第160話 お茶会と諸々と3
お待たせ致しました。
和磨くん視点から、咲希は視点に変わります。やっと、本編に戻れた!
side:白鳥 和磨
三人の強ばった顔に、何か起きたと言うのは、直ぐに分かった。
「グランツさん、お願いします!」
僕の契約武器を出して、警戒するけど、僕には気配とかそういうの、まだ分からないんだよね。だから、何が起きてもいいようには、したんだけど。正直、何がくるか分からなくて、槍をぎゅっと握り締めた。
「カズマ様、僕はサポートに入ります、ジークさんとローグさんは、前衛をお願いします」
「「了解!」」
あれ? 僕はもしかして、戦力に入ってない!? 一応これでも、勇者なんだけどな!?
「カズマ様は、我らの後ろに・・・来ます!」
ユリアスさんが、言った瞬間。それは、姿を現したんだ。
「・・・・・トラ?」
よく、テレビや図鑑に見たその姿よりも、かなり大きいし、何よりも、牙の大きさが全然違う! 口だけで、僕の頭が入ってしまいそうなんだけど!? 足の爪も、かなり大きいし、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「サーベルタイガー・・・、この辺りでは”新人殺し”の異名を持つ、魔物です」
ユリアスさんの口調が固い。なるほど、平和な近場の森でも、こういう魔物が出やすい場所なんだと、改めて感じた。そして、何よりも、僕の経験則では強敵であろうことも。ここに、優香さんや、咲希さん、翔太が居たら、また別なんだろうと思うけど。
「アハハ・・・、これって、皆の実力的にどうなの?」
睨み合いの中、そう三人に聞いたら、微妙な顔だった。ん? 警戒してたし、かなり強いんだよね??
「あー、我々でも、これは会いたくないんです、色々と面倒なので」
「だよなー、戦力的には余裕なんですが・・・」
とは、ジークさんとローグさん。ユリアスさんに至っては、睨みつけたまま、物凄い力説された。
「この魔物、異常に臭いんですよ!! 新人もこれの強さがそこそこなので、これを倒したら一人前とか言われますが、余りの臭さに、泣くしかないんですよ!?」
あ、これきっと、経験則からくるものなんだと、僕でも気付いた。三人とも、目がマジなんだよ。逆に、どれだけ臭いのかは気になったけど、ふと、今は異臭がしないことに気付いた。
「特に臭くないけど?」
そう聞いたら、ユリアスさんが真顔で教えてくれた。本当に嫌なんだね、この魔物。
「こいつの体液が臭いんですよ・・・だから、女性の冒険者さんからは、本当に嫌われてますよ」
うん、僕でも嫌かも。そんなに異臭がするなら、そういうのが出てこない呪文がいいのかな?
「ユリアスさん、氷で凍らせたら?」
「無理ですね、素早いので最小限の戦いで済ませるのは難しいかと」
あー、だから、新人殺しなのか! ランクが低い冒険者には、キツイものがあるかも。でも、臭いのも嫌だし。
「風でどっかに言ってもらおうか・・・臭いの嫌だし」
そう言ったら、皆はとてもいい顔だった。そっか、皆もこれは相手にはしたくなかったんだ。
こうして、僕の日帰り冒険は終わりをつげ、いつもの薬室と訓練場の日常に戻ったんだ。
「僕は、日帰りで冒険してきたよ、薬草も勉強出来て、有意義な時間だったよ」
あの魔物は、綺麗に記憶から消えていた。きっと、しばらくは会う事もないと思うから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
何か、怪しい報告・・・ツッコミどころ満載な気もするんだけど、いつまでもこうしてはいられないので、あたしもスルーすることにした。もうね、二人とも、全部を語ってないのは、明らかで。でも、言いたくない部分もあるのに、聞くのは悪い気がするのよ。あたしがそうだしね。
聞かせられないでしょ? あたしの場合は色々と!
翔太に関しては、既に色々と報告されていたこともあって、軽ーくすんだ。というか、こいつは流した。
「・・・・・もういいわ、話を戻しましょう」
何か疲れがどっときたし、もういいやと、あたしは話を戻すことにした。勿論、新しい文官、シャナリーデ嬢の事よ。
「ユリアスさんのお姉さん、なんだよね? 」
優香ちゃんの質問に、ユリーさんが素直に頷いた。
「はい、一番下の姉です」
という事は、年が近いんじゃないだろうか。彼が顔色を変える程度には、近しい間柄だったはず。
「咲希ちゃんは、シャナリーデさんの何を警戒してるの?」
おっと、あたしとした事が、説明を忘れていたみたい。何やってんだか。
「僕も気になってるんだけど、彼女、普通の子じゃないの?」
和磨くんも、半信半疑って感じかな。まぁ、当然だよね。まだ、何を警戒しているのか、教えてないんだからね。
「俺も、警戒はしたが、理由が分からん」
とは、翔太。だよね、こいつは野生の勘を持ってるんだから、何となくで、理解してそうだわ。
「何か失礼な事を考えてないか?」
流石、野生の勘・・・。鋭すぎるわよ?
