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第95話 異変に気付きました!

次回は、3月30日です。ただし、忙しいため、休むかもしれません。その場合はご了承下さいませ。


ヤバイ事態となりました。

はい、皆のアイドル☆咲希ちゃんです! って、すいません! ふざけ過ぎたわ。実は先程から、内心、ヤバイを連呼してます〜!!


あたしの前には、厳戒体制となった勇者仲間たる翔太、和磨くん、優香ちゃん。

対するは、深夜に隠れるのに相応しい闇色のマントで、顔をすっぽり隠し、手には隠すつもりもないのか、廊下を照らす光に照らされ鈍く輝く鋭い剣。その側面には彫られた文字があり、間違いなく魔法剣である事が分かる。

やっぱりあの時の人物かしら?

殺気を放ってる時点で、うん、正しく怪しい人物なんだけど、あたしは直ぐに気付いた。

“有り得ない事実に”。


「えっ………?」


そのマントの怪しい人物が、堂々と廊下を歩いているという、有り得ない事実に!!


「っ!」


叫び出さなかった事に、あたし自身を誉めたいくらいだわ!


「咲希?」


あたしの溢した僅かな声に、翔太が反応し、連鎖的に優香ちゃんや和磨くんがあたしを見る。あたしの服にしがみ付いているアンリちゃんでさえも、あたしを見てた。

だって、有り得ないんだよ?


皆様は覚えているだろうか? 侵入者は、この廊下を無事に普通に歩ける筈がないんだから!! このあたしが、許可無き者が通ったら、動けなくする―――――その罠を仕掛けたんだからさぁ!!


「許可証持ちで、暗殺とか、洒落にならないわよ…………!?」


マジでアンリちゃんは何に巻き込まれてんだよー!!?

内心は荒れに荒れていますが、何か? もう、アンリちゃんが近くに居なかったら、間違いなく敵に全力で殺気を放っていたくらいには、荒れてるわよ?

まあ、あたしが危惧した事態がとうとう来ちゃったんだから、洒落にならないわな。


「咲希?」


怪訝そうな翔太には悪いが、あたしはもう1つ、有り得ない事実に気付いたんだわ。


………………あたしの呪いが消えている事実にさ。


確かに、相手が去りぎわに、あたしは呪いをかけた。ちょっとドジになる、プチ呪いを。流石に本気で呪いをするのは無理だから、簡略化したものを。


でも! そう、でもが付くのよ!!


あたしがかけた呪いは、悪いけどこの世界ではほぼ解くのが、解除が無理なものなのである!! それこそ、呪いはあたしとかの陰陽師くらいしか解けない訳で。

それが消えるなんて、本当に 有 り 得 な い 事態なわけよ!!


「本当に、何なのさ、あんたは!」

もう、あたしからしたら、気味が悪いんだけど。正しく、アンリちゃんへのストーカーだよね。


『渡せ………そやつを渡せ!』


やはりマントの所為か、くぐもった声の人物は、男か女かすら分からない。背丈もあたしより高い程度だから、性別を測るものにはならず。前回同様、魔法剣を持ってるから、同一人物かしら? って、測るしかない。


『渡せ…………そやつは生きていてはいけないのだ』


その発言に、あたしにしがみ付いているアンリちゃんが、ビクッと震えた。例え、記憶が無くても、自分へ向けられる悪意に、子供は敏感だ。でも、ちょっと、違和感を感じるんだけど?

まあ、今は緊急事態だし、考えるのは後でね。


「幼気な子供に対して、随分な言い方ね?」


ふざけんじゃねぇーぞ? 生きていてはいけない奴なんて、いるわけないでしょう!?


