修のもと、練習させられたから、問題ないと思う。
「こちらこそ、ご丁寧にーーーーーユリアス、シャナリーデ、お客様は私が案内するから、お母様に顔を見せてやってくれ、お前たちが帰ってこないから、首を長くして待ってるよ」
そう、自然な形で二人に話をする侯爵様。流石、侯爵家の当主様というべきだろう。自然な形を取るあたり、ちゃんと考えている。この後、シャナリーデ嬢の中身の正体を、あたしが暴いて、解決しないといけないのだ。うん、責任重大だわ。
「でも・・・」
難色を示すシャナリーデ嬢と、最初から作戦を知っているが故に、素直に頷いたユリーさん。結局、周りに促される形で、ユリーさんはシャナリーデ嬢と、屋敷の奥へと消えて行ったけど。その時点で、穏やかな空気は霧散し、空気が張り詰める。勿論、出しているのはあたしと、侯爵様。納得はしても、割り切れてない部分があるのは、先程のやり取りでにじみ出ているから、すぐに気付いた。
「さて、侯爵様、あたしはこの家が醜聞にならないように、ちゃんと気遣ったつもりです」
「・・・ああ、分かっていますよ、勇者サキ殿」
「これから、お嬢さんに巣食う物を取り出して処理します」
「本当に・・・本当に、娘にそんなものが憑いているんでしょうか・・・信じられないのですよ、私は」
まあ、無理もない話だ。彼女は両親などには気付かせないようにしていた節がある。見てもいないのに、いきなり信じろとは、到底いえないこと。これは、あちらの世界でも、起きていたことだから、あたしも心得ている。
「では、予定通り、お部屋を御貸し願いますよ」
今回は事前に、部屋を一つ借り受けていた。勿論、豪奢な部屋に変わりはないみたいだけど、今は家具やそういったもの全てが取り払われ、ただの広い部屋になっている。それに、奥様にここにまず彼女を連れてきて欲しいと、ちゃんとお願いもしている。から、そこは心配してない。
急いで、あたしは部屋一面に、とある陣を描いていく。後から特殊な方法で消せる、変わったインクを使い、部屋一面、床だけにひたすらに描いていく。壁には、お手製の御札を呪文と共に、ペタペタと張り付け、ドアにも張り付ける。これで良し。
「後は、彼女が来るのを待つだけよ」
ものの数分で全てを終わらせると、あんぐりと口を開け、固まっている侯爵様と、顔には出てないけど、明らかに固まっている執事さんと、メイドさん達。更に、優香ちゃんもビックリしてた。
「って、優香ちゃんは事前に話してたよね?」
何故に驚いてらっしゃるの!?
「・・・・・咲希ちゃん、普通は驚くよ? この規模の魔法陣て、もっと時間がかかるからね?」
「そお? 補助魔法をフルに使えば、楽よ?」
「・・・・・そーなんだ?」
なんだろう、さっきから生温かい視線を頂いてるんだけど? あたし、おかしい事いったかしら?
「規格外とは、聞いておりましたが・・・いやはや、驚きましたな」
侯爵様まで、未だに驚いてるけど。あら? 気付けば、白の気配がして、お札に戻ったのが分かった。という事は、彼女も来たという事で。ノックと共に扉が開いて、彼女が飛び込んでくる。
「お父様!・・・えっ? きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
彼女が、何も憑かれてなければ、これは反応しない。だってこれは、憑いているモノに反応し、作用するから。つまり、そういう事、なんだ。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
そして、本日はビックリされた方もいらっしゃったと思います。普段のお昼投稿ではありませんでしたから・・・。
というのも、ちょっとお昼に間に合いませんで・・・。本当にすいませんでしたm(__)m
お話は新たな展開となってます。もしも、分からない点がありましたら、可能な限りではありますが、質問には返答したいと思ってます。
次回もどうか、宜しくお願いします。