特別閑話 ドラゴンズ人になる☆
リクエスト企画第3段!! 本日は前に告知した、ドラゴン擬人化話でございます☆
た、楽しんでもらえるかなぁ?
その日は、空に見事に大きな満月が登った。
皆が寝静まる深夜。静かで柔らかい光が注ぐ、そんな窓辺で、一つの影がムクリと起き上がる。
『キュッ!』
さあ、行くぞとばかりに、窓を開けて、その影は美しい夜の世界へと身を踊りだす。まだ小さな羽を、必死に羽ばたかせて向かうのは、いつもの場所。
『キュッキュッ! キュー!』
既にそこには、他の影が月を見ていた。気付いたらしい他の影が、嬉しそうに尻尾を振っている。
皆様もお気づきの通り、彼等は勇者に育てられているドラゴンである。今日は彼らにとって、特別な日なのだ。
と、四匹は、一斉に月に向かって、何やらモゾモゾと踊りだす。お尻をフリフリ、手をバタバタ。クルッとターンなんかして、愛くるしい姿で踊っている。可愛いもの好きが見たら、鼻血を噴水の如く噴射した、かもしれない愛らしさである。
「キュッキュキュー♪」
「キュッキュー♪」
「キュエ」
「キュキュー!」
そして彼等に、何やら異変が起き始める。彼等の体が光ると同時に、ポンッと言う音と共に、そこには人間の子供達がいたのである。………………若干、変化が失敗しているのは、子供故のご愛嬌だろう。
「わーい♪ なれたよ!」
第一声を放ったのは、綺麗な金髪と、光輝く宝石のような金色の目をした、愛くるしい7歳くらいの少女。若干、耳が尖っているが、ほぼ人の姿である。着ている服は、シンプルな白のワンピース。靴は履いておらず、裸足である。
「僕も!」
元気一杯にそう言って、嬉しそうに跳ね回っているのは、同い年くらいの少年である。髪は透き通るような青色。同じく、耳が尖っているが、他にも、目が若干爬虫類に見られるような瞳孔が縦長である。着ているのは、シャツと青いズボン。どちらも飾りは何も無い。勿論、素足である。
「僕もなれたよ!」
嬉しそうに、はにかむ笑顔を見せる少年も同い年くらいだろう。赤い髪は炎のように鮮やかで、目はまるで宝石のルビーのような、キラキラした輝きを放っている。やはりこの子も、瞳孔は縦長である。着ているのは、白のシャツに、赤いズボン。勿論、素足である。
「うえーん! しっぽが消えないよ〜」
エメラルドのような髪色の子は、この中で一番幼いだろう。歳の頃は、3歳から4歳くらい。ぷっくりした頬っぺたが可愛い、美幼女である。体は完璧に人であるが、お尻には紛れもない、ドラゴンの尻尾が。着ているのは、白のワンピース。足はやはり素足であった。
「ヒスイは、他は完璧じゃん!」
赤い髪のアカネが、ふてくされたように文句を言う。
「そういうアカネだって、目と耳がへんだよ! わたしは出来たもん!」
負けじとヒスイも言い返す。
「こらこら、ケンカしないの! 皆仲良くするようにって、サキママが言ってたの」
サキママの言葉に、何故かアカネとヒスイはビクッとして、ケンカモドキは無事に終了した。が、サキママの意味と言う、新たな疑問が上がる。
「サキママのご飯は、とーっても美味しいの♪」
ヒマリは嬉しそうに、サキママについて語る。
「うん、サキママのご飯、とーっても美味しいよね」
今まで黙っていたカイトが、ヒマリに賛同する。カイトはあの翔太に育てられたとは思えない程に、格好いい美少年である。そして性格も真っ直ぐに育ったようである。とても不思議だ。
「確かに美味しいけど………、サキママ、時々、コワイの」
ヒスイの言葉に、そこは皆仲良く頷いた。
「サキママの周りって、コワイ気配がいーっぱいするの、でもサキママは魔法使いだから、守ってくれる人達だって言ってたよ?」
ヒマリが言っているのは、式神様のこと。まだ幼いドラゴン達にとって、いくら抑えていても、神様の神気は、かなりコワイものと感じている。ただコワイと感じていても、嫌うものではない。彼らを守ってくれている事も、事実だから、彼らは恐れない。コワイと思っても恐れないのである。
「サキママ、ユーカママ、カーマパパ、ショータパパ、皆ビックリするね!」
ヒマリの言葉に、皆が嬉しそうに頷いた。まだまだ幼い彼らが人の姿をとるには、色々とやらねばならず、かなりの力も使うため、頻繁には出来ない。だから、たまに皆で集まって、人の姿を取る練習をしていたのだ。
「もっとオシャレな服が着たいなぁ」
ヒスイは未だに、体の一部が変化しきれないために、服は後回しにしていた。
「わたしも」
ヒマリも、顔の一部が上手くいかないけれど、服に興味があるのは、やはり女の子だからだろう。
「なあ、カイト、なんでカイトは髪が長いの?」
アカネの質問に、カイトは髪を触りながらアカネに視線を向ける。
「ん? 格好いいから………?」
カイト自身、よく分かってなかった。カイトの髪の長さは、腰くらいまであり、風にサラサラと揺れている。
「何だそれ、髪はみじかい方が楽だぞ?」
不思議そうに、カイトの長い髪を見ているアカネ。
「ねぇ、わたしも、みんなみたいに大きくなるかな?」
不安そうに、皆と自分を比べるヒスイ。彼女は末っ子で、生まれながらに上位のドラゴンとして生まれた。故に成長が他の子より、遅いのである。
「なるよ! 私もね、成長がゆっくりになってきたの」
ヒマリの言葉に、カイトもアカネも、ヒスイに向かって頷いた。彼らも栄養豊富なサキママ達のご飯を貰っているからか、ヒスイのように上位個体へと進化しているようである。
「はやく、人のすがたになって、みんなをビックリさせるの!」
元気なヒマリの言葉に、皆が一緒に頷いた。
「さあ、練習がんばるぞ!」
アカネの言葉通り、皆は一生懸命に練習を頑張ったのであった。
次の日、いつもならば起きてくるはずの、赤ちゃんドラゴン達が、中々おきて来ないため、咲希、和磨、翔太、優香を慌てさせたのは、ご愛嬌だろう。
彼らが人の姿を取るのは、果たしていつになる事やら…………。
しかし、幸せな姿で眠る赤ちゃんドラゴン達は、咲希達の慌てぶりなど、まーったく気にせずに幸せに眠り続けていた。
読了、お疲れ様でした。
本日は、山之上舞花様よりのリクエストで出来ました☆ リクエスト、本日にありがとうございました。
ご期待に添えたでしょうか??
ドラゴン擬人化………初めての試みでしたので、書いていて楽しかったです。
本当にこの企画やって良かった♪
ご参加、ありがとうございました!!
次は、とうとう最後のお話です。まだやっていたいけど、そろそろ本編も頑張らないと。
では次回、『もしも異世界に喚ばれなかったら』で、お会いしましょう。




