第149話 スッキリと後始末です!
お待たせいたしました。
ようやく、ここまで来ました!
は~~~~~~~~~、スッキリした!!
目の前には、足をピクピクさせている、チリチリ頭の魔族が一人。あ、勿論、死んでませんよ? 気絶して倒れてるだけです。ノー、殺人。あたしまだ、こっちで手を染めたくない。
でもお陰様で、気分爽快よ! やっぱり思う存分暴れるのって、気持ちいいわー♪
『暴れ過ぎかと思うがのう・・・・・・』
樹英様、些細なことです、些細なことなんですよー!! 乙女心は複雑なのよ!
「さてと、こいつにはしばらく大人しくしてもらって、後片付けよねー・・・・・」
なんせ、成り行きとはいえ、町を一つ作成しましたからねー。まだ8時を過ぎたところとはいえ、霧を怪しまれないためにも、急いで片付けないとね。今の戦闘で半壊してるけども。でも、今のであたし、魔力、霊力、結構使ったから、流石に疲れたのよねー。翔太にお願いした方が早いかな?
もういい加減、起きてるだろうし。事後処理についても、色々と話し合わないといけないし。
それに、優香ちゃんとも連絡とらないとね?
「樹英様、悪いけど、翔太を叩き起こしてきて」
『御意』
これで、大丈夫でしょう。霧はまだあってもおかしくない時間だからいいとして、あたしはいい加減、眠い。力をここまでギリギリまで使ったのは、実は初めてなんだよねー。いやー、いい経験したわ☆
「さて、お屋敷に戻ろうか」
てな訳で、龍の背に乗って、帰ってきました。お屋敷に! 相変わらずの素晴らしいモフモフで、瞼がヤバい。昔は龍の背で寝たりもしてたから、眠気が・・・・・。
「咲希っ、てめぇー、普通に起こしやがれ!!?」
眠気が少し、飛んでった。まさかの翔太の第一声がこれとか。
「・・・・・樹英様、何したの?」
おかしい、安全な人選? 神選? のはずだったよね!?
『なに、ちょっとばかし、殺気を放っただけじゃよ? すぐに起きるじゃろ?』
ほっほっほっ、と笑いながら、とんでもない事を話すおじいちゃんに、流石にあたしも頭が痛くなった。たまにやらかすんだよね、おじいちゃんは!!
「ごめん、翔太・・・・・これはあたしにも責任あるわ」
まさか、安心と思った人選? いや神選? が、ミスったとか。ありえないでしょう? 事故としか言えないわ。
「たく、殺気とか勘弁してくれよ、あんな強烈な殺気を放てるヤツばっかなの? 式神さまってさ」
マジですまんかった、翔太。そんなどんよりした顔はマジ辞めて。何かへこむから。
「ちょっと眠気で油断してた・・・普通はしないから、そんなこと・・・多分」
翔太の顔を直視できん! 主人として、本当にすまんかった。
「なんか釈然としないが、とりあえず分かった、-----ほんで、俺を呼んだのは、後片付けだよな?」
「あれ? 分かりやすかった?」
顔には出ていないはずだけど。なんで気付いたのかしら? 樹英様が話したのかな?
「そんだけ疲れていたら、普通に気づくぞ? お前から感じる魔力とかが、ほとんど感じないからな」
あ、なるほど。そっちか。流石に2回目勇者、そこらへんはやっぱり鍛えてるか。見ただけで、相手の魔力が分かるとか、普通は出来ないからね?
「そんじゃ、悪いんだけど、お願いできる? あたし、もう限界近いから、一回寝るわ」
「おう、あっ、聞き忘れてたんだが、ユト様の実家って、どんすんの?」
そういえば、話してなかったわ。
「うん、今から優香ちゃんに頼もうかと思って」
そう言ったら、納得したのか、翔太は片手を上げて、背を向けて行ってしまった。まあ、了解の意味なんだろうね。
さーて、お屋敷で寝る前に一仕事しましょうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間から言って、優香ちゃんは働いてる時間かな?
