第100話 会場にてハプニング発生です!?
本日は記念すべき100話の日!
次回より、リクエストを頂いたお話をアップして行きます♪ その間は、更新不定期になります。
本編は、リクエストが終わりしだい更新しますね。恐らく、6月くらいには本編へ行けるはず…………。
ようやく退室して、思わずホッとしたわ。あんな居心地悪い場所に長居はしたくないしね。
しっかし、あたしは覚えがないわよ? リゼスさんや、トーヤさんに、何であんなに睨まれるんだか。理由が分からない。
……………まあ、今、考えたところで、分かるわけ無いんだけどね。
「って、ユリーさん? 何でここに?」
執務室から出て、数歩のところで、ユリーさんが待っていてくれたみたい。勿論、服装は式典用の侍従服。色は同じなんだけど、普段よりも立派な服装になっている。
「サキ様を待っていました、王家の方より、サキ様を一人にするな、と厳命されてますから」
………………間違い無く、あの気絶が原因よね。アハハハハハ…………。マジか、原因作った、あたしが言える事じゃないけどさ? 皆さん、過保護過ぎるよ!!?
「あ、ありがとう………」
顔が引きつったのは、勘弁して下さいな。
「さあ、参りましょう」
ユリーさんの笑顔が眩しいよ。本当に女顔にしか見えないよ! それで年下とか、本当に有り得ないから!!
内心半狂乱で叫びつつ、それでもエスコートの為に、優雅に手を差し出したユリーさんに、心の内が気付かれないように、此方も優雅に笑顔を見せつつ、手を差し出す。
ユリーさんの実家は侯爵家。本人は末っ子らしいけど、教育は本物である。年下、更に背は若干ユリーさんが高いくらいだから、何か調度良いのよね。ファイさんだと、背が高いから違和感があるのよねー。変わりに、変な方々が寄って来ないから助かるけどね(汗
もう、変態はいらんわ!
「サキ様、何かありましたら、僕にも言って下さいね? これでも魔法に関しては、かなりの実力があるんですから」
ニッコリと素敵な笑顔で、こんな気遣う言葉を言われたら、流石のあたしもドキッとしたわ。頬っぺた、赤く無いわよね!?
「うん、その時はお願いね」
◇◇◇◇◇
さて、会場についたけど……………、やっぱり視線が鬱陶しいわね。殆どが、微妙に哀れみを込めた視線なんですけど……………。あれか、フランツ様が言った、お説教か! あれの所為なのか!?
「…………はあ…」
深い溜息が出てしまうのは、仕方ないわよね? それを見て、周りの人達がまた、哀れみの視線を寄越すけれど、もういいわ。変なサイクルを壊すのも面倒くさいし。
「ん?」
会場の中が何だか騒がしい。こう、ギャーッて感じでは無くて、ザワザワって感じの騒がしさ。
………………あたしらが居ない間に、何が起きた、何が!!
「あ、サキ殿!」
ん? 声がした方を見てみれば、何故かルイさんが、困った顔で近寄って来たんだけど。後ろには、ルカさんも居る。二人共に、チラチラと騒ぎの方を見ながら来てる時点で、流石に鈍いあたしも気付いた。
「ルイさん、ルカさん? 一体何が起きたのか、説明して下さいませ」
二人が困惑したように、お互いを見ながら、かなり言いにくいのか、目で会話を始める。うん、勝手にしてくれ!!
「えっと、その………」
だーかーらー! 早くしてちょーだいな?
「ルカ、私が言う――――サキ殿、実は、うちの馬鹿が酒に酔っ払いまして……………ご婦人にご迷惑をかけてしまったんです」
あちゃ〜………、それは何とも。恐らく、夫人や周りの貴族が、フォロー出来ない位の事態へ、発展してしまったんだろう。
仕方ない、事態の収集はつけないといけないものね。あたしが行くか………………。はあ〜………。
重くなる足を動かして、現場に行けば、もはや現場はカオスとしか言い様がない。
「あらら、これは一体どういう事かしら?」
まずは迷惑をかけられたご婦人。まだ年若い、彼女の着ているシルバーのドレスには、透明な液体が滴り、床にも染みを作っている。本当にやらかしたのね…………。
不幸中の幸いは、彼女が常識的な貴族であり、染みが出来にくい透明なお酒である、と言う事かな。ヒステリーを起こさず、戸惑った姿だからなんだけど。間違いなく、怒っていいの? って状態かな??
そして彼女の周りには、寄り添うようにして、彼女を守る仕草のご婦人方が数人。中には、ハンカチ等で水滴を拭き取っている、健気な方もいる。さり気なく、自分達で壁をつくるあたり、彼女は慕われた人らしい。
対して、酔っ払いエルフは、顔を赤らめた状態で、ぼけーっとして見ていた。その状況を。酒の席ではあるけど、飲み過ぎはルール違反よ? それでこんなカオスな状態をどうしろと?
