第139話 会議と確認です
次回は、1月3日予定です。はい、あくまでも予定です(;^_^A
結局、伯爵様がダウンしてしまい、あたしはマリア様とユト様との面会になりましたよ。
まぁ、お二人の事は、式神様に守ってもらってるから、基本的に問題は無いんだけど……………。今日の担当は、樹英様です。
「あっ! 魔術師さん!」
「こら、ユト!」
何故か、ユト少年に懐かれたのよ…………。そんなユト少年を、お母さんのマリア様は慌てて止めようとしたけど、効果はなく、ユト少年はあたしへギュッと抱き付いた。
「っ………!」
あんまりにも勢いが良くて、堪えきれない呻き声がもれちゃったわ。あたしと同じくらいなのよね、身長が……………。そんな二人の後ろからは、この伯爵家の息子、ダン少年が顔を出す。
「ねぇ、いつ、ユトの家を助けてくれるのさ?」
ダン少年は捻くれてはいるものの、何故かあたしのマントから手を離さない。えっと、懐かれてるのよね? 君はツンデレさんなわけ??
「明日、ユト様の家を助けてくれる、助っ人さんが来ます、だからもう少しだけ頑張って下さいね?」
穏やかにそう言えば、子供二人はパッと顔を笑顔に変えて、二人で喜びあっている。何ていうか、微笑ましい光景よね…………うん。あたしを巻き込まなければね!
あぁ、目が回る〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
「ユトッ! 魔術師様が目を回してらっしゃるわ、嬉しいのは分かるけど、もう少し落ち着きなさい!」
あの、マリア様? 子供に口で注意は分かりますが、優雅な貴方が、ユト少年の襟首を掴み、落ち着かせる姿に、何故か下町の肝っ玉母ちゃんを見ましたよ……………。下町は、あなた方を逞しくしたようですね……………。周りの方々が驚くどころか、諦めた目をして、視線をそらしているのを見ると、既に周りも周知の事実なんだろう……………。いいのか、侯爵夫人………………。逞し過ぎな気が……………、いや、いいのかな? 悲観されるよりは?
「あ、そう言えば、魔術師様………父上に何を言ったの? 父上のあんな姿、初めて見たんだけど………」
不思議そうに言われても、あたしは何もしてないわよ? あるお願いをしただけだもの。
「ん? あぁ、実はね? 町の人を全員、魔族が分からないように、こっそりと町の外へ呼んで下さいって、お願いしたの☆」
「「え?」」
何故か、お子様二人に、ポカーンとされた。と言うか、他の皆様も、予想外と言うように、ポカーンとしてた……………。え? だって、町の人達を呼んでもらわないと、お話にならないんだけど……………?
あれ? そんなにおかしい事かしら?
「町にかけられてる術は、命と引き換えに何かを召喚する術だとは、以前、話しましたよね?」
マリア様に言ったら、頷いてはくれたけど、まわりはギョッとしてた………………あ、周りは知らなかったのよね? まぁ、口は固いはずだろうし、大丈夫かな?
「それを解くのは、あたしも無理だったので、こればかりは伯爵様に頑張ってもらわないと…………ねぇ?」
つまり、伯爵様の肩に、町の人達全員の命がかかっている………と、言えてしまうわけよ。だから、伯爵様はあまりの事に、白目を剥いて失神しちゃったの☆
と、ここで頭の良いユト少年から、鋭い質問が。
「あれだけの人数、どこに置くの? 無理だよ、あれだけの人数を隠すなんて、魔族に気付かれちゃうよ!」
そう、普通に隠すには、場所が無いし、それだけの人数の気配を消すのも、かなり難しい。
まぁ、考えはあるんだけど…………。あたしの魔力、霊力をフル活用する羽目になりそうなんだよねぇ。
「それは、あたしがどうにか出来ますが、正直言えば、一人では難しいですね……………土や木属性の魔術が使える方々に、ご協力頂けたら嬉しいのですが」
苦笑いで答えたあたしに、話を聞いていたリゼス様が、頷いていた。
「伯爵が目覚めたら、相談しよう………すまないが、伯爵様の様子を見てきてくれ」
確か今は、夫人が付き添っていると聞いている。控えていた若い執事の一人が、スッと礼をして扉を出た。
「あ、そうでした、ユト様、奥様、お二人に渡した御守りを拝見出来ますか?」
すっかり忘れていたけど、二人には、御守りを渡していたんだったわ。たまに確認しないとね? …………………御守りで守れる範囲は決まってるから。
「御守り、ですか?」
キョトンと二人にされたけど、これは重要な事なのよ。もしも、御守りの力が弱くなってしまったら、守りきれない可能性もあるんだから。
「はい、せっかく来たので、変わりがないか、確認させてもらえれば、と思いまして」
二人は特に気にした様子もなく、首から下げていた御守りを、渡してくれた。
見たかぎりは、特に何の変わりも無い、二つの御守り。そう、見たかぎりは………………。あたしは、目をスッと細める。
「……………最近、変わった事はありました?」
御守りを閉じている紐を、そっと開く。勿論、二人からは見えないように。
「最近ですか? ユト、何かあった?」
夫人の方は、何も気付かなかったみたいね。ユト少年の方も、キョトンとしているから、気付かなかったらしい。一番狙われているから、ユト少年の方は、厳重に術をかけた御守りにしたんだし。
「そうですか…………」
あたしの手に、御守りの中からコロリと落ちる二つの石。色の無い“只の石”があたしの手に乗っている。勿論、二人には見せてないわよ?
