第104話 レッツ☆一網打尽です♪
次回は7月6日です。
歓迎の準備も、すっかり済んで、後はお客様を待つだけになりました(笑)
「あの………サキ殿? 何故に、部屋に、罠を仕掛けているんです? 敵か味方か、まだ分からないんですよ!?」
ぎょっとして、青ざめてしまったルイさんには悪いけど、もう少し自覚して下さいな。貴方は狙われる側なんだからさ。
「あ、そこはご安心下さい、キーワードを言わない限り、罠は作動しませんから〜♪」
出来るだけ、安心できるように、スマイルを見せたんだけど、何故か怯えられた。……………傷ついたわ、地味に。
「………………サキ様、久しぶりの戦闘で、興奮するのは分かりますが、殺気は抑えて下さい! 廊下に漏れたらどうするんですか!」
ファイさんに、小さな声で叱られた。
ルイさんがビビったのは、あたしの殺気の所為だったみたい。最近、自分では無自覚な為か、殺気を放っているの、分からないんだよね……………。自分が殺気を受けると分かるのに、理不尽だわ。
「ごめんなさい、気を付けるね……………」
流石に申し訳なくて、素直にルイさんとファイさんに謝る。人間、素直が一番よ(笑)
「来たようです」
ファイさんの、その言葉の直後、コンコンとリズミカルに扉が叩かれる。
『失礼します、お昼をお持ち致しました』
……………………あれ?
年若い女性の声に、部屋の中の空気が固まった。今がお昼だって事、きれーいに忘れていたわ!
「どうぞ」
念のために、警戒はするけど、入って来たメイドさんは、本当にお昼を持ってきただけらしく、テーブルにディナーを準備すると、さっさと出ていってしまった。一応、最初から最後まで、マナーは完璧だった事を、メイドさんの名誉の為に記しておく。
「普通のメイドさんでしたね」
苦笑いで言えば、場の空気が微妙なものになる。さっきの緊張感が、緩んでしまったわ。
「龍、暗殺者はどれくらいで来そう?」
『……………しばらく掛かるかと、迷子のようですから』
その言葉に、あたしはソファーに突っ伏した。あたしらの緊張感、返してよ!?
「ありがとう、龍……………先にご飯食べてましょうか」
あたしの疲れた顔に、ファイさんが心配した様子で、問い掛けてくる。
「あの、サキ様? どうかなさったのですか?」
うん、多分言ったら、皆も微妙になると思うよ。
「……………お客様は、今現在、城の中を迷子になってるんだって」
「「「はあ〜〜〜〜〜〜!!!??」」」
3人の声が綺麗にハモッた。
うん、いたって当たり前の反応よね。
「…………お昼を食べようか」
ルイさんの疲れた言葉に、あたしらも頷いて、お昼を食べ始めるのであった。
◇◇◇◇◇
さーて、ようやくお待ちかねのお客様とのご対面………………とは、いかなかった。そう、暗殺者さん方は、まさかの廊下で捕まっていたんだよ!!
先程、騎士さんが来て、ご丁寧に説明してくれたわ。
「はあ〜〜〜〜〜〜、期待して損した!」
「そんな物に、期待等しないで下さい!」
全力でファイさんにツッコミされたけど、仕方ないよねぇ。全力で遊ぶ気だったんだもん!
「不満そうだね? サキ殿」
クスクスと笑いながら、此方に問いかけるルイさん。先程見せた、あの引きつった顔は、もうない。短時間で馴れてしまったらしい。うん、凄い適応力☆
「今回捕まったのは、二人………合わせて4人か」
「まだ、あと3人は居ますね」
ルイさん、何だか楽しそうなんだけど、そんなに嫌いだったのかな?
「あの、多分ですけど、彼らも警戒してるでしょうから、庭に散歩とかどうでしょう?」
ゼイルくんも、ニッコリ笑って提案してるのに、何か含みがあるよね? ゼイルくんも、外見と歳が違うって、ようやく気付いた。彼らがエルフなら、歳はあたしより遥かに上だよ。
本当に外見詐欺だよねぇ、エルフの皆様は!
