表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/292

第90話 お呼ばれしました☆

次回は2月17日に更新します☆


「負けちゃったよ、本当に強いね、翔太くん」


そう爽やかに言ったのは、今だに肩を大きく上下させた、ヴァストークの勇者、西藤一心さん。この方、あたしの義兄であるソウ兄から頼まれた人である。

実は今さっき、翔太と試合をしたわけ。実力が分からないと、こっちも困るから。何せ、彼方の国で、二人の勇者から、預かって! って、頼んでくるくらいよ? 何かがあるのよ、あの二人が気付かなかった何かが。

まあ、手紙を見た限りは、一心さんを利用した貴族は、今頃大変な目に合ってるみたいだけど…………。


「で、どれぐらいの強さなの?」


難しい顔の翔太に問えば、此方に視線を向けてはくれたけど、何やら戸惑った様子である。


「まあ、強さ的には、優香と和磨の間くらいか?」


とは言うものの、翔太は何度も首をかしげている。あの脳筋に近い翔太……


「何か失礼な事を考えてないか?」


「イイエ」


ゴッホン、経験豊富な翔太が、納得いかないような、そんな態度が、あたしらには不思議に見えるんだよ。


「で、翔太? さっきから何を考えてるわけ?」


あたしが代表で聞けば、翔太が難しい顔のまま、一心さんに顔を向ける。


「なあ、一心さん、あんたは誰から剣を習ったんだ?」


いきなりそう言うものだから、あたしら周りは静かに見守るしかない。


「ヴァストークの副団長様からだよ、基礎基本は大事だから、しっかり教えられたけど」


別におかしい事は言ってないわよね。でも翔太は、まだ険しい顔のまま。


「確かに基礎基本は大事だが…………、なあ、一心さん? あんた、魔物退治をしていたんだよな?」


「え? うん、していたよ?」


驚きつつも不思議そうに翔太を見る一心さん。


「悪いが、あの実力で魔物退治とか、命を捨てに行くようなもんだぞ?」


…………………え? そこまで?


「ちょっと、翔太? あたしは剣に対しては、からきしだから聞くけど、あんたさっきから首をかしげてたわよ? 何で?」


そう問えば、翔太は険しい顔のまま言った。


「確かに基礎基本は大切だから、誰でも教えられる…………だがなぁ? 応用編を一切教えない教え方なんて、あり得ないんだよ、一心さんのスペックなら、もう教えられていて普通なんだ、つまり、だ……………一心さんはその副騎士団長により、守られたか、もしくは殺されかけたか………しかないんだよなぁ」


おいおいっ!? それって、ヴァストークの勇者に命の危険があるって、そう言ってるようなもんよ!?


「その副騎士団長は信用されていたのか?」


そう翔太に問われた一心さんは、暫く考えたのち、渋々頷いた。あら、ソウ兄から一心さんは、疑わない子だ、って言われたけど、違ったかしら?


「僕は、副騎士団長は実力のある人だって思う、けど、ソウ兄や美穂さんは、あんまりいい顔はしなかった」


あぁ、そういう事。つまりだ。


「ソウ兄達は警戒してたってわけか……………もしかして、ソウ兄達が今まで動けなかったって、一心さんの事があったからかな?」


恐らく、悪意のある奴等にとって、人質に近かったんじゃないかな? 話を聞いた限り、王様やその周辺はまともだったみたいだし。駄目な奴らが多かったからか。よくまともに機能してたな!? ヴァストークよ!!


「まあ、暫くは一心さんを鍛える方向でいいのよね?」


恐らく、今のヴァストークは、絶対にソウ兄達によって、革命とも呼べるくらいに粛正されまくっているはず。残った貴族は、マジでまともか、中立派か、もしくはボンクラ過ぎて罪が無いか、くらいかしら? まあ、頭のキレる奴等も残るだろうけど、貴族の顔は一新するだろう。新しく功績を上げた貴族が増えるはずだからね。


「それじゃあ、誰か頼めるかしら? 基礎は出来てるし、応用編を教えるくらいの腕の人がいいわね」


そんな今後の話をしていた時だった。そう、あたしは忘れていたのだ……………。あたしら勇者がこんなに集まって、騒動が起きない訳が無いんだよ!!




「サキ様ぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」




うん、そろそろ来ると思ったよ。この声は、もしかしなくても、ユリーさんかな? 何だか、泣き声に近かった気がするんだけど、気のせいだよね…………?


「はあ、はあ、はあ……………、サ、サキ様っ…………探しましたよ! 何でお茶会の場所にいないんですか! お陰で城中探しちゃいました!!」


うん、余りに居ないから、泣きが入っちゃったんだね。ユリーさん、可哀想なくらいヨロヨロになってるし。これ、間違いなく、魔術師であるが故の悲劇だよね。ユリーさん、体力が無いんだよ。まあ、魔術師の皆さんはマジでそっちの人が多いからね。代わりに、徹夜とかは余裕な人が多いんだけどさ。


「謁見の間に来て下さい、国王陛下と使者の皆様が、雁首揃えて待っておられます」


………………何だろう、凄く行きたくない。マジで行きたくない。嫌だ、拒否したい! だっておかしいでしょう!? なに? 何で雁首揃える必要があるのよ!


