第137話 厄介事が起きてます……
間に合った………ふぅ。
次回は、13日の予定です!
「さぁ、リゼス様、しっかりお話して下さいな? ここの安全の為にも、厄介事の芽は摘まないと」
あたし、笑顔を向けているのに、おかしいわね? リゼス様の顔色が青白いんだけど……………。
『主よ、取り敢えず、笑顔を止めた方がいいぞ? 笑顔が怖すぎじゃ』
お札から樹英様に注意を受けちゃったわ。マジか…………。
樹英様の声は、勿論、リゼス様は聞こえてない。恐らく、あたしの笑顔に引いたものと思われる…………グッスン。
「えっ、べ、別にこれは………」
何か言えない訳でもあるのか、視線をさまよわせ、汗をダラダラ流す彼に、あたしは先に自分の見解を述べる事にした。待ってる時間が勿体ないよ!
「話すつもりがあるのか、無いのか知りませんが、先に言わせて貰います――――――あれ、前々からでしょう? 分かってます? かなり危険なモノですよ? 側近なら、主人を煩わせないように、早々と手を打つべきでしょ? 普段は御守りか護身の何かで守れても、今の貴方は護りきれてない! 大事な任務の最中なんですよ? 分かってます? さぁ、分かってるなら、さっさと原因を話して下さい! あたしが解決しますから」
「は、はい!? ん? え!?」
一気にまくしたてたからか、リゼス様は戸惑うより、パニック状態になってるもよう…………。まぁ、混乱してたら話せるだろうし、結果オーライかな?(笑)
「さぁ! 早く早く!」
あたしが更に急かすと、何処か諦めたような彼は、大きな溜め息の後、ポツリポツリと話始めた。
「……………私は、側近と言う名の、影なんですよ…………」
何処か、寂しげな声に、違和感が伴う。側近と言う名は、名誉な事のはず。なのに、何でそんな寂しそうな顔で、影だと言うのか。
「王家は、いえ、宮廷は、権力を狙う者達の巣窟なんです、王子は特に狙われやすい…………だから、王子を守る為に、身代わりを用意するんです、側近の中から………各王子に居ますよ、影の側近は」
うわぁ、知りたく無かった、王宮闇情報! 身代わりを用意しないといけないくらいには、ドロドロしてるんだね!? 今って、平和じゃないのかよ!?
「リゼス様も、身代わりを引き受けたのは分かりましたが、あれくらいなら、宮廷魔術師やら神官程度で祓えますよね? 身代わりを置く理由が分からないんですが?」
あたしが見てきた魔術師達は、この程度ならば、呪いくらい祓えるくらいの実力者が居た。神官も然り。身代わりが必要とは思えないんだけど?
「まぁ、今の王宮は落ち着いてます、これは万が一の為ですし、身代わりは必ず置かれるんですよ、フランツ様以外にも居るのですから、王子は」
そういえば、フランツ様は王太子では無かった。母親が身分が高い血を引いているとは、聞いた事があったし、有力候補らしいとは、聞いたけどね。
つまり、何かい? 自分の子供を王にしたくて、くだらない呪いに手を出した馬鹿が居ると??
思わず、半眼になったあたしは、悪くないわよ?
「検討はついてるの? こんなアホをやらかす馬鹿の」
あたしの声が、思ったより、低い。リゼス様が引いた気がしたけど、関係ないわね。いつまで待っても返事が無いから、視線を向けたら、何故かそらされた。
あら、言いたくないのかしら?
「リゼス様〜♪ 教えて欲しいなぁ〜♪」
「いやいや!? 貴方、目が笑ってないでしょ!?」
リゼス様にツッコミされても、問題な〜し☆ だってさー?
「ここで潰しておかないと、面倒でしょう? フランツ様に害成す輩を、放置するの〜?」
あたしの言葉に、ようやくパニック状態から解放されたようで、あっと間抜け顔をして下さいましたよ(笑) そして次の瞬間、いい笑顔をあたしに向けたんだけど…………あ、あら? 何だか、空気が冷えてきてないかしら? おかしいわね??
「フ、フフッ………僕は、何を見誤っていたのやら…………殿下の邪魔になる奴等が居たら、排除が必要だと言うのに!」
え? えぇ〜〜〜!?
何か、変な方に吹っ切れてない? いや、いいのかしら?? リゼス様の内心が、どういう考え方か分からん!
「えっと、さっきのは、術者に返したけど……………」
困惑したあたし、悪くない! リゼス様のこんな顔を、知らないもの!
「ありがとうございます! 貴方が居れば、影をしていても安心ですね☆」
……………ん? あたし、リゼス様やフランツ様の、御守り役決定?
まぁ、これくらいならいいのかしら?