『ふっ…………貴様等も哀れだな』


息巻いているあたし達に、まるで嘲笑うかのように、奴は笑った。何か腹立つ。


『貴様等は知っているのか? そやつの歳を、そやつの立場を、そやつの性格を』


はっ? 何言ってるわけ? こいつ、やっぱりバカじゃねぇーの?? 内心、あたしは滅茶苦茶に、罵詈雑言を言いまくる。どうせ、心の中は分からないんだからさ。

あたしが知ってるアンリちゃんは、歳より幼く、笑ったら可愛い、あたしに甘える小さな女の子。そんな子に、大人が悪意を見せる時点で、あたしにとっては、怒りの対象ですよ。そんな事を言う黒マント被ってる怪しい奴に、言われる筋合いはないわっ!


『やはり、か…………アン・リシャール、貴様は第13王子の婚約者候補であり、今現在、歳は56歳、幼い頃より婚約者候補筆頭として育ち、性格は冷静沈着だが穏和、王家に忠実な方―――――だからこそ、要らないのだよ…………どうしても妃になりたい奴がいてね』


成る程、エルフも随分と荒れているらしい。妃になったからと言って、手に入るものよりも、責任の方が重いだろうに……………アンリちゃんを殺してでも欲しいのか。そうまでして手に入れた妃の座など、まやかしでしか無いだろうに―――――――。

そして、同時にあたしはニンマリと笑う。奴は気付いていないだろうけれどね。


「ふふふ、まさか自分から、身分を明かしてくれるなんてね?」


只そう言っただけで、何故か勇者3人が固まった。それはもう、綺麗に。あのー、皆さん? 今現在、戦闘中…………気付いて!


「この廊下を歩ける時点で、おかしいのよ、更にアンリちゃんの過去を知ってる…………あの使者達よね?」


条件に合うのは、彼らだけ。まさかアンリちゃんを迎えに来た使者が暗殺者とか…………普通に考えて、エルフの国が腐ってるって、思われるわよ?


「さてと、相手が分かった訳だし、翔太、やっちゃえ☆」


「……………お前なぁ、はぁ〜〜〜、うん、やるか!」


「え? えっ? 翔太くん!?」


「…………翔太らしいよ、優香さん、やろう!」


あんたら、本当にいい意味であたしに馴れたよね…………。


『邪魔者には――――――死を!』


構えたあたし達に、強烈な殺気が向かってくる。あらら…………、随分と可愛らしい殺気じゃない? あたしに比べたらだけど(笑)


「悪いんだけど、馬鹿にしないでくれる? あたし達は勇者よ! 理不尽だって運命だって、死の運命すらねじ曲げてやるわよ!!」


あたし、いい事言った!! その言葉と共に、翔太がいい笑顔で言った。


「よく言った、咲希っ!」


狼狽えている奴に、翔太の剣が向かう。奴は躊躇無く、後ろに飛んでかわした。いや、かわすしか無かったんだ。だって、狼狽えていた為に、魔法の発動が間に合わなかったんだから。


「はっ、ざまぁねえーぜ!」


翔太が追い掛ける。翔太の剣は、一撃一撃が重く、早い。そんな攻撃を、奴はかわしてはいるが、反撃の機会を探っているらしく、諦めるつもりはないみたいだ。


「アンリちゃん、あたしから離れちゃダメよ?」


「うん…」


頷くアンリちゃんだけど、視線は翔太達に向けられたまま。まるで食い入るように見ている。


「やろっ、当たれや!」


翔太の横振りの剣もかわし、奴は距離を取った。


『水の(アクア・ニードル)!』


奴の唱えた魔法は、翔太へ…………ではなく、あたし、いや、アンリちゃんへと向かう。とっさに、防御の呪文を唱えようとして、ふと違和感を感じた。




………………水の呪文?




一瞬、思考の為に、あたしの動きが止まる。一瞬、されど一瞬。その僅かな時間が、命取りになる。命のやり取りを、幼い頃からしていたからこそ分かる、死の香り。


「咲希っ!!」


「咲希ちゃん!!」


気付いたらしい翔太と優香ちゃんの、切迫した声がする。


あ、ヤバイ。間に合わないわ………。


とっさに、アンリちゃんを守る為に、恐らくあたしの人生最速で、アンリちゃんに覆いかぶさる。

お願いっ、アンリちゃんだけはっ!


