第150話 後始末と色々と
次回も誠意執筆中です。
Side:ユリアス
皆さん、こんにちは。
ここしばらく、勇者様に存在を忘れられていて、地味に傷付いているユリアスです。
僕は今、クルルさんのとこで、お世話になっています。というのも、何日も宿の手伝いとして来ている二人が居なくなるのは、かなりまずいということで、誤魔化し要員として、ここで働くことになりました。理由としては、風邪でダウンした二人の代わり・・・というものです。従弟としてますから、似てない事は誤魔化せましたし、髪の色も魔法薬で茶色に変えました。
男性の中でも小柄な僕は、見た目もあって、お客様やご近所のお嬢さん方から、大変可愛がってもらってます。
とはいえ、何もかもが初めてな僕、どうしても皆さんのようにテキパキ出来なくて、かなり悔しいです。
だからこそ、不器用なところが裕福な家の末っ子とでも思われたのか、あまりとやかくは言われませんでした。まあ、間違ってもないのが、何とも言えませんが。
「リー君、休憩の時間だから、下に行くわよ」
「はい!」
ここでは僕は、リーと呼ばれています。実名は使えないので、仕方ないです。冒険者の身分証もありますから、宮廷魔術師という事は、話していません。魔法も基本的な無詠唱で済む下級しか使ってませんし。
まあ、女将さん達は知ってるみたいで、気を使ってくれる部分もありますから、申し訳なく思いますが。
「今日のおやつは、アッケービだって~、サリーちゃんが気に入っていたのよねー」
と、このお店の娘であるノーラさんが教えてくれました。サキさん、本当に馴染んでいたようで、僕もノーラさんの話に便乗する形で、会話をしていきます。僕は、これでも公爵家の人間なんですが、末っ子だった事もあり、自由にさせてもらえてました。流石に、町に遊びには行かせてもらえませんでしたが。
だから実は、僕もアッケービを知らなかったりします。まあ、王都でも季節にしか食べれない、庶民のフルーツだったからと思いますが。僕ら貴族は加工されたものしか食べませんでしたから。アッケービは、加工品にすると値段が上がり、貴族や裕福な家しか食べれなくなります。
「実は僕も食べたこと無いんですよね、アッケービ」
「えっ!? そうなの? サリーちゃんも食べたこと無いって言ってたけど、家に嫌いな方でもいたのかしら?」
僕は苦笑いして、詳しくは話しませんでした。庶民でも買える手頃な品物ですからね、生のアッケービは。後は勝手にノーラさんが考えるでしょう。
それにしても、サキ様、リゼス様、いい加減に帰ってきてください! 僕でも言い訳がそろそろ厳しくなってきましたから!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
うーん、良く寝た~♪
目が覚めたら、時計は2時をさしていて、未だに明るい日差しがあるのを見ると、そんなに寝てないような?
まさか、一日過ぎてからの2時はないわよね!?
「龍、あたし、どれだけ寝てたの!?」
心配になって、式神様に確認したら、皆さん笑ってる!? 何でよ!?
『ご安心を、主人が寝てから4時間しかたっておりません』
良かったー、また時間を無駄にしたかと焦ったわ。今回は魔力枯渇だったから、こんなので済んだのかしら? 少し違和感があるけど。霊力も少し回復してた。魔力ほどじゃないけどね。
「お腹空いたし、軽食用意してもらえるか聞いてみよう」
付属のベルを鳴らして、メイドさんを呼ぶと、しばらくして若いメイドさんが来てくれた。いやー、助かるわ。そのまま、お部屋で軽食を食べて、着替えをしてから、下に降りると、リゼス様が書類仕事をしてた。さすが、フランツ様の側近。仕事を捌くのが早い。
「こんにちは、リゼス様、少しいいかしら?」
「まだ寝てなくてよろしいので?」
此方を見た瞬間、ちょっと怖かった。睨まれた気がしたんだけど!?
「目が覚めましたし、特に変わりはありませんからね、それよりも今後の相談を・・・って!?」
ビックリしたわ! 何で急に近づいたと思ったら、あたしの顔を覗き込むなんて事をしてんのよ!?
「リゼス様っ、近い!」
「顔が赤いようですが?」
流石に美形の顔を近くで見たら、あたしだって恥ずかしくなるし、顔が赤くもなるわ!!
