特別閑話 現代のクリスマス( 3)
本日は2本行きますよ〜! 一本目!
Side:優香
とうとう、来てしまいました…………。
本日は12月20日、パーティー当日です。お祖父様は、大丈夫と仰いましたが、私は緊張し過ぎてしまって、昨日はほとんど眠れませんでした。
今日は、朝からエステに行き、髪のセットに、着物の着付け………もう、既に疲れています。今から本番という事で、憂鬱です。
「大丈夫だよ、そんな顔をしなくても、優香はとっても可愛いよ?」
そう、励ましてくれたのは、上の兄様です。
今の私は、普段着ている服では無く、振袖姿です。緑色を基調とした物で、椿の花が生き生きと描かれています。
「会場では、笑顔を忘れずにね」
……………果たして、笑顔でいられるのでしょうか?
内心、不安に思いつつも、会場に入ります。
「ほら、あそこに居るのが、主催者の白鳥院長だよ、政界にも顔が効くから、気を付けてね」
……………下のお兄様、私を虐めてませんか? お陰様で、とても緊張してます。不手際があったら、どうするんですか!?
「優香、粗相の無いようにな」
お祖父様の言葉で、更に緊張感が増しました。
「お久し振りですな、白鳥院長、お招き頂き、感謝致します」
丁寧に頭を下げるお祖父様に合わせて、私達5人も頭を下げます。今日、招待されたのは、私、二人のお兄様、両親、お祖父様です。お祖母さまは、お留守番をすると来ませんでした。お祖母様、イベント物が嫌だそうで、パーティーには絶対に出ません。お茶会とか、俳句会とかには行くのですが……………。
「おぅ、神白さん! 相変わらず、勇ましいですな! ご家族もようこそいらっしゃいました、そうそう、神白さん、また一杯やりませんか? 良い酒が手に入りましてな」
白鳥院長は、私のお祖父様と幼なじみだそうで、酒飲み仲間でもあります。お祖母様によく、叱られているのを見ています。普段は威厳のあるお祖父様ですが、お酒が絡んだ途端に可愛くなるのですよ?
「おー! それは楽しみだ、今日はな、末孫の優香を連れて来たんだ、優香、挨拶なさい」
とうとう来ました!
「は、初めまして、孫の優香です、お招き頂き、ありがとうございます!」
緊張し過ぎて、勢いよく頭を下げてしまいました……………。後悔しても後の祭りです。は、恥ずかしい……………。今の私は、耳まで真っ赤になっています。きっと!
「おや、優香ちゃん、大きくなったのぅ! ほれ、覚えとらんか? ボーズのじいちゃんじゃよ!」
はい? ボーズのじいちゃん? どこかで聞いたような…………あっ!!
「もしかして、お祖父様の釣り仲間の?」
「そうじゃ、そうじゃ、いやー、女の子は成長が早いのぅ…………そういえば、ワシの孫が来ておる、裕美、和磨に紹介しとくれ、あいつも、こういう場の友達がいれば、気も紛れるだろう」
孫思いのお祖父様なのですね。因みに、ボーズのじいちゃんの云われは、いつも釣りで坊主………なにも釣れない方だからです。今思うと、残酷ですね。
「初めまして、優香さん、和磨の姉の裕美よ、宜しくね」
優しそうな方です。眼鏡がとても似合っています。本日のお召し物は、白っぽいベージュのドレスです。胸元のキラキラした宝石が眩しいです。私は振り袖で良かったかもしれません。
「宜しくお願いします」
裕美さんは、優しい方で、色々とお話をして私をリラックスさせてくれました。
「ほら、あそこに居るのが、和磨よ―――――――和磨!」
裕美さんに呼ばれ、振り向いたのは、何と同じ学校の方でした。新入生代表をした方で、私も顔だけは知っていました。
「こちら、あの神白道場のお孫さんよ、今日が初めての社交場だから、お祖父様がお友達として仲良くして欲しいそうよ?」
素敵なウインクまでして、裕美さんは紹介してくれました。
「この子は和磨、わたしの弟なの」
ご紹介はいいのですが、あっさりしてませんか??
「初めまして」
「初めまして、優香です」
同い年とはいえ、男の方は緊張します!
