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第138話 伯爵様は胃が痛いようです………

次回の更新は、20日の予定です。


朝のラッシュも終わり、お昼を過ぎた頃、あたしは無事に休憩に入れた。これから、町全体を見るつもり。術式を詳しく見るのと、何とか妨害出来ないかを確認する。

まぁ、あたしがチラッと見た限りじゃ、無理そうだけど……………。やっぱり、あの手を使うしかないかしらね?

あの伯爵様じゃ、色々大変そうだけど…………、まぁ、どうにかこうにかさせるしかないでしょうね………………。命に関わる訳だし。


「まぁ、やり方はあるしね、…………しんどいけど、やるしかないでしょ」


あたしが一番負担が大きいけど、手はあるのよ。だてに陰陽師はしてきてないわ。これくらい、喜んでやってやろうじゃない!

てな訳で、意気込み十分、町にやってきました〜☆

うんうん、やっぱり町は賑わってるわね〜。活気があって素敵だわ〜。綺麗な子達も沢山いてね〜。


『主人はん、そろそろ現実を見てや』


翠嵐の訛り入りの、余計なツッコミはいらないわよ! 伯爵家には、今、龍を向かわせているから、大丈夫でしょうよ。交代させながら、警戒は怠っていないんだから。………………言われたのよ、式神の皆様に。主人から長く離れるの、嫌だってね(;^_^A はぁ、仕方ないから交代制にしたわけ。

でも分かってるわよ、それくらい! でもまさか、こんな洗礼があるなんて、聞いてないわよ!!?


「ちょっと、聞いてるの!?」


「八百屋のトム君と、どういう関係よ!?」


「見たんだからね! あんたがトム君と一緒に歩いてるの!」


何でこうなったかと言えば、あたしが町をブラブラ………もとい、町にかけられた術を確認しながら、歩いていたら、この3人がいきなり道を塞ぎ、さらには脇道に連れていかれて、詰め寄られている、と……………。3人はそれぞれ、町中では可愛い部類に入る子達で、恐らくだけど、トム君とやらに懸想………いや、片思いしてるんだろうね。

でもさー? 君達?


「はぁ…………何か勘違いしてるようだから、先に言うけど…………仕事でクルル叔母さんに呼ばれて、ここに来てるのよ? それに、トム君? って、誰?」


そうあたしが聞いた瞬間、女の子3人組は、ポカーンとした間抜け顔をした後で、真ん中の子だけが顔を真っ赤にして、怒りを顕にした。


「誰って、あんたが昨日、一緒に歩いていた八百屋のトム君よ!」


うん? 八百屋? あー、そういえば居たっけ。そんな子………。


「あー………、居たわね、一緒に」


忙し過ぎて、記憶の彼方に飛ばしていたわ(笑)

あたしの微妙な反応に、またしても真ん中の子は真っ赤な顔をしてるけど、左右の子は逆に冷静になったらしい。真ん中の子を宥める役へと変わった。


「何よ! 一緒に歩けるのがどんなに奇跡的な事か、あんたわかってるの!? あたしなんて、まだ一緒に歩く事すら出来てないのに〜〜〜〜〜!!!」


「ちょっと、落ち着いて!」


「そうよ、ルルー! この子、トム君に興味無いみたいだし、ね、落ち着いて!」


真ん中の子、ルルーというらしい。だけど、ね?


「そもそも、トム君? とやらに興味無いし……………あたし、助っ人として呼ばれてるから、新しい人が入れば、王都に帰るの、帰ったら二度とこの町には来ないと思うし……………、それに恋してる暇ないのよね、今は忙し過ぎて………………」


あ、あれ? あたしが言う毎に、ルルーは少し落ち着いていくんだけど、最後の方へ行くと、哀れみの色になってた……………。何でよ!? てか、他の二人も可哀想な子を見るような目で、あたしを見ないでよ〜〜〜〜〜!?


『主人、自業自得じゃ』


樹英様まで〜〜〜〜〜〜! 仕方ないじゃない! 忙しいのよ!? 本当に!! だって、宿屋の仕事に、町中の術も気を付けないといけないし。伯爵家にもお願いしないといけないし、あのお子様二人が暴走しないか心配だから、監視は付けないといけないし。

今日も夕方、兄さん……もとい、リゼス様と伯爵邸に行かないといけないし。

…………………あれ? 恋をしている暇が、本当にない。


「でも、昨日………一緒に帰ったわよね?」


あ、せっかく落ち着いたのに、ルルーの一言で、空気が元に戻ってしまった。


「昨日はクルルさんに、買い物を頼まれたのよ……………まさか、アッケービがあんなに大きいなんて知らなかったから、持ちきれなくて、そしたら配達ついでに送ってくれた“だけ”だから」


だけ、の部分に異常な程に力を入れたら、まだ納得しきれて無かったようだけど、納得はしてくれた。


「でも、そうよねぇ、貴方みたいな小さい子じゃ、確かに大変だもんね」


「確かに」


おいっ! 左右二人!! 寄りにもよって、あたしが、あたしが一番気にしてる事を〜〜〜〜!!! それは、あかんヤツでしょ? ねぇ、あかんヤツだよね!?

急に泣き始めてしまった、サリーちゃん姿のあたし……………。うん、放っておいて下さいな。3人が慌てていたけど、あたしは知らん! 傷を抉ったのは、こいつらだもん!


