特別閑話 もしも異世界に喚ばれなかったら……
リクエスト企画、本日で最後でございますm(__)m
次回、6月8日より、本編再開です♪ お楽しみに〜☆
もしも、あの日。
私が異世界に喚ばれなかったら、私はどんな時間を過ごしたんだろうか―――――。
◇◇◇◇◇
Side:咲希
学校の帰り道、偶々、帰りは徒歩になったあの日。あたしは、いつものように、変態対策で気配を薄くして帰っていた。
言っておくけど、変態ホイホイでは無いからね? 無いったら無いからね!?
「あっ! 近道して、先に現場へ行けばいいんだわ!」
今日は偶々、学校の近場でお仕事が入ったから、帰りは徒歩になったんだ。あたしは、進行方向を真っ直ぐから、左道に変えて歩いていく。まさか、あたしが向かう予定の道が、光輝いていて、別の誰かが召喚されたなんて、気付きもしないで……………。
あたしの運命が変わった瞬間だった。
「あれ?」
いつも何も繋がっていない、あたしの右手。運命の相手と繋がっていると言われる、小指の赤い糸。あたしには無かったそれが、今になって…………ある。
「うそ…………」
思わず唖然となる程度には、ビックリした。だって今まで、無かったものだから。
「どうして、急に…………」
あたしは今まで、恋をしないできた。当然だ、あたしには赤い糸が見えていて、あたしには何も繋がっていなかったんだから。それなのに今更あらわれても、どうしていいのか分からない。
恋は、あたしには無縁のものだったから………………。
「あれ? 咲希?」
突然、名前を呼ばれてビックリして、肩がビクッとなった。声がした方を見て見れば、そこに居たのは、間違いなく。
「竜介? 何でここに………」
「いや、何でって言われても、僕も仕事だよ、咲希と一緒なんだ、今日は」
「そ、そう」
正直に言えば、ビックリは今だに治まってない。だってそうでしょう? あたしの目は確かに、それを視てしまったんだから。
「咲希? どうしたの?」
「何でもない! 早く終わらせて、百鬼夜行に応援に行かないと!」
「そ、そうだね、早く終らせよう」
あたしの勢いに、若干引いているみたいな竜介は置いておいて。
あたしは考える。あの曲がり道を曲がってから、あたしに突然、赤い糸が復活した…………。
それも、繋がった先は竜介の小指…………………。
「あれ? 咲希? 何か顔が赤いよ? 熱でもあるんじゃ………」
そう言って、顔を寄せようとする竜介に、あたしの顔はますます赤くなる。って、近い近い!
「竜介!? 何でもないから! 早く除霊しに行くよ!!」
顔を見られないように、あたしは小走りに先に行く。どうしよう! 恥ずかしくて恥ずかしくて、竜介の顔が見れない!!
あ、赤い糸が復活するし、竜介を見るとドキドキするし。これ、何なのよ!?
「咲希っ! 危ないっ!!」
軽いパニック状態のあたしの耳に、竜介の声がした。いくらあたしがパニック状態でも、流石に一気に冷静になった。
―――――――ここが仕事場付近であることを、思い出したから。
「紕ノ斗! 我が前にある悪鬼を燃やしつくせ!!」
竜介や赤い糸の事は、後回しだ。いくら何でも、仕事が先な事ぐらい、あたしでさえ分かってる。暴れそうになる気持ちを、理性を総動員して、押さえ付ける。考えるのは後だ。
「咲希! 怪我はない? いきなり行くからビックリしたよ」
「ありがとう、大丈夫…………ちょっと考え事をね」
心配そうな竜介に、無理やり笑顔を見せる。長年の付き合いだから、騙されてはくれないだろうけど、事情があると察してくれるはずだ。
『咲希………、大丈夫か?』
紕ノ斗も、不安そうに、此方を気にしている。
「大丈夫よ! さあ、あたしは今、とーっても機嫌が悪いのよ、悪霊ども、全部成仏させたるから、覚悟なさい!!」
それから暫く、この世のものとは思えない絶叫が、あちらこちらから響き渡ったのだった…………。
勿論、咲希がこの後、二人きりになった瞬間に、盛大に顔を赤らめたのは、言うまでもない。二人がラブラブに成る日は、果たして来るのだろうか?
余談だが、久しぶりに観測された百鬼夜行は、ただ一人の怒れる陰陽師に退治された、と記録が残されたという。
◇◇◇◇◇
オマケ☆
ここは天界。
清らかな美しい風が吹く、閑かな宮殿の一室。そこには、頭を抱えた、この地上を統べるアマテラスの神がいた。
「スサ? 貴方は自分の言っている事が、分かっているのですか?」
そう問い掛ける視線の先には、スサと呼ばれた青年が一人。太古の衣装…………では無く、男性の着物を優雅に着こなした青年は、皆様も知っているだろう。アマテラス様の弟君、スサノオ様である。
「分かっていますよ、姉上」
既に覚悟を決めた者の目を、確かにスサノオはしていた。
「だったら!」
悲痛な思いを込めた言葉さえ、彼には届いていない。
「私はクシナダ姫を探しに行きます」
キッパリと言い切ったスサノオに、今度こそ、アマテラス様は頭を抱えた。
「スサ…………彼女は、既に隠れたのです、今更、探してどうなります?」
クシナダ姫は、遥か昔、神話の時代にスサノオが助けた国津神の姫君である。彼女を妻としてからは、真面目に日々を仕事に費やしていた。
そう、あの日までは……………。
「スサ、いえ、スサノオノミコト、探す事は許しません、あの子の、クシナダ姫の意志なのです」
姉では無く、国を司る最高神として、スサノオに命じる。意志と言われたスサノオは、酷く狼狽していたが。
「最高神アマテラスノミコトとして命じます、スサノオノミコトよ、クシナダ姫を探す事は禁じます」
これが、アマテラスに出来る、あの子への気持ち。長く神界にいたあの子は、良い物も悪い物も寄せ付けてしまう。なれば、それが分かる場所に向かわせるのは、世界の条理というもの。
スサノオが探しに行こうとするのも、分かっていた。しかし、あの子は願ったのだ。今生は、普通の人として過ごしたいと。
………………例えそれが、長き時を共に生きた、半身とのしばしの別れになるとしても。
スサノオが気落ちして、立ち去る後ろ姿に、同情をしつつ。その背に、呟くようにアマテラスは告げる。
「願わくは、彼らの未来が、幸多からんことを………………」
囁くように呟いた言葉は、スサノオには届かない。今にも、無理矢理にでも飛び立とうとするスサノオを、果たしてどうやって留め置くか。しばらくはアマテラスも気を使わねばならない。
あの子との、いつかの約束の為に…………………。
「異世界に行けば、諦めるかしら……………?」
その呟きに、アマテラス様が満足そうに頷いていたことに、誰も気付いていなかった……………。
読了、お疲れ様でしたm(__)m
リクエスト下さった、山之上舞花様、ご参加ありがとうございました!! 普段は絶対に書かないお話でしたから、これでいいのか、ちょっと不安です(;^_^A
オマケは、必要でしたから入れましたが、アマテラス様は本当に苦労性です。やんちゃな弟に振り回されています。これから、本編のあのお話と繋げられたら、凄いですよ(笑)
ところで、次回より本編に戻ります。また来週、水曜日の8日に更新しますね。で、予定が外れました。実は、入れるつもりの無いストーリーが入りまして、キャラクターが一部暴走しやがりました! あ、失礼しました。言葉が汚かったですね。
続きは来週の本編で☆
では次回、またお会いしましょう。




