第159話 お茶会と諸々と2
お待たせ致しました!
本日は、優香ちゃんと和磨くんサイドのお話です!!
Side:優香
ぐちゃぐちゃな気持ちのまま、どれほどたったでしょう。それも分からないほどに、ここで泣いていた気がします。
「ユーカ殿、こんなところに居たのか・・・」
そんな声がして、声の方を見たら、驚いた顔の殿下、フランツ様が居ました。って、今の私は、泣き顔なんです。流石に恥ずかしすぎます!
「その様子だと、何かあったのだろう? ------その、私で良ければ、話を聞くが・・・少しは楽になると思うぞ?」
思った以上の優しい声に、止まったと思った涙が、また溢れてきます。これには、フランツ様が慌てていますが、自分ではどうすることも出来なくて、泣く事しか出来ませんでした。あんなに泣いたのに、涙は止まること無くて、ただただ溢れてきます。
しゃくりあげながら、それでもゆっくりと話したら、きっと分かりにくかったはずですが、フランツ様は、小さい子供にするように、頭を撫でてくれました。何だか、お兄様に会った気がして、心の中が温かくなった気がして。
気が付いたら、何と私。フランツ様の腕の中で、眠ってしまっていたんですよ!?
・・・・・これ、誰にも言えないので、咲希ちゃんが帰ってきてからも、フランツ様には内緒にしてもらう事にしました。二人だけの秘密です!!
だから、今日。勇者のお茶会では、絶対にバレる訳にはいきません。
「私は、ずっと治癒院に居ました、本当にお出かけできる二人が羨ましいですよ」
お茶会で、三人に嘘をつくのは嫌ですが、嘘ではありません。だって、本当に治癒院にあの二日間以外は居たんですから。
「そ、そう?」
咲希ちゃんが何か腑に落ちないような顔をしてますが、嘘を言ったわけではないんです。ただ、全部を話してないだけで。本当にごめんなさい。乙女の秘密なんです。
Side:白鳥 和磨
あの日、僕はとうとう、やっとの事で許可を取り、翔太が居る少しの間だけ、念願の薬草を取りに行く事が出来たんだ! ありがとう、翔太!!
というのも、薬草を、辞典か、乾燥物かしか見たこと無い僕は、薬師としては半人前扱いにしかならないんじゃないか、という事に今更ながら気づいたんだ。生の状態を皆が知っていて、僕だけ知らないなんて、やっぱり悔しくて、だから今回、翔太が居る少しの間だけ、薬草が生えている、城下町の外。その近くの森に行く事にした。日帰りで、それも護衛付きだけど、背に腹は代えられない。何としても、生の薬草をこの手に!
あ、言っておくけど、今回は薬室の人は着いてこない。というのも、護衛の人が、ユリーさんと、双子だから。ユリーさん、魔法だけじゃなくて、薬に使う薬草も詳しかった。冒険者の資格持ちだったから、依頼で採取した事もあったみたい。こんな近くに、先生となる人が居たなんて!
「あの、カズマ様? 近くとはいえ、油断はしないで下さいね? この森は、人が近くに住んでいる事もあり、強い魔物は居ませんが、まれに厄介者が居ますから、気を付けてください」
ユリアスさんの話で、固まる僕。
えっ? 厄介者? なにそれ、聞いてない! 僕、勇者だよ? これ、翔太曰くの、フラグが立ったてやつじゃないかな? 大丈夫だよね!?
