第106話 エルフの国に行こう!
次回は7月27日更新です。
来週、7月20日は久方ぶりの『夢渡りの姫』を更新します。長らくお待たせ致しましたm(__)m 待ってくださる方、まだいるでしょうか?
説教も無事に終わり、ヘロヘロになりながら、部屋に戻ったあたし。時計を見れば、既に夜の10時。
…………………説教って、あまりに長いと悟りを開けるのね、ハハッ。
「もう、ヒマリは寝ちゃったし、あたしも寝るか」
窓際の棚の上には、大きなクッションが置いてあって、そこには幸せな顔をして眠る、ヒマリの姿。
明日は、朝イチで会議だしね。だって、エルフの国から招待されたんだもん、あたし。
色々あるだろうけど、絶対に、アンリちゃんは守るんだから!!
明日は決戦よ!
◇◇◇◇◇
集合したのは、会議室。かなり大きな部類の部屋で、中央に大きな円卓がある。
今回は、あたしがエルフの国に行く時の、同行者選びをしてるんだけど………………。これで問題が発生しちゃったんだよね(汗
「まさか、火の魔力持ちは、大陸に行けないとか…………」
そう、招く側として参加してるルイさんより、もたらされた情報が原因なんだよね。
今現在、動ける侍従はファイさんとユリーさんだけなんだわ。あ、この前、ユリーさんは正式に侍従になったわよ。レイヴァンさん、帰ってきたら正式に選ばれるのかな?
で、話は戻して。
予定していたファイさんは、火の魔力持ちな為に、エルフの国に連れて行けないのよ。だから、あたしとユリーさんになるんだけど………………、前衛たる騎士が居ない事が見事に問題になっちゃったのよ!
「サキ殿だけを行かせる訳にはいかないからね、………………そうだ、私が一緒に行くのはどうだろうか?」
名乗りを上げたのは、何とフランツ殿下…………………って、王子を連れて行っていいの!?
「私なら、護衛を連れて行ける立場だからね、急に新たな侍従を決めるよりも、早いだろう?」
確かに、今から侍従を選んでる時間は無いけどさぁ……………。だからって、王子を選ぶなんて、いいの!?
「確かに、殿下がおれば抑止力になりましょう」
そういったのは、円卓の中程にいるご老体である。抑止力ってところに、含みがあったけどさ。国に対して、だよね? 別の意味は、無いよね?
「ふむ、確かに抑止力は必要じゃ、殿下は打って付けじゃな」
またしても、別のご老体が賛成した。その際、ちらりとあたしを見たのは。
ふーん。そういうこと?
フランツ殿下を使えば、問題児たるあたしを押さえられる、と? 確かに、あたしは基本的に平和思考よ。
そこっ! 誰が平和思考ってツッコミは無しで!
でもさ? 素直に聞くなんて、何か嫌じゃない? どうも、別の意味もあるみたいだし?
「まあ、殿下が同行して頂けるなんて、光栄です」
ニッコリと、あたしが発言すると、皆がどこかホッとした顔をしたのが、嫌でも分かった。あらあら、素直に気持ちを出すなんて、政治をする側の人間はしちゃダメよ??
「これで安心して、暴れる事が出来ますわ♪ 我が国を、散々コケにしてくれたんですもの、あちらからも許可は頂いてますし♪」
瞬間、空気が氷ついた。盛大に、やらかすつもりだと、分かって。
それにね?
あたしを出し抜いて、殿下を蹴落とすなんて、そんな真似をさせるわけ無いでしょう?
フランツ殿下は、王族で、更に王位継承権を持っているんだよ。他国、それも遠い国に行くのに、周りが反対を誰も言わないなんて、おかしいでしょ? あたしの所為もあるだろうけど、何も殿下でなくても出来るからね、この役目は。
つまりは、フランツ殿下を他国にやってる間に、次期王を決める争奪戦か、他にも色々と、やらかすつもりだったんじゃないかな? 王子は他にもいるからね。
ま、あたしが潰したけど(笑)
だって、あたしよ? 相手は。フランツ殿下に抑止力になってもらわないと、困るでしょ? あたしを止めれる人間は、この国に数人しかいないんだから。
もしも、フランツ殿下が争奪戦に落ちたら………………抑止力が消える。次は、どこに向かうのかな? ねえ?
「では、エルフの国に行くのは、あたしことサキ、ユリアスさん、フランツ殿下と護衛で構いませんか?」
出席した皆さんが、必死に頭を振る様は、あまり気持ちがいいものじゃないけど、まあ、無事に決まって良かったわ(笑)
さあ、いよいよエルフの国へ、行く準備をしないとね♪
◇◇◇◇◇
Side:フランツ
私が部屋に戻ると、既に険しい顔をした二人が陣取っていました。文字通り、陣取っていたのです。
勿論、私の一番信頼している二人、リゼスとトーヤです。幼なじみだけあって、私に対して、容赦はありません。
「私がエルフの国に行く事になったよ」
そう言えば、眉間に皺が出来るリゼス。トーヤに至っては、頭を抱えてしまった。二人の反応は、私を思っての事。分かっているからこそ、嬉しく思ってしまうのです。
「殿下、勿論、我々も連れて行くのですよね?」
リゼスの声が低い。こんな時は、彼が怒っている証でもあります。
「いや、すまないが、今回はトーヤのみになる」
私の言葉に、リゼスの眉がピクッと動きました。勿論、これには理由があるのです。
「今回は、武術が出来るトーヤが居た方が、何かと助かるからね、リゼスには城に残って頼みたい事があるんだ」
私の言葉に、リゼスは目を細めます。本当は言いたい事など沢山あるでしょうが、彼の口からそれが言われる事はありません。それらは全て、別に発散されていますから。
「………………分かりました」
さあ、私を落とそうと動いた輩には、ここで田舎にでも引っ込んでもらいましょう。
全ては、この国をよくするためなのですから――――――――。
◇◇◇◇◇
Side:咲希
まず、言わせて欲しい………。
「一体これは何なの〜〜〜〜〜〜!!?」
『……………叫ばずともよいのでは?』
お札の龍が、とっても冷静なのが、何か腹立つ!
