第125話 支度は準備万端です♪
次回は8月9日の予定です。
とりあえず、やらかしちゃった魔術師の塔………通称、塔から部屋に戻ったあたし。旅の準備を始めようと思います。
時刻は、16時………3時間も熱中してたのね〜。楽しかったけどさ☆
……………魔術師長さんに、間違いなく、魔力で目を付けられたけど、悪意は無いみたいだし、様子をみましょうか。
「ヒマリ〜♪」
呼べば、また一回り大きくなって、中型犬サイズに成長した、ヒマリが、勢いよく飛び込んできた。勿論、魔術で勢いはある程度、押さえたわよ? そうしなかったら、流石にあたしも危ないわ。
「ただいま〜、ヒマリも大きくなったね〜♪ う〜ん、可愛いわぁ〜、ヒマリ、いい子で待っててくれる? 今から、準備しちゃうから」
「キュッ!」
いい子で右手を上げてのお返事に、思わずキュンとなる。うちの子、可愛い☆ 嫁にはやらん! ……………これは違うか(笑)
「さぁーて、ちゃっちゃと準備しちゃいますか☆」
まずは着替え、あくまで庶民的な物を選ぶ。ワンピース系で、シンプルな物を。後は化粧水とかの、日用品。後は小物かな?
「あ………バックの偽装、どうしよう?」
この無制限収納バック、シンプルなデザインなんだけど、旅人や町人の娘が持つには、ちょっと立派過ぎるんだよね。
「シンプルであって、町人でも持っていておかしく無いデザイン……………え、意外に難しいわね」
幾つか考えてみたけど、どれも庶民的に見えない……………。
「あ、草染とかなら、目立たないかな?」
藍染みたいな色合いの、肩掛けバック。ボタンで蓋を留めるような、少し大きめのもの。刺繍で黄色の大きめの花を、蓋になる部分にアクセントで入れたら、ほら! 庶民的な、けれど安い感じの、肩掛けバックになると。
後は、バックにイメージを送れば完成☆ 偽装は完璧♪
「よし、準備完了〜♪」
後は、しばらくヒマリとイチャイチャしましょ♪♪
「ヒマリ〜、遊ぼう!」
「キュッ!」
あたしはすっかり、準備を終えたのでした。
後はヒマリと、久方ぶりにガッツリ遊ぶだけよ〜☆ あたしの癒し、ヒマリ〜♪ 本当に癒されるわぁ〜。
◇◇◇◇◇
Side:フランツ
先程の二人、リゼスとサキの相性は、あまりいい感じには、見えなかった。いや、リゼスが一方的に、壁を作っている、が正しいかもしれない。あそこまで、拒絶反応を見せるとは………………。
トーヤは、エルフの国で、実力を見たからこそ、態度を軟化させたが、リゼスはそうはいかないだろうね。これは難題だ。
「ふぅ………トーヤ、仕事は後どれくらいある?」
自分の側近で、同じくこの執務室に、缶詰めになりつつある彼に、残りを聞いてみた。いい加減、休憩を入れたい。
「あと、半分くらいでしょうか? 明日からは、通常業務も来ますから、後回しの物は更に増えますが」
…………………おい?
「リゼスのヤツ、後回しの物は他に回さなかったのか…………」
恐らく、大丈夫だからだと思うが。実際、どうにか出来る量ではある。だが、例の件に関しては、リゼスを関わらせて居なかった為、頼む訳にもいかず、陛下に頼むしかなかった。それだけ、危険なものだったのだ。
まさかそれで、サキとリゼスに頼む羽目になろうとは……………。
「はぁ、心配しかないな」
あの二人、お忍びで、身分を隠して旅とか、大丈夫なんだろうか?
「フランツ様、二人の新しい身分証が出来たようです」
先程の国王からの使いが、置いていったらしい。早速、身分証を確認すると、流石に、ある一文に顔が引きつった。
「……………トーヤ、何だか更に不安に感じるんだが」
私の反応に、不思議に思ったのか、私の手元にある身分証を見たトーヤは、その一文に、私の不安の理由が分かったのか、苦笑していた。
「あの二人に、これは…………しかし、陛下のお考えがあるのでしょう」
あの二人、アンケルに向かわせて、この設定で、しばらく暮らせるんだろうか? 勿論、此方からも協力者を用意するが、不安しか浮かばないんだが……………。
「大丈夫でしょう、サキ様もリゼスも、頭がキレる二人です、いざとなれば何とかする実力を持っていますし」
確かにそうだ。そうなんだが…………。
「あの二人が暴走したとして、果たして止められるヤツは、居るんだろうか?」
「………………あ、いや、だ、大丈夫では?」
トーヤ、視線は泳いでいるし、汗を流して顔を引きつらせているから、まーったく説得力がないよ。私も同感だけどね。
「あそこの伯爵には、くれぐれも頼むと、手紙を書こう…………はぁ」
最近、すっかり仲良くなった、カズマ特製胃薬。そろそろ、飲んだ方がいいだろうか?
