第155話 それから、それから(4)
長らくお待たせ致しました!
テンシロは、ちょっとスランプ気味になってまして。次回はしばらくお待ち下さいませ。
「咲希ー、何で俺だけ!? 王子も手伝わせろよー」
不貞腐れた翔太に、思わずイラっとして、殺気が漏れた。すぐにビクッと反応した辺り、やっぱり気配には敏感なのよね。流石、異世界で色々と仕込まれた勇者なだけはある。
「それ、本気で言ってる? 機密情報に、他国を関わらせる訳にいかないでしょう?」
いくら壊したからといって、スザリオン王子は他国の人間である。こんな事に関わらせたら、国の関係が色々拗れてしまうでしょうが。本当に残念な馬鹿なのよねー、こういう所は。
「それに、あんたが手伝わない事もあって、魔術師たちがとんでもない状態になってるのよ・・・」
先程までの、あのアホたちとの戦いを思い出し、思いっきりため息が出た。流石に、あたしの態度に思う事があったみたいで、反抗的な部分は消えたけど、不機嫌さは消していないわね。
「あのなー、俺はお前ほど魔力強くないんだぞ? 勇者の中で一番魔力が弱いの、そんな俺が手伝えることなんて、ほとんどねーだろ?」
確かに、翔太の言い分は正しいが。一つ、こいつ自身忘れてる事がある。
「あんたの魔力、たしかにあたし達の中では最弱だけど、こっちの世界じゃ、最強の部類に入ってるからね?」
「・・・・・・あ」
完全に忘れてたのね・・・。さすが、出来るアホ。まあ、まわりにあたしを筆頭に、魔力がめちゃくちゃ高い人たちが居るからねー。そう思い込んでも仕方ないとはいえ。
「ちゃんと、責任とってもらうわよ?」
にっこりと笑顔を見せたら、何故か翔太に盛大にビビられた。解せぬわ!
なんて、翔太とじゃれてたら、向かう方向から、慌てた様子のファイさんが来た。えっ? 何事? もう緊急事態はお腹いっぱいよ? 訝し気なあたしと翔太の視線に気づいたのか、ファイさんはさっさと要件を話してくれた。
「サキさまー! ちょうど良かった! ショータ様もいますね! エリエンヌ姫から伝言を預かってきました」
その言葉に、思わずホッと息を吐き出した。どうやら、緊急事態ではないらしい。エリー様からなら、何かの誘い事とかかな?
「実は、勇者様と我々侍従たちとの、懇親会を開いてはどうかと」
「「はっ!?」」
あたしと翔太の声がハモった・・・。
「え、ちょっと待て、エリー様が言ったのか? 懇親会を開くって・・・」
いち早く我に返った翔太が、ファイさんに聞いてるけど、翔太・・・顔が引きつってるわよ?
「はい、何でもユーカ様から、侍従が多すぎて知らない人も居るから、どうにか出来ないかと相談を受けたそうで・・・」
なるほど、今回の発端は優香ちゃんか。でも、確かに考えてみれば、あたしも知らない侍従さんが居るし、これは確かにいい案かも。
「分かったわ、・・・・でも、今はあたしと翔太が手が離せない状態なの、結界の件でね、だからもう少し先で、でもいいかしら?」
そう提案すれば、ファイさんも納得してくれたらしく、エリー様にも伝言をしてくれるそうなので、甘えることにした。本当に今は、時間が惜しいのよ・・・。本当に、余計な事をしてくれたわね、翔太!
「咲希、目が怖い・・・」
「あら? ・・・・・勿論、頑張ってくれるわよね? 元凶さん?」
ニコニコニッコリ♪
満面の笑みを見せたら、何故か目をそらされた。おかしいわね? 可愛いと評判だったのだけれど。
◇◇◇◇◇
Side:???
最近、マジで動けなくなってきた。だってさ、俺が動くと、母親が苦しそうにするんだもん。動くのもためらうじゃん。
それに、最近は魔力を使いたくてウズウズしてるんだ。ここに来る前、運命神様が、俺にいくつか祝福をくれたけど、それは俺を守るものだって言ってた。時が来たらね、と言ってたけど、今は使えないんだな・・・・・これが。
多分、安全の為、なんだと思う。
それにしても、暇なんだよなー。声が聞こえるから、大体の事は察したけど・・・・・。あと、俺は嫌いな奴がいるんだ。そいつだけは、何故か警戒しないといけない気がして、母がそいつに近付いた時だけは、それなりに動いて妨害するようにしてる。他の人達は、俺が生まれるの、楽しみにしてるのが、気配とか声とかで分かるから、大人しくしてるけど。
確か名前はアクダッチャー・・・とか言ってた気がする。この国の宰相で、頭がよくて、人望も厚いとか何とか。でも、俺はそいつを近くには置く気はない。危ない気がするんだ、こいつ。気配が怖いんだよなー。
何で親父や母がこいつを信頼してんのかが、イマイチ理解できないんだわ。
だってさ、俺、まだ生まれてもないのに、何で俺が世界征服を望んでるように言うわけ??
おかしいだろうよ!!!
