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第135話 青春は辛くも苦いもの

次回は15日の予定です…………。


無事に宿の裏口に着くと、リゼス様が居た。あ、今は色を変えているから、兄さんと呼ぶべきよね。兄さんは、あたしを見ると、優しく微笑んでくれた。

………………美形だけに、心臓が跳ねたのは内緒よ。


「お帰り、サリー」


「に、兄さん? 何でここに?」


訳が分からず、尋ねたあたしに、リゼス様は普通に答えてくれた。


「ジョンさんに、配達された荷物を、入れといてくれと、頼まれたんだよ……………ところでサリー? そちらの少年は誰だい?」


前半は優しい兄の顔なのに、後半の部分は冷ややかだった。ん? あたし何かやらかしたかしら!?


「え? えっと、こちらは、八百屋さんの息子さんで、トムさんと言うの、頼まれた物が多くて、あたし一人じゃ持てないから、配達のついでに送ってくれたの、凄く力持ちなのよ」


「サリーのお兄さん、初めまして、トムって言います、今後とも是非とも、うちをご贔屓に」


きちんと好少年ぶりを見せるトムさん。同年代の子達よりも、しっかりしてるだろう。あたしら二人共に、実は年上なんだけどね(笑)


「此方こそ…………、サリー、ジョンさんとクルルさんに、荷物が届いたって伝えてくれる?」


「うん、それじゃぁね、トムさん」


顔は優しいままなのに、声が断ってはいけない何かを含んでいて、あたしは素直に中に入ったわよ。例えそこに、泣きそうな顔のややカッコいい部類に入る少年が居たとしても、ね。



◇◇◇◇◇


Side:リゼス



サリー……もとい、サキさんが建物に消えるのを確認すると、今まで彼女に向けていた笑顔を、サッと消しました。野郎……男に、この表情は必要ないでしょう。


「さて、トム…さんでしたか? うちのサリーは買い物に行ったはずですが、何故にキミが一緒に来たのか、教えてくれるでしょうか?」


ニッコリと、冷笑を向けます。最初が肝心です、最初が。勿論、クルルさんやジョンさんに、迷惑をかけるつもりは、毛頭ありませんので、そこは気をつけるつもりですよ。

ただ声をかけただけなのに、少年の肩がはね上がったのは、仕方ないかもしれませんが。


「え!? いや、オレは母ちゃんに配達言われただけですよ!? ついでに、サリーを送るようにって、荷物があったから、一人じゃ持っていけない量だし!」


必死に言い訳してますが、内容は先程、サキさんが言ったとおり。しかし彼、気付いてないのですね? いや、わざとではなく、無意識でしょうか?


「そうですか、サリーの荷物が多いから、君はお母さんの言い付けで、配達のついでにサリーを送ってきたのですね?」


ニコッと好青年のような、爽やかな笑みを浮かべると、彼はホッとしたようで素直に頷いた。


「ところで………、キミは何故にサリーを“呼び捨て”にしているんです?」


そう聞いたら、彼は一瞬、意味が分からなかったのかキョトンとして、理解した後は、青ざめていた。ん? 青ざめてしまうような事は、聞いていないはずだが?


「すいません!! 年下だから………、あ、この辺りじゃ、それが当たり前だったんで…………つい」


おや、そういう文化がありましたか。ならば仕方ないですね。腹立たしいんですが。物凄く腹立たしいんですが。今の我々は、クルルさんに、お世話になっています。迷惑はかけられません。大変不本意ですが、ここは穏便に済ませましょうか。


「そうでしたか…………てっきり、妹に一目惚れでもしたのかと…………両親から頼まれていますからね」


笑顔で安心するように説明すれば、ん? トムの顔が赤い!? まさか、本当に一目惚れか!?


「オレ、年下に一目惚れはしませんよ! 恥ずかしいな……………可愛いとは思いますけど、田舎の町の八百屋に来るような子じゃないでしょ? 礼儀正しいし、言葉遣いは綺麗だし……………」


確かに、サリーは王都の子のように、言葉に訛りはない。礼儀正しいし、博識であり、度胸もある。あの魑魅魍魎達を相手に、一歩も引かない戦いを見せる。魔族等、おもちゃあ…ゴッホン、実験台扱いである。まさか、敵のはずの魔族に同情する日が来ようとは…………。黄昏たのは、仕方ないはずだ。あまりにも容赦が無かったのだから。

だが、目の前の少年は、妹分を見る感覚だったのだろう。自分には分からない感覚だけれど、それなら安心だろう。私には兄と弟しか居ませんからね。


「そうか、それなら安心だ、これから、妹を“友達”として宜しくお願いするよ」


改めてそう言えば、ようやくホッとしたようで、トムは顔を緩めた。そこまで緊張する必要はないと思うんだが。

と、何か思い出したのか、ハッとしたように頭を抱えてしまった。


「だぁ〜〜〜〜〜〜!? あいつは不味いだろう!」


急に騒がれて、流石に驚いた。彼は此方を忘れたように、何かを考えている。


「そうだ! サリーの兄ちゃん! あいつ、あいつには気を付けろよ? 女たらしのアーサー! あいつは、女と見たら誰これ構わず、口説きまくる男だ……………サリーは可愛いし、気を付けてやれよ、サリーの兄ちゃん、んじゃ、確かに届けたからな! お代はクルルさんに貰うよ」


