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閑話 恋する乙女の暴走です?

次回は誠意執筆中です。


「ごきげんよう、カズマ様♪」


ちょうど、あたしが角を曲がった辺りで聞こえた、甘い響きを持たせた女性の声。


「ごきげんよう、カカリア伯爵令嬢」


あら、和磨くん、機嫌悪いみたいね。声が淡々としてるんだけど。


「あの、よろしければ、これからお茶でも…………」


うわっ、このお嬢さんてば凄い! 機嫌悪い和磨くんに、よくお誘いなんて出来るわ!! あたしなら無理よ? 即効で逃げるわ(笑)


「悪いけど、これから薬室で会議があるんです、失礼しますね」


「えっ、あの!」


取り付く暇もなく、あっさりと和磨くんは、此方に向かって来た。ん!? こっちに来たら、あたしが立ち聞きしたのバレルじゃないか!?


「え? 咲希さん?」


逃げようとした背中に、和磨くんの声がかかり、思わずビクッとなる。振り返ると、そこには驚いた顔の和磨くん。まあ、気配は消していたから、バレはしなかったんだけどね。立ち聞きしても。


「もしかして、さっきの聞いてた?」


「え、えーっと、まあ………」


どこか困った顔の和磨くん、あれ? 恥ずかしくて顔が赤くなるところよね、ここ。


「咲希さん、悪いんだけど、今日は時間ある?」


「へ? うん、夕方に魔術師長に呼ばれてはいるけど、それまでは暇よ?」


あ、あれ? 和磨くん? やけに嬉しそうな笑顔が凄い気になるんだけど!?


「じゃあさ、さっきのカカリア伯爵令嬢を調べてくれない?」


…………………は?


「調べるって、どういうこと?」


あたしの頭に、ハテナが乱れ飛んだ瞬間だった。


「気のせいとは、言えない事態が起きてね、正直、僕一人では手に余ってるんだ」


「一体、何事? あのカカリア伯爵令嬢と関わる事よね?」


和磨くんは基本的に、自分一人でどうにか出来る程度の実力はある。貴族と関わる以上は、仕方ないんだけど、流石、病院経営の家族。実力者との関わりを自然に持ててるのよ。マジで凄いわ! あたしは、ほら。陰陽師だからさ。色々と実力者との繋がりがあったのよ。


「うん、あの令嬢を調べるでいいんだ、ちょっと困ってて………」


「じゃあ、さっそく…………(しろ)、よろしく」


探索が得意な式神様を放ち、和磨くんへ振り返る。


「さてと、会議があるんだよね?」


「いや、あれは口実であって、会議は夕方なんだ、薬室長も昼間は忙しいしね」


和磨くん、ニッコリ笑って言う事じゃないからね? つまり、それだけ、あのカカリア伯爵令嬢から離れたかった、と言う事よね?


「…………………そう、それで一体、あの令嬢は何なの?」


そこが分からないから、あたしも困ってる訳で。


「簡単に言うとね? 僕の熱血ファンで、困ったストーカー行為をしてるんだよ」


あらま。恋する乙女って訳か。これは下手に動くと、あたしまで巻き込まれてしまうわね。


「和磨くん、頼む相手を間違えてない? 翔太に頼めば良かったのに」


「いや、違う疑惑が生まれそうだから、それは無しで!」


………………まだあの疑惑、翔太は悩まされてるのね。確かに和磨くん、嫌よね。巻き込まれるのは。だって今、即答したわよ。


「分かった…………取り敢えず、式神様に頼んだから安心して」


「うん、ありがとう…………」


そのまま、気が抜けたらしく、ホッとしたように、微笑を見せる。うん、本当に正統派美少年よね……………。

和磨君は、このまま部屋に戻り、仮眠を取るらしいので、夜にまた落ち合う約束をして別れた。



◇◇◇◇◇



結果から言えば、あの令嬢様。結構ヤバイ事が判明したわよ。

恋する乙女の暴走……………と言えば、聞こえはいいかもしれないが、完全にヤバイわよ!? 白の報告に、あたしでさえ我が耳を疑ったわ!