「ドータ! やっぱりお前か!?」
頭を抱えたルイさんに、視線をやれば、申し訳ないとばかりに、頭を下げていた。被害者らしいご婦人に。
「申し訳ありません、ご婦人………こいつは酒を飲むと、気が大らかになり、いつも騒ぎを起こすのです……………今日は飲まないように言っておいたのですが」
あらら…………。一応、念は押していたらしいけど、進められて飲んだみたいね。一部の男性貴族が、バツの悪い顔してるし。
「ご婦人………確か、ルミット伯爵夫人でしたね? お顔色も悪いようですし、別室にて休まれたら如何かしら? このままでは、風邪をひかれてしまうわ」
彼女は戸惑った様子だったけど、あたしと周りに促され、礼をして別室へ向かった。エスコートは旦那様かな? 周りの婦人方も、どこかホッとした様子だし。
「あ、エリー様」
近くにいたエリー様を発見! ナイスタイミング♪
「あら、サキ、どうしましたの?」
キョトンとしたエリー様に、あたしは、とあるお願い事をしなくては。あのままでは、ルミット伯爵夫人が可哀想だもの。
「ルミット伯爵夫人に、替えのドレスをお願いしたいのです、騒ぎを大きくしないために、我慢して下さったんですもの、お願いできますか?」
恐らく、騒ぎになり、両国間に溝が出来たら大変と、騒がないように押さえてくれたんだろう。そうでなければ、もっと大事になっていたろうしね。
それにエリー様が出れば、両国間には溝が確実に出来てしまう。だから、王族であるエリー様も動けなかったのかな。
「分かりましたわ、お任せ下さいな♪」
素敵な笑顔で了承してくれました! では、元凶様に説教の一つでも……………はあ〜!!???
「…………えっと、ルカさん? ルイさんは?」
あたしが見た先に、元凶が居ない! 近くのルカさんに問えば、何故か視線をそらしながら、とある方向へ人差し指を向けていた。
「うわぁ〜………」
その先には、元凶様と、もう一人。激怒した姿のルイさん…………。おかしいな、背中に夜叉が見えるんだけど…………。
そんな夜叉を背負ったルイさんに、耳を引っ張られながら、元凶様が運ばれていた。いや、引きずられていた、が正解かも。あまりの剣幕に、誰も二人に話かけないのが、その証拠かも。
激怒したルイさん、こえぇ〜…………。まあ、あたしの出番が無くて良かったわ。
恐らく、出るに出れなかったんだろうしね。皆が硬直状態だったし。
……………あれ? って事は、あたしは利用されたわけ!?
「本当に、踏んだり蹴ったりだわ」
そう思ったのも、仕方ないかもしれない。本当に、今日は色々ありすぎだから!
喉かわいたかも。近くの執事さんから、ジュースを貰う。流石にお酒は飲めないからね。あ、さっぱりしてて美味しい♪
「――――――………」
ほへ? 何だろう、今、確かに何か聞こえた気が…………。
「アン・リシャール様っ!!」
今度は、ハッキリ聞こえたわ! アンリちゃんに、何かあった!?
「誰かっ! 誰かっ!! アン・リシャール様がっ!!」
慌てて声のした方へ行けば、人だかりが出来ていた。人を押しやり、何とか到着。そこには気を失ってグッタリした、アンリちゃんの姿が!
「アンリちゃん!? どうしたのよ!?」
混乱した様子の、若い年に見える女性のエルフさんが、アンリちゃんの近くにいて、グッタリしたアンリちゃんに、必死で呼び掛けている。
「アン・リシャール様! アン・リシャール様!!」
ダメね、あのエルフの女性、混乱していて、話が聞けないわ。
「失礼、一体何があったんです?」
近くにいた、事態を見ていたらしい、年若い男性貴族に聞いてみる。ただ、何故かビビられたけどね(汗
どんだけ恐れられてるんだろ…………あたし。
「そ、その、あ、あれを見た瞬間、急に倒れてしまって…………」
そう言って、指差した先にあったのは、キラキラ輝く氷の彫像。此方では魔法で長時間保存出来るから、豪華に見せると言う意味でよく使われている。モデルは騎士と令嬢ね。騎士は雄々しく剣を奮い、令嬢は祈りを捧げている。よくある構図なんだけど?
「これで気を失って…………?」
アンリちゃんは、これの一体何で気を失ったわけ?? 分からない、分からないよ!
誰か、あたしに教えて下さい。アンリちゃんは、この氷の彫像の何に、反応したの??
………………本当に、踏んだり蹴ったりだわ!
◇◇◇◇◇
Side:???
チッ、もう少しだったと言うのに……………。まさか本人に気付かれ、人がこんなに集まってくるとは。エルフの里ならば、上手く行ったものを!
「仕方あるまい…………かくなる上は」
あの方より賜った、アレを使うしかあるまい。
………………せめて、安らかなる死を贈ろうぞ。アン・リシャール。
あの方に睨まれた己を呪え。我は、安らかなる死を、与えるに過ぎないのだから。
◇◇◇◇◇
Side:アン
コワイ、コワイのがいるの。
サキおねーちゃんは、とーってもあたたかいの。アンリって、なまえをつけてくれて、かわいがってくれるの。
ショータおにーちゃんは、とーってもおもしろいの。いつもバカやるから、サキおねーちゃんにおこられるの。
カーマおにーちゃんは、あたまがいいの。それにやさしいの。オカシくれたの。
ユーカおねーちゃんは、こわいの。おねーちゃんはあかいから、こわいの。でもね? ユーカおねーちゃん、いつもこまったかおをするの。さみしそうなの。
でもね、みんなはやさしいの。
アンリをまもってくれる騎士さまなの。
でも、でもね?
アンリをむかえにきたエルフはちがうの。やさしいひともいたけど、コワイひともたくさんいたの。
アンリ、かえりたくないよ。
いつまでも、あたたかいばしょにいたいよ……………。
サキおねーちゃんや皆といっしょにいたいよ。
かみさま、アンリ、かえらないとダメですか?
読了、お疲れ様でしたm(__)m
お話は、ようやくここまで来ました。ユリーさん、ちょっと格好良い(笑) サキちゃんはまーったく気付いて無いみたいだけど(汗
さて、前書きでも書きました、リクエスト企画のお話を、次回からアップして行きます。その間は不定期更新になりますので、ご了承くださいね。
リクエストお話は、4本あります。お楽しみに♪
本編、水曜日のお昼更新は、6月からかな??
それでは次回、お会いしましょう。




