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閑話 翔太と優香の国境戦( 9)

お待たせしました〜! 次回は26日に更新します!


Side:優香



先程、見回りに向かった翔太君が、戻って来ました。一緒に、スザリオン王子も。

翔太君が見回りに行ってから、ちらほらとウエステリアの騎士様が、合流してきています。まだ、あの部隊長さん達が来ませんが、時間の問題でしょう。かなりの使い手のようでしたから、無用の心配というやつですね。

しかし、スザリオン王子って、翔太君に懐いていたのでしょうか? 何でキラキラした目を、翔太君に向かってしているのでしょう?

「翔太くん、お帰りなさい………あの、スザリオン王子、どうしたんですか?」


流石に、声は潜めましたが、とてもキラキラした目で、翔太くんを見ているスザリオン王子。一体何があったか分かりませんが、今まではそこまで懐いていなかったような…………。


「あー、悩み相談をしていたら、何故か懐かれた………」


苦笑いをしてますが、悩み相談ですか。何か、スザリオン王子を懐かせるような事を、翔太くんが言ったのでしょうね。


「フフッ♪ 良かったじゃないですか、可愛い弟分が出来て♪」


「あのなぁ………そういや、あの熊みたいなグリズー団長だかは、まだ居ないのか?」


そういえば、まだ来てませんでしたね。かなりの使い手の方ですから、大丈夫だとは思うのですが。


「遅いな………」


翔太君が呟いた一言が、やけに重く感じたのですが、気のせいでしょうか?

確かにウエステリアの騎士の方々は、最初に見た数よりも少ないですが、きちんと皆様、帰って来ていますし。もしかしたら、ウエステリアの国側に集まっているかもしれませんね。


「翔太君、もしかしたら、ウエステリア側に集まっているかもしれませんよ? 此方はクラリオン王国側ですし、たまたま此方に抜けてしまったのかもしれませんし」


実際、ウエステリア側の騎士の皆さんは、途方に暮れた方々が、石に座り込んでいるんです。スザリオン王子が来たお陰で、皆さん元気になりましたけど………………。

自国の勇者が無事で、ホッとしているようですし。


「こんな時、咲希が居ればなぁ…………あいつの力を使えば、散り散りの奴等も、早々見つけられたんだよな〜」


「翔太君、無い物ねだりはダメですよ? 咲希ちゃんは今、エルフの国に居るんだから」


クスクスと、思わず微笑みを浮かべてしまいます。私達は、知らず知らずのうちに、咲希ちゃんをとても頼りにしていたようです。


「あの…………先程から、サキという方が会話に出ているのですが、どなたですか?」


あ、大変です! スザリオン王子が居たんでした! 何をやってるんでしょう、私!


「えっとですね、咲希ちゃんと言うのは、私達クラリオン王国の勇者の一人なんですよ、私達の仲間です、今回は事情があって、此方には来てませんけど」


「そうだったんですね! 翔太様と優香様が楽しそうに話してるから、気になってしまって…………お話中に入ってしまって、申し訳ありません」


キラキラした目で見られると、何だか照れてしまいます。とっても綺麗な顔立ちなんですよ? あ、男の子に綺麗とか、失礼でしょうか?


「構わねーよ、公式の場じゃないしな…………しかし、グリズー団長、お前さんのジイさんをさがさねーとな?」


普通は、探しに来るでしょうに、そういう方々もいたらしていません。何か向こうで起きたのでしょうか?


「あれ? 翔太君、あそこに見えるの、グリズー団長じゃないですか?」


ここは開けた草原です。お陰で見通しがいいので、森から鎧姿の方々が来るのが見えました。翔太君やネイギー団長も気付いたようです。

やがて、すぐ傍まで来た皆様は、スザリオン王子の無事な姿を見て、安堵された様子です。特に、ジイと呼ばれていた、グリズー団長は本当に安心したのでしょう。号泣されていました。


「王子〜、無事で、無事で、ジイは嬉しいですぞ〜〜〜、本当にご立派になられて〜、陛下もお妃様もお喜びになるでしょう〜!」


えっと、男泣きと言うのでしょうか? 本当に、スザリオン王子を大切にされているのが分かります。翔太君が、引いているような気もしますが。


「じい、恥ずかしいから、止めてくれ! それに父上も王妃様も母上も、僕に何も期待してないよ……………、兄上達だって」


どこか淋しそうな姿が、何故でしょうか。昔の私に、重なった気がしました……………。

小さい頃の私は、お兄様達が私に対して、劣等感を感じていたなんて、知らなかったんです。楽しくて楽しくて、周りが見えて無かった私は、お兄様達が笑えなくなって、初めて知ったのです。私の愚かさを……………。


「優香? どうした? ボンヤリして」


ハッとして、声がした方を見たら、翔太君が心配そうに、私を見ていました。いけませんね、仲間に心配させてしまうなんて…………。もう、乗り越えた事です。今更、本当に、今更な事なんですよね。

