第131話 お話がややこしくなりました……
次回は27日の予定ですが、メンテナンスがあるそうなので、どうなるか分かりません。ご了承下さいませm(__)m
「さぁて、リゼス様? 此方も一段落しましたし、そちらの方共々、事情を説明して下さいな?」
自分では可愛らしく首をかしげたつもりだったんだけど、二人とも、顔色が悪いような? 暗いからかしら? きっとそうよね?
「えー………此方は、ジルと言いまして、私の知り合いです」
言いにくいのか、言葉を濁しての話し方に、ここでは話難い事なんだと気付いたわ。
「は、初めまして、魔術師殿…………お陰様で助かりました」
微妙に腰が引けてるけど、丁寧に頭を下げたところに、育ちの良さ…いや、癖みたいな物を感じたわ。ジルさん、誰かに仕えている人なのかも。あくまで予想だけどね。
「今から、あたし達は伯爵様のところへ行くの、もしかしたら………どこかで会えるかもしれないわね?」
含みを持たせて話すと、慣れているのか、普通にしてたわ、この人。やっぱり、あたしの感は的中かしら?
「えぇ、また会えるかもしれませんね、近いうちに」
成る程、ね。伯爵様の関係者と。
「ウフフ、さぁて、龍はどうかしら? 翠嵐、実況願える?」
スラリと姿を現した翠嵐は、しかし、戸惑った顔をしている。ん? 珍しいわね、この子がこんな顔するなんて。
『主人はん? あんな?』
言いにくそうにしてる間に、馴れた気配が近づいて来た。え? どういうこと!?
『主人、申し訳ありません、逃げられました…………』
あら、珍しい。龍が逃げられるなんて。久方ぶりに見た、龍の人の姿は、あたしが見上げないといけないけれど、凛々しい整った顔立ちは、今やシュンとして、まるで犬が落ち込んでいるみたい。
「仕方ないわ、気付いた事はある? 翠嵐は、ありがとう、戻っていいわ」
仕方ないわよね、龍が逃げられるなんて、あたしも信じられないからさ。
『申し訳ありません、どうやら異空間の使い手のようです、目的は恐らく、あの子供かと』
「子供? なら…………、あら? その子供、どこに行ったの?」
恐らく、親が連れて帰ったのだと思うけど、狙いが子供なら、危ないじゃない!
「翠嵐! 子供の居場所は!?」
『は、はい!? あ、そこにおりますわ』
視線をやれば、子供はまだ気を失ったままのようで、母親らしき人が付き添っているのが見えた。周りには近所のおじさん達が、有志で見回りをしているところだった。一人、子供が紛れているけど、友達かしらね。
「魔族が狙っていて、更に町まで? 何か接点でもあるのかしら?」
あたしが考えていると、リゼス様は近くに居たジルさんに、子供について聞いていたようだ。
「あの子は、この町の子か?」
「ん? いや、最近引っ越して来たんだよ、ダンとも仲良くなってさ、いいとこの子だからだろう、礼儀正しい子だよ」
ん? 今、気になる事を言わなかった?
「ジルさん、いいとこの子って、どうして分かったの?」
あたしの唐突な問いに、やや目を見開きつつも、ジルさんは教えてくれた。
「いや、だって、貴族みたいな挨拶とかしてたし、立ち居振る舞いが、明らかに優雅だし………」
あぁ、ダメ。情報が足りなくて、点と点が繋がらない。答えは直ぐに出そうなのに!
「おかしいだろう? 貴族の子供が、何で下町にいるんだ?」
リゼス様、その通り。普通に考えたなら、あり得ない事態だものね。
「さぁな、何か事情があるんだろうよ」
ジルさんは肩を竦めて、分からないとジェスチャーをした。
「取り敢えず、あたしが保護するしかないでしょ…………、リゼス様、構いませんね?」
「仕方ありませんね」
「んじゃ、伯爵様のところへ、参りましょうか」
何だか、やけに胸騒ぎがするのよね。何が起きようとしてるのかしら?
◇◇◇◇◇
結論から言えば、あたしとリゼス様、保護した親子は無事に、伯爵邸に着いたんだけど……………。
「でかっ!」
思わずツッコミするぐらいには、大きいのよ!? 門からは遠いし、お屋敷は煌びやかだけど、品の良い3階建て。広大な敷地に、色々あるのかしら?