ちょっと緊急だから、彼女には申し訳ないけど、連絡だけはしてみよう。だめなら、起きてからかければいいだけだもの。
チャンネルを優香ちゃん所有のチャンネルの番号に合わせて、しばらく待つと、久しぶりの綺麗な優香ちゃんのご尊顔が。うん、いきなりは心臓に悪いんだね、美人さんて。
『あれ? 咲希ちゃん!? 久しぶり!』
「・・・・・うん、久しぶり」
なんだろう、出鼻を思いっきり折られた感があるんだけど。
『どうしたの、こんな時間に』
「うん、ちょっとお願いがあって」
こちらでの事は極秘事項なので、話せるところだけ掻い摘んで話していく。勿論、翔太の帰還も合わせて伝えておく。
『えっ!? 私が行ってもいいの!?』
輝かんばかりの笑顔に、やっぱり外に行きたかったのかと、ちょっと申し訳なく思ったわ。基本的に、優香ちゃんや和磨くんは、戦力を付けるための訓練なのよね。だから、すぐに実戦に行けたあたしや翔太とは違う。外に行けても、基本的に日帰りだけ。ストレスたまるわよね・・・・・。
「勿論、こちらから許可とか必要な事は、全てしておくから安心して」
『本当!? 分かった、いつ出発すればいいの?』
「急で悪いんだけど、最悪明後日には出てほしいかな」
『本当に急だね!? んー、特に予定は無かったし、翔太君が来るなら代わりに出てもらえばいいし』
「そこは我らが頼れるファイさんに予定の調整をしてもらおう」
『ふふっ、そうだね、楽しみだなー♪』
あとは差しさわりのない近況報告をして、チャンネルを切る。さあ、各場所に連絡入れますか。
それから2時間、あたしは諸々の手続に必要な根回しやら、連絡やらをした。終った頃には、普通に座るのもしんどいくらい、疲れきっていて、ベットに横になるなり、夢の世界へ向かったのでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Side:天上 翔太
いやー、久方ぶりに熟睡したわ。流石に町を一個は、俺の魔力じゃ少なかったからな。
俺は、4人の中で一番魔力が少ない。まあ、反則技である異世界の魔法が使えるし、実践形式の戦闘も出来るし、・・・・・いざというとき、殺せる側の人間だからな。これくらいでも、かなり優遇されてると思う。前の世界の神様は、かなり善良な方で、俺が戻っても苦労しないようには、してくれたみたいだからな。
こっちは、本当に優しい世界で、残酷な世界でもある。命の重さが、前の世界よりも断然、軽い。
まあ、あの斬新な起こし方は、二度とないことを願うがな。あれは、心臓に悪すぎるからな。
「さてと、霧があるうちに、元に戻しておかねーとな」
霧はお昼頃に、自然と晴れるようにしてあるらしいから、それまでに何とかしようじゃないか。
痕跡とか残して、咲希に説教とか勘弁だからな!?
・・・・・そういえば、レイヴァンへの事で、説教案件があったな。まあ、あれは後で本人が居たところでやったほうが、絶対にいい気がする。
「にしても・・・・・」
咲希から、たまに俺と、いや、ある種の同類の匂いがするんだよなぁ。
ーーーーーーーーーーーーーー命を背負う側の、そんな匂いが。
しかし、咲希が直接的に殺すとは、どうしても思えない。最初の頃、この世界で顔を合わせた直ぐの頃。あの頃のあいつと、今のあいつは、ちょっとだけ違う。
背負った物は変わらないけど、トラウマを克服したからかもしれないが、何より年相応の反応や、笑顔が増えた。勿論、それでも、変わらない部分もある。
あの年で、陰陽道を使いこなす才覚。それを、あちらに居た大人たちが有効活用しないわけがない。まあ、心ある人達だったことは、咲希を見てれば分かるが。
・・・・・たまに、ネタに全力で走っていたのは、咲希の性格故・・・のはずだ。周りの人からの影響だとしたら、かなり心配だが。
だからこそ、不思議に思う。
ーーーーーーあいつが背負う必要がある、”命”とはなんだ?
トラウマは解決してるから、明らかに別物だろう。だとしたら、あいつが時々見せる暗い部分が、どうしても繋がらない。戦いのとき、別人のように冷たい姿になるが、あれも必要だからやっているんだろう。
傷付かないように。
「ダメだ、さっぱり分かんねー」
こういうのは、やっぱり我らがオカン・・・ファイに頼むか? あいつは鋭い部分もあるし。何気にあいつは、咲希を一番気にしていたからな。目が離せないってさ。
よし、そうと決まれば、さっさと片付けて、ファイに連絡入れっか!
読了、お疲れさまでした。
そしていつもお読みいただきまして、ありがとうございます♪
ようやく、この町の騒動も終わりが見えてきました。いやはや、予定よりも長々と書いてしまいましたが、次はお待ちかね、魔王誕生編が来ます。予定では、10話以内に来るはずです。それまでに、優香ちゃんや、皆様の近況も書かないといけません。うん、間に合うか、超不安。
咲希:あら、ようやく次が見えてきたのね? そこでは色々ネタバレするんでしょう?
げっ、いつの間に!? ま、まあ、出来る範囲でネタバレをしていきますよ。鋭い感をお持ちの方は、すでに幾つか気づいていると思いますし。
咲希:まあ、神様関係とかはね・・・・・。
てなわけで、次回もよろしくお願いします!