「あら、和磨、其方の方々は?」
裕美さん、気付いてなかったのですか!? 私は別の意味で驚きです。
「あぁ、お祖父様が僕に紹介してくれたんだ、天上翔太くんと、鬼凪院竜一さんと、彼の婚約者の天城咲希さんだよ」
す、凄いです。皆さん、堂々としてます。明らかに場慣れした皆様に、私が気後れしてます…………。
「宜しくね、神白さん」
同い年らしい天城咲希さんは、可愛らしい女の子ですが、青い空色のドレスが彼女を大人びて見せます。
「は、はい、宜しくお願いします」
なんでしょう、怖い感じはありませんし、優しい方だとは思うのですが……………私の感が、何かを訴えていたような。はて、なんでしょう、この感じ。
「助かったわ、ここは女性はあたしだけだし、男の中に一人だけって色々視線がね…………」
少しげんなりしたらしい天城さんは、少し話ましたが、優しそうでハキハキした方で、嫌な感じもありません。
「お祖父様…………心配し過ぎだよ」
皆様、大変なんですね。
「パーティーの挨拶も、一通り終わってるし、神白さん、良かったらもう少し話さない?」
「うん! あの、良かったら優香って呼んで」
「本当!? あたしも咲希って呼んで! 優香ちゃん!」
嬉しそうな咲希ちゃん、本当に可愛い子です。
わたし、パーティーでお友達が出来ちゃいました☆
◇◇◇◇◇
Side:翔太
パーティーというだけあって、色々とお偉いさんのスピーチや、ちょっとしたゲームがあり、中々に飽きない趣向だ。遊び心溢れる催しは、白鳥院長が考えたらしい。中々な人物だよな!
さて、その白鳥院長の孫である和磨とは、何でか話が合った。タイプが違うはずなんだが、何でか楽なんだよな〜。それは和磨もらしく、名前を呼び合うくらいには仲良くなった。あ、鬼凪院竜一とも、仲良くなった。もう、竜一呼びだぜ!
さて、パーティーも半場を過ぎた頃。
急に、妙な気配を感じた。俺は一度、勇者召喚されてるからな。こういう気配は、しっかりと感じるぜ。それと同時に、近くに居た竜一と、婚約者の咲希さんが、険しい顔で辺りを見渡している。
「竜一、気付いた?」
「うん、…………やっぱり依頼に行けば良かったね〜」
二人で話してるが、近いから俺には筒抜けだ。
「なあ、この気配、何なんだ? 優香さんも気付いたようだし、教えてくれや、お二人さん」
俺が話かけたら、二人が驚いてポカーンとなったのは、笑えるよな。まあ、直ぐに真面目な顔になったが。
「優香ちゃんは、剣道やってるからまだしも、天上くんは何かしてたの?」
怪訝そうな咲希さん、苗字呼びかよ……………。あ、婚約者いるもんな。仕方ないか。
「あー………勇者召喚されたからな、武術経験者だよ」
何故か、珍獣を見たような視線がね、飛んできたよ。4人から。
「咲希、狙いは院長………いや、別の人だね」
気配で感じ取ったのか、竜一が情報をくれたが、緊急事態みたいだな。気配に聡い奴等も、辺りを見渡してるからな。間違いない。
「〜〜〜〜〜っ! 誰よ、こんな日に呪咀やらかした馬鹿は!」
静かに怒りを見せる咲希さん。
彼女が入場した時、視線が集中したのは、彼女の美しさもあるが、立ち居振る舞いが綺麗な事もある。そしてなにより、ドレスが空色だったのもある。……………派手なお嬢様が、同じ色を着ていたんだよ。本人は自信満々だったようだが、まーったく似合って無かった。故に、似合っている彼女に視線が向かったんだ。
美人は得だな、色々と(笑)
「呪咀? おいおい、現代日本には、まだそんなのが残ってたのかよ!?」
小声でツッコミを入れたら、二人がニヤリと笑った。いたずらっ子のような、黒い笑み。やべぇ、目が笑ってねぇ!
「翔太? 勇者なら、魔法が使えるよね〜?」
竜一、お前、俺を試してるのか? いや、遊んでるだろ?
「オールマイティーな俺に、使えない魔術はねぇぞ? 何なら、土地一つ更地にしてやろうか?」
因みに、俺は前の世界の魔法が使える。とはいえ、女神様に、色々条件をつけられたがな。この世界では、マジで危ないからさ。
「……………もしかして、マジ?」
おいおい、俺はマジだぞ!?
「咲希、翔太はマジみたいだよ? 攻撃の方、させてもいいんじゃない?」
「そっちは任せる…………、白、偵察宜しく☆」
床に向けて放たれた何かに、咲希さんの言葉。間違いない、陰陽師だろっ? すげーな! 式神か、今の気配! 俺には見えなかった!
「どうやら、父上も気付いたみたい……………は?」
竜一、何故か固まったな。
「咲希、父上から伝言…………静かに消せ…………だって」
うわぁ、鬼凪院の当主、コワッ! でも確かにそうだよなぁ。会場でばれたら、色々ヤバイ。
「なら、結界張ろうぜ」
「簡単に言わないで! お札が足りないわよ!」
おいおい、忘れてるぜ?
「俺が居るんだから、出来るだろ? 後は、呪咀とやらはどうにか出来るだろ?」
「まあ、祓うだけなら、何とか」
なら、決まりだな! いっちょ、やってやりますか!!
読了お疲れ様でした!
本日は2本出しますので、気を付けて下さいね(^.^)b
まさか、こんなに張り切るとは、秋月も思わなかったんですが、筆が乗りました〜♪
次は18時に投稿しますから、気を付けて下さい!