「そうだね、行こうか? 天気も良いし、アンリちゃんも誘って、ね?」
動かないならば、罠を張るまでのこと。フフフ、自分の手で捕まえたいしねー、犯人は。アンリちゃんを狙った事、後悔させたるわっ!!
「では、庭にご案内します、アンリ様には此方から、使いを出しましょう」
ファイさん、ナイスです☆
◇◇◇◇◇
「わぁー! お花いっぱい!」
嬉しそうに走り回るアンリちゃんを、アンリちゃん付きの護衛の皆さんが、温かい空気で見守っている。
「本当、よく笑うようになったよね」
アンリちゃんは、最初来た時は、不安がいっぱいで泣きそうだった。けれど、少しずつ、変わっていったんだ。
………………あたしのように。
「サキ様?」
ファイさんに呼ばれて、思考の内側から現実に一瞬で呼び戻された。
「何かあった?」
「いえ…………、心ここにあらずのようでしたから」
ファイさんの目が、生暖かい気がするわ。それに、口元が緩んでるし!
でも、不思議と怒りとかは湧かなかった。
「まあ、自分を見てるみたいだしね」
「え?」
するりと出た言葉に、ファイさんの驚く言葉を聞いて、はたと気付く。何やってるんだろうね、あたしは!!
せーかっく、ばれて無かったのに、何をバラしてるんだよ! あたしは!!
「ごめん、何でも無い」
知られなくて、いい。昔の―――――心から笑う事も、忘れていた自分なんて。
戦いに身を置いていた事も、旧家の名門一族の婚約者だった事も、本当の事。でも、重い重圧は、ここには無い。大好きな皆が居て、自由に笑って、泣いて、失敗して、成功して……………仲間が居て。幸せでしょう?
だから皆には、知られなくていいの。あたしのくだらない過去なんて。
「あら、お客様がいらしたみたいよ?」
さあ、舞台は整ったわ。開幕しましょう。楽しい祭りのお芝居を、ね!
◇◇◇◇◇
「ファイさん! アンリちゃんを城へ!」
あたしの願いを受け、ファイさんが護衛の皆さんと、アンリちゃん、ルカさんと、ゼイルさんもまとめて城へ向かわせる。勿論、あたしの式神様たる、春と樹英様はアンリちゃんの護衛として同行してるから、こっちは大丈夫♪
「ようこそ、庭園へ…………お客様も薔薇はお好きかしら?」
あたしが、わざとらしく芝居がかった口調で、目の前にいる、黒いマントの人物と対峙する。ウフフ、ウフフフ♪
ようやく、お相手出来るわ!! 此処で会ったが百年目! お縄にしてくれる(笑) あ、楽し過ぎるわ、これ!
『ふざけ過ぎです!』
あ、龍に叱られた…………。
「白、出番だよ―――――相手をしておやり」
近くの茂みで、くぐもった悲鳴が上がる。隠れていた人物は、白に見張らせていたヤツよ。別にケガはしていないはずだし、精々が打撲程度だろうけど。白は、基本的に攻撃は滅多にしない。精々が打撲なのよね。
本気を出したら、別だけど。
「さあ! ショータイムと行きましょうか♪」
アンリちゃんを狙った事、後悔させて差し上げるわ!
あたしの本気を悟ってか、目の前の黒マントは、あ、ややこしいから、こっちは1号で! は、あたしに向かって、細長い剣を真直ぐに向けて、走ってくる。突きで殺そうってか。ならば、遊んであげるよ。
「緋ノ斗、おいで」
あたしが喚んだのは、一番の暴れ者。封印は解いて無いから、好きなだけ暴れても、被害はあまり無い。龍も居る以上、問題ないだろう。
キ―――――――――ン!
甲高い、剣のこすれる音が辺りに響く。……………何もあたしの真前でやらなくても(涙) 後で緋ノ斗は説教確定ね!!
