第123話 この原因は何でしょう?
次回は、7月12日の予定ですが、間に合わない場合は、他の小説を投稿します。活動報告にて、お知らせします。
『主人!?』
樹英様の悲鳴に近い声が、あたしの耳を打つ。他の皆も動揺した気配がしたわ。ウフフ、愛されてるわね、あたし☆
先程、不意に襲った胸の痛みは、一度だけのようで、既に痛みはなく、あるのは痛みの名残だけ……………。今まで無かった事だけに、顔が強ばってしまう。
「大丈夫………でも、油断はしないから安心して」
前にやらかしたから、こういうのは油断しないようにしてるの。あのお説教は、もう2度と受けないわ!
「…………そこで何をしているんです?」
と、先程まで聞いていた声が、背中から聞こえてきた。ん? この声って?
「リゼス様、でしたか…………時間が出来たので、どこに行こうかと悩んでいたんですよ」
嘘じゃないわよ? 悩んでいたら、痛みが来ただけだから!!
「そうですか、てっきり体調が悪くなって、片手で体を支えたのかと」
「えっ!?」
急に推理されて、慌てて左手を壁から離したわ。よく見てるのね、リゼス様。
「ついでに言うならば、先程、室内で見た時よりも、顔色が悪いようですが? 壁に手といい、体調が悪いならば、医務室へ向かって下さい」
淡々と言い切ったリゼス様に、思わず顔が引きつった。確かにそうだけど、こう………ストレートに言わなくてもいいじゃないの……………。
「あら、医務室へ行かなくても、大丈夫ですよ? 魔術師達がいる場所へ向かいますから」
あそこなら、恐らくは痛みの原因が分かるかもしれないし?
けれど、そういった矢先、リゼス様の眉間に、見事な皺が。美形なだけに、迫力あるわぁ。
「貴方はバカですか? もうすぐ出かけると分かっているなら、医務室へ行って見てもらえばいいでしょう」
うっ! 正論………!
『うむ、その通りじゃ』
樹英様!? 御札の中から、何を言ってるのよ!? 肯定しないでよ〜〜〜〜〜!! リゼス様には聞こえないけど、それでも聞きたくないわ!
「べ、別に、大丈夫ですよ? だから、ほら、リゼス様は仕事にお戻り下さい!」
恥ずかしくなって、慌ててリゼス様を追い払おうと、あたしは仕事を勧めたんだけど……………何で、近付いて来た上に、あたしの顔を覗きこんで来るのよ!?
「顔が赤いようですね、やはり、医務室へ向かう事を勧めますよ」
あたしの顔が、更に赤くなったわ! こんなに近くに異性の顔が近付いた事なんてないもの!
「熱が上がったのでは? 更に赤くなったような…………」
ガチッと固まったあたしに、あろう事か、リゼス様は何やら考え込み、そしてヒョイッと、あたしを抱き上げた。所謂、お姫様抱っこ………………。もうっ! ファイさんもだけど、この国の男性は、これが普通なの!?
「ちょっ!? 何するんですか!? 別にだいじょ…」
「暴れないで下さいね、落としますから」
そう淡々と言われたら、あたしはどうなるのよ!? 動けないじゃないのよ!!
「さぁ、医務室へ行きましょうか」
リゼス様の間近で見た顔が、いと恐ろしや。はぁ、大丈夫なのに…………。
因みに、医務室は、薬室と治療室(治癒師がいるところ)の前、つまり診察をするところなのよ。薬か、魔法による治療かを決める、大切なところで、ベテランばかりがそろうの。
そういえば、あたしは初めて入るんじゃないかしら?
「リゼス様、その…………重いでしょうし、下ろしてもらっていいですか? 自分の足で歩けますから」
一応、恥ずかしくて、申告したら、何故か苦笑された。何故に?
「軽いので、大丈夫ですよ? ククッ、そんな事を気にしていたのですか?」
笑われた!? それよりも今、この方、そんな事といいましたよ!? 乙女の体重の切実な悩みを、そんな事!?
駄目だ、リゼス様って、デリカシーが無さ過ぎる!
「女性は気にしますよ! それに、恥ずかしいんです!! この体勢は!」
思わず大きな声になって、更に恥ずかしくて、顔が沸騰したみたいに赤くなったわ! 絶対に、リンゴみたいよ。
「そういうものですか?」
「そういうものです!」
思わず、即答したあたしは、悪くないわよ?
「次から気を付けましょう、はい、医務室に到着です」
え? 到着…………?
上手く動かない首を、無理矢理に動かして、視線を前に向ければ、驚いた顔の職員の皆様が、いた。オー、ノォォォ〜〜〜〜〜〜!?
この凍り付いた空気を、どうしろって言うの!?
◇◇◇◇◇
結果から言えば、診察は問題無かったわ。うん、なかったの。
リゼス様のお陰で、あたしの精神がガリガリと削られただけだから………………。
「リゼス様、後は我々に任せて下さいませ、仕事に戻られた方が……………」
医務室の方に促されて、リゼス様も素直に出て行かれました。ホッとしたのは、内緒☆
「さて、サキ殿? 何がありました?」
と聞かれて、素直に答えたら、何やら難しい顔の皆様。え? あたし、そんなに悪いの?
