第154話 それから、それから?(3)
長らくお待たせいたしました。
ようやく、咲希ちゃんたちのお話が完成しました・・・。
次回は、出来上がり次第、ご報告いたします。
Side:天上 翔太
何か分からんが、寒気がしたのは気のせいか?
今現在、俺はフランツの執務室で、リゼスの自称恥ずかしい話をきいていたんだが・・・・・。こいつ、俺より年上だよな? 内心、呆れ果ててるんだが・・・・・。
一緒に聞いてた、フランツとトーヤも、目が点になってた。うん、俺だけじゃなかったらしい。
「あー、リゼス? つかぬ事を聞くが、お前は私と一緒に女性に対するマナーは受けていたよね?」
フランツが確認するように聞いてるが、うん。俺も聞きたい。
何でこんなにピュアピュアな純粋さをお持ちなの!? フランツもトーヤも、普通だよな!?
「・・・・・あれは、勉学でしたし、実際に女性と接するのは、苦手でしたから、あくまで知識としてだけ」
つまり、実践してないし、何よりも、知識としか思ってなかったと・・・・・。うわー・・・、確かに、トーヤがお子様レベルと言った事が良く分かった。
「リゼス、女性のエスコートとか、したことは?」
恐る恐る俺が聞いたら、何故か、トーヤがニッコリ笑って、俺の肩に手をポンと置いた。おい・・・、まさか!?
「一度もありませんが? 必要性がありませんでしたし、何より殿下の側近として離れる訳にはいきませんでしたから」
マジか!! え、そのレベルなの!? ほとんど、女性と接触しないし、しても、肉食的な女性だろうし、苦手だから距離をおいてた、と・・・・・。
なるほど、だから、ピュアピュアな状態が出来上がったと。それも、肉食的な女性を見てたから、余計に拗らせた可能性もあり、と。
どーすんだよ、これ。側近が結婚しないとか、色々と不味いだろ。
「まあ、お前が挙動不審に陥ってたのは、”純粋な女性を見た”、からで、そしたら周りの女性に対してどうしたらいいかが分からなくなった・・・・と」
まあ、全部が全部、本性って事はないだろう。純粋な女性なんて、貴族ならいるだろうが、奥方にしたとき、不安しかないだろうよ。
「あー、そんでだが、ボーっとしてたのは、考えてたから・・・だよな?」
トリップしてたとかは言わなかったからな!? 俺だって、ちゃんと考えてるんだぞ?
「はい、仕事で話すならいいのですが、急に話かけられたりすると、どうすればいいのか戸惑ってしまって・・・」
はあ、普通は子供の頃に通過するはずのことが、気真面目過ぎるこいつの性格と、身近にモテる奴がいたために、恋愛に関して、が成長しなかったんだな・・・・・。
ほれ、その証拠にフランツと、トーヤが天を仰いでるぞ・・・・・。フランツなんて、手で目元を覆ってるし。
「あー、因みに、サキ殿に関しては、どう思ったんだ? 結構長く一緒にいたよな?」
トーヤが質問するが、意味が分かってないのか、首を傾げるリゼス。本当に大丈夫か?
「・・・・・正直、分かりません、ただ、妹・・・とは違うと思いますが」
お? もしかして、脈あり!? あの咲希に!? ・・・・・いや、あいつ、モテるからなぁ。ほれ、目の前の二人がホッとした顔しとるし。絶対に、咲希に気があるの、丸わかりだってーの!
「ま、とにかく、しばらくは、女性に気をつけろよ?」
今の俺には、それしか言えないからな。はあ、しっかし、さっきから鳥肌が止まらんのは何故だ? 厄介事何て、記憶にねーぞ? なんて、呑気に考えていた俺、平和ボケしてたんだろうか? ノックと共に、今の今まで会話に出てた咲希が来たんだから!
「あ、フランツ様、翔太を借りていきたいんですが、構いませんか?」
おかしい、何で俺がここにいるって前提で許可をもらおうとしてんだ!? もしかして、式神様とかの力で特定したのか!? 気配とか、そんなの何にもなかったぞ!?
