第130話 問題児と問題です
先週は失礼致しましたm(__)m 執筆が間に合いませんでした…………。
次回は20日の更新予定です
あたしが説明したところへ、馬車で向かってみると、そこには既に数人の子供と、大人達が慌てた様子で居たの。馬車を降りて、人だかりを見れば、嫌でも何か起きてると分かったわ。
「すいません、何があったんですか?」
中年のおばさんに声をかけると、最初は警戒した様子だったけど、不安が勝ったのか、勝手に話しだしてくれた。
「子供が穴にハマってしまったんだよ! 大人数人で引っ張っても出せなくて、大丈夫かねぇ、あの子……………」
おばさんは、不安そうに、現場をチラチラ見ている。
「そうだったのですか、教えて頂いてありがとうございます」
そのままリゼス様の元に行ったら、彼はある一点を、険しい顔で見ていた。
「リゼス様? ……………どうしたんです?」
はっきり言って、かなり怖い。
「あのバカッ!」
いきなりそう言ったと思ったら、ツカツカと物凄い早さで、とある人物の元へ行ってしまった。お知り合いよね? そのわりに、怖い気配を醸し出してるけど…………。
「ジル!」
あまり大きい声ではなかったけど、目的の人物には聞こえたみたい。声をかけたリゼス様を、怪訝そうに見返してるし。
ジルと呼ばれた人は、まだ年若いように見える。20歳は越してるかしら。中々の美形で、茶髪に金目。髪は短く切り揃えていて、体付きも鍛えていそうね。何より、隙がないから、何かやってる人だと思う。でも平民にまざるような、そんな服装だけれども。
「何故、ここにダンと居る?」
余りの迫力に、ジルと呼ばれたお兄さんは、少し引いて……のけぞっている。だけど、顔が近付いたお陰か、リゼス様と気付いたようで、顔が驚いていたわ。
「貴方は……っ」
「答えろっ!」
決して大きい声じゃないのに、有無を言わさぬ迫力に、流石のお兄さんも顔が強ばっている。
「はい、リゼス様、止まって………今はそれは後、こっちが優先よ」
あたしの言葉に、二人は我に返ったようで、気まずそうに事件現場に視線をうつす。恐らく、穴にハマった子供のだろう。ここから、金色の髪が見えた。庶民の間では、珍しい色だけど。
あたしは、現場であるそこに、確かに嫌な魔力が渦巻いているのを、ハッキリ目にしてるから、時間が無いのも直ぐに分かったわ。
「あたしも手伝います」
声を上げれば、周りの人達は、怪訝そうな上に、不信そうにこちらを見てきた。
「あんた……」
「何でもいい、手伝ってくれ!」
「いや、しかしマントを羽織った怪しいヤツに……………」
戸惑いやら、反対やらで、辺りには困惑の空気が漂っている。
「あたしは城の魔術師です、早く助けないと、その子供の命が危ないです!」
あたしが声を上げても、周りは戸惑ったまま。それを無視して、あたしは足早に近寄ると、隙間に手を当て、魔力を流してみる。
「ちょいと、あんた! 何をしてるんだい!?」
「穴を広げます、あたしが合図したら、直ぐに引っ張って下さい!」
驚いたようの空気が流れたけど、近くにいたお兄さんが、しっかり頷いてくれた。
「わ、分かった!」
戸惑いはあるけど、恐らく策も無かったんだろう。あたしの言葉に、素直に従って、子供に負担がないようにしつつ、いつでも引っ張れるようにしてくれた。
よく見れば、子供はグッタリしてる。急がないと!
「…………………っ、随分と厄介じゃない………」
魔力は充分にあるから、問題はないけど、この穴が問題だわ。これ、ただの穴じゃない。異空間と繋がっていて、ちょうどその隙間に、子供はハマっているみたい。
「サ……どうなんです、広がりそうですか?」
近くに来たリゼス様に問われても、正直言って、子供を引っ張り出せるかは微妙なのよね。穴が広がった瞬間、引っ張る力が強くなるかもしれないし……………。
「……………策はあるの、でもこれをやりながらじゃ、そっちが出来ないから、正直手詰まり………」
苦々しい気持ちで、この先をどうするか決めかねていたら、意外なところから助けが来た。
「なら、私がやろう」
え……………………………??
思わず目が点になったわ。嘘でしょ?
「あの、リゼス様?? 出来るんですか?」
これ、異空間を弄ってるから、正直、適性が無いと触れないんだけど!?