『落ち着くんじゃ、主人』


樹英様が宥めてくれたけど、落ち着けるか――――――!!

何で寄りにもよって、気にしてる事を、知らない人達に言われないといけないのよ!!?


「ちょ、泣かないで!」


「悪かったから!」


「……………と、とりあえず! 注意はしたからね! 行くわよ!」


あ、逃げた―――――。

あたしと、式神様達の内心は、この時、同じだったと思う。


『主人〜、あいつらに悪戯してもいいか? 何か腹立つんだよな〜』


札から、緋ノ斗の呑気な声がしたけど、はっきり言って、物騒な雰囲気が漂っているのを感じたわよ!?

はぁ、もういいや…………。疲れたし。


「却下っ! あんたがしたら、余計な事しかしないでしょ!? そんな感しかしないわっ!」


『チェッ、久し振りに遊べると思ったのによ〜』


「可愛く言っても、出さないわよ? 今、龍が居ないしね、あんたを出しても押さえられる自信ないわ」


だって、魔族が来たら、恐らく相手が出来るのは、緋ノ斗か龍、後は翠嵐が行けるか………だもの。春は守護限定だし、お爺ちゃんには足止めは出来るけどね。それに、忘れているかもしれないけど、こいつは戦乱狂……………。戦い出したら、強制封印だからね〜。これしたら、あたしは無防備になるから、無理だわ。強制封印はかなり力を使うからね。


「さ、いつまでもこうしてらんないし、この術を更に詳しく見るわよ」


勿論、あたしは見るだけ。それ以上は、相手にばれてしまうから、いや、もうばれてそうだけど。それでも、気を付けるにこした事はないしね。


「夕方前には帰らないとね、また行かないといけないし」


伯爵様は胃を痛めてしまうだろうけど、この町の為だもの♪ 頑張ってもらいましょう♪♪



◇◇◇◇◇



あたしが宿屋に帰ると、クルルさん達は束の間の穏やかな休息を取っていた。紅茶の良い香りが、室内を包んでいて、思わずほっこりしてしまったわ……………。


「お帰り、早かったね、サリーちゃん」


「ただいま、叔母さん」


「夕方に出るんだろ? 早く準備しておくといいよ」


実は宿屋の一室に、この前、伯爵家へ行った時の、謎の人物(笑)二人の部屋を準備してくれたの。つまり、あたしとリゼス様は、その謎の人物(笑)になって、また伯爵家へ行くわけよ。せっかくの偽装工作だもの。


「はい、また夕方のお手伝いが出来ないのが申し訳ないです……………もう少ししたら、出ます」


今日の話し合い次第で、一気に忙しくなってしまうと思う。そしたら、あたしはここへは当分、帰れなくなってしまう。


「気にしなくてもいいんだよ、それぞれ役割があるんだから、気を付けていっといで!」


あぁ、本当に……………何処か懐かしく感じるのは、叔母さんの雰囲気かもしれない。お母さんも、よく、気をつけてねって、あたしを出してくれたっけ。


「はい、行って来ます!」


安心させるように、心から笑顔を向けた。ありがとうって思いながら。



◇◇◇◇◇



夕方、前回同様に、マントのフードをすっぽり被り、あたしとリゼス様は、クルルさんに丁寧に見送られながら、馬車に乗り込んだ。


「リゼス様、今回、あたしはか〜な〜り〜、無茶を伯爵様に言いますが、フォローをお願いしますね」


「……………何をするつもりですか?」


あ、警戒されたわね。口調が固いもの。でもね?


「町の住民達を助ける為ですよ、全員ね」


あたしはその為に、この町に来てるの。無茶だろうが、何だろうが、してやるわよ。その為なら、悪役だろうが、やってやるわよ!


「なら、フォローします、私は貴方のフォローの為に、付けられたのですから」


あれ? 何だか楽しそうな気が……………?


「さぁ、伯爵家に着きましたよ、貴方の肩に民の命が懸かっていますから、――――――期待していますよ」


馬車が止まったのが、振動で分かったけど、リゼス様の最後の言葉に、カチッと固まったわよ!! い、今まで言われた事が無かったし、何より顔が………表情が、優しくて。多分、赤くなってる、あたし……………。良かった、フード被ってて。

前回同様、執事さんに応接間へ案内された。相変わらず、素晴らしいお部屋だこと……………。


「ごきげんよう、伯爵様」


「お世話になります、ファーニアス伯爵」


あたしとリゼス様の挨拶に、出迎えた伯爵様は、丁寧に受けた後、席を勧めてくれた。


「どうぞ、お座り下さい…………して、何か魔族の対策案でも出ましたか?」


どうやら不安だったようで、単刀直入に聞かれた。伯爵様? 落ち着かなくて大丈夫なの……………? この伯爵領の未来が心配なんだけど。


「実は、その件で、お願いがありまして…………」


あたしが語ったお願いに、事前にお願いしたリゼス様でさえ、一瞬ギョッとしたみたいね。

最後まで聞いた伯爵様は、青い顔で白眼を向いて倒れてしまったのでした………………。


すまん、伯爵様。やりすぎてしまったかしら?


お読み頂きまして、ありがとうございます!


今回は、少しは進みましたよね? ね? 伯爵様の胃が可哀想ですが、民の為に犠牲になってもらいましょう(笑) 次回は翔太が来ます……………。まぁ、普通に来れないのは、お約束ですよね☆


次回も宜しくお願いしますm(__)m

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