「構わないが・・・何かあったのかい?」
これにはフランツも不思議に思ったらしく、質問という形をとってくれた。ナイスだ、フランツ!
「えぇ、翔太ったら、訓練場の結界を壊した一人なのに、手伝いを放り出して逃げたものですから、今回の張り直しに参加してもらおうかと」
ニコニコニッコリ。そんな説明がとおるような笑顔で発せられた言葉は、かなり辛辣なうえに、微妙に怒りが透けて見えるんだが・・・・・。え? これ、行くの確定か!? つーか、咲希の奴、目が笑ってねーだろ!? フランツに助けを求めるように、視線を向けたが、サッとそらされた。チクショー!? あれか、好きな奴にはいい顔したいのか!!
「ありがとうございます、あ、あと、フランツ様?」
「何だい、サキ?」
項垂れていた俺でもわかるほど、何故か、咲希の背後に般若が見えた気がした。ん? 俺、か? でも、視線はフランツを捕らえたまま。つまりは、この怒りに関しては、フランツに向けて・・・? 何かやらかしたのか、フランツは。じゃなきゃ、咲希がここまで怒る事ないだろうし。
「優香ちゃんに、色々と好みを聞いたそうですね? 一応、申し上げておきますが、私の世界では一夫一妻の政策を取っていました、随分と気が多いと、優香ちゃんが言ってましたよ? お気を付けくださいね、貴方は王族であり、唯一多くの妃を娶れる立場にあるんですから」
これを聞けば、俺でも分かったぞ? フランツ、お前、色んな女性に声をかけてたのか。あほか!? 咲希も優香も、それなりの名家の出身だが、同時に固定概念がしっかりとある場所で育ってる。そんな家の女性の前で、色んな女性に声をかけてたら・・・・・、うん。フランツ、終わったな。
突然の言葉に、3人とも固まってるしなー。まあ、口説いたお前が悪いぞ、全面的にな・・・。
「では、翔太を連れて行きますので」
あっ・・・・、逃げそびれた!?
「さあ、翔太? しっかりと手伝ってもらうわよ?」
この時、俺は咲希の笑顔が、悪魔に見えた・・・。チクショー!!! 何でスザリオン王子はよくて、俺はダメなんだよー!!!!!
・・・・・いや、わかるけどさ。でも、納得できるかっ!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Side:フランツ
嵐のような咲希の訪問の後、この場には嫌な沈黙が漂っていました。
分かりますよ? 理由が私がやらかした事くらいは!! だって、仕方ないでしょう? 王族は、そういうものなんですから。
「殿下、お二人の前で、違う女性を口説いたのですか?」
最初に口を開いたのは、トーヤ。恐らく、現状を理解してしまった一人だろう。リゼスは、先程の事は割り切ったらしく、もうこの話の先を考えてるのが分かります。・・・・・切り替えの早い事で。
「仕方なかろう、社交辞令とはいえ、有力候補のお嬢さん方を褒めるのは、義務みたいなものだ」
パーティーでは、元々居た、婚約者候補の連中がわんさか寄ってくるのです。これも仕事と割り切らねば、どうにもならないんです。
ーーーーー王族としては、勇者を妻にと願う事も必要なんですが、ユーカかサキをと言われても、正直言えば、困ってしまってます。間違いなく、正妃として、何ですから。
「父上は王として、どちらかを妻に、とは言われたが・・・・・正直、彼女たちの気持ちを優先してあげたい気持ちもあるんだよ」
いきなり異世界に召喚され、魔王を倒すように願った、身勝手な王族。帰らせる事も出来ない以上、最上級のもてなしをしているつもりですが、彼らはいつの間にか城の者達と手を取り合い、この国にはなくてはならない存在となってました。特に、サキとショータは、単体で魔族と張り合える存在です。ユーカやカズマもまた、守りや癒しには欠かせない存在となっています。
