第140話 この展開は予想外です!!
明けましておめでとうございます。新年一発目いきます!
次回は…………10日の予定です。なお、予告なく別の作品になる可能性がありますので、ご了承下さいませ。
伯爵様と夫人の二人に説明し、色々準備したから、この日の仕事は無事に終了。
でも、明日の朝から、町の人達の避難場所を作る必要があるから、今日はお泊まり決定な訳ですよ…………。
明日には、土と木属性の魔術が使える人達を、緊急召集を受けるから、今現在、屋敷の見えないところでは、静かにバタバタしてるわけ。
「魔術師様! 何かお話して!」
「あっ! ユト、ずるいぞ! 僕も聞きたい!」
…………………えー、今日の仕事が終わりを迎えた瞬間、二人のお子様ズに捕まりました。あたし、疲れてるんだけど………………二人のキラキラ光線に負けました! 子供には弱いんだよ! 仕方ないでしょ!?
でも、ありがたい事に、味方が居ました!
「ユト、ダン、二人共、魔術師様が好きなのは分かったけど、せめて座ってゆっくり聞きなさい」
あれ? リゼス様、味方じゃないの!? あ、目線で合図された…………。これは断れないパターンですか、そうですか……………。
結果、あたしは当たり障りが無い程度に、ぼやかしてから、お話しましたよ。
仕方ないでしょ! あたしのやった事を色々思い出してみてよ!
召喚されて、勇者になって、馬車の中で勉強して、ドラゴンさんを助けて、魔族と勝負して負かして、ドラゴンさんを育てて、ダンジョン抜けて、まさかのエルナマスで魔物を殲滅させて、夢を渡って、次は呪いを解決して、城の問題を色々と色々と解決して、エルフの問題を解決して、美女と野獣のカップルを成立させて、そして今に至る………………。うん、ぼかしてもかなり酷いわよね!? 思いかえしても、本当に酷いっ! 微妙にまっとうな部分が無いよ!? あたし、勇者よね? 段々と自信が無くなってくるわ……………。いや、勇者だから、かしら?
あ、リゼス様が呆れてる。なら、最初から話を許可しないでよ〜!
「魔術師様、何やってんの?」
あ、ダン少年にも、呆れた顔をされた………………。地味に傷付くんだけど(T_T) 止めて、そんな目で見ないで! あたしのライフはゼロに近いわ!
「魔術師様、凄い! 僕もなれる? 頑張ったら、魔術師様みたく、いっぱい出来る?? 皆を助けられる?」
キラキラ光線再び!? ユト少年、憧れとか尊敬とか含めてるから、眩しい!! 更に、純粋に言ってるから、こっちは反応に困るわ。う〜ん、天然入ってるかしら? でも現金なもので、あたしのライフはガンガン回復しちゃってる(笑)
「そうね、頑張って沢山お勉強したら、素敵な大人になれると思うわよ」
くれぐれも、あたしのような“穢れた”人にはならないで欲しい。でもダン少年が、しっかりしているから、大丈夫だろう。ユト少年も良い友達をゲットしたものだ。
「さぁ、お話もキリがいいですし、そろそろ寝ましょうか」
リゼス様、ナイスです! 時間を見れば、9時を過ぎた頃。子供が寝るには、やや遅い時間である。いくら魔法で明るいとはいえ、娯楽の少ないこの世界。子供達は、早めに寝てしまうのだ。まぁ、貴族の子供は、朝から晩までやる事が沢山あるから、仕方ないのだけれど。
「そうね、あたしも疲れちゃったわ」
主に、最初の伯爵様とのお話合いと、今、お子様ズに話した、あたしの活躍話……………色々とぼかしたり脚色して、気を付けて話したから、疲れちゃったわよ!
控えていた執事さんが、そっと近寄ってきて、二人を促してくれた。ナイスフォローです、執事さん!
「さぁ、坊っちゃま、ユト様、そろそろ参りましょう、魔術師様もお疲れのようですから」
優しく諭されて、二人は渋々、納得したようです。良かった良かった、あたしも休める!
「魔術師様、明日もお話聞かせてもらえますか?」
ユト少年に、懇願されました。それもキラキラ光線に、ウルウルも追加されていて、あたしの胸にクリティカルヒット! ………………結果、あたしの良心が、白旗を上げました! 無理っ! 幼気な美少年に懇願されたら、それも懐いてくれた子の懇願なら、断れないでしょう!!