「ユリーさん、呼ばれてるのは咲希さんだけ?」


和磨君に問われた彼は、息も落ち着いてきたらしく、先程よりも顔色がよくなっていた。まあ、すんなり頷かれたら、あたしはうなだれるしか無いんだけど。


「ねえ、まさかあたし一人とか言わないわよね? キチンと侍従の皆さん、来るわよね?」


そう期待をしたあたしは悪く無いはずだ。


「はい? 呼ばれているのは、サキ様だけですよ―――――侍従は僕とファイさんが担当します」


ユリーさんが言った瞬間、ファイさんが嬉しそうに目が輝いたのを、あたしは見た。まあ、特別な場に呼ばれたのだから、当然よね。


(なあ、ファイのやつ、絶対に咲希と一緒に行けるからだよな!?)


(うん、何かファイさんの視線が咲希さんにしか行ってないよね)


(咲希ちゃん、恋愛は疎いから………)


何やら、こちらをチラチラしながら勇者3人が会話してるけど、あたしは気にしない。実はちょっと問題が。皆さんは気付いてるだろうか? あたしが、外出したままの服装であることを。つまりだ、外交をしている場に相応しい服装ではないということ。


「ファイさん、ユリーさん、まずは着替えてから行きますので、待っててもらえます?」


あたしだって外交の邪魔をする気はないんだいっ!




◇◇◇◇◇




手早く着替えを済ませ、あたしとユリーさん、ファイさんの3人は、謁見の間へ。

あたしが今、着ているのは、契約した青の魔法使いの服装ですよ。本当に綺麗な品で、既にこの服はあたしの色とさえなっている。たまに中級魔術師の方と間違える人がいるけど、あたしのは彼らと違い金色のラインが入っているから、大丈夫かな。

さて、付き従う2人の侍従たる、ユリーさんとファイさん。二人も侍従の専用服の正装バージョンである。

実はこの前、正式な侍従なのに、服装が前の部隊の物だと示しが付かないからと、王女たるエリー様発案による、侍従服が作られたのである。最終的に、忙しいフランツ様まで巻き込んで、ようやく完成したものを、今は二人が着ている。まあ、デザインは、元々ある騎士服と魔術師服を応用しているので、違和感はない。違うのは色。二人が纏っている服装の色は、淡い藤色なのである。他にも候補があったらしいんだけど、最終的にこれが正式採用された。

この服、普段用と正装があり、それぞれ夏用と冬用があり、これから勇者の侍従に選ばれた方々は、これを着る事になる。


「で、何の用なの?」


先程からユリーさんに聞くんだけど、はぐらかされている。本人曰く、見たら分かります、とのこと。絶対に口を割らないから、あたしも聞き出すのは諦めたわ。


「ねえ、ファイさん、あたし嫌な予感がさっきからしてるんだけど、気のせいかしら?」


「おや、サキ様、奇遇ですね? 実は僕もなんですよ…………騎士の感というやつでしょうか?」


本当に行きたくない。けれども、足は動かしているから、やっぱり謁見の間には着いちゃう訳で。


「第一勇者、サキ・アマギ様、勇者の侍従、ファインリード・アブンセル様、同じく、ユリアス・ナインゲーン様、ご到着でございます」


お付きの方の紹介を受けて入った我々を待っていたのは、何故か顔面蒼白の王様と、此方もヤバイくらいに顔色が悪いフランツ様他王子達と、こちらは胃を押さえる宰相様。そして階下にいるのは、城の皆様よりは質素ながらも、品のある服装をした客人の方々。ただし、そう、ただしがつく。


何で寄りにもよって、皆様揃ってお怒りモードなのかな???


流石に、こんな場所で発言は出来ないので、一応、後ろで大人しくしてたら、こっちに気付いた王様方が一瞬で、顔を引きつらせた。

ん? あたしなんかした? 最近は大人しくしてたよ??


「ゆ、勇者、サキよ、ふむ、ふむ、よく来た、いや来てくれた」


王様、噛みまくっております。大丈夫かな?


「陛下、お呼びと伺い、馳せ参じましてございます、皆様に挨拶をするその前に、ご説明を頂けますでしょうか?」


何故にこうなった!? いくらあたしでも、こんな異様な空気で、普段みたいには出来ないわよ??


「ふむ、フランツ、頼む」


王様に言われたフランツ様、礼儀正しく礼はしましたが、明らかに顔が引きつりましたよね!? え、本当に何がどうしてこうなった!?


「では、説明する……………実はサキ殿が保護しているエルフの子は、此方のエルフの国の使者の方によって、身分と正式なお名前が証明された、彼女は、エルフ国の第13王子殿の婚約者、アン・リシャール・キューレ様と言い、準王族の身分にある、特別なお方だそうだ」



…………………はい?



…………………………………


………………………


………………


………



はあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!???



内心、絶叫ものである。謁見の間だから、どうにか押さえこんだけど、衝撃はかなりのものがある。




あたし、何かとんでもない事態に巻き込まれている。そんな確信があった。

本当に、あたしら勇者は問題に愛され過ぎてるわ。


読了、お疲れ様でした。


本日は2部構成になりました。何だかヴァストークが危険過ぎる。けど、今頃は粛正の真っ只中なので、触らぬ神になんとやら…………。近寄って行くなんて、自殺行為です。秋月は全力でコレからは逃げます! 蒼一さん達が怖すぎるっ!!

さて後半、新たな事実が発覚。あらら、アンリちゃん、何だか凄い身分の方だったもよう。完全に小さな妹気分だった皆さんは、驚愕してます。王様と王子様と宰相様には、ごめんなさい。エルフの使者の方々の殺気と怒気は、マジで恐かったみたい。宰相様、後でよく効く胃薬を、お持ちいたします。


さて、次回のテンシロは、2月17日更新になります。

来週の更新は、『僕等は夢から醒める』のお話を更新しますので、興味の在る方は覗いて見て下さいね。


では次回、お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