『聖なる(ホーリー・シールド)!』


あたしの近くで聞こえた声。恐る恐る見れば、和磨君の背中がある。奴の攻撃は、和磨君の結界により、ここまで届かず、結界に触れて崩れ落ちる。ここまで見て、安堵した瞬間、呼吸を忘れていた事に、あたしは気付いた。背中に嫌な汗を感じる。口の中がカラカラに渇いてるし。

あ、危なかった…………。と言うか、今更だけど冷静に考えたら、式神様を使えば良かったわけで……………。


うん、バカだわ。あたし。


「ごめん、和磨君、ありがとう、助かった」


「どういたしまして、戦闘中に考え事なんて駄目だよ、咲希さん」


ごもっともです。あたしらしく無いわ、本当に。でも、お陰様で、この意味の分からなかった謎が一つ解けたわ。


「成る程、手加減なんて、最初から要らなかったわよね? ふふふ、本当にバカだわ、あたし」


だって、そうでしょう?




「あんたは、最初の奴とは別人なんだから!」




おかしいはずよね! かけた呪いは消えてるし、最初の奴より随分とこいつは話すんだもん。何よりも、最初は風だったのに、今は水の魔法を使ってた。

つまりだ。


「あたしの伝言は、上手く伝わらなかったみたいね?」


あの呪いは、宣戦布告以外にも意味はあったのよ? 八つ当たりと、そう、警告の意味が―――――。

それでも来たって事は、アンリちゃんが、それだけ邪魔者だったって事。そして暗殺者側も、依頼主に逆らえない立場の人物と予測出来る。


「ま、あたしも、油断したけどさぁ? やっぱり、報復って、ヒ ツ ヨ ウだよね♪」


あたしの周りの温度が下がっていく。ウフ、ウフフ、さあ、初めようじゃないか!!


「おい………咲希?」


翔太が、かーなーりー引いているけど、無視無視。もう、手加減は必要ないよね?

両手でとある印を組む。


『ゆらりゆらり、ゆらゆらと………彼の地より(まが)きは来たり』


さあ、貴様には、相応しい呪いをプレゼントしようじゃないか。人の命を狙うなら、自分の命が狙われるのを覚悟しないと―――――。


『ゆらりゆらり、ゆらゆらと、ゆらりゆらり、ゆらゆらと………彼の者を捕えて離さぬ』


これは、呪い―――――。

最初の奴にかけたプチ呪い等、可愛く見えるような、そんな呪い。

『ゆらりゆらり、ゆらゆらと……………誘え、瘴物よ、彼の者を』

「咲希ちゃん………?」


不安そうな優香ちゃんの、あたしを呼ぶ声。今のあたしは、彼女に、どう見えているのかしら?


『ゆらりゆらり、ゆらりゆらり、ゆらゆらと、ゆらゆらと………彼の者に闇の祝福を―――――』



ゆらりゆらり、ゆらゆらと。


闇に落ちて行くのは、彼の者か。


それとも、あたしのこの心か―――――――。



ゆらりゆらり、ゆらゆらと。


読了、お疲れ様でした。


今回は、咲希ちゃん、ぶちギレしております。後半呪いが見事にメインになってますし…………。おかしいなぁ、そろそろ歓迎パーティーになる予定だったのに。


次回は、久しぶりにそれぞれの視点から見た咲希ちゃんをお送りする予定です。何か、書いていて、久しぶりな為か、文がおかしいです。


さて、前に書きました、新作長編小説なんですが…………。なろう様より、ジャンル改訂の動きがあり、延期しようかと…………。恐らく、大変なぐらい波紋が広がりそうですし。

落ち着いたら、出しますね。その時は、宜しくお願いします。



感想、ご意見、誤字脱字、いつでもお待ちしております。なお、作者はメンタル弱いため、甘口で下さると助かります。

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