第134話 助っ人さん、いらっしゃ〜い☆
次回は8日に更新します。
「おはよう☆ 翔太、久しぶり〜♪」
朝4時と朝早くから、翔太に嫌がら…ゴッホンゲッフン、翔太に通信したの。チャンネルに出た翔太は、久しぶりだったけど、変わり無いみたいね〜。朝早くだから、ヨダレくらいは付いてるかと思ったんだけど、どうやら起きていたらしい。寝癖も無いとか、何時に起きたのよ!?
チッ、嫌がらせの意味無いじゃん!
………あ。
『おう、咲希か? 何かあったのか? こんな朝早くから』
さらりと流された……………。流石、翔太ね。この程度じゃ、動じたりもしないか。
「ちょっと予想外の事態なの、力を貸して欲しいのよ」
あたしの説明に、怪訝そうな顔の翔太に、苦笑しかないわ。だって、あたしも同じ顔をするって、分かってるからね(笑)
「実はね、ここに二人も魔族が居たのよ……………、あたしは最初の依頼の方はどうにかなるんだけど、もう一人の魔族が厄介でね?」
『はあ? 厄介って何だよ、厄介って……………お前だったら、2人くらい余裕だろ?』
翔太が真顔でツッコミ入れて来たけど、こっちにだって、出来る事と出来ない事があるの!
「仕方ないじゃない! ある貴族の奥方に化けて、その家を乗っ取ろうとしてるのよ、旦那や屋敷の働いてる人達が、人質になっちゃってるわけ…………こっちがあるから、あたしも動けなくて」
『はあ〜!? 何だよそれ! ありえねぇ………………ん? ちょっと待て、まさかそこって、ブローティア侯爵家じゃないよな?』
あら、知ってるんじゃない! でも、何で?
『その顔は当たりか…………はぁ、しゃーねぇな、行くよ、助っ人にさ』
「どういうこと? 何で翔太が知ってるのよ?」
あたしは社交会には、疎い方だし、エリー様に相談してから、パーティーに出てる。基本的に、パーティーには、ほとんど出てないわけ。勇者が出ると、煩いのよ。利権やら何やらで……………。
『あー、実はな? この前の国境戦から帰ってから、スザリオン王子………ウエステリアの勇者の歓迎会があってな、そこでフランツ王子が変な話をしていたからなぁ、そこの夫人が別人だって―――――それを覚えてただけさ』
成る程、その経由なわけ。ニヤリと悪戯っ子の顔をする翔太。実力はピカ一なのに、本当に残念よねぇ。前の世界の方々は、これを調教したのよね? 本当に凄いわ。
「成る程ね、それじゃ、まずはこっちに寄ってくれる? 事情とかも詳しく話せるし」
『分かった、そんじゃ後で連絡するわ』
こうして、朝の通信は無事に終わったのだった。
◇◇◇◇◇
只今、あたしは町に買い物に来ております☆
え? 理由? クルルさんに、買い物をお願いされたからよ。イヤー、クルルさんには頭が上がらないわ。昨日の事、まだ気恥ずかしいけど、ちょっと吹っ切れたもの。
で、頼まれたのは、ちょうど足りなくなったらしい果物。いつもは運んでもらうそうだが、家で食べる分なため、あたしがお使いに出されたのだ。買うのは、アッケービと言う旬の果物で、下町の皆がこの時期たべるんだって。
「確か………ここだっけ? 曲がったら、5件目に果物と野菜を置いてるって…………」
あたし、クルルさんから教えて貰った通りに、道を進んでいるんだけど、………………おかしい。だって、5件目は八百屋じゃない。武器屋なんだもん。
「龍…………あたし、どこを間違えたのかしら?」
ちょっと涙目になるのは、勘弁して欲しい。初めての場所で、迷子! あたしはお使いも出来ない、お子様か!?
『主、間違えていない故、女将が間違えたのでは? 八百屋は、隣の通りにあったぞ?』
……………さいですかい!
女将さん、きっとわざとやった気がするわ。もしかしたら、気を使ってくれたのかもね。少しでも早く、町に馴れるようにって。だからって、道を間違えて教えるのは、スパルタな気もするけどさ!
「でも、本当に嫌な気配がするわね」
地面のあちらこちらから、魔力が漂っているの。町の人達も気付いているはず。けれど、どうにも出来ない事態だから、あたし達が極秘に呼ばれたのよね。
「裏庭で詳しく術を見たけど、この町にいる人間が対象になっていたわ……………そっちは、どうにか出来るけど、術そのものは無理ね、解呪するには時間が足りないし、面倒だわ」
術には色々と面倒な機能が付いていて、あたしも無理には触らなかった。あくまで確認をちょろっとしただけ。相手も気付いてすらいないでしょうよ。
「えっと、八百屋さんは、こっちの道を……………ん? あれって……………」
あたしの前を、スタスタ歩いて行ったのは、間違いなくあの日、会った人物だ。慌ててその人物を追い掛ける。………………けれども、はたと気付いた。今のあたしって、サリーなのよ。勇者じゃない。サリーが知らない人物に近づくのは、良くないわよね。
「果物を買って、帰らないとね」
思ったより人が居るから、ぶつからないように歩きながら、あたしは目的地に無事につけた。本当に良かったわ〜。
「すいませ〜ん」
声をかけたら、すぐに豪快に笑う小父さんと、明るい肝っ玉母ちゃんみたいな、小母さんが来てくれた。あたしを見て、接客の顔をしたけど、明らかにお子様と思われた……………いや、サリーは10歳なんだから、きっといいのよ。うん、涙なんか流してないもん!
