145話 力業で解決します!
お久しぶりです♪ ようやく続きが書けましたので、更新します!
ある程度の、翔太たちとのやり取りを終えて、夕方にはお屋敷に帰還したあたし達。
何か翔太にいいように言いくるめられた気がするけど、あたしも面倒を頼むし、お相子でいいよね? 話が進まないし。
「おかえりなさい! 魔術師様!」
元気にお出迎えしてくれたヤト少年と、後ろからはダン少年が。こちらは、何か不貞腐れたような、複雑な顔。どうした、お子様ズ!?
「ただいま戻りました、二人ともどうしたんですか? 何かありました?」
気になって聞くと、ユト少年はパッと顔を笑顔にしたのに対し、ダン少年はしょげてしまった。えっ!? 本当に何事よ!?
「お父様にもうすぐ会えるって、お母様が! 本当? 魔術師様!」
あぁ、成る程。そういう事か。だから、ダン少年は複雑な顔をしてたのか。そりゃあ、なるわよね。仲良し君が、問題解決したら、すぐには会えない場所に、帰っちゃうんだもん。複雑にもなるか。顔に出てしまうのは、躾に厳しい貴族といえど、本当に嬉しかったからだね。せっかく仲良しになったんだから。
「うん、その前に、ここの問題を先に解決するけどね、決行は明日の朝、ダンタリアン様は、お父様をお願いしますね、リゼス様を付けますが、あなたもこの家の事を見ておいてください」
あたしの不思議な言葉に、ダン少年は怪訝そうに此方を見ているけど、後ろから執事服のジルさんに、何かを言われて、とりあえず納得はしたのか、コクリと頷いた。
さあ、そうと決まれば、今日は準備の大詰めと行きますか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝。まだ日も登らぬ、そんな早朝。
まずはこの一帯一面に、あたしの式神様を使い、濃い霧を発生させる。この程度の事は、龍ならお茶の子さいさいである。
「翔太、準備できたわよ!」
「おう!」
こうして始まったのは、前代未聞、町を一から土で作ること。寸分違うことなく、そのままの土の町が、直ぐ隣にできていく。予定では半日くらいと思ってたんだけど、何だか分らんが、翔太がハマった。この細かい作業に。
いやさ、こう、男の子がプラモデル作るのが好きなのは知ってたけど・・・・・、それをここで出さなくてもよくないかな? 確かに、確かに拘った分だけ町はそっくりになっていくけどさ? 妙なこだわりを、今はしなくていいでしょ!?
この霧は、魔力を隠す役割もある。だから、こうして堂々と、外で出来るんだけどさー。
あたしは翔太の作業が終ったら、魔術をこの町に動かす役。半日はかかる作業だし、その次に魔族とのイベントがあるから、あんまり魔力も霊力も使えない。なのに、魔法陣を動かすのは、最新の注意を払うし、魔力もそこそこ使う。移動にも、魔力で浮かして使うから、仕方ないんだけどさ。
でも、本当に・・・・・。
「暇だー」
「俺を前にして言うなよ!?」
「あ、ごめん、つい」
「悪意があり過ぎだろう!?」
なんて軽口が言えるのも、今がまだ、暇だからだ。相手の魔族も気づいてないのは確認済み♪ 式神様である、翠嵐を使って、細かくチェックしてるから。本当に万能です、式神様!
「咲希、とりあえずまだまだかかるから、お屋敷の様子でも見て来いよ」
「それもそうね、短期決着つけたいけど、すぐには動きそうにないし」
お屋敷の方でも、連絡を今か今かと、待っているだろう。だから、あたしはこの場を翔太と式神様に任せ、お屋敷に向けて、足を向けたのだった。
「翠嵐、異常があったらすぐに連絡を、ここはあなたに任せたから」
『御意』
しばらく歩いて、ふと気づく。あれ? 式神様を使った方が、早くね?
てな訳で、久方ぶりの龍の背中を堪能しつつ、あっという間にお屋敷へ。だよねー、龍の足なら速いもん。
ビックリさせたら悪いので、龍は消して、扉を開ける。美しい扉はなかなか重い事に初めて気づいた。執事さん、すげー。
と、内心褒めていたら、目の前にはうろうろと不審者の如く歩き回る伯爵様。
おいおい、ずっと待ってたの!?