「それでは、森へ行きましょう」
何事もなく無事に、森へ到着したんだ。始めての冒険に、ちょっと感動してるけど、同時に物足りない感は否めないな。魔物は、大人しいゆつか、逃げちゃうような臆病者しかなく、まーったく冒険してる感じがないんだ。遠足してるみたいだよ・・・。
「ここが森・・・予想より随分あかるいね?」
日差しの入るこの場所は、僕の予想以上に、平和な空気が漂っていた。えっ? 本当に、ここ?? もっと薄暗い場所だと思ってた。
「驚かれたみたいですね」
苦笑気味のユリアスさんと、双子は、僕の気持ち、分かっちゃったみたい。
「サキ様や、ショータ様は、いきなり危険な場所へ向かってしまいますからね、正直、カズマ様やユーカ様が普通なんだと思います」
あ、それは分かるかも。あの二人は、規格外の強さだし。最初から、ドラゴンと互角に戦えるのって、強すぎるよね。やっぱり彼らもそう思ってたんだ。
「我々も、カズマ様やユーカ様が居なければ、あれが異世界の普通と考えていたかと思います・・・」
「いやいや!? あの二人が規格外なだけで、僕も優香さんも、普通・・・だと、思う・・・多分」
後半、自信がなくなった。だって、優香さん、強いもん。僕よりも。戦闘に関しては、僕が一番、戦力としては低いし。近くに来るだけで、護衛をお願いするくらいなんだから。
「さて、カズマ様、薬草ですが、ここは意外と沢山あるんで、少し摘んでいきましょうか」
ユリアスさん、話題を変えてくれてありがとう。これ以上は、自虐的になってたかも。
「まずは、この薬草からですが・・・」
周りに気を付けながら、僕らは薬草を少しずつ取り進んでいく。ユリアスさん、知識有りすぎ。薬室にいる人たち並みに、詳しくないかな??
「ユリアスさんて、詳しいね?」
「そうですか?」
本人からすると、当たり前の事なのかな?? そこは、よく分からないけど。
「あ、魔術師だからでは?」
「確か、魔術師の採用試験に薬草も出ていたような?」
ジークさんとローグさんに、答えを教えてくれた。成る程、魔術師採用試験に出題されるから、詳しいのかな??
「確かに出題されますけど、魔術師には薬草を使う場合もあるので、魔術師の皆さんは詳しいですよ、確かサキ様も薬室で学んでいたはずですし」
そうなんだ・・・。そして、やっぱり咲希さん、何者!? いや、勇者なんだけど、陰陽師でもあるんだけど、明らかに規格外過ぎない? 翔太と咲希さんを見てると、僕が平凡に見えてくるよ・・・。
「そ、そうなんだ・・・」
咲希さん、そういえば、僕がまだ読んでいない薬の本を、かなり読んでるみたいで、たまに薬の話をすると、分からない事を話される事があるんだ。あれ、かなり悔しいんだ、内心。
「あ、カズマ様、あれも薬草です」
ちょいちょい、雑談を挟みつつ、実地勉強は続いていく。乾燥した薬草は知っていても、生の薬草は絵でしか知らないから、驚きの連続だったよ。だって、収穫の際のコツとか、知らないしね。次の収穫の為に、皆工夫してるんだ。根っこが必要な薬草は、先だけ収穫して、元に戻すみたい。だよね、全部収穫したら、貴重な薬草がなくなっちゃうよ。
「うん、やっぱり生の薬草は、直接見て覚えた方がいいや」
実地勉強、まめにやりたいなー。直ぐに出れる、翔太や咲希さんが羨ましいよ。僕ってさ、戦闘力、四人の中じゃ一番低いからさ。誰かに付いて来てもらうのは、全員一緒だけど、咲希さんや翔太と、僕や優香さんは意味が違う。咲希さんや翔太は、自分で戦えるから、監視や補佐的な意味が強い。逆に僕や優香さんは、補佐の他に戦闘もしてもらわないといけないんだ。本当に、居ないと困る!
「あ、カズマ様、この草には気を付けてくださいね」
見れば、明らかに変な色の草が生えていた。うん、緑色の世界に、茎や葉が赤いのは、おかしい。そして僕は、薬草系の本で、この植物のなまえを知っていた。
「もしかして、これがアカイドクソウ?」
あまりに安直な名前だから、覚えてたんだよね。この近隣で取れる、一番危険な“毒草”ってね。確か、ドラゴンでさえ避けて通ると言われてるんだっけ?