そもそも、俺は平和主義者の日本育ちの記憶を引き継いでんのよ? もっとあり得ないって!!!
本当にこの得体のしれないアクダッチャーとかいうやつ、信頼だけは出来そうにない。断言できる。そういえば、何で両親はこいつを信頼してるんだろう? 魔族は脳筋が多いのは分かるし、その中でも頭脳明晰なやつが少ないのも分かる。魔族は力こそ全て。だからこそ、頭脳を持つ奴らはそれを力に変えるみたいだ。文官がこの城でそれなりの地位にいるのは、やっぱりいけ好かないアクダッチャーのおかげなんだろうけど。
・・・・・もう少し、教育に重点を置いた方がいいかもしれない。俺が生まれたら、この議題を早いうちに片付けよう。何か、色々不安に思ってきたからさ。神様から依頼された時、言われたもん。魔族は人間と比べて、長生きになるんだって。魔力が強いからだそうだけど。
その中の魔王として生まれる予定の俺は、その中でも群を引いて長生きらしいから。一応、対処はしてくれたみたいだけど。
はあ・・・、それにしても、俺、いつになったら、生まれるんだろう? そろそろ、飽きてきたわ。
◇◇◇◇◇
Side:ファインディール・アブンセル
「ふう・・・」
最近、ため息が増えたように思います。私は元々、騎士でしたから、こういう書類作業は得意ではないのですが・・・・・、如何せん、出来る人材が少ないこと、そして、ありがたい事に、フランツ殿下より、勇者様の侍従のまとめ役を正式にお願いされました。・・・・・まともに動ける事などを加味し、かなり少ない故の人選だったようで、まさか地位が低い私に回ってくるとは、思いもしませんでした。
その為、勇者様関連の書類が、回ってきたり、提出したりするんですが・・・・・。
「どれだけあるんですか・・・!」
あの方々に関する書類の多い事! 管理職の大変さをここで知るとは思いませんでした。時々、知り合いに聞いたりして、何とか回していますが、専門の文官をお願いした方がいいかもしれません。彼らのシフトも作る事もあり、正直、人手不足なんです。なんせ、騎士側の人選は、ほぼ書類関連が出来ないですし、魔術師の方々の方も、こういった書類は専門の方々がしていたようで、まさかの戦力外。こうなったら、フランツ様にお願いした方がいいかもしれません。
「うん、思い立ったらすぐ行動ですよね!」
机から立ち上がり、提出書類を持ち、いざいかん!
勿論、フランツ様のところは、自分が行くには、申請が必要なので、きちんと手はずを整えて。その間に、提出物を全部出し。あとは、お会いするだけの状態にします。しばらく、待合室で座りながら待ち、30分程で呼ばれました。急な申し出なのに、お会いできるだけありがたい事なので、極力最短で出来るように、話をまとめておきます。
「やあ、ファインディール、すっかり久しぶりになってしまったね、何かあったのかい?」
手短な挨拶のあと、フランツ様に要件を伝えます。
「はい、実は勇者の侍従に、事務が出来る文官を付けていただきたいのです」
「ん? 今までは特に必要ではなかったようだけど?」
それは暗に、要らないということでしょうか!? 不味いです、私は騎士ですよ!? 事務仕事ばかり等、無理に決まってます!!
「今までは、勇者様方の申請は少ない物でしたから、我々で代行できましたが、最近の活躍に、書類が追いつかない状態になってまして・・・」
既に支障が出てきています。私が何とかしてますが、破綻も時間の問題でしょう。そんな状態なのです。大至急、書類に強い方が来てくれないと、我々では限界です!!
「うーん、確かに、最近は書類が増えてるねぇ・・・分かった、文官で誰か就けよう」
「ありがとうございます!」
これで、あの書類地獄から解放されます!! 最近は書類仕事ばかりで、勇者様の侍従として、近くに居る事が出来ませんでしたから。ようやく、本職に戻れます!!
「あー、ファインディール? そんなに嫌だったのかい? 書類仕事・・・」
殿下と、側近、側使いの方々から、憐みのような視線を頂いてますが、当然でしょう!! 私は元々、騎士んですよ!? 書類仕事が得意な訳がないでしょう!?
というわけで、内心をオブラートに包みながら、切々と語ってみたら、近衛騎士の方々や、側仕えの方々から、大変同情されました。
そうですよね? 書類仕事の多さに、お傍に仕えられないとか、本末転倒というものです。流石に、殿下もこれには悪いと思ったのか、文官の手配を特急でしていただけると言って下さったので、暴露もたまには役に立つようです。
一体どんな方が選ばれるのかは知りませんが、この勇者の侍従には変わり者も多くいますから、せめて、普通の性格の方をお願いします。・・・・・変人ホイホイとか、ショータ様が言ってましたが、大丈夫でしょうか? といいますか、変人ホイホイとはどういう意味なんでしょうか?
お読み頂きまして、ありがとうございます♪
長らくスランプにより、中々書けませんでしたが、ようやく書けました。
次回は少し時間を頂くと思いますが、ちゃんと書きますのでご安心下さいませ。