『へっ! 俺様が相手をしてやるよ! 三流!』
………………緋ノ斗、流石に三流は失礼じゃないかな? そりゃ、悠久を生きる神様に比べたら、まだまだかもしれないけどさ? 人間からしたら、間違いなく、一流だよ。
『邪魔をするな!』
やはりと言うべきかな。声がくぐもっているから、男か女か分からない。マントですっぽり隠してるからね。……………既に、あたしらは相手がエルフだって事、知ってるんだけどね。気付かぬは敵のみってか(笑)
「緋ノ斗、遊んでおやり」
周りには誰も居ないんだから、昔のあたしが出たとしても、誰も気付かないしね☆
『おう!』
緋ノ斗は楽しいのか、ニヤリと笑うと、自分の身の丈の倍はあるだろう、三又の槍を軽々と振り回す。勿論、相手も負けてはいない。三流と呼ばれたのは、流石にカチンと来たようで、細いタイプの剣を正面に構えている。剣には、水が渦巻いており、本気が伝わるというものだろう。
暫しの睨み合いの末、最初に動いたのは、マントの一号さん。
『ハァァァ!』
気合いと共に振り下ろされた剣は、かなりの早さで、あたしは判断出来なかった。以下にあるのは、龍がヒソッと教えてくれた事よ。
緋ノ斗はあっさりと奴の攻撃を受け止めて、すぐさま反撃に出る。あたしには見えなかったから。相手の勢いを利用する形で、体を横に動かし、外回りに回した槍の持ち手を相手の背に叩きつける! 相手は勢いがあった事もあり、受け止められると踏んだ事もあるだろうが、避けられてしまえば意味はない。一瞬、動きが止まる。そこを背に勢い良く叩きつけられ、無様に吹き飛んでいく。最後の吹き飛ばされた部分だけ見えたわ。
まあ、此方は大丈夫みたいだし♪
「貴方は、あたしと遊びましょうか?」
見れば、茂みから出て来たマント2号さんが、剣を構えていた。白に殴られていても、打撲なら怯む程度だろう。まあ、その僅かが欲しかったんだけどね。
「ちょうど、直接相手をしたかったのよ♪」
ニッコリと笑顔を見せたんだけど、2号さんは無視。ただ剣を、あたしに向けただけ。
「さあ、遊びましょう♪」
異様に明るいあたしの声が、場違いに廊下に谺した。
◇◇◇◇◇
Side:宰相
また、ルイから手紙が来ました。あれには、緊急連絡用に数枚の手紙を持たせております。まさか、こんなに早く使う事態になろうとは………………予想は出来ていましたが、ハズレて欲しい予想もあるのです。
「陛下、ルイより連絡が」
本日も陛下はご機嫌斜めな様子で、愁いを帯びた姿を見せています。
「そうか………」
「どうやら、奴らも動いた様子で、大々的な捕物が行われている様子です」
「そうか、なあ、宰相?」
「はい、陛下」
「此方もそろそろ動こうか」
「畏まりました」
ようやく、動く事が出来ます。今回の件を含め、煮え湯を飲まされるのは、沢山ですから。あやつ等を、泳がせておいたのも、証拠と言い逃れ出来ないようにするため。
「あ、そうだ、宰相」
「はい、何でございましょう?」
「…………………と言うのはどうだ? 奴等も盛大に、楽しんでくれるだろう?」
陛下の提案は、大変素晴らしく、そして大変都合の良い、魅力的なお話です。きっと、奴等も盛大に踊ってくれるはずです。
「では、わたくしめは準備を」
さあ、最後の舞台を整えましょう。
読了、お疲れ様でした♪
本日からバトルのお話になります………………。咲希ちゃん、戦います。かなり久しぶりにガチで戦います。どうしましょう、秋月は戦闘描写をしっかり書けるでしょうか!?
が、頑張ります…………。
さて、お話も次のステップへ動きます。あの方々が動かなかったのは、こんな理由がありました。エルフの上層部は、かなり優秀ですが、いかんせん。人間とは生きる時間が違うため、のんびりしてます。お陰でこんな事態になった訳ですが……………。
はたして、陛下は何を提案したんでしょうね(笑)ニヤリ
では次回にお会いしましょう☆