と、あたしの不安が分かったのか、苦笑されました。だから、何故に?
「……………サキ殿、ハッキリ言いますと、魔力が体内で渦巻いております、早めに発散された方が良いかと」
「………………………はっ?」
何 で す と ! ?
「ですから、魔力が体内に、蓄まり過ぎているのです、本来ならば、幼少の頃に起きるのですが、サキ殿方は、最近、体内に魔力を持たれたと聞いております」
丁寧に説明してくれた、職員さん。後から、彼が医務長と聞いたんだけど、今はそれどころじゃない!!
まさか、こっちでも起きるなんて…………………!!!
「はぁ、魔力の発散をしてきます……………」
彼方でも、幼少期にやらかしているのよ……………。何度寝込んだ事か! あたしは、生まれつき霊力が高かったからね。体内に霊力が蓄まり過ぎて、発熱とかよくあったのよ。
まさか、こっちでもやらかすなんて、誰が思うのよ……………。
ん? という事は。
「あの痛みは、魔力が体内に蓄まった事を知らせるサインてこと?」
「まあ、そうなりますが…………、気を付けて下さいね? 普通の大人は、上手く扱いますが、サキ殿の場合は、まだ未熟なようですから、発熱や痛み、体調不良があります、下手したら暴走しますよ?」
う゛っ……………。
苦い記憶が蘇るのよ。昔ね? 暴走させて、見事に山を吹き飛ばしちゃったの。テヘ☆
「じゃ、じゃあ、行きますね!」
顔を引きつかせながら、あたしは一目散に魔術師達が使う、訓練場に走ったのでした………………。悲劇は2度も繰り返したりしないわ! 早く発散しよう…………。
◇◇◇◇◇
Side:???
暇だ、暇すぎる! 真っ暗な中、俺は色々動いてみたり、外に耳を澄ましたりして、有意義に過ごして居たんだが……………。
最近、大きくなってきたからか、動く範囲が限られて来たのだ。そういえば、赤ちゃんはくるくる動き回る行動を、臨月に近くなるにしたがって、やらなくなるそうだ。
………………臨月が近いのか?
それに、外の音を拾うのも、最近は楽になってきた。魔力を使うと、聞き取りやすくなる事に気付いたのだ。
お陰で、どんな状態なのかは、何となく把握出来た。
まさか黒くて嫌な気配がするヤツが、サイショウとかいう立場なのが、分かった。恐らく高位の役職なんだろうが……………よく分からない。俺、政治はからっきしだったんだよなぁ。あ、父親が魔族王と呼ばれているのは分かった。母親が、その妻で、妃殿下と呼ばれている事も。
でもさぁ、俺自身、魔王に産まれる訳なんだが、何か不穏な感じなんだよなぁ。人間達と戦争云々の話が、頻繁に聞こえるんだよなぁ。
俺、元人間よ? 無茶でしょ、人間と戦争なんてさぁ? 下手したら、自分が死ぬって! 魔王なんて、地雷でしかないでしょ!!
生まれたら、何とかして意志疎通して、意地でも戦争止めたるわっ!
………………しっかし、暇だなぁ。
◇◇◇◇◇
一目散に来た、魔術師達の訓練場。王宮の一角にあるものの、騎士達の訓練場よりは小ぶりなの。
今日は他にも、訓練してる魔術師達が居たから、端っこを使うつもり……………だったんだけど、ねぇ?
「咲希ちゃんだったよね? 良かったら、一緒に訓練しない?」
何故か、お預かり中のヴァストークの勇者、西藤一心さんが居たのよ。貴方、騎士さん達と一緒じゃなかったの!?
という、あたしの内心が分かったらしい、お付きの魔術師の方が、コソッと教えてくれました。
「今現在、騎士団の方に勇者様が来られないので、魔術師団の方でお預かりしています、中々、素直な御人なので、魔術師達も安心しておりますよ」
………………ぶっちゃけ、魔術師団で特に問題を起こしていないから、安心してると。まあ、勇者が和磨くんしか常駐してないから、仕方ないわよね。騎士団は、いつも同じ隊が居る訳じゃないからね。魔術師達は、常駐してるから、確かにいいんだけど……………。
「ダメかな?」
ニッコリと、人懐こい笑顔を見せる一心さん。はぁ、何だか、大きなワンコに見えるのは、あたしだけかしら?
いや、うん。今回は、ホスト側として、もてなしをしましょうか?
「エェ、カマイマセンヨ」
棒読みになったのは、許して欲しいわ。そこっ! 笑うんじゃないわよ!
お読み頂きまして、ありがとうございます♪ 読了、お疲れ様でしたm(__)m
何だか乙女な展開っぽくなりましたが、他意はございません。ちょっとやってみたくなりまして、チャレンジしたんですが…………これじゃない感が凄いです(;^_^A
さぁ、新しい展開となりましたが、これからどうなる事やら…………。
魔王様は暇そうですね〜(笑)
では、次回にまたお会いしましょう♪
感想もお待ちしております〜♪♪