思わず、遠い目をしちゃったわ。
「大丈夫ですか?」
隣に居たリゼス様が、珍しく心配してくれたけど、ごめんなさい。頭がこの豪邸に、驚いただけなのよ………………。
「えぇ、大丈夫ですよ」
因みにここは、伯爵邸のエントランスですよ。馴れない凡人は、唖然としちゃっている訳です。ん? そこっ! 凡人でツッコミは無しよ!? あたし、自分が凡人だとは流石に思ってないからね?? 天才の部類に入るくらいの自覚はあるのよ。それに仕方ないでしょう。煌びやかな場所は、未だに馴れないんだからさ! エルフの国の、あの木のお屋敷よりはマシよね? それにあっちじゃ、こんな煌びやかな世界とは、あまり関わらなかったもの。色々あったし。
「お待たせ致しました、当家へようこそおいで下さいました、ファーリアス伯爵家当主、ドルトニーです、リゼス様、勇者様、わざわざお越し………………ん? 他にも客人が………な!? マリア殿!? ユト殿!? お二人が何故!? 何があったのです!?」
あたし達の事等、すっかり忘れてしまったかのように、絶叫する伯爵様。此方の二人と、お知り合いって事?
「えっと、伯爵様? 失礼ですが、事情を説明して頂けません? さーっぱり分からないのですが…………」
困惑したあたしと、リゼス様を思い出したのか、ハッとして此方を見て、頭を抱える伯爵様。すいませんね、何か凄く苦労してるみたいだわ、この伯爵様は。思わず、大丈夫って聞きたくなったわ。
「はぁ、そうですね、そうなんですよね、はい、説明致します………」
そう、伯爵様が促そうとしたら、エントランスから伸びる階段から、二人の人物が降りて来た。
あら? 片方は、間違いなくジルさんだよねぇ。でも、超真面目なんだけど……………。え? 別人!?
そしてもう一人。ジルさんを従えて、堂々としている事から、身分があるのは直ぐに分かったわ。茶髪を短く切り揃え、青い目の美少年である。ただし、少々生意気に見えるけどね。チラリと連れてきた子供を見れば、驚いたように目を見開いていた。成る程ね、知り合いって事かしら。
「父上、お客様ですか?」
子供特有の声変わり前の声で、問い掛ける姿は、自信に満ちている。好奇心に満ちた姿は、町でも見たけど、やっぱり着飾ったら、貴族の子供ね。ジルさんは、あっちが素で、こっちが仕事モードって事ね。
「ダンか? 此方は勇者様とリゼス様だ、お二方、こっちは息子のダンタリアンと従者のジールニアです」
「初めまして、ダンタリアンと申します、こんなに若い勇者とは、驚きましたよ」
皮肉げに言われた言葉に、生意気とは思ったけど、ガキ相手にやらかすつもりは無いわ。我慢、我慢☆
「初めまして、お坊ちゃん、ジールニアさん、………………さて、伯爵様? しっかり、説明して頂きますよ?」
本当にごちゃごちゃしてきたわ。マジで説明してちょうだいよ? 困るんだからさ〜!?
「わ、分かりました……………、どうぞ此方へ」
何だか一気に、伯爵様が老け込んじゃったけど…………、え? あたしの所為じゃないわよ!?
内心、ヒヤヒヤしつつ、応接間へ案内されたのでした。
◇◇◇◇◇
応接間は、伯爵夫人のセンスが良いのか、立派ながらも、落ち着く感じにまとめられていた。一人掛けのソファには、伯爵様が座り、二人掛けには、それぞれ、あたしとリゼス様。マリア殿とその子供が座ってる。ダンタリアン様は伯爵の隣に、椅子があってそこへ。ジールニアさんは、世話役よろしくその側へ立ってる。
さて、ようやく話し合いが出来そうだわ。
時間はすでに6時を周り、終わったら夕食をご馳走になる予定。はぁ、クルルさんの夕食〜! 明日は食べれるかしら?
「さて、まずは事の始まり…………マリア殿の事から話しましょう」
重々しく話し始めた伯爵様。本当に大丈夫かしら?
「ドルトニー様、我が家の事ですから、わたくしが話しますわ」
キッパリ言い切った彼女は、真っすぐにあたしを見ていたわ。応接間だけあって、ライトで明るくなっているから、彼女をハッキリ見るのは初めてかしら?
優しげな顔立ちなんだけど、思い詰めた顔をしているから、凛々しく感じるわ。黄金色の髪を、後ろで一まとめにしていて、茶色のワンピースが更に、彼女を年上に見せていた。
「まずは改めて自己紹介を、わたくしは、マリア・ブローティアと申します、わたくしの夫は侯爵の位を頂いております………………お恥ずかしながら、あの日………、2ヶ月程前の事です、夫がとある女性を連れて来た事から、全ては始まったのです」
彼女の目は、あたしを通り越して、どこか遠くを見ていた。その表情は、愁いを帯びていて。
………………なんか、ややこしい事態になってるんですけど、あたし、無事に解決できるわよね!?
読了、お疲れ様でしたm(__)m
何だか、一気に疲れたお話でした(;^_^A
これを書いている時に、現実でも忙しくなるし、やる事増えるし、そろそろ登場人物紹介も〜、あ、企画も〜で、疲れました。
次回は、もう少し整理できると……いいなぁ…………。
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