「サキ殿、そろそろ現実に戻ってもらっていいかな?」
隣には苦笑したフランツ殿下。更にその後ろに、氷のように冷たい視線のトーヤさん。今回の護衛筆頭の方でもあるんだ。その後ろには、8名の騎士と3名の上級魔術師、更に2名の神官様が同行するんだ。で、あたしとユリーさんを含めると、総勢で17人の使者だね。
さて、あの会議から既に7日が過ぎた。勿論、準備の為だけど、あちらにも都合はあるしで、ようやく準備が完了したのが今日なわけ。
あたしも大変だったわよ……………。お泊まりの準備したり、お札の準備したり、必要な物を契約した無制限収納バックに入れて、更にあたしが離れている間に、何かあったら大変だから、魔術に関する引き継ぎやら、和磨くんと連絡取れるように、チャンネルを用意したり、ね? 限りがないでしょ?
で、アンリちゃんの一行8名と、あたしら一行17名を、今から“門”でエルフの大陸まで送るわけ。何でも今回は、エルフ側が道を繋げるから、此方は特にやること無しの、特別待遇なんだって♪
…………………そしてさ、門がある部屋に来たんだけど、あまりの凄い光景に、冒頭の事態になったわけ。
「流石に、コレ見て平然とか無理だから!!?」
あたしが驚愕したのって、絶対に普通の反応だからね!?
「まあ、確かにね…………」
苦笑いするしかないフランツ殿下は、恐らくあたしのような反応をした方を、見たことがあるんだろうね。
あたしの目の前にあるのは、門らしきもの。ゲートとして使われる門は、うん。何ていうかな…………? 赤い人の銅像が二人、手を伸ばして頂点で固く握り絞めていて。片方は女性、片方は男性をモデルにしたらしく、中々に銅像は美しい。で、二人の間には空間があって、そこが入り口なんだろうね。てか、扉がない。
そう、門なのに、扉がない。ぶっちゃけ、銅像しかない!!
叫ぶしかないよね!!? これって変だから、普通。門って聞いていたから、キチンとした扉があるんだと思ってたわ……………。またしても、あたしの中の常識が壊れていく………………。
「咲希さんっ!! 間に合って良かったぁ〜」
そう、いきなり叫んで来たのは、朝から薬室に缶詰めになっていた、和磨くん。余程、慌てて来たんだね。肩で息をしてるもの。
「和磨くん? どうしたの!? そんなに慌てて!」
まさか何か緊急事態!? 流石に、今のあたしは何も出来ないわよ!?
「ははっ、大丈夫だよ…………これを渡したくて」
そう言って、箱を渡して来た。大きさは然程、大きくない。中を開ければ、驚く事に、試験管が10本と、袋に入れられた錠薬が20個かな。綺麗に整理整頓されて入っていた。
「これは…………?」
「万が一の為の、毒消し、後はラベルを見て飲んで、ほとんど必要な物は用意しといたから」
まさか、この数日間を使って、作ってくれた……………?
「ありがとう………大切に使うね、皆で」
素直にお礼を言ったら、和磨くんたら顔が赤くなった。でも、皆でって言ったら、何でか一瞬固まって、だよねぇーって、苦笑いされた。意味分かんないよ〜!
「さあ、カズマ、そろそろ時間だから、部屋から出た方がいい」
フランツ様に促され、和磨くんが部屋から出ていく。頂いた箱は、ありがたくバックの中へ。人間が大丈夫な薬があるとは、限らないからね。本当に助かるものだよ。
「さあ、時間だよ」
フランツ様に言われて、門を見れば、銅像のそこから一瞬にして光が溢れて、何も無かったはずの門の部分に、光輝く、美しい扉が出来ていた。それは精緻な光の彫刻まで掘られていて、見る者、全てを圧倒する。
思わずポカーンとなったけど、辺りを見れば皆似たり寄ったりだったわ……………。だよねぇ、普通はポカーンとなるよね?
さぁて、いざ、エルフの国へ参りましょうか!! 待っててね、裏幕さ〜ん♪ あたし咲希ちゃん、今から貴方に会いに行くの♪
いつもお読み頂きまして、本当にありがとうございますm(__)m
すいません、まだエルフの国に行けてません(-人-) 次回は行きますので、ご了承下さいませ☆
思い返すと、エルフ編は他より長いお話になってますね。ここで黒幕さんのカウントダウン開始です♪
さあ、これが終わったら、ようやく翔太達の方に行けます! 一体全体あと何話で行けるのか、ちょっと気が遠くなってきました…………。入れたいお話もあるしで、来年完結が危うい気がします(;^_^A
でも、ここまで来れたのは、一重に読んで下さる皆様のお陰です。本当にありがとうございます!!
テンシロはまだまだ頑張ります!!
では、また次回、お会いしましょう♪




