第158話 お茶会と諸々と
お待たせ致しました!
今回は、視点変更があります。そして、話があちらこちらへ向かいます。伏線もありますよー(笑)
発生源は分かってるし、これからの事もあるから、穏便にしないとね。はあ、陰陽師は影で動くが花よね。
まさか、こんな身近に起きるのもどうかと思うけどねー。
「そういえば、まだ名前・・・」
聞いてなかったね、と言おうとしたら、壇上のファイさんの声がした。どうやら、事務として働くユリアスさんのお姉さんを紹介するみたい。あら、手間が省けたわ。
ユリアスさんのお姉さんは、可愛らしい顔をこちらに向けて、愛らしい笑顔のまま、壇上から挨拶を始めた。確かに高位貴族のご令嬢なだけあって、そこら辺の躾は完璧みたいね。
「初めまして、皆さま、これから事務として働かせていただきます、シャナリーデ・ナインゲールと申します、これより侍従の一員として努力していく所存です、どうか宜しくお願いします」
綺麗なカーテシーをした彼女に、皆から拍手が送られる。とはいえ、ここに居るのは、あたしの御守りを持つ、侍従たち。彼女程度の力、簡単よ?
思ったような反応が出なかったからか、彼女は不満そうだけど、表面上は何とかそのままに、壇上から降りて、此方に向かってくる。最初は、女性陣から・・・かな?
「サキ様、シャナリーデ嬢、少し様子がおかしかったような気がするのですが・・・」
ヒソッと耳打ちしてきたリリーさんに、ちょっとビックリした。あら、流石に感が鋭いわね。気付くとは思わなかったんだけど。あたしもヒソッと会話を返す。
「大丈夫よ、あたしが対処するから・・・これから仲間になるんだし、余計なモノは要らないもの、ね?」
悪戯っこのように、ニッコリと意味ありげに笑ってみせたら、彼女も流石に気づいたらしい。満面の笑みで、返してくれたわ。理解したみたいで、手伝ってくれるみたいね。
「皆さま、ごきげんよう、これから文官として、頑張りますのでよろしくお願いします!」
元気一杯、とまではいかないけど、元気な挨拶にちょっと笑いそうになったわ。健気でいい子を演じたいのか、素でこれなのかは判断に困るけど、ユリーさんが視界の端で、顔色が悪くなってる感じがするのよね。多分、あたしの方を見て・・・。そんなに分かりやすかったかしら? 本当に最近、表情筋が仕事をしてくれないのよね~。
「こちらこそ、よろしくね、これでファイさんの負担が一気に減るわね」
勇者関連の書類は、かなりの多さみたいで、ここ最近のファイさんは寝不足なのか、目の下にくっきりとした隈が出来ていた。まさか、問題付きの子が来るとは、誰が思うのかしら。
「あたしは、第一勇者のサキ・アマギよ、何か困った事があったら、いつでも言いなさい、あたしの全力を持って、貴方を助けるわ」
普段は言わないようなあたしのセリフに、ここに居る一名以外が、気付いたみたい。何かあるんだと。もっとも、これはあたしの得意分野に関することだから、皆もどうしようも出来ないと思うけどね。
「はい! ありがとうございます、わたし、一生懸命頑張りますね!」
そう、嬉しそうに言うこの子は、多分、気付いてないみたいね。ならば、あまり情報を渡さない方がいいだろうし、何より、ここは侍従だけじゃなく、メイドさんや、執事さんが、給仕の為にいるから、余計な事は話せない。侍従たちならばともかく、どこに間者が居るか分からない状態で、迂闊に動く程、あたしらは馬鹿じゃない。
あとは、何事もなかったかのように、不自然ではない時間、皆でお話をして、解散することにした。勿論、勇者は定期連絡をする為に、翔太の部屋に集合することにして。本当は、侍従を入れたいけど、どうするかを決めてないので、当事者のユリーさんだけは連行、じゃなかった。連れて行くことにした。侍従を一人くらい連れて行かないと、うるさい連中がいるんでね。
ファイさんは、彼女、シャナリーデ嬢に引継ぎをするらしいから、今回は別行動です。居たら頼りになるんだけど、今回は仕方ないわね。ユリーさんに頑張ってもらうつもりよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、久しぶりの翔太の部屋は、相変わらずキラキラしてるけど、なんていうのかな? 物が全体的に増えた気がするわ。もっとも、翔太だけあって、よく分からないものが多いけどね。
「さて、最近の近況報告しましょ、いくらなんでも、あたしらだけでも情報を共有させとかないと、色々面倒だしね」
「確かにそうだね」
開口一番にあたしが言えば、和磨君がすかさずに、肯定してくれた。頭脳タイプだけあって、こういう意図をすぐに理解してくれるのは、本当にありがたいわ。まあ、翔太は考えてないようでいて、ちゃんと根本的な部分は理解してるから大丈夫だろうし、優香ちゃんもきちんと説明すれば理解してくれるから、あんまり気にしてないけどね。
とはいえ、
「それじゃ、あのエルフ事件の後からにしようか、ほら、あそこくらいからバラバラに動き始めたでしょ?」
和磨君が振ったのは、あたしが旅立つ辺りの時から。確かにあたしは、その辺りから何があったか分からないから、ちょうどいいかも。
「それじゃ、言い出しっぺの咲希から行こうぜ」
翔太の嬉しそう? いや、目がキラキラしてるから、期待してるんじゃないかな? 何か起きたはずだって。ま、まあ、翔太と共同作業もしたから、あったにはあったのかしら??
