第146話 先にシメときましょう♪
お久しぶりです。無事に、今週も更新出来ました!
今月中にもう一作品を投稿できたらと思います。
「ユトッ!!」
夫人の悲鳴に、辺りは一気に騒然とする。あたしの結界を力業で無理やり壊し、二本の白い手がユト少年を、空間の割れ目に引きずり込もうと、手を伸ばす。
が、幸いにも、御守りの結界に阻まれて、その手が触れる事はない。あたしが小まめに、御守りに力を補充していたからね。外の結界を破ったからと言って、簡単に渡せるはずがないでしょう?
「あたしの結界を壊しておいて、あっさり帰すと思う?」
顔は笑顔で、でも、目は笑ってないだろう。全力の殺気を、この魔族に叩き付ける。まあ、ユト少年は、魔族のシュールな登場に驚いて、気絶してるし大丈夫だろう。
『主人、控えて下され!』
あら、樹英さまに怒られちゃったじゃない。室内で術が使えないんだから、勘弁してよね。って、そうだった。他にも人がいたんだったわ!! ・・・・・えっと、てへ☆
『可愛らしゅう申しても、意味はないと思いますわ、主人様』
春よ、痛い指摘をありがとう!! でも、今現在、誰も気にしてないと思うんだ!
「とにかく外に引きずり出すよ!」
室内じゃ、出来る事が限られるから、やっぱり外がいいわ。だったら、取る方法は一つ!
「緋ノ斗、封印解除! 全力で外に引っ張り出せ!」
『おう! よっしゃー! 久しぶりの外だぜー!』
ボンッと顕現したのは、赤い燃えるような髪の、ワイルドな青年。筋肉がしっかり付いてるんだから、頼むわよ!?
『そぉぉぉれぇぇぇ~~~~~~~!!!』
「きゃぁ!?」
空間の穴から、予想外にあっさり引きずり出されたのは、こう、庇護欲そそる美女様。髪は茶色になってるけど、魔法で染めてるのかも? 服装もシンプルなドレスの所為か、彼女の美しさを引き立てている。服のセンスはいいらしい。
「ちょっと、痛いじゃない!!」
その声まで綺麗とか、何かイラっときたわ。というか、さっそく魅了をかけようとしたらしく、あたしの結界にバシッと弾かれた。自分の魅了の使い方を熟知してるわよね、この魔族。リゼス様は、この隙にユト少年や、皆様を一か所に集めて、結界を張っていた。流石、フランツ様の右腕。こういう状況の判断が適切である。
「緋ノ斗、外に放り出して」
淡々と言うあたしに、魔族の彼女は、ぎょっとした表情で此方をみた。まあ、神様の緋ノ斗は魅了系は効かないし。そして、多分だけど、いつも自分の思うとおりに事が運ぶから、今回も行くと勘違いしたんだろうねぇ。結界を張ってるから、魅了は意味がないんだけど・・・・・。気づいていないっぽいね。この魔族の人。
周りにいなかったのかな、指摘してくれる人。
・・・・・居なかったから、気付けないのかも。逆に敵は多そうだなぁ、特に女性とか。
「な、何で・・・」
震えた声で、その言葉を絞り出した魔族。あら、驚いてるって、もしかして魅了が効くとでも思ってたのかしら。まあ、問答無用で、緋ノ斗が窓から外に放り出したけどさ。容赦ないな、緋ノ斗。可愛くない悲鳴が聞こえたが、誰も心配の素振りすらみせてないしねー。逆にホッとした感じかな?
『何か気持ちわりーから、俺は先に戻るぞ、主!』
と、珍しく、札に戻ろうとする緋ノ斗を、慌てて止める。普段と違う行動するから、ビックリしたわ!
「待ちなさい、あの魔族の相手、してもらうわよ?」
『何かやだ! あいつ、きもちわりーんだもん!』
「久しぶりだし、暴れていいわよ?」
『マジで!?』
「アレの相手をしてくれるならさ」
『・・・・・アレの?』
「そう、アレの」
珍しく嫌がる緋ノ斗には悪いが、手持ちでアレの相手って、緋ノ斗しかいないのよ? どうしろと?