「虐めに、恐喝、窃盗罪に、暗殺ギルドとの繋がりって…………」


一介の伯爵令嬢にしては、後半の部分がおかしすぎるわっ!! 本人も羽振りがいいし、伯爵家もこれは絡んでいるわね。


「取り敢えず、和磨くん? 覚悟はいい?」


確認はきちんとしたから、マジで文句は勘弁してね。


「うん、覚悟は出来てる」


なんか本当に、お疲れなのが分かる。和磨くん、ストーカー被害で相当、色々あったのね。

一応、説明をしていけば、やはりと言わんばかりに、頭をかかる和磨くん。うん、苦労が浮かんで見えそうだよ。見えないけどさ。


「最近、少し話した貴族、それも令嬢ばかりが、怪我をしたり、虐めにあったりしてね……………証拠も探したんだけど、イマイチ弱くて」


「あら、証拠ならあるわよ?」


白がただ、尾行をしていた訳ではない。証拠になる紙等を、バッチリゲットしているし、何より。


「娘がダメなら、親でしょ?」


親の方が、バッチリとやばい証拠を隠してたからね。そりゃ、羽振りがいい訳よ。


「親の方が、マジで娘より酷かったもの」


これは、国に動いて貰う必要があるわね。


「和磨くん、国にも動いてもらおう………………まあ、娘はうちらでヤルけど」


ここまでやって、はい、止めました、は出来ないからね☆


「うん、僕も正直、頭に来てるから」


あら、珍しいわね。いつもは笑顔で、言うところなのに。真顔って。本当にお怒りなのね…………。


「さぁて、楽しい狩りといきましょう♪」



◇◇◇◇◇



あたしから、証拠と共に、色々と暴露して来ました。誰にって、勿論、へ・い・か・に♪

でもさ、驚かれたけど、それだけだったんだよね。どうも前々から、目を付けていたらしくてさ…………。証拠は有難く使ってくれるって。

かわりに令嬢の方の、捕縛権利は頂きましたとも♪ ウフフ、ウフフフフ☆

和磨くんもお怒りだったから、今回は高みの見物でもさせてもらうわ。



◇◇◇◇◇



高見の見物……………の予定は、あっさりと消え去った。何故って、和磨くんにさ。本気でお怒りだったみたいでね? 他の皆様のご迷惑にはならないけれど、娯楽になるように、わざわざ、パーティーの日を決行日に決めたわけ。それも、滅多に個人のパーティーに参加しない勇者が、わざわざ参加するって言う事もあり、高位の貴族がパーティーを開催してくれたわけ☆ 理由は別だけど(笑)

和磨くんの怒りが怖すぎる……………。


「で、あたしも参加するのは、何でかな?」


バッチリ、エリー様にセッティングされ、今日のあたしは綺麗な緑色のドレスを着用。下に行くに従って、色が濃くなるようになっていて、とっても素敵なの☆ 孫にも衣装って、言われないといいなぁ。


「似合ってるよ、咲希さん、――――――勿論、最後まで付き合ってくれるよね?」


笑顔が黒いわ。それも後半、明らかに素が出てるし。猫かぶんなくていいの?!


「ありがとう、和磨くん―――――勿論、お手伝いさせて頂きます………」


何か敗北感が半端無いんだけど。勇者のはずなのに、やっているのは色々とヤバイ事。今回は、優香ちゃんや翔太には、動かないで貰ってる。色々とややこしい事になりそうだしね〜。


「まあ! カズマ様、ごきげんよう! お会い出来て光栄ですわ♪」


うわっ! 早速来たー! 挨拶回りして直ぐに来たみたいね、カカリア伯爵令嬢は。あ、ほらほら、ビシバシと色んな視線がこっちに!! 比較的温厚な視線は和磨くんへ、畏怖の視線はあたしへ………自分で言って悲しくなってきたわ。そして、カカリア伯爵令嬢には、嘲笑の視線……………結構、嫌われているんだね、彼女。誰も隠そうとしてないし。


「ごきげんよう、カカリア伯爵令嬢」


「あのあの、カズマ様? よろしければ少し二人でお話でも………」


頬を染めて言いよる姿は、完全に恋する乙女。まあ、やってる事は最悪な事だけどね!