「~~~~~~~~っ!?」
声にならない声で、口をパクパクさせるしかなかったわ。恐るべし、無自覚美形!! リゼス様がこんなに天然持ちとは思わなかったのだ。あたしとて、15歳の乙女である。流石にこんな場面はどうしたらいいのか分からないから、頭が真っ白になった。
「やはり、具合が悪いのでは? 魔力もあまり回復していないようですし」
「だから、大丈夫だってば!?」
もう、勘弁してほしい。どうしろってんだ、この乙女的シチュエーションを!! こんな場面を翔太にでも見られたら・・・・・。
「おいっ、咲希、リゼス、ちょっと話が・・・・・すまん、邪魔したか?」
最悪のタイミングで、翔太が来てしまった。つーか、最後のセリフが聞き捨てならん!
「邪魔じゃないから・・・・・・はあ」
「失礼だな、咲希・・・・・ん? 何か顔が赤いぞ?」
「大丈夫、ちょっとした誤解だから」
「??? はあ、とりあえず片付け終わったから、今後の話をしたいんだが」
確かにこの時間なら、翔太も終わってるよね。ちょうどあたしもその話をしようとして、謎の乙女的シチュエーションになったんだけど、面倒だし、頭を切り替えよう。うん、考えるのが面倒とかじゃないわよ? 必要な事だからよ! 本当よ!?
「・・・・・取り敢えず、ここでの仕事は終わりね、後は翔太はユリー様と王都へ、あたしはクルルさんとこにもう少し居て、優香ちゃんを待つわ、優香ちゃんが来たら、ユト様達と一緒に向かってもらうつもりよ、そこまで来たら、あたしとリゼス様は帰還ね、どうかしら?」
一気に予定を話したら、二人は異存はないようで、あっさり決定した。翔太も仕事は終わりだし、リゼス様もいつまでもここに居ていい人じゃないもの。
「じゃあ、今日のうちに、あたしとリゼス様はクルルさんとこに、翔太はユリー様と明日には帰還ね、早くしないと優香ちゃんが来ちゃうし」
優香ちゃんのお供は、果たして誰が来るんだろう? それに、さっき確認して驚いたんだけど、ユリー様、クルルさんとこで、あたしとリゼス様の代わりに働いてたのよ。理由は、風邪でダウンした二人の代わり・・・うん、本当に申し訳ない!! 予定ではすぐに終わるはずだったのに、長引いているから、言い訳も大変よね。
「分かりました、準備します」
「俺も異議なし!」
てな訳で、何だか長かったこの町の騒動は、無事に解決しまして。あたし達は、後始末の為に動き始めたのでした。
◇◇◇◇◇
まずは、とばかりに、直ぐに帰って来たんだけど・・・・・。
「リーくん、好きです! 付き合って下さい!」
目の前には、真っ赤に頬を染めた、近所のお嬢さん。残念ながら見たことないないけどさ。反対に、凄く冷めた目をしたユリーさんがいる。こう、対比がおかしい。
「申し訳ないんですが、僕、気になってる人が居るんで、お断りします」
何か気まずい時に来ちゃったみたいなんだよね。裏口から入るか、あの伯爵様の御客様として帰るか、で迷ったあたしは、こっそり裏口からにした。うん、かなり後悔してるけどね!
まさか裏口で、愛の告白してるとは、誰も思わないわよね!? あたしは悪くないぞ!?
なんて、こっちが物陰に隠れてガチガチに固まっていたら、話は終わったのか、ユリーさんは建物内に入ろうとしてた。少女は悲しそうだけど、元から無理な恋である。優しさを見せない方がいいだろう。
「入りましょうか」
後ろに一緒に隠れていたリゼス様にも、声をかけたんだけど・・・・・おかしい。顔を手でおおったまま、動かない。何でよ!?
「あの、リゼス様? どうしたんですか? 早く入りましょう」
人に見られると、厄介なんだから! そんな、あたしの内心を他所に、リゼス様は依然として動かない。何でよ!?
「リゼス様?」
よくよく観察したら、顔が赤かった。ん?
「めんどくさいから、仕方ないよね?」
男心は繊細と、誰かが言っていたけど、そんなのは知らん! 動かないリゼス様が悪い!
「樹英さま、お願いします、リゼス様を中に入れてくれる?」
『ふむ、任せよ』
問答無用とばかりに、リゼス様の首根っこを掴むと、ずかずかと歩き出す樹英さま。流石に、この時点で気付いたらしいリゼス様も、状況が分からずに、パニック状態になったのか、カチンと固まってた。
うん、とりあえずクルルさんに報告して、今日から動きますか。ユリー様が色々と溜め込みまくって、ストレス凄いみたいだし。さっきも目が怖かった・・・・・。弟みたいで可愛かったのに。
ふぅ、仕事がんばろう。早くきてね、優香ちゃん!
お読み頂きありがとうございます♪
ようやく書けました。
今回はギャグ回みたいになりましたが、次回も頑張ります!