『分かった、やる』
渋々承諾したけど、どうも今回は気分が乗らないらしい。よし、ならば。
「あの魔族、髪型変えたら、やりやすいかしら?」
綺麗に手入れされた、女の命ともいう、その髪を、今回はあたしがいたずらしてやりましょう♪ 早く、こいつを片付けないと、もう一人の魔族に気づかれてしまう。あともう少し、時間が欲しいのよね。細部にまでこりだした、翔太が悪いんだけどさ。
「さてと、-----貴方の髪いただくわね?」
何も、ちょんまげや爆発アフロをやるだけが、いたずらじゃないのよ♪ 久しぶりに、腕がなるわ~♪
『主人よ、何故に楽しそうなんじゃ!? 油断めされるな!』
「ウフフ、大丈夫よー、戦意喪失させるからー♪」
楽しいままに、お札の中の樹英様に答えたのに、まさかの絶叫された。
『なお物騒じゃー!!』
『お、翁!? 気を確かに! 主人様、からかうのも大概にされませ!』
うっ、春の説教はマジで怖いので、真面目に行います!! 勿論、いたずらを♪ 組むのは下法印。
『さらり、さらりと、召しばせば、さらり、さらりと、伏しませば、さらり、さらりと、お越しませ、さらり、さらりと、召しばせば、さらり、さらりと、伏しませば、さらり、さらりと、お越しませ、さらり、さらりと、絶えたる道をお越しませ、さらり、さらりと、着物着て、さらり、さらりと、払いきて、さらり、さらりと、邪魔ならば、さらり、さらりと、取り払う、さらり、さらりと、捧げましょう、さらり、さらりと、汝の願い、叶えましょう、さらり、さらりと、急急如律令!』
ウフフ、素敵ないたずらに、一生の思い出となると思うんだ。魔族にとって、意味があるかは分からないですけど。あたしにとっては、久々のいたずらに満足なりー♪
「さあ、緋ノ斗! やっておしまい!」
あ、何か悪役っぽいかな? やっぱり、叩き出しておしまい! とか? いや、この際、懲らしめてやりなさい? あれ、どれが正解?
『主人よ、真面目にやりなされ・・・・・』
あ、樹英様、今、可哀想な子を見るような、そんな顔になってるでしょ? あたしとて、それくらいは分かるぞ?
「まあ、あれは効果がねぇ、ゆっくり効くから、直ぐに効果は・・・・・」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・!!!!!」
あら、予想外に、速攻で効果があったらしい。おかしいな、この術は一晩経ってから、効果が分かりやすいいのに。ものの1分程で効果実感とか、早くない!? かけたこっちが驚いたわ!!
『あー、咲希? 何か絶望しまくってる相手とか、やりにくいんだが・・・・・』
珍しく、困り顔で窓の外を指さす緋ノ斗に、こっちも同感したいけど、相手は魔族。どう出るか分からない以上は、まだ居てもらわなければ困るわけで。
「待機してて」
『りょーかい』
そういうと、フイッと隠形してしまう。姿が見えないだけなんだけど、気配はするから、何かあればすぐに出てくるだろう。
そのまま、窓の外、町が一望できる庭は、芝生でおおわれているし、手入れをされているので、美しい限りだ。そんな綺麗な庭に、跪いて項垂れ、ブツブツ呟く、髪が綺麗な魔族が一人。
その手には、無残に抜けた、大事な髪が、ごっそりと握られていた。
「うわー・・・・・、予想外にヤバい?」
これ、協会でもグレーゾーン扱いの術だったんだよねー。かけたこと無かったから、この威力は予想外だった。すまん、魔族女性よ、あたしもいたずらのノリでやったから、威力は知らなかったんだ!
「あ、あたくしの、髪が・・・・・」
そのまま茫然自失の魔族は、彫像のように動かなくなった。え? マジでどうしよう。早く帰っても欲しいし。
よし、あの手で行こう♪ 大丈夫、トラウマが出来て、こっちに来たくなくなるさ♪
「おーい、魔族さん、良ければどうぞー」
と、気前よく、鏡をおすそ分け。この世界、鏡は一般庶民も持っているんだよ。どこの世界でも、綺麗を女性は追い求めるのさ。
「・・・・・っ!?? いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、髪が、あたくしの髪がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
目の前で叫ばれたから、一瞬耳がキーンてしたわ!? 耳元で叫ばないで頂戴。
でも、いきなり叫んだと思ったら、魔族は空に飛んで、そのまま消えてしまった。あ、鏡を持ったままだ。まあ、いいか、サリー用に用意した安価な物だ。また買おう、うん。
なんか、釈然としないけど、こうしてユト少年たちを苦しめた? 魔族は、帰って行きました。
次は、町の術のお引越しだね。
いつもお読み頂き、ありがとうございます!
そして、読了お疲れ様でした。
本日は咲希ちゃん無双モドキでしたが、楽しめましたでしょうか?
咲希:作者、あんた鬼でしょ!? 何であんな事が思い付くのよ!?
あら、此方では久しぶりですね、咲希ちゃん。しかし、鬼とは失礼な! 考えてたら、パッと降りてきたのよ! 最初は霊感探偵で使うかなーって思ったんだけど、まぁ、うん。イタズラになったと(笑)
咲希:えげつないわぁ。まぁ、やったのは、あたしなんだけど、何か複雑!
アハハ、何を言うやら。あなたは笑顔で毒が吐ける人間でしょうに。
咲希:それは和磨くんだよー!! あたしに腹黒設定はいらんわー!
では皆様、また宜しくお願いします♪♪
咲希:人の話を聞けー!!(涙)