第120話 爆笑体験を拝見しましょう
次回は、11月23日に更新します。
こんにちは〜☆ クラリオン王国勇者、天城咲希です。
色々、本当に色々あって、あたし達はエルフの国に居ます。何と、まさかのスキャンダルがありまして、襲われるわ、魔物と戦うわ、魔族は出るわ、本当に色々とありました………………。
でも、ようやくそれも終わり。だって、アンリちゃんは、ううん、アン・リシャールちゃんは、記憶を取り戻したんだから。
「サキ殿…………」
ルイさんの呼び掛けに、あたしが視線を向ければ、何か言いたそうな、そんな顔をしている。まったく、昔から見たら、随分と甘くなったものだ、あたしも。
「ごめんなさい、そんな顔しないでちょうだい、これが一番、いい方法なんだから」
分かってるの、それくらい。あたしの目が潤んでいる事も、心がずきずきと痛むのも、きっとあたしが弱くなったんだと思う。
「アン・リシャール様は、大丈夫ですか?」
彼女は、あたしの前で倒れている。性格には、気を失っているんだけどね。
「休ませてあげれば、大丈夫よ……………一気に記憶が流れて、脳が休憩を求めたんでしょうから」
部屋に居た召使の方々が、てきぱきと用意をしてくれたから、あたしらはやる事無し……………。何だか、ナーバスになっちゃったわね。
あー、何か気晴らしをしたいわ〜。
「アン・リシャール様は、我々で見ております故、どうぞお休み下さいませ」
召使の方、丁寧に言ってるけど、早く出ていけと言ってるわよね? 目は口程に物を言うっていうけれど、分かりやす過ぎだから!! 目がね、怖いのよ! あたし何かした!? あり得ないでしょうが!!
「そういえば、午後からイベントあったわね〜♪ ルイさん、案内して下さいな?」
今のあたしじゃ、ここに居るの辛いから。幸い、イベントもあるしね。これに乗らない手は、無いでしょう?
でも、あたしの内心をまーったく理解してない方が、ここには居たのよね〜。
「サキ殿、いくらなんでも……………、せめてアン・リシャール様が、目を覚ますまでは…………」
「無理」
即答したわよ。まったく、トーヤ様はダメね。複雑な乙女心を理解しないなんて……………。でもモテルんだから、顔がいい男はいいわね。ホントウニ!
「トーヤ様、ちょっと」
ルイさんが、あたしが反論する前に、トーヤ様を引っ張り、部屋の隅っこに連れて行って、何やらヒソヒソと、此方をチラチラ見ながら、密談中。
…………………あんたらねぇ? いつの間に仲良くなったのさ。
「はぁ…………早く行きたいわ」
楽しいイベントだから、きっとこのモヤモヤも晴れるはず、なんだけどなぁ………………。
「サキ殿、お待たせ致しました」
「見世物は午後からですから、十分間に合うでしょう」
ルイさん、トーヤ様、何故に可哀想な子を見る顔なのかな!? さっきの話し合い、一体なんなのさー!?
「さあ、行きましょうか」
とりあえず、ルイさんに促されて、あたしはイベントに向かう事になりました。本当、何を話したのかしら?
◇◇◇◇◇
イベント会場、もとい、公開刑罰所には、沢山の方々が来てます。うわ〜、暇人が多いのね〜(笑)
だってね? エルフの皆さんに事前に告知したとはいえ、こんなに集まるとは思わなかったのよ。エルフの皆さんて、娯楽好きなのかしら?
「あ、陛下達が居るね〜(笑) 完全に見世物になってるわね…………」
確かに提案したのは、このあたしだけど、まさかここまでノリノリにされるとか、普通は思わないから!!
「いやいや、サキ殿? あの処罰は色んな意味で前代未聞ですからね?」
………………うーん、本当にそうなんだろうか? あたし達にしてみたら、それくらい、処罰にすらならないんだけどなぁ。
「いや、あれは前代未聞ですからね? そもそも、これは体よりも、心に来る罰ですからねぇ……………そうとうな、トラウマになるかと……………」
………………あぁ、それね。だって、ちょっとしたノリで言った事が採用されるとか、あの時のあたしは知らなかったんだからさ。不可抗力だ、犯人さん達、しっかりと反省してくれ、あたしは知らん。
「時間まで、あと10分かな?」
「そうですね、あと10分程かと……」
「ねえ、ルイさん? 陛下達、完全に娯楽としてるんですけど、いいの?」
「は?」
ルイさん、気付いてなかったみたい。陛下達、お摘みと飲み物完備で、完全に宴モードよ…………? よく見れば、貴賓席に居る方々も、似たり寄ったり……………。真面目にしてる方も居るには居るけど、やはり食べ物やら飲み物が、普通に完備されてる。
…………………ここ、真面目な場所じゃないの!!?
