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閑話 翔太と優香の国境戦( 7)

次回更新予定は、3月22日です。もしかしたら、別の作品を更新するかもしれません。ごめんなさいm(__)m


Side:翔太



双子が時間を稼いでいる間、優香は目の前に集中している。構えたままでな。

敵である、ジャイアントギガンテスは、目を射ぬかれて暴れ回ってる。俺でも行けない事は無いんだが、魔力が少ない今、無茶は出来ないからな。

とはいえ、優香のヤツが無茶しそうでハラハラしてる訳だ。


「行きます!」


掛け声と共に、駆け出した優香。流石、スピードタイプだけあって、魔法を使わなくても、かなりのスピードだ。


「優香っ、あまり近寄り過ぎるなっ!」


ギリギリまで近寄るのは分かるが、あまり近過ぎると、あの暴れている巨体に潰される可能性すらある。

あ、優香にハラハラしているが、俺の手は普通に魔物を相手にしてるぜ。優香がやるって言ったんだ。任せるしかねーだろ? こんな器用な事が出来るのも、前の世界の師匠のお陰だな。


「あいつ、何か考えでもあるのか?」


ギリギリまで近付いたが、それだけだ。何か、タイミングを狙ってるのか……………?


「まさかっ、あいつ!」


優香の家は、剣術道場だ。すっかり記憶の彼方に飛んでいたが、優香自身が有段者でもある。最近は、魔法の修練も落ち着いて来てたから、見てなかったんだよな。優香の剣の練習を。あいつが二刀流を選んだのは、俺が原因だが、女性でスピードタイプは、どうしても軽い攻撃になっちまう。優香自身、二刀流に素質があったようで、多少の戸惑いを過ぎた頃から、頭角を現しているしな。

で、今の状況は………………。

間違いない、あいつは俺が覚えた『居合い』を使う気だ。


「あれ、純粋な剣風じゃないんだが……………」


俺の師匠は出来たが、俺には出来なかった。故に、俺のはモドキが後ろに着く。大剣だからな、俺の武器……………。色々あって、剣風に魔力を乗せる手に落ち着いたんだよ。

だが、優香なら出来るかもしれねーな。あいつは幼い頃から、剣術を学んでいるんだし。あの歳になら、本物を触った事もあんだろ。


「どんな“居合い”になることやら」


まあ、あの調子なら大丈夫だろ。俺は俺の方をやるだけだ。

頑張れよ、優香。



◇◇◇◇◇


Side:優香



ギリギリまで近付いて、私は全神経を集中させます。途中、翔太くんの声がしましたが、返事を出来る程の余裕はありません。

剣を二つとも、鞘に入れます。構えをしたまま、集中しています。本来ならば、こんな場所でやるような物ではありません。命を捨てるような物です。

でも、私の為に、皆が戦ってくれているのです。ならば、私に出来る事をするだけです!


『二刀流居合い・二線!』


自己最速で放たれた、二本の剣風が、一直線に暴れ回るジャイアントギガンテスへ向かって行きます。幸い、ジークさんとローグさんは、私の様子に気付いていたようで、離れていました。お陰で安心して、やることが出来ました。

向かった剣風は、ジャイアントギガンテスに、当たった……いえ、擦り抜けました。


「え? もしかして、失敗…………?」


擦り抜けた後も、ジャイアントギガンテスは、暴れ回っています。肩で息をしながら、私は目を見開いて見ていました。

と―――――――。


ザシュッ。


そんな音と共に、一気に血を吹き出し、体がバラバラの肉の塊になり、崩れ落ちました…………。


「え? 成功…………?」


思わず、戦場である事すら忘れて、私は唖然としてしまいました。だってこれ、かなりの高難易度の技のはずです。指南書にありましたから。でもまさか、それを私が出したんですか!?


「優香、ボンヤリしてんじゃねぇ! ここは戦場だぞっ!!」


私の様子に、翔太くんから怒声が飛んで来ました。その声に、ハッとします。そうです、ここは戦場なんです!

驚きはありますが、いつまでも皆さんに迷惑はかけられません。


「ごめんなさい! すぐに戻ります!」


まだ頭が混乱してますけど、やるしかありません。私は、戦力の一人なんですから。



◇◇◇◇◇


Side:翔太



やりやがった。優香のやつ!


「マジで“居合い”じゃないか!」


俺が遣りたくて、結局、出来なかった形。諦めきれなくて、諦められなくて、モドキとは言え修得した、居合い。

まさか優香が、正道を行くとは思わなかった。しかし、当然だろう。あいつは、王道を行ってる勇者だ。俺と咲希は、何か違うがな(笑) だってそうだろ? 何かチート過ぎる! 絶対に、何かあるはずだ。勇者はそんな者だからな。


「このままだと、一時間位で終わるな…………後は」


辺りを見て、確認したから間違いない。

だが、この状況を、よく思わない連中が居るだろう。そいつらが動くはずだ。間違いなく、近いうちに。


「ジーク、ローグ、レイヴァン! 俺は魔力を回復させる、優香をカバーしろ!」


今の優香では、無理だろう。あいつはまだ、魔族と渡り合うには、早い。今回のタイプは、筋肉バカではないだろうし、優香を相手に選ばれたら、今の俺じゃ足手まといだ。

まだ来てくれぬな、魔族!

俺とて、久方ぶりに武者震いしたいんだよ。



◇◇◇◇◇


Side:???



うっそ〜!? あれ、僕、かなりの数を準備したよね!?

何で、何で、こうなってるのさぁ〜!?