「なんだい? お嬢ちゃん、お使いかい?」
やっぱり…………。対応が子供だわ(笑)
「クルルさんから、お使いを頼まれたんです、アッケービありますか?」
クルルさんの名前に、訝しげにした小父さんに、思わず苦笑い。そりゃそうだ、まだあたしらが来た事は、知らないだろうからね。
「はて、クルルさんとこに、お嬢ちゃんくらいの子はいたかね?」
小母さんは気になってるみたいね。接客してるから、顔には出さないでいるけど、興味津々なのはバレバレだ。
「昨日からお世話になってます、クルルさんとこ、人手が足りないから、新しい人が来るまでの繋ぎで来たんですよ、私、クルルさんの親戚筋なんで呼ばれたんです」
そう、サリーらしく答えたら、二人は納得したのか、偉いねと口々に褒めてくれた。アッケービは、多分、気付いた人も居るだろうけど、元の世界のアケビみたいな果物だったわ。サイズが、メロンくらいあるけどさ。デカ過ぎでしょ!?
「何個か聞いてるかい?」
「三個って言われました、でも、私じゃ持ち帰るの無理かも…………」
弱った………、このサイズだとは、あたしも知らなかったから、帰りの事まで考えてなかったわ。
「あぁ、ちょうど良い、息子に手伝わせるよ、力はあるから、荷物持ちにいいだろ、ついでにクルルさんとこに配達もあるからね」
と、あれよあれよと、息子さんが呼ばれてしまった……………。え、どうすんのよ、この状況!?
「母ちゃん、配達はまだ…早い…………」
後ろから出て来たのは、二人にそっくりなんだけど、あたしとそう変わらない、いや、サリーよりは年上の13歳くらいの少年だった。日焼けしてるし、筋肉があるから、大きく見えるけど、悪い人ではなさそうね。
「キミ………名前は?」
どこか呆然としたままの青年は、まぁ、カッコいい部類に入るだろう。まぁ、残念ながら、美形を見慣れてしまったあたしは、なーんにも感じないんだが。
「サリーと言います、配達、宜しくお願いしますね………えっと?」
何て呼べばいいのだ? この人のこと。
「あ、俺は、エドって言うんだ、宜しくな! サリー!」
………………呼び捨て?
とはいえ、サリーなら恥ずかしそうにするべきだろうね。はぁ、面倒だわ。
「よ、宜しくお願いします…………?」
何だか、ご夫妻から生暖かい視線を頂いた。まさか、あたしが青春の真似事する羽目になろうとは……………はぁ〜。
「さあ、バカ息子…………とっとと、配達行け」
ぶっきらぼうな小父さんの声に、我に帰ったらしいトムは、小父さんに憎まれ口を言いつつも、さっと動いた事から、いつもの事なんだろう。
「んじゃ、行ってくる! 終わったら、サリーを案内してやるよ、俺、この辺りは配達してるから、詳しいんだぜ?」
あら、まぁ。まさかのお誘い!? てか、こいつはあたしが断るとは、思ってなかったみたいだわ。顔が赤いわね、彼。
「……………すいません、この後、帰ったら手伝いをする事になっていて」
申し訳なく見えるように、上目遣いで言うと、あら? トムさん、赤い顔して視線をそらし、さらに口を手で隠してしまった。
うわぁ、純粋だわぁ〜〜〜〜。あたし、しばらく城の魑魅魍魎の居る場所に居たからか、何だか眩しく見えるわ。
でも、今はサリーだから、サリーらしくね☆
「トムさん?」
首をかしげてみたら、何故か背を向けられた。えー、それはどういう意味よ?
「トム! さっさと行っといで!」
女将さんの言葉に、我に帰った様子のトムさんは、あたしを見ないようにしつつ、頼まれたらしい荷車を引きながら、あたしと共に、宿屋へ向かったの。耳が赤いのは、見てみぬふりをしてあげるわよ(笑)
帰り道、思わぬ青春に、これからどうしようと、内心、頭を抱えてしまったのは、仕方ないと思うのよ………………。
いつもお読み頂き、ありがとうございます♪
ようやく出来ました〜。
何やら、咲希ちゃんもといサリーちゃんに、青春の予感☆ 次回はリゼス様もといお兄ちゃんが、火花を散らす!?……………なんて展開に出来たらいいなぁ(笑)
次回も宜しくお願いしますm(__)m