更に、あたしが近くにいるのに、完全に無視だからね? キレてもいいよね?


「和磨くん? 親しいみたいね? ご紹介頂けるかしら?」


勿論、あたしの目は笑ってないわよ。口元だけが、笑顔をしてるだけだから。


「親しくなんて無いよ? たまに廊下で会うだけだから」


和磨くんや、カカリア伯爵令嬢さん、固まっちゃったよ!? 周りからは、それみた事かと、囁きやら何やら。


「彼女は、カカリア伯爵令嬢だよ、君は知ってるよね? 第一勇者の咲希 天城さんだよ」


「ごきげんよう、第一勇者様」


こいつ、和磨くんと全く違う態度とか……………。最低限の挨拶だけ。それに、あたしは眼中に無いのか、名前さえ呼ばなかった。いや、呼ばれない方がいいか。こいつに呼ばれるとか、何か腹立つもの!

周りは、あたしの気配に気付いてか、畏怖の視線をバシバシと寄越しているわよ。代わりに誰も近くに来ないけどさ!


「ごきげんよう、カカリア伯爵令嬢様…………本日のお召し物、素敵な物を着ていらっしゃるわね?」


最初は着ている物から。定番よね〜。


「お褒め頂きまして、光栄ですわ、第一勇者様、本日は最新作のドレスを着て参りましたの」


彼女が着ている物は、胸を見せ付けるかのような、肩の辺りの露出がかなりある、着る者を選ぶドレスである。色は、鮮やかな赤色。裾の所に、宝石かガラスが縫われているらしく、キラキラと光を反射するそれは、派手好きには堪らない一品だろうけど……………。

何故にこれを選んだし! カカリア伯爵令嬢よ!


「おや、咲希さんは、こういう派手なドレスが好みなの?」


和磨くん? 貴方、挨拶の時点で嫌みを入れるつもりですか!?


「ウフフ、まさか! あたしは自分に似合うドレスだけで十分よ」

意訳)まさか、似合わないドレス着るわけないでしょ? 派手なドレスなんて、似合わないつーの!


まあ、皮肉よ、皮肉。実際、彼女は気付いていないしね(笑) 似合わないって、遠回しに伝えてあげたのに。


「確かにね? 身分相応の物がいいよね? どう思う? カカリア伯爵令嬢殿」


……………和磨くん、容赦無いわー。ようやく意味に気付いたらしいカカリア伯爵令嬢様。顔が強ばってるわよ!?


「そ、そうですわね? 自分に似合うドレスがいいですわね………」


顔色が悪いカカリア伯爵令嬢、………………容赦ないね、和磨くん。まあ、怒りがこれで止まる訳も無く……………。この後も、チクチクと嫌味は増えていき、別れる頃には、彼女、燃え尽きたようになっていたわ。まあ、まだあるんだけどさ。

本日のメインイベントが!!


「そういえば、随分と物騒な噂を聞きましたよ?」


あたしが話題を提供すると、和磨くんはニヤリと笑ったように見えた。こ、コワイ。


「あぁ、僕も聞いたよ? 虐めをしたり、人の物を盗んだり、暗殺ギルドとも繋がっているって、本当に最低な人間だよねぇ?」


えげつないよ、和磨くん! 憧れの方から、最低人間のレッテルを貼られたカカリア伯爵令嬢は、真っ青な顔を、更に白くして、会場から帰っていった。

その後、何故か盛況な状態で、パーティーは終了し、主催者からは上機嫌でお礼をされましたよ……………。

ドロドロな貴族社会、コワイわぁ。



なお、後日。国の貴族巻からは、カカリア伯爵の名が消え、他の貴族が伯爵として任じられたのであった。


…………………はあ、和磨くんは怒らせたら、ダメね? 嫌な意味で学んだわ。


お読み頂きまして、誠にありがとうございます♪

本日は以前、お蔵入りした物を、手直ししてアップしました。お楽しみ、頂けましたでしょうか?

実は、風邪を引いてしまいまして、筆が進みませんで……………。

本当に失礼しましたm(__)m


なお、次回も閑話の予定です。体調が戻りしだい、何とか頑張ります(;^_^A

では次回、またお会いしましょう♪

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