「ちっ、あの勇者共!」


僕が全力で操った魔物達の数は、2万は行ったんだ。凄い数のはずなのに、あのクラリオン王国の男勇者! 一撃で半分を消し去るとか、馬鹿力過ぎるだろ!? 見たことすら無い、知らない魔術で、一撃で消された。

次の変な気配がする奴は、奴程では無いが、やはり一気にかなりの数を削った。一人でやるには、大き過ぎる力を放出しといて、その後の討伐にまで参加しやがって〜!

お陰で半日もかからずに、全滅ときた………………。んもうっ! もうちょっと、粘ってよ!!

こんな事なら、僕も城攻めに行きたかったぁぁぁ〜!! 絶対に楽しかったもんっ!


「あれ? そういえば、妙な気配の勇者はどこ行った?」


あの、クラリオン王国の勇者は、二人とも最前線に居るのに、あの妙な気配の勇者は、ここに居ない。おかしいなぁ。確かに居るはずなのに。

しばらく下を見て探すけど、居ない。何だろう? あの妙な気配の勇者、魔物達が近づくの嫌がるんだよね〜。それに、普通と違う気配だから、何か違和感が凄いんだよ。相手をするのを、こう、気圧されるというか……………。


「先に面倒な、あの妙な気配の勇者を倒そうかなぁ〜……………どこだろ?」


あの勇者さえ倒せば、クラリオン王国の勇者を血祭りに上げても、人間は止められないだろう? うん、我ながら、この素晴らしい考えに、うっとりするよ!


「さぁて、あの勇者はどこかなぁ〜♪」


一番最初に、僕の手で、血祭りにしてあげるよ。



◇◇◇◇◇


Side:翔太



間もなく終わる、討伐の傍ら。俺は、木の上で寝ていた。いや、サボってる訳じゃねーぞ? 魔力回復には、自然の魔力を取り込みつつ、自分の魔力を回復するのが早いんだよ。

つまりだ、魔力の回復には、自然の魔力が濃い場所で、ゆっくり寝てればいい訳だ。


「最短で、2時間か?」


それまでに最低でも半分は回復しとかねーと、魔族の相手は無理だ。今はとにかく、回復に専念するしかねー。


「まだ来ないでくれよ?」


せめて、俺の魔力が回復するまでは――――――――。



◇◇◇◇◇


Side:???



おっ、見つけた!

相変わらず、あの妙な気配の勇者に、魔物が近寄るのを嫌がっているみたいだ。本当に、あいつは何者なんだよ?

まあ、お陰で見つかったんだけど。


「まあ、いっか♪ さあ、狩りの始まりだ!」


勇者が気付かないように、そっと近付いて行く。すぐに終わったら、面白く無いもんね〜。少しは楽しめるといいなぁ。

勇者が後ろを向いているうちに、気配を消したまま、話し掛ける。


「やあ、どこかの国の王子サマ? 僕と遊んでくれる〜?」


無邪気に、子供のように、なるべく可愛く見えるように、微笑みを浮かべる。相手が油断して、どんどんその顔が恐怖に歪む様が、僕は好きなんだ〜♪


「ん? あー、そなた魔族か………、爺が言ってた、髪が紫色なのは魔族だと」


何だろう? 普通の子供じゃんか。妙な気配はしてるけど、王子だけあって、可愛らしい見た目だし。苛めがいがありそうじゃん?


「そうだよ、僕は魔族〜☆ ねぇ、遊ぼうよ〜、暇なんだよ〜」


甘えっ子の様に、僕は小さな少年に、ニッコリ笑いかけた。子供ならば、安心するはずだしね?


「へぇ………、うん、それじゃあ、あそぼっか」


僅かに俯いた王子サマ、お陰で目元が見えないけど、許可がおりたし、さあ、何をして遊ぼうか?


「魔族のお兄さん、何色が好き?」


ん? 変な事を聞く王子サマだな。僕の好きな色か〜。それなら、あの色が好きだな。


「赤色だよ、君は?」


その時、何故か王子サマは、目元を手で押さえて、クツクツ笑い始めたんだ。どうしたんだろ?


「そっか、お兄さんは赤色が好きなんだ? 奇遇だなぁ、僕も好きなんだよ、赤色がね」


その瞬間、何故か一瞬にして、僕は鳥肌が立ったんだ! 駄目だ、このままここに居たら、駄目だ! 逃げなきゃ、早く早く早くっ!! 逃げなきゃ!


「ねぇ、お兄さん? 遊んでくれるんでしょう?」


僕は、何に話し掛けたんだろう? これは何だ? 素早く逃げたはずの僕は、今や、追われる側になっていた。迫る気配に、逃げ続ける。余裕なんて、あるはずない!

これは一体、なんなんだ!!



◇◇◇◇◇


Side:翔太



時間にして、一時間位で、魔物の討伐は終わりを告げた。

俺の魔力も大分、回復したから、戻って来たんだが、その途中、妙な気配を拾ったんだ。何だ? この鳥肌が立つような、緊張するような妙な気配は?


「何かあったか……………?」


しかし結局、その後、妙な気配が現れる事は無かった。

無事に、討伐終了だな!


いつも、ありがとうございます。読了、お疲れ様でしたm(__)m


本日は優香ちゃんの新技が炸裂です☆ ネーミングセンスが無いのは、ご容赦下さいませ(;^_^A

そして、何やら後半部分に起きたようですね。スザリオン王子や、何者なんですかっ!!?

さて、次回は只今執筆中ですが、ようやく国に帰るようです。そこで起こったあれこれを書くつもりです。

他の作品も頑張って書いてますので、宜しくお願いします。


では、次回にお会いしましょう〜☆

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