「えー、伯爵様? まさか、ずっとこちらに居たのですか?」
顔が引きつってるのは、許してほしい。近くに控えていた執事さんや、メイドさん達が、微妙に視線をずらしているのを見ると、本当にここにいたらしい。おいおい、奥様! 伯爵が不審者になってますよ!?
「い、いや、部屋の椅子に座って待っても、落ち着かなくてな」
「そこは堂々としてましょうよ!!」
「無理だ!」
そこは即答で拒否するとこ、違うからね!?
「他の皆様は?」
はて、ここには伯爵一人なら、皆はどこへ?
「皆は客間で色々と話し合いをしているよ」
おいおい、伯爵さんよ? お前が居ないと困るだろうが!! 特に代理をしているだろう、リゼス様の怒りの顔が思い浮かび、顔が引きつったわ! ダン少年は大丈夫だろうか? どう考えても、まだ幼い彼には早い案件だ。あたしはただ、将来のために、見学して学べという意味で話したんだが。やばい、父親のダメなとこを見せてしまった気がする!!
「伯爵様、急ぎ部屋へ参りましょう! ちょうど経過を報告するとこでしたし!」
あたしの慌てた様子に、伯爵は不思議そうだけど、とりあえず来てくれるらしい。ほっとしたのは、内緒(笑) まわりの皆さんもホッとしてたから、大丈夫! ・・・多分。
こうして伯爵と戻った、いや、来た部屋は、案の定、リゼス様から放たれる、ブリザードが吹き荒れてました。正確には、お怒りにより、空気が張り詰めていたんだけど。
まじで伯爵さま、よく席をはずせたね!? あたしは無理よ!?
「魔術師殿、報告を」
ギロリと此方を向いたリゼス様、いと恐ろしや。あたし、悪いことしてないのにー!!
隣にいた伯爵なんて、固まってるし。元凶はお前だろうがー!!
「は、はい、準備は順調に進んでますが、日が昇る前には終わりそうもないですね、霧は午前中は怪しまれないでしょうが、一日中は敵に感ずかれる可能性があります、なので出来上がり次第、町にかけられてる術を破壊します」
声が裏返りそうになったわ。まあ、土の町には、命はない。安心して壊せるというものだ。後は魔族をボコボコにして、ヤト少年の実家を救いに行けばいい。あたしは行けないけどさ。こっちも後始末をしないといけないんだから。
「こちらも情報です、この町に来てる商人や事情を知らない者達から、霧をどうにかできないかと苦情が出てきています、抑えられるのは今日まででしょう、この事を知っているのは、ここにいる者だけです」
あ、やっぱり? 旅の人には、バレそうだなぁとは、思ってたけど。今回は詳細を町の人々に知られるわけにはいかないから、霧は適していたんだよね。急に出たら怪しまれるから、朝の霧を利用したんだもん。ここは水場も近いから、寒い時期には霧が発生しやすいみたいだし。それでも、日が昇ってからもは、バレる可能性があるから、翔太には頑張ってもらうしかないんだけど。
「無事に、出来たらいいんだけど」
ぽつりと呟いたあたしの言葉は、違う音にかき消される。
『主人っ!!』
龍の切迫した声が上がる。
やられた!! 一瞬のスキを突かれたとしか、言いようがない。
目の前には、縦に割れた空間。耳鳴りにも近しい、キーンとした音。無理やり破ったからこその、この甲高い音。式神である翠嵐が居ない以上、あたしが要になるここには、もっとも強固な結界を張っていたのに!! 破られた!
「ユトッ!!」
夫人が手を伸ばすが、間に合わない。空間からは白い手が伸びて、少年を絡めとる。勿論、二人には強い守りの御守りを渡していたから、弾かれたけど。長くはもたないだろう。まったく、翔太の方の魔族が、こんな時に仕掛けてくるなんて!
でも、渡りに船とはこのことよね? ここで解決してやろうじゃないの。偽物の侯爵夫人?
さあ、あたしのストレス発散に、お付き合いくださいなーーーーーーーーー?
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
そして、長らくお待たせいたしました。続きの更新です。
今回は、咲希ちゃんが後半、キレていたような気がするんですが、まあ、次回の弾みになってくれるでしょう!! ・・・多分、きっと。次回はこれから書くので、またお時間いただきますね。なんとか投稿をしていきますんで、これからもよろしくお願いします!!