『随分と、襲撃があったみたいですね、主』
影から、龍の声がする。事情を知っている式神様達には、隠さなくてもいいから楽だわ。それに、式神様は普通の人には見えない。霊力がある人達か、波長があう人達しか見えないからね。勿論、声も聞こえないわよ。
さて、この二つの石は、あたしの魔力を注いで作った魔石で作成したもの。これは元々、透明な水晶みたいだったのに、今じゃ只の石よ? 明らかに、強いモノが彼等二人に接触しようとしているって、分かるわよねぇ。悪意ある者から、守るようにってしていたから、もしかしたら、人間の悪意もあったかもしれないけど。それにしても、高々2日程で、効力が殆ど無い状態になるとか、おかしいわよね? これは準備を急がないといけないわよね。
「魔術師様、何かありましたか?」
沈黙して考え込んでいたからか、不安そうに夫人に聞かれて、慌てて意識を戻す。魔石は、魔力を抑える為に、それなりに作っていたから、御守りの中に、作ってあった変わりの魔石を入れて、紐を縛って閉じる。
勿論、自然な笑顔を見せて、何も問題ないように振る舞う。
「いえ、特には……………はい、お返し致しますね、必ずどんな時でも付けていて下さいませ」
二人に返した御守りは、確かに二人を守ってくれている。二人に馴染んだ様子が見えて、あたしとしても安心だわ。
「分かりましたわ、お気遣い、ありがとうございます」
「はい、魔術師様!」
嬉しそうなユト少年のキラキラした顔が、本当に不思議なのよね〜。あたし、懐かれるような事したかな?
と、そんな和やかな空気が流れる中、先程退出した若い執事さんが来て、素早く年配の執事さんに耳打ちした。
「はぁ…………旦那様が奥様といらっしゃるそうです」
年配の執事さん? 何故に溜め息なんです? それに、奥様もって……………まだ本調子じゃないのよね??
どうなってるの?
つーか、静かに事の成り行きを見ているリゼス様? 優雅に紅茶を飲んでますが、貴方も関係者よ!
「お待たせ致しました」
涼やかな女性の声がして、そちらを見れば、ダン少年そっくりの女性がいた。明らかに、ダン少年のお母さんだよね? そうか、君は母親に似ているのね。
「ほら、貴方も出て下さいませ」
奥様にバシッと、――――多分、背中をだと思うんだけど――――素晴らしい音と共に、伯爵様が飛び出して来た。
……………うん、母は強し、でいいんだよね? なんか貴族の奥様の割りに、逞し過ぎな気がするんだけど………………まぁ、大丈夫よね?
「……………どうも」
何だか居づらい感じの伯爵様、でも良いタイミングです♪
「もう大丈夫ですか?」
「…………………何とか落ち着きました」
そう言った伯爵様、まだ本調子では無いみたいね。でも奥様に説得されて、渋々出て来た感じかな? 奥様は、どこに行っても強いねぇ。伯爵様は何処か、臆病な部分があるからねぇ。
「それじゃ、伯爵様? 町に関してのお願いを聞いて欲しいんですが〜♪」
回復したなら、急いで準備に入らないとね。魔族がいつ動くか、分からないんだから、急がないと。
「伯爵、国に忠誠を誓うならば、頑張りましょうね」
リゼス様が笑顔で毒を吐いた………………。うわぁ、これ、もしかしてキレてる?
でも、何で?? 理由が分からないんだけど。
しかし、次の瞬間、伯爵夫人の一言で、理由が判明したのよ。
「そうですよ、貴方! 当伯爵家は忠誠心の家! この危機を乗り越えないでどうします!」
女傑とは、きっと彼女を言うんだろうね………………。伯爵自身は、婿養子だそうだし、奥様が居たら万事解決な気がするわ。
よし、町の事は、今のうちに解決しちゃうわよ!
お読み頂きまして、ありがとうございますm(__)m
お話が進まない……………。すいません、何とか早めに次の魔王誕生編に行けるように頑張るので、もう少しお付き合い下さいませm(__)m