彼らを王族にと願うのはいいですが、勝手に決める事は許されません。それこそ、妨害が好きな貴族たちが、勇者を亡き者にと考えるのが、関の山です。彼らは、自分の娘を王族にと考えている厄介な存在なのですから。
「殿下、貴方は王太子にはなっていませんが、かなり近い場所に居るのです、そこをお忘れなく」
リゼスが痛いところを付いてきます。父は側室を何人か取っていますが、彼女たちは基本的に後宮から出る事はありません。正妃だけが、権力をもっているのです。側室は、正妃と一緒でなければ、外へ出る事もできないし、生まれた子供は、正妃の子として扱われ、側室が育てる事も出来ないのです。異母兄弟なんて沢山いますが、男子が私の他、数人しか居ないのが、やや問題視されいるのも事実です。確実に正妃の子で男子は兄と私と弟達だけ。他は全員が側室生まれ。分からないようにしていますが、知っている者は知っています。更に、私が上から数えた方が早い事も、玉座を一番近いところに感じる一つでもあります。
「分かっている、魔王の問題が解決した後、間違いなく起きるだろうことも、な」
だからこそ、王族の正妃には勇者がいいのです。バランスを崩さないためにも。王族として、側室を取る事は、義務付けられたことなのですから。
「本当に、頭が痛い」
勇者サキよ、爆弾を置いていくのは、本当に辞めてくれないだろうか?
◇◇◇◇◇
Side:空の神
地上が静けさを取り戻したつかの間の時。私達、天上の神は、頭の痛い出来事に直面していました。
「ねえ、やっぱりそろそろ、神託を下すべきよね?」
イライラしているのは、運命神。
「それもあるけど、魔王が二人になるなんて、前代未聞の出来事なのよ? 慎重に事を進めるべきよ!」
こちらもイライラしながら告げる、風の神。
「まさか、アマテラスの神の弟君が、こっちに来ていたなんて・・・・・」
私はため息交じりです。慎重に進めていた、魔王の魂回収ですが、思わぬ人物の登場で、予想外の事態になってしまいました。
「あー、それもあるのよねー・・・・・なんで次から次へと問題がくるのよ!!」
美しい女神たちの、イライラした姿は、本当に荒々しいものです。運命神は、自分が織った運命に綻びやら、予想外の事態が起きて、慌てて補修に入っている状態で、先程やっと、休憩が取れたほど。風の神は、地上の監視を強化しており、その所為で忙しくなっています。
そして私も、空を司る以上、諸々の仕事が溜まってきており・・・・・つまりは、今現在、多くの神が地獄の忙しさとなっているのです。笑うしかありません。
「そもそも、弟君も回収して帰さないといけないんでしょう? 未だにどこにいるかつかめないの? 風の神」
運命神に問われた風の神は、こう疲れ切った顔をしていました。成果が上がらないからでしょうね。
「どこに転生したのかも、不明よ・・・・・転生したら、間違いなく、魂が余ってるはずだからすぐに分かるような気もするんだけど・・・・・」
そういった事態もなく、手掛かりが本当に少ないのです。そういえば・・・。
「確か、昔、死んだ直後の体に入り、生きるなんて事がありましたね?」
神の気まぐれでしたが、確か、下級神が人間を学ぶために入った事がありましたね。
「えっ、それって・・・」
顔色を変えた運命神と、風の神。二人とも、顔から血の気が引いてますし、汗までかいているような?
まあ、何か気付いたのなら、前進したんでしょう。
そろそろ、神託の時が近づいてきていますし、我々も気を引き締めて参りましょう。
読了、お疲れさまでした。
そして、いつもお読みいただきありがとうございます。
ようやくここまで書けました。ちょっと、ネタバレがいくつか出てましたが、推理が得意な方、感がいい方は気付いたのではないでしょうか??
そろそろ、予定していた話を入れたいんですが、その前段階で止まっております。気長にお待ちくださいませ。
では、次回も宜しくお願いします。