「えっと、つかぬ事を聞きますが、刑場って、いつもこんな感じですか?」
まさか、ねぇ? あたしには、そんな趣味は無いので、イマイチ理解出来ないけど。もしかして、エルフの皆様はそうなのかな??
「はい? いえ、普段は真面目な空気が流れてますよ? 今回は、完全な娯楽扱いにされてますが………………」
………………。
あたしかっ!? あたしが思い付いた処罰だからか!? うそ〜ん、あたし、只の思い付きだったんだけど?
フランツ様、陛下の近くで頭を押さえているのは、頭痛がしてるからだよね。すいません、保護者様。あたしの所為で、ご迷惑をお掛けします………………。
でもね………? 説教は、どうかお許し下さいね。懇々とした説教は、本当に苦手なのよ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
「あ、始まるようですよ!」
何だか内心複雑なうちに、刑場に兵士さんらしき偉い人物が来て、朗々とした声で、罪状とか処罰の経緯とかが事細かに説明されているわ。まさか、あたしらを殺そうとしてたのは、今の説明で始めて知ったけど。
「……………こう考えると、あたし達、よく生きてたわねぇ」
妨害、成功してたら死んでたとか、シャレにならないから!! こんな事を考えるエルフ、怖過ぎだから!!!
「その時は、人間VSエルフの仁義無き戦いが起きていたやも知れませんね………………、エルフ側から多額の賠償金という手もありそうですが」
苦笑いで言ったトーヤ様、ありそうで尚怖いわ!? 真面目過ぎも問題だわ………………。
あ、お偉いさんの話が終わった。すまん、お偉いさん……………、お話の半分も聞けなかったわ。
つーか、会場の所々で酒盛りスタート……………。ここ、刑場よね? あたし? あたしが悪いの!? こんなのまで責任取れないわよ?
「完全な娯楽扱いですし、気にしないで下さい、陛下が許可した以上は、サキ殿の責任ではありませんから」
あたしの表情から、ルイさんが気付いたみたい。本当に、あたしの表情筋よ、どこ行ったの!?
「しかし、これから行われる罰、よくサキ殿は思い付きましたね?」
………………目を反らしたのを、許して欲しい。まさか、ノリで言ったら採用されたとか、言えないわぁ。バレテルけどね(笑)
「まぁね…………あら、始まったわよ!」
タイミング良く、罪人達が壇上に上がってくる。全部で5人かな? 周りは兵隊さんが、大勢居るから、罪人達が逃げる事も無理みたいね。そういえば、罪人達には一切、罰の内容を知らないのよね………………。
心が抉られると思うけど、まあ、罪人達だしね! 心行くまで、楽しんでくれたまえ!
「庶民の子供なら、一度は体験する、お母さんやお父さんからの、ありがたい罰だからねぇ……………エルフはやらないの?」
ここまで娯楽にするって事は、しないのかな?
「エルフでは、子供は大切にされますからね、しかしヤンチャな子は何処にでも居ますからね……………世のご両親は、してるかもしれませんね」
なんて微妙なお返事が。そっか、エルフは子供が少ないからね。子供時代が長い分、しっかりしてしまうんだろうね。アンリちゃん………、いや、アン・リシャールちゃんとか、ゼイーセル殿下とか見てると、確かにそうだよね。年齢の割に、しっかりしてるし。
「始まるようです」
トーヤ様に促され、壇上を見れば、どうやら準備が始まったみたい。壇上に上がった彼等は、四つんばいにされている。顔は、何が起きるのか、よく分かってないもよう。うん、トラウマになるかもね!
で、何故か尻を丸出しにされる5人。何が起きるか、戦々恐々としてるね(笑) 顔がね、もう真っ青なのよ………………。自業自得なんだけど。観客からは、歓声が上がってる。
もう、この時点で、罰の内容にピーンて来た方もいるわよね?
「いい歳した、オッサン達が、子供のように、お尻ペンペンて…………いい恥よね」
あたしの目が半眼になったのは、当然でしょ? こんな罰、まさか通ると思わなかったんだから。
つーか、改めて思うけど、これを見たからって、ストレス発散にはならないのよねぇ。
「帰ろっか」
あたしは、背に男達の阿鼻叫喚を聞きながら、会場を後にした。――――――一部、女性の嬉しそうな悲鳴は、聞かなかった事にして。
さて、王城に帰って、帰る準備しようかね。
ますば、皆様。長らくお休みした事、大変失礼しましたm(__)m
スランプ気味であるため、もしかしたらまた、休むかもしれませんが、そこはご了承くださいませ。
さて、本日は色々ありました…………。サキちゃんが、呆れる罰。まさか、これが娯楽として採用されるとは、思わなかったみたいです。秋月も呆れましたもの(笑)
さて、次回23日より毎年恒例になりつつあります。年末リクエスト企画募集をスタートします! 今から考えておいて下さいね。
では、この辺で。
秋月煉