「はい、このアカイドクソウは、危険な植物なので、基本的に収穫事態禁止ですが、この植物から取れる実は何故か解毒剤に使えるので、青い実のみ、別の入れ物に入れて、収穫して下さい」
・・・・・毒草なのに、実は解毒剤に使えるって、何か不思議。でも、元の世界でも毒を薬に変えていたんだから、そんなものなのかも?
「ユリアス殿、これ以上先は、帰る時に閉門に間に合わなくなるのでは?」
あれ? もうそんな時間!? 慌てて、この世界の時計を見たら、本当だ。もうお昼過ぎどころか、オヤツに近い時間だよ!!
「ごめん、皆・・・せっかくだから、お弁当食べて帰ろうか」
日帰りの約束だしね、今日の冒険は。翔太が居たから出来た訳だし。遅くなったら、皆に迷惑がかかるよ。
「そうですね、我々も時間を失念してました」
「お弁当かー」
「久しぶりだなー」
近くの切り株に、腰を落ち着けて、朝、持たせてくれたお弁当を広げる。うん、遠足だよね、これ。ちょっと微妙な気持ちになっちゃったよ。
あ、お弁当はね、中身はサンドイッチとお肉の焼いたものだった。
「何か外で食べると、美味しく感じるねぇ」
しみじみと、味わいながら、モグモグ食べていると、何とも微妙な顔の三人がいた。あれ? おかしい事言ったかな?
「まぁ、今日は平和な状態でのご飯ですからね、美味しく感じます」
ユリアスさん、何か含みがある感想じゃないかな?? 隣の双子は、何も話さないで黙々と食べてた。おかしいな、ほのぼのとした空気が流れるんじゃないのかな?
「食べ終わったら、荷物を整理して帰りましょうか」
「あ、うん、・・・あの、ごめん、僕、何か変な事いったかな?」
何か漂う空気が、気を使われてるような、微妙なものだったから。気になるよ、これは。勿論、お弁当はしっかり食べ終わったよ!
「え? あぁ、申し訳ありません、気を使ったつもりだったんですが・・・」
「?? どういう事?」
訳が分からなくて、戸惑っていると、双子のジークさんが答えてくれた。
「我々、騎士や魔術師は、外でご飯を食べる時は、任務中が多いんですよ、それこそ、魔物と戦った後や、荒野の中とか・・・・こんな平和な空気で食べる事はありません」
そこまで言って貰えれば、僕でも気付く。元々、双子は外で魔物を倒す部隊に居たんだった。血生臭い場所や何処までも続く荒野で、神経を尖らせながら、ご飯を食べるんだ。そりゃ、微妙な顔になるよね。子供のお遊びくらいにしか、感じられないはずだから。
「ごめん、無神経過ぎたね」
「いいえ、気になさらないで下さい、ご飯を食べる時には、合わない話題ですから」
・・・・・はあ、やってしまったよ。ご飯て、ワイワイ楽しい物だと思ってた。
なんて落ち込んでいた僕は、だから、気付くのが遅れたんだ。
────────勇者が平和なまま、帰れる訳がないことに。そして、翔太曰くの“フラグが立った”状態だと言う事に!!
「カズマ様、戦闘の準備を─────何か来ます」
ユリアスさんの顔が、ジークさん、ローグさんの顔が、強ばっていた。
いつもお読み頂き、本当にありがとうございます。
テンシロも、気付けは160話まで来ました。いやぁ、長く書けるのは、ありがたい事ですよね。
皆様、いつもありがとうございます。
咲希:久し振りに、咲希ちゃん参上!
翔太:俺も参上!
あはは、普通に出てきて下さいな。
咲希:あら、秋月が書くのが遅いのがいけないのよ。
翔太:だよなー、頑張れよ!
うっ、が、頑張ります! 完結まで、ちゃんと書きます!
咲希:皆さん、次回も宜しくお願いしますね!
咲希ちゃん、それは、秋月のセリフです!!
あ、感想、評価、レビュー下さると、凄く喜びます!! そちらも宜しくお願いします!