フニャリと笑顔を見せます。

大丈夫です、だってもう、お兄様達は笑えるようになりました。私は剣道は好きですが、趣味としか言えないですし、お兄様達のようには出来ないですから。


「何でも無いです、グリズー団長が無事で良かったです」


「これは、心配をかけたようで………なーに、このグリズー、まだまだ若い者に負ける気はござらん!」


ガハガハと豪快に笑うグリズー団長さん。本当にお元気のようです。


「王子、皆に元気な姿を見せてやって下さいませ! 気を揉んでいる奴等もおりましてなぁ!」


「ん? 分かった、じい…………優香様、翔太様、少し席を外します、失礼します」


スザリオン王子は礼儀正しく、そのままウエステリア側の皆さんの方へ、向かって行きました。

その背を見ながら、ふと先程の発言が気になりました。どうやらそれは、私だけでは無いようで、翔太君も気になっていたようです。

向こうでは、ウエステリアの騎士の皆様の歓声が聞こえてきます。


「グリズー団長さんや、今のスザリオン王子の発言、どういう意味だ? あれじゃあまるで、家族が敵…………いや、まるで味方が居ないような口振りだが」


確かに、そうとれる発言でした。スザリオン王子は、家族仲が悪いのでしょうか?


「いや………お恥ずかしい、はぁ…………王子は誤解してしまっているのですよ、儂等は知っているからこそ、歯痒いと申しますかなぁ」


そのまま、溜め息と共に、肩を落とされてしまいました。

あれ? どういう意味でしょう? 先程の言い方だと、スザリオン王子は家族と上手くいってないように思いますが、グリズー団長の話を聞くと、何か誤解があるようです。


「お恥ずかしながら、我が陛下は家族を常識の範囲内ではありますが、溺愛しているのです、お妃様は王妃様と側室様が二人であり、未だに皆様仲睦ましいですし、子供はスザリオン王子を含め8人おります、王子は末っ子ですからなぁ、特に可愛がられているのですが……………」


これだけ聞いたら、スザリオン王子は溺愛された子です。でも、それなら何で、あんな発言をするのでしょうか?


「王子からすれば、可愛がられていると認識出来ないのですよ、その……………」


何やらゴモゴモと、口で呟いているのですが、言葉になっていません。しかし、意を決して出た言葉には、流石に驚きました。


「陛下は父親として、中々自由時間が作れませんでなぁ…………常に陛下と王子として会うため、すっかり誤解をされてしまったのです」


一国の王ともなれば、忙しいでしょう。子供との時間が取れないのは、悲しい事ですが、それだけであんな淋しそうな、辛そうな顔をするでしょうか?


「他にも、勇者の神託が降りてから、急に貴族達が騒ぎ始めましてなぁ……………元々、仲が良かった兄王子方、姉王女方とも、すれ違いが始まってしまい、何度腸煮えくり回ったか!」


「あー、つまり貴族が勝手に騒ぎ始めたわけだ、勇者の王子なら、次の国王に〜なんて言いそうだからなぁ、そりゃ兄王子達からしたら、面白くはねーよなぁ」


翔太君、しみじみと言ってますが、何かあったのでしょうか? 視線が遠くをみてますが……………。


「勿論、陛下は今の王太子である、第一王子を次の王に指名していますし、勇者となったスザリオン王子を、とても心配しております、………………それが上手く伝わっていませんでしてなぁ、本当に邪魔な者が多くっ!」


確か、国は一枚岩では無い、と前に咲希ちゃんが言ってました。恐らく、今の王太子様を良く思わない方々が、何かをしているんでしょうね。


「では、国に帰っても、心休まらないですね」


何気なく呟いた、私の言葉に、何故か翔太君とグリズー団長がニヤリと笑った事に、私は思わず首をかしげました。


「ならば、スザリオン王子は、クラリオン王国に招こうか?」


「オー! それはスザリオン王子も喜びますな! 陛下もすぐに許可下さいますでしょう」


「ああ、それがいい、そちらもこれから、色々と忙しくなるでしょうし、仲間に紹介も出来ますからね」


流れるような会話に、私が目を白黒させていると、ニヤリとまた笑った翔太君。何か企んでいませんか!?


「優香には、後で説明すっから、な?」


私は取り敢えず、頷くに留めました。こういうのは、翔太君の方が分かりますからね。

結局、グリズー団長さんが、チャンネルで許可を取り、スザリオン王子は正式にクラリオン王国に来る事が決りました。


………………後からですが、翔太君に教えてもらいました。スザリオン王子へ、嫌がらせやら色々していた貴族達を処罰する為に、必要だったそうです。グリズー団長が遅れたのも、その準備の為だったそうです。断罪するには、スザリオン王子が別の場所に居る必要があったそうです。

それなら、早く言って欲しかったです、本当に。


でも、これでようやく帰れます! 和磨くん、大丈夫でしょうか? 咲希ちゃんも無事ならいいんですが………………。


お読み頂き、ありがとうございます。読了、お疲れ様でした。


ようやく、ようやく! この閑話シリーズを書き終わりました…………。長かった、長かったよ………。

最近は咲希ちゃんや、和磨くんが書けないから、本当に変な感じでした(;^_^A やっと、戻ってきます!

さあ、次は少し閑話を挿んで、咲希ちゃんとリゼス様のお話です。

次回、また宜しくお願いしますm(__)m

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