「イヤ、ナンニモ」
「棒読みじゃねぇか!」
鋭いツッコミが入り、いつもの展開になると思いきや、そこに割って入る声がした。和磨くんである。
「咲希さん、翔太、話を進めてよ、時間もないし」
おっと、そうだったわ。和磨くんに注意され、一旦クールダウンする。駄目ね、翔太とだと、どうしてもじゃれてしまうわ。
「えっと、シャナリーデさんを警戒する理由なんだけど、ユリーさんに、怨念というか、そういう悪いモノが絡んでいたからよ」
あたしがそういうと、皆の顔が一気に真面目な物になる。
「お前が言うなら、そうなんだろうが・・・、それと、シャナリーデ嬢と何の関係があるんだ?」
翔太の発言、ごもっとも。そう、見えない人は、理由が分からないわよね。でも、敏い和磨くんは、それで気付いたみたい。
「もしかして、発生源が彼女なの?」
「流石、和磨くん♪ 正解よ・・・もっとも、対象者はユリーさんと他にもいるみたいだけど」
ユリーさんへ向かっていた黒いモヤモヤは、あたしがあげた御守りのお陰で、ユリーさんに近寄れなくなってるわ。けれど、モヤモヤは今度は別の人へ向かっていたから、ちょっとねぇ。
「咲希ちゃん、ユリーさんや他の人は大丈夫なの!?」
優しい優香ちゃんは、顔を青くして、ユリーさんへ向かっていく。あら、ユリーさんや? 何故に嬉しそうなのかしら? ちょっとだけ睨んだら、大袈裟なくらい、ビクッとされた。あら?
「咲希! バカやろ! 殺気出すなら早く言え!」
翔太に怒られた。てか、部屋の隅にいつの間にか逃げてた。和磨くんや、優香ちゃんも、顔色が悪い。もしかして、やらかした??
「ごめんなさい、無意識だったわ・・・」
あたしが正直に言うと、皆の呆れ顔が突き刺さる。うぅ・・・、どうしたのかしら? ちょっと睨んだだけなのに。
「最近、多くないか?」
翔太の発言にも、項垂れるしかないわ。そうなのよね、最近、無意識の時とか、意識的にやる時も、たまに威力がおかしいのよね・・・。正確には、この世界に来てから、なんだけど。パワーアップの弊害なのかしら??
それとも、別の原因かしら??
「とにかく、気を付けろよ? お前が本気で殺気を放ったら、間違いなく、死ぬ奴がでるからな?」
「いやいや、大袈裟な」
「こっちは本気だ!」
本気で怒鳴られた。翔太からしたら、あたしの殺気は凶器みたいなものらしい。失礼な、あたしの殺気で死ぬわけないって・・・。
「とりあえず、咲希さんは気をつけてね?」
「そうだよ、咲希ちゃん」
和正くんや、優香ちゃんにまで言われては、素直に聞くしかなかった。
「俺と反応が違わないか?」
それには、スッと視線を反らした。すまん、翔太。条件反射なのよ。
「じゃ、話を戻そう、シャナリーデ嬢を咲希さんは、どうすべきだと思う?」
和磨くんに仕切り直され、あたしは今度こそ真面目に答えたわ。今更だけどね。
「うん、出来るなら、原因を突き止めたいわ、可能なら祓ってあげたいと思うけど」
そう、あの様子を見るに、無意識だとは思う。まだ、分からないけれどね。
「ねぇ、ユリーさん、シャナリーデさんて、占いとかオマジナイとか、やる人?」
そう聞いてみたら、ユリーさんは困惑顔で、どうやら知らないみたいなんだよね。
「申し訳ありません、僕は昔から、シャナリーデ姉さんとは別の場所で育ちましたから、日常生活は知らないんです」
ん? どういうことかしら?? 普通は一緒に住むんじゃないの? ピンと来てないあたしらに、説明が必要だと思ったみたいで、ユリーさんは簡単に説明してくれた。
「僕の家は、魔術師の家系でして、男子は基本的に宮廷で働いています、うちは兄が三人、姉が二人いるんですが、男は基本的に領地、女子は王都に暮らしています、理由としては、早くからの売り込みらしいです、まぁ、領地が比較的、王都に近いのもあります、だからか、男は行き来が基本で、僕も滅多に姉達に会わない生活をしてました」
あー、それなら知らないわね。でも、普通は同じ家に住んでいそうだけど。
「僕は末っ子でしたから、かなり可愛がってもらったと思います、しかし、姉は面白くなかったのかもしれません、上の姉は年が少し離れているので、この分、下の姉はかなり可愛がられていたようで、末っ子の僕が来ると、よく意地悪されましたし」
んー? 何かよく分からなくなってきたわ。それは、皆も同じようで、顔が困惑してるもの。
「ユリアス、とりあえず、シャナリーデ嬢がユリアスを嫌いらしいのは分かったが、恨まれるような心当たりはあるか?」
「ありませんよ!!」
即答だった。翔太も、あまりの勢いに、腰が引けてた。
「調べてみましょうか・・・念のため、皆にも御守りを持つように周知させておかないとね」
はぁ、厄介な事が、どうしてこう、続くのかしらね?
とにかく、シャナリーデ嬢は、早急に手を打たないといけないわね・・・・・。
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