「それじゃ、まずはあたしからーーーーー」
あんまり詳しくは言えない内容だから、ちょっとだけぼかした言い方になったけど、とりあえずは途中まで説明したの。翔太を呼んだ辺りね。勿論、ここからは翔太巻き込んで会話をしてるわよ?
「途中、魔物、モンスターに襲われてヒヤヒヤしたぜ、まあ、ユリアスが冒険者登録していたから、こいつはランクが一つ上がって喜んでいたけどな」
近くに控えているユリーさんの顔が、少し赤くなってた。話題に出たから、恥ずかしかったのかも。その後は、またあたしと翔太の会話になって、城に帰宅・・・でいいのから? まあ、そんな流れになったわ。
「じゃあ、次は私だね!」
優香ちゃんのお話は、あたしに呼ばれる前からと、日常についてだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Side:優香
「うーん! 咲希ちゃんたち居ないと、本当に静かだなー」
治療院の机に付属の椅子に座りながら、大きく伸びをします。今現在、私はあのエルフの皆様の事件が終りを迎え、咲希ちゃんたち一行が帰ってからも、そして咲希ちゃんが旅立ってからも、ずーっと、治癒院にいます。時々、剣の修行をしたり、はたまた、ちょっとした冒険ーーー日帰りでの近場の冒険ーーーをしたり、時間があれば、ここ治癒院で怪我や病気の人を見ています。
「フフ、ユーカ様、お一人で寂しいのも分かりますが、気は引き締めて下さいね、ここは命を預かる大切な場所なのですから」
そう、私についてくれてるリリーさんが言ってくれるけど、それでもやっぱり同性の勇者が居ないのは、私にとっては大きな問題なんです。
「そういえば、今日はお昼にちょっとした連絡がある、って張り紙に出てましたね」
ふと、治癒室の連絡票に、この部屋の職員に対してでしょう。書いてありました。
「そうでしたか? 私はこちら務めではないので、詳しくないのですが・・・」
リリーさんは、水の使い手ですから、弱いながらも治癒が出来ます。最近は、咲希ちゃんのお世話してるドラゴンであるヒマリちゃんは、私の所にいます。咲希ちゃん、あまりに次から次へと仕事があるために、本当に名残惜しい感じで、ヒマリちゃんとお別れしてました。咲希ちゃん、体調とか大丈夫でしょうか?
「でも、リリーさんも手伝ってくれて、皆さん喜んでましたね!」
「だといいのですけれど」
控えめに笑う彼女は、本当に綺麗で思わず見とれてしまいます。と、そうだった!
「私もいってみようかな?」
多分、それは言わなければ、良かったんだと、この時の私は知る由もなくて。頷いてくれたリリーさんと、ただただ、これからの楽しみの一つとして、思いを馳せていたのでした。
それからは、忙しく仕事をして、予定の時間になって。連絡という、それを聞こうと、隣の簡易的な休憩室に行った私は、その光景と、言葉に、動けなくなってしまったんです。情けない事に。
「「僕たち(わたしたち)結婚することになりました!」」
そう、嬉しそうに笑う二人に、周りの皆さんは嬉しそうに、口々にお幸せにって、お祝いしてました。全然、知りませんでした。彼も、彼女も、そんな素振りは見せてませんでした。・・・・・そういえば、お兄様たちに言われた事がありましたっけ。お前は、人の好意に鈍感だと。確かに、そうですね、お兄様。私は鈍感です、と返して、もう一度、二人を見ます。とても、幸せそうで、そして、何よりも。
お互いを信頼してるのが、此方にもわかるんです。それくらい、甘い空気が漂っているようでした。
「ユーカ様?」
不思議そうな顔のリリーさんに、ただただ、不出来な笑顔を張り付けて。いえ、笑えていたんでしょうか?
「ちょっと、用事を思い出したので、下がりますね」
「えっ、ユーカ様!?」
戸惑っているリリーさんには悪いですが、私は、自分の気持ちが上手く制御できなくて。気付けば、城の外れの東屋に居て、座り込んでいました。自分の気持ちがグルグル渦巻いていて、よく分からなくて。でも、確かに私は、一つだけ確かな気持ちがあったんです。
ーーーーー密かな片思い。
あの片割れの青年に、私は片思いしていました。本当に、淡い、あまりにも小さな思いの欠片。多分、初めて自分から好きになった人。
気付けば、頬からとめどなく涙が溢れていて、ああ、泣いてるんだなって、他人事みたいに思ってました。
お読み頂きまして、ありがとうございます!
いやー、スランプ様にはヒヤヒヤしますが、書けない訳じゃないみたいです!
これからもガンガン頑張るぞー!
しかし、ユリーさんの話まで、視点があちらこちらへ飛ぶのが困り者ですね・・・。閑話にしたかったんですが、無理でした(;^_^A
設定集に書いておかないと。
では、また次回も宜しくお願いします!