「問題ありません、これくらいなら、維持だけで良ければ出来ます、貴方の作業が終わったら、速やかに私と変わって下さい」
確かにそれなら大丈夫だけど。いや、時間も無いし、これで行きましょう。
「分かったわ、ここに手を当てて………そう、この感じをそのまま維持して」
あたしは上手くリゼス様に渡すと、懐から紙を取り出す。即席だから、人型を式にすればいいでしょう。
『急急如律令!』
ふぅと息を吹き掛けると、人型は紙から小さな子供の姿、引き摺り混まれそうになっている子供の姿に変わる。
「あの子を、向こう側から押して」
即席の式は、簡易的な命令しか聞けないから、これで十分だと思う。聞いた式は頷くと、素直に穴の中に入っていった。
「リゼス様、変わるわ」
本当に維持をしていたようで、繊細な作業なのに、整えたようにやりやすくなっていた。……………凄いわ、リゼス様。
「さて、…………広げていくわよ」
ここからは更に、繊細な作業になる。
「ここをこうして、………………皆さん、合図したら思いっきり引っ張って!」
『『『おうっ!』』』
いつの間にか、子供を引っ張る人数が増えていたようだけど、そんな事、気にする余裕は、今のあたしには無い。本当に、繊細過ぎる作業だったのよ! もうっ! こういう作業は、ソウ兄とかが得意なのに〜〜〜〜〜っ!!
と、ようやく穴がゆっくりとだけど、着実に開いて来た。よっしゃぁぁぁ! もう少し開いたら………。
「今よ! 全力で引っ張って!!!」
あたしの声に少し遅れて、スッポンと小気味いい音と共に、子供が穴から引っ張り出される。
よし、子供は無事に出せたわ。後はこの穴を塞ぐだけね。
「穴を塞ぎますから、皆さん、離れて!」
まあ、あたしが言わなくても、皆は同じ目にはあいたくないだろう。直ぐ様、子供も大人も、サッと離れていった。……………リゼス様と、ジルと呼ばれた人だけが残る。二人とも、保護者じゃないんだから、離れてよ!?
「あの、ふ…」
「却下です」
「無理だね」
何故か言い終わる前に、リゼス様とジルさんに、拒否されたんだけど!? せめて言わせてよ、最後まで!
「居るなら、自分で身を守ってね? あたし、余裕ないから」
事実、あたしは今、この異空間と繋がった穴から、離れられない。まだ塞がってないからね。リゼス様がやりやすくしてはくれたけど、それでも難易度は高水準だろうね。正直いうと、広げるよりも、閉じる方が楽っちゃ、楽なんだけど………………。
「…………ったく、これを作ったやつ、性格悪すぎっ!」
悪態をつきたくもなるわっ! だって、広げる時はやけに細かい作業だったのに、閉じる作業には、何故かフェイクまであるんですけど!? こんな罠付けるヤツが性格いいわけないわっ!
「あ、これと、ここをこう? で、だから………」
ブツブツと呟きながら、穴を半分まで閉じた頃、空は夕方に近付いて、手元が見えにくくなってきた。
「誰か、ライト着けてくれない?」
すかさずリゼス様が、簡易的なライトを着けてくれた。
さて、これで作業はもう少し。と言う時に、やっぱりフラグは立つ訳で。
………………本当に、勇者って、厄介事に愛されてないかしら?
『咲希様っ!』
春の悲鳴に近い呼び声と、何かの爆発音は同時だったわ。
ジュッドォォォ―――――――ンッ!!
濃い煙と、瓦礫が散乱する中、咄嗟に、春が障壁を作ったお陰で助かったけど……………。
内心はヒヤヒヤだったわ…………。
ハッとして、咄嗟に穴を見る。良かった、穴は無事だわ☆ これをもし今、半端な状態で手放したりしたら………………。
最悪、町が吹っ飛んじゃうかも♪ テヘッ☆
「ったく、焦った黒幕さん登場? ………………頭に来たし、リゼス様? ほんの少し、維持してもらえません?」
ゆらりと立ち上がったあたし、目がすわってると思う。
「!? は、はい………」
どこか驚いていたけど、知らんわ。さっさと引き継ぎ、あたしは冷静に龍を召喚する。
「龍、『封印解除』、全力で潰せ、でも、町に被害は出さないで!」
『御意』
人の姿で登場した龍なら、大丈夫だろう。緋ノ斗と違って、冷静沈着だからね。安心安全よね☆
「リゼス様、ありがとうございます、変わります」
「え、ええ……」
「ん? 何か?」
リゼス様から、無事に受け取ったんだけど、何か言いたいのか、此方を見たままのリゼス様。
「いえ……」
その割に、視線が煩いのですが? まあ、本人が不定したし、無視でいっか。
「………………よしっ、これで終わりっと♪」
穴は完全に塞いだ。後は〜?
「リゼス様? いい加減、其方の方を紹介して下さいな」
まだ腹立たしい気持ちはあるけどね。でも、リゼス様には、八つ当たりをするつもりは、まーったくない。
さぁて、困惑してるお二人さん。しっかり話してね?
読了、お疲れ様でした。そしていつもお読み頂きまして、ありがとうございます!
今回は、何やら事件の香りがしてきましたが、ジルさん、何者なんでしょう?? 名前だけ、ダンと言う子も出てますし。
更に新たにフラグが。咲希ちゃん歩けば魔族に当たる…………うん、何故かしっくりきますね。咲希ちゃんは、魔族がストーカーと言ってますが、魔族ホイホイなのは咲希ちゃん?(笑)
では、次回もお楽しみに☆