「フランツ様、追加の書類が来ました、次の案件をお願いします」
トーヤ、空気を読んでくれたのか、胃の痛くなる案件から、別の案件に変えようとしてくれている。まあ、胃痛が消えた訳じゃないんだが。
「あぁ、そうしよう」
サキ、リゼス、頼むから、頼むから! 厄介事だけは、起こさないでくれよ!?
はぁ……………胃が痛い。
◇◇◇◇◇
Side:???
何だろう、最近、動けなくなって来ているからか、そろそろ出産が近いのかもしれない。大きくなったからか、お腹の皮が薄くなってきていて、外の音が聞きやすくなってきた。
恐らくだが、母と嫌な気配がしている奴が、何か話をしているようなのだ。この嫌な気配の奴、名前をアクダッチャーとか言い、宰相をしているそうだ。
俺、人間界が欲しいとか、一回も言ってないんだがなぁ……………。
抗議しようと、母のお腹を蹴ってみたりしたが、どうやら賛成していると勘違いされたようで、それ以降していない。臨月近いし、今蹴ると、母にはかなりのダメージらしいからな。俺、魔王候補だし☆
『アクダッチャー、作戦は上手く行っているのですか?』
一番ハッキリ聞こえるのは、母の声だ。一番多く聞いているから、間違いない。
『はい、滞りなく』
何が滞りなく、だよ! アクダッチャー、何か碌でもない事してんだろ!? くそっ、抗議出来ないのが本当に悔しい!
『アンケルとか言う町に、時間をかけて種を蒔いたのです、そう簡単には勇者とていかないでしょうね』
え? どこだよ、そこ。いや、今大事なのは、そこが危険て事だよな!? マジで俺、どうにかしないとだろ? そうだ、夢で警告とか、どうだろう? 神様に会いに行けば、どうにかしてくれんじゃないだろうか?? 流石に胎児の俺じゃ、どうにもなんないし……………。他力本願もいいとこだが、仕方あるまい。
神様だって、流石に胎児の俺にどうにかしろっ、とかは言わないだろう。この状態で、どうにか出来たら、奇跡だろうよ!
よし、膳は急げと言うし、早速、神様にお知らせしよう!
◇◇◇◇◇
Side:空の神
今日も今日とて、仕事を必死にこなしていた矢先の事。
「空の神ィィィ〜〜〜〜〜〜!!!」
この声は、運命神だろうか? 何やら、声が凄い勢いで近付いて来ているような。
「ちょっと聞いてっ、大変なのっ! 大変なのよぉぉぉ――――――!!」
大変と連呼した挙げ句、物凄い勢いで来た彼女は、土煙ならぬ空雲を巻き込んで、急ブレーキをかけた。
………………ついでに、せっかく片付けた書類も巻き込んで。
「……………運命神?」
「ヒッ!」
私の低い声に、慌てていた運命神も、ようやく落ち着きを取り戻した、らしい。辺りの惨状に気付いて、顔を青ざめさせると、すぐに片付けてくれた。うん、それならば、話を聞きましょう。
「で、何が大変なのです?」
「そうよっ、大変なのっ! わたくしの加護を授けた、新しい魔王がね、人間の勇者が危ないって、警告をくれたのよ、場所がアンケルの町としか分からないのだけれど、空の神なら知らない?」
成る程、それで此方に来たんですか。空の神たる私は、ある意味、上位神ですからね。
「風の神に聞いてみては? 私よりもよっぽど、詳しいかと思いますよ」
「あら、そうよね〜!! 風の神〜!」
ここで呼ぶんですか!? はぁ、書類仕事は後程やりましょう。また散らかされたら、たまったものではないですから。
「あら、久方ぶりね、運命神、私を呼ぶなんてどうしたの?」
サッと一瞬で現れた風の神に、誰も驚きません。いつもの事ですからね。
「アンケルの町って知らない? 新しい魔王から警告が来たの…………わたくしの紡いだ運命には、本来無かったはずなのに…………」
その最後の言葉に、流石に我々も顔を引きつらせた。運命神の予定範囲の未来が、螺旋曲がるなんて、本来ならあり得ないのだから。
「あの魂が関わっているのやも」
本当に口惜しい限りです。排除対象なのに、排除出来ないもどかしさ! 更に、螺旋曲がった未来は、もう一度、運命神が紡がねばならなくなるのです。
「アンケルの町は、クラリオン王国にあるわ……………ん? そういえば、空の神の加護持ち勇者が居たわね、彼女に任せたら?」
それしか無いでしょう。色々面倒……ゴッホン、大変ですが、仕方ありません。
「………………はぁ、仕方ありませんね、分かりました、夢で警告しておきましょう」
こうして我々は、仕事に戻りました。新しい仕事を、増やしながら。
さて、私は夢の中に入る準備をしましょうか。警告と、注意をしなければ。
お読み頂きまして、ありがとうございますm(__)m
さて、何やら不穏な動きになって参りました、テンシロです。楽しいのは咲希ちゃんだけと言う、中々見たい展開となっています。
次回は、またしても可笑しな方向へ……………。君達、ちゃんと旅立つよね!? こうご期待!
では、また次回お会いしましょう♪




