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第89話 どちらも大変です

次回は2月3日更新です。

本日は、空の神様視点と咲希ちゃん視点でお送りします☆

どっちも苦労してますなぁ………。

Side:空の神



「ヘェェェクッションッッッ!!!」


仕事の最中に、盛大なクシャミが出た。その反動で、何枚かの紙が飛んでいく。おかしい、神風邪なんてここ数百年、引いていないのに。


「誰かの噂かなぁ」


あり得るのは、人間界に招いた一人の少女だが、一回しか会ってないんだが? 何か噂されるような事を言ったかなぁ。


「あら、今の空の神のクシャミだったのね?」


考え事をしていたら、いつの間にか、同僚の風の神がいた。もしかしなくても、今のクシャミで来たのか? 確か今の時期は、風の神は忙しい時期のはずなんだが?


「あのねぇ? あんな盛大なクシャミが聞こえてきたら、敏感な耳を持つあたしらが来るのは、当然でしょう」


呆れた様に言われて、納得してしまう。風の神は敏感な耳を持つから、世界の情勢を確認する仕事もあるのだ。


「あはは………すいません、ところで魔王の様子はどうですか?」


以前、魔王にする予定だった魂がウイルスにかかってしまい、仕方なく異界から新しい魂を貰ってきた事がある。会ったのは他の神だが、最近見る中では久しい程に、綺麗な魂だと、その神に聞いたのだ。順調に成長しているのか、ちょっと気になって聞いてみたのだ。


「ええ、元気に成長してるわよ、ただし、何だか分からないんだけど、人間への攻撃を先導してる何者かがいるみたいで、魔王がまともでも、人間との戦争は避けられないかもしれないわ」


………………は?


「いやいや、風の神? ウイルスは駆除したんですよね!? 今の平和なご時世に、何を危険思想生物を放っておいてるんですか!!」


ウイルスに感染した魂は、しばらく転生出来ないため、集中治療室へ入れられているのだ。普段なら。ただ、今回のウイルスはとても危険な物であったため、創造主より処分が言い渡されていた。


「それがねぇ…………新人が間違って、人間界に降ろしちゃったみたいなのよ……………」


「っ!!?」


言葉が出てこなかった。おいおい、待て待て!! 人間界にウイルス感染魂が、転生しちゃった。もしかしなくても、ヤバイ。物凄くヤバイ。あのウイルスは、人間界に降りても他の魂に感染する事は無い。そこは安心してもいい。がその代わりに、感染した魂を持つ人物を中心とした悪影響が広まっていくのだ。例えば、一人の悪い人間がいたとしよう。特に周りとは変わり無く、ただ悪意等のドロリとした感情を強く持つ、そんな人間。よく、犯罪組織の中心にいるような、悪意の塊。このウイルスにかかった魂は、間違いなくそれになり、人間界を乱世へと動くだろう。そんな危険思想生物を放っていいわけがない!!

そして何より、あの魂は、新しい魔王にする予定だったもの。もう、考えたくもない。


「あの、風の神? 勿論、ウイルス感染魂は回収したんだよね?」


恐る恐る聞いた自分に、何故か風の神はバツが悪そうに視線をそらした。

ま、まさか?


「申し訳ないけど、まだ回収出来てないわ…………ちょっと厄介な場所に転生しちゃったから、簡単に回収出来なくて………」


あぁ…………、どうしよう。創造主より、もしかしたらお叱りを受けるやも?


「創造主様には、今さっき報告してきたわよ、滅茶苦茶、機嫌悪くなったけど」


あぁ…………、今日の報告は荒れそうだなぁ。

と、この空の領域に、新たな気配が現れる。


「空の神様、お客様です〜」


そう言って来たのは、可愛らしい顔立ちの天使。小間使いの子である。そしてその後ろにいるお客様に、流石に自分も風の神も目を丸くした。


「お久しぶりです、空の神」


そう言ったのは、明らかに高位の神であり、着物が良くお似合いの、地球の最高神の一人。


「アマテラス様!? どうなさったんですか!」


すっとんきょうな声が出たのは仕方ない。本来なら、神様が別の世界に行く事態、あり得ない事なのだから。それがあるという事は、何かあったという事で。


「実は………、わたくしの弟が、此方にお邪魔していないかと思いまして…………」


え…………? アマテラス様の弟?


「名前をスサノオと言いまして、かなりヤンチャな性格をしています」


何やら視線を泳がせるアマテラス様。表情もどことなく苦笑いに見える。アマテラス様? 弟のスサノオ様はもしや問題児ですか?

思わず同情の視線が行ったのは、仕方ないと思う。破天荒な弟の面倒を見るのは、さぞ大変だっただろう。


「私は見ていませんが、風の神? 見てませんか?」


「いいえ、知らないわ」


「そうですか………、一体どこに行ったのかしら?」


アマテラス様は、他の心当たりに行くと言って、直ぐに帰っていきましたが。全く、人騒がせな神様だ。


「こっちの問題も何とかしないとなぁ」


一人呟いたのは、許して欲しいと思う。誰だって、機嫌最悪な上司には、会いたくないもんなんだ。



◇◇◇◇◇


Side:咲希



さて、一心さんを、騎士団に案内して来たのは、良かったんだけど。彼の実力を調べないと、この先、どういった教育をするか決めるのに、困ってしまう。


「よし、翔太、一心さんの相手してよ、あんたなら分かるでしょう? 実力とかそういうの」


「まあ、分かるけどよぉ………怪我とかするかもしれねぇーぞ? 手加減出来る程の実力はねーからな?」


微妙な顔付きの翔太には悪いが、あたしは剣は論外。優香ちゃんでは、一心さん、やりにくそうだし。和磨君はまだ日が浅いから、無理だし。だからって、騎士団にお願い出来ないでしょ。客人を怪我させたら、彼らがヤバイ。だから、同じ勇者がするのがいいのよ。審判役ぐらいはお願いするけど。


「翔太、怪我なら僕が治すから、安心していいよ?」


確かに医者の息子の和磨君なら、安心よねぇ。その隣では、優香ちゃんもいい笑顔である。


「私もいるから、安心してね!」


確かに安心だわ。ほぼ毎日、治療院で患者相手に実戦をしてるんだから。あ、和磨君もやってるわよ? ただ、薬師にも招かれているから、忙しいだけで。


「最悪、あたしが式神様に頼んで治すから安心しなさいな」


ニッコリ笑顔で言ったら、翔太がフリーズした。失礼だな、おいっ!!


「分かったから、いきなり殺気を飛ばすなよっ!」


あら、無意識に出しちゃったみたい(笑) でも今回のは、明らかに翔太が悪い!


「うわぁ、君達、仲がいいんだね!」


………………。一心さん? 確かに仲がいいのは認めるが、この状況で、そのお言葉は無いと思う。反応出来ないじゃないか。


「はい! 私達、同い年だし、仲がいいんですよ」


優香ちゃ〜ん! 本当に、本当にキラキラ笑顔が眩しいよ!!


(お前いえるか?)


ヒソッと翔太に聞かれたけれど、流石にあたしは言えないわ。


(無理)


即答したあたしに、翔太も同意するかのように、頷いてるし。


(だよなぁ〜、あれは優香だから、出来るんだしさ〜)


何て会話を尻目に、優香ちゃんはキラキラ笑顔で、如何に自分達が仲がいいかを話してる。

って、優香ちゃん!?


「恥ずかしいから、余計な事は言わないでね?」


慌てて優香ちゃんの口を塞ぎ、翔太に行くように、目線を送る。全く、油断も隙もあったもんじゃないわ。


「そろそろ、お相手願います、一心さん」


「