「あ、あぁ、分かったよ、ありがとう、トム…………」


あまりの勢いに、唖然としている間に、トムはさっさと帰ってしまった。何だったんだ、あの勢い。


「さて、片付けるか」



◇◇◇◇◇



「クルルさん、只今帰りました!」


二回の食堂に顔を出すと、クルルさんとジョンさんは、ちょうど後片付けをしているところだった。此方を見た二人は、優しく微笑んでくれた。


「お帰りなさい、サリーちゃん」


「おう、お帰り」


この宿は、二階が食堂であり、泊まり客しか使わないので、決まった時間以外、基本的に人が居ないのだ。普段は、女将さんが受付に居て、ジョンさんは仕込みで食堂に、ノーラさんとマリアさんが、部屋の掃除等で動き回っている。今はその二人は、一階で受付をしてるそうだ。


「無事に行けて何よりだよ」


ニッコリと微笑みを浮かべたクルルさんだが、わざと道を間違えて教えてくれたお陰で、思わぬ発見が出来たから、よしとすべきかもしれないわね。


「はい、何とか行けましたよ、帰りは息子のトムさんが配達ついでに送ってくれましたから助かりました、あ、ジョンさん、兄さんが荷物を運ぶと言ってましたが」


「おぉ、分かった…………あ、しまった、伝え忘れた事があったな…………ちょっくら、下に行ってくるわ」


ジョンさんが階段を降りていき、あたしとクルルさんが残る。


「サリーちゃん、アッケービでも食べようかね? 夕方になったら、また忙しくなるからね」


「わあ! 初めてなので、楽しみです♪」


「そうなのかい? なら、休憩がてら皆も呼ぼうかね?」


なんて和気あいあいと、あたし達は一階のダイニングへと向かったのでした。



◇◇◇◇◇



さて、ダイニングで用意されたアッケービを舌鼓♪

初めてだから、ワクワクしてるわよ〜♪ だって、この世界のフルーツって、本当に美味しいんだも〜ん♪♪ 美容にも良いって聞いたら、尚更、楽しみになるってもんよ!


「サリーちゃん、そんなに見つめなくても、逃げやしないよ!」


笑いながら、クルルさんに言われてしまった…………。そんなに、あたしはジーッと見ていたかしら?(汗


「さぁ、これがアッケービだよ?」


そうして出されたのは、あけびの見た目なのに、紫色の中身をした、なかなかにビックリなもの……………。種も親指の爪みたいに大きいという違いはあるけど、基本的にあけびよね?


「クルルさん、どうやって食べるの…………?」


こう、輪切り? のように、皮ごと寄越されたんだけど……………、初めてだから、食べ方が分からん!


「フフッ、サリーちゃん、私が教えるわ! もうっ、可愛い過ぎる〜! 私も妹が欲しかった〜」


ノーラさんの妙に高いテンションが、かなり恐かった……………。引いてしまったのは、申し訳ない事だけど、テンション高過ぎるのよ!


「ノーラ、教えるなら早くしな! サリーちゃんが食べれないだろう」


「あ! ごめんね、サリーちゃん…………えーっとね? 種を避けて果肉だけ食べるの、皮は苦味があるけど、揚げたり、刻んで野菜炒めに入れると美味しいの、種は煎ると弾けてお菓子になるのよ」


わぁ、凄いわ。そんなにあるとは思わなかった。実を食べて、種は取り除いて、クルルさんがくれた器に、皆が入れているので、真似して入れる。

実の味は………アケビの甘さに、ブドウの果肉の歯応えだったわ。でも、さっぱりしているから、食べやすい果物だと思うの。あたしは気に入ったわ☆


「サリーちゃん、明日は種のお菓子をおやつにしてあげようね」


「本当に!? ありがとう、クルルおばさん!」


こんな賑やかな席が、ずっと続いたらいいのになぁ。あたし、頑張って魔族を撃退しないとね! 心の中で、あたしは決意を新たにしていたけど、やっぱり美味しいから。


「クルルおばさん、おかわり!」


大きな声で、おかわりをお願いしたのでした(笑)


お読み頂き、ありがとうございますm(__)m

今回は何やら日常的なものになりました……………。おかしい、早く次へ行くつもりだったのに!


ちょっと、スランプさんが来たのと、日常がドタバタしてまして、執筆時間がピンチです(T_T)


次回こそ、大きく進む予定です!


登場人物一覧3を更新してあります。

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