ユト少年、末恐ろしい子! 大人になったら、どうなる事やら……………。
「魔術師殿、ちょっといいかい?」
お子様ズが執事さんと部屋を出ると、静かにしていたリゼス様に、呼ばれた。気を使ってか、サキと呼ばないで、魔術師殿だった。サリーと呼ばれたら困るから、別にいいんだけど。
あたし、ソファーに座っているとはいえ、疲れてるんだけど? 明日も早いんだから、早々切り上げたいんだよ。
「リゼス様、なんでしょう? 手短に願います」
ヤバイ、少し眠くなってきた。バレてはないと思う。なんせ、あたしはマントのフードを被っている。分かりにくいと思うんだ。
「明日の事です、貴方は避難所を作成しているからいいとして、私が必要なフォローはありますか?」
あぁ、眠い………じゃなかった。リゼス様には、伯爵の補佐と、明日の翔太をお願いしたい。
「ふにゅぅ…………明日は、伯爵様の補佐と、翔太のフォローをお願いしますぅ」
あぁ、まぶたが重い。何だか口調までおかしいような……………? 頭までボーッとしてきちゃったよ。リゼス様の言葉が、子守唄みたいな………………。
「分かりました、明日はあの方が来るんでしたね、伯爵の方よりも疲れそうですね、伯爵には避難所の作成にあたって、必要な書類を作って頂き………………」
ふにゅぅ、眠いから、限界みたい。あたしはここで、意識を手放して、ソファーによりかかる形で、寝てしまったのでした………………。
――――――――後で後悔するとも気付かずに。
◇◇◇◇◇
Side:リゼス
今日は、気弱な伯爵が気絶するという、ハプニングはあったものの、おおむね無事に終わって助かった。私にとっても、早々と問題を解決できるに越した事はないし、伯爵が無事に話し合いの席につけてホッとした。城に早く帰りたい理由の一つが、トーヤの書類整理と書類作成だ。殿下は早いので、変わりの補佐官が入れば、大丈夫でしょう。しかしトーヤは、苦手なんですよ。書類作成が……………。戻った時に、いったいどれだけ貯まっているのやら。
まぁ、話はすんなり………いや、無事に終わったから、ここまでは良かったんだと思う。
「魔術師様! 何かお話して!」
「あっ! ユト、ずるいぞ! 僕も聞きたい!」
話が終わったら、今度は子供達がサキ殿に懐き始めた。二人は命の恩人だからか、そう聞いたのか、別の理由からかは知らないが、サキ殿に無邪気に懐いている。ユトは天真爛漫、ダンは警戒心が強いが懐けば笑顔を見せる。
この二人に懐かれたサキ殿は、困惑していたが、私が少し助けてやれば、子供達の面倒を見る優しさを見せる。
いつもは無邪気で、何をやらかすか分からないのに、たまに見せる優しさが、自分の心を騒つかせる。腹立たしい事に、理由が分からないのだ。自分の心が分からない。
二人が懐いているさえ、苛々しながら見ている時がある。一体、どうしてしまったのやら。
「さぁ、お話もキリがいいですし、そろそろ寝ましょうか」
時間を見れば、そろそろちょうど良い時間。促してやれば、あれよあれよと言う間に、二人は執事に連れられて、寝室へと向かった。
二人になってから、会話を始めたが、うん? 何かおかしいような気がする。そう思いつつも、必要な話をしていたのだが、………………おかしい。返事がない。
「サキ殿?」
つい、気が緩んで、名を呼んだ。しかし返事がない。仕方なく、彼女の近くによれば、…………………寝ていた。
相当疲れていたんだろう。最後の会話で感じた違和感は、どうやら当たっていたらしい。
マントのフードを、そっと外す。そこには、あどけない姿で眠る、一人の少女が居る。実年齢を聞いて、驚いてしまったけれど、眠る姿はやはり、幼く見える。
「まったく、二人の時に無防備な姿を見せたら、ダメですよ?」
自分だって男なのだから。まぁ、私には分からないが、シキガミ様とかが、止めに入るだろうから、大丈夫だろう。こうして見ると、改めて思う。可愛らしい美少女だと。僅かに開いた唇は、桃色に色づき、ずっと見ていたような気がする。けれど、ソファーに寝たままでは、どこか痛めてしまうだろう。
「流石に執事に頼む訳にはいきませんか……………」
彼女も嫌がる気がして、仕方ないと自分に言い訳をして、彼女を起こさないように、そっと、抱き上げる。言わば、お姫様抱っこと言うやつで。彼女は嫌がるだろうか?
「寝た貴方が悪いんですよ?」
なんて、道中言い訳をしながら、彼女に割り当てられた部屋へ送る。途中、メイドが来たが、静かに案内をしてくれた。顔が驚いていたのは、仕方なかろう。
部屋へ入ると、ベットへそっと寝かしつけてやる。身支度は、メイドに任せて、自分はさっさと与えられた客室に戻る……………つもりだったのだが、予想外の事態が起きる。
「…………ん?」
いつの間にか彼女は、私が着ていた服の端を握り締めていて、そっと離そうとするが、離れない。
おいっ!??
「あの、どうすれば……………?」
頭が真っ白になったのは、言うまでもなく。
どうして、こうなった!!? 予想外だ!
明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますm(__)m
新年から、何か気になるお話になりました。アハハ、テンシロにも、ちょっとだけ、春が来ました?(笑)
まぁ、色々入れたかったんですが、キリがいいので、ここまでです☆
次回も宜しくお願いしますm(__)m