……………考えるの面倒だから、後回しにしましょう。
「で? 一体全体、馬鹿をやらかしたのは何処の誰なわけ?」
あんな呪咀紛いの事をやらかす馬鹿よ? 初犯な訳がない気がするし。
「そうですね、厄介事は早々解決したいですし……………検討は付いてますよ? あそこはたまにやらかしますからね…………誰かが焚き付けたのかもしれません」
「だから、何処の誰なの?」
あたし、聞いてるんだけど…………何故か分からないけど、温度が下がってないかな? あれ? 部屋ってこんなに寒かったかな??
「そこですか? 家名は、クダーラナイ家で、爵位は侯爵です、陛下の後宮にいらっしゃいますよ、ご令嬢がね」
………………はい?
寝耳に水な発言があったわよ!? 後宮? クラリオン王国には、後宮があったの!?
「クラリオン王国って、後宮あったの!??」
あたしのすっとんきょうな声での問いに、思いっきりそれた質問にも、リゼス様は普通に答えてくれた。いや、呆れていたかもね(;^_^A だって、知らなかったんだもん! 此方に来て8ヶ月。知らない事は沢山あるし、あたしは基本的に魔術師達と居るから、王宮のドタバタから遠いのよねぇ。まぁ、勇者を守る為に、意識的にやっているから、仕方ないわよね。
「ありますよ、陛下は少ない方で、正妃様の他に、5人の側室が居ます……………ただし、子供は全員が正妃様の子供扱いされますし、母親と呼ばせる事は禁じられていますが、会う事は正妃様は容認していらっしゃいます」
あぁ、ちゃんと対策が取られているわけだ。まぁ、この言い方だと、歴代には会う事すら禁じた方がいるようだけど。
「そうなのね、話を戻すけど…………その家、残さないとダメ?」
一応、伺うと、リゼス様はと〜っても良い笑顔を向けてきた。あ、そういう事?
「んじゃ、証拠を揃えて、その家には隠居でもしてもらいましょうか〜♪」
この部屋に居る二人は、良い笑顔〜♪ その家、終わったな。
取り敢えず、リゼス様の問題は解決したわね☆
さぁて、部屋から出ましょうか。
◇◇◇◇◇
既に時刻は、5時45分。
まだ時間に余裕はあれど、そろそろ動かないと、朝の仕事が大変だろう時間。あたしが結界を解いて部屋を出ると、心配そうに此方を伺う、クルルさん、ジョンさん、ノーラさんの姿が。あたしが出てきて、僅かに緊張が走ったけどね。
「サリーちゃん、リクリス君は大丈夫なのかい?」
クルルさんの心配がいっぱい詰まった声に、安心するように微笑んだ。
「大丈夫ですよ、叔母さん☆ 今、着替えてますから、直ぐに来ますよ」
その言葉に、困惑気味な皆さん。特に、苦しむ姿を見ていたジョンさんの困惑は、一番高いかも。
でも、直ぐにリゼス様、リクリス兄さんが出て来て、困惑は跡形もなく消えた。皆の顔が安堵に変わって、此方側からしたら、申し訳なく思うわ。
だって、朝は忙しい時間なんだもの。そんな貴重な時間を潰してしまったんだから。あたしより、リゼス様かな。自分の事で、迷惑をかけてしまったから。
「何事も無くて良かったよぉ」
「あぁ、どうなるかと心配したよ」
「もう! 何事もなくて良かったわよ〜」
でも、返ってきたのは、叱る言葉では無くて、リゼス様を心配する言葉。本当に、この宿屋で良かったよ。
「ご心配をお掛けしました………」
「気にしてないよ、さぁさ、二人共、ご飯食べちゃいな! これから忙しくなるんだから、しっかり食べるんだよ!」
クルルさんの思いやりが嬉しくて、あたし達を含めた皆で、急ぐようにご飯を食べていく。
メニューは、丸いパンに、何かの肉を焼いたもの、目玉焼きにサラダと、シンプルな物だったけど、懐かしい家庭の味に舌で味わいながら、6時には食べ終わっていた。あたしはお客様が出るまで、仕事が無いから、ノーラさんとプライベート空間である居住区の掃除をするように、クルルさんから言われた。
今日は、午後から自由にしていいそうなので、町の対策をしに行くつもり♪ 町全体だから、式神様を探索や調査に使えないのが、キツいわ。でも、翔太が魔族を片付けてる最中、あたしも動けるから、それまでが勝負ね。
さぁて、まずはお仕事を頑張りますか!
お読み頂きまして、ありがとうございます♪
テンシロも、ここまで来ました。長かった〜☆ まだまだ続きますが、これからも宜しくお願いしますm(__)m
さて、本日のお話では、色々ばれてます(笑) リゼス様、こんな設定作ってないよ!? いつの間に増えたのよ!?
な、秋月もパニック状態なお話でした(;^_^A
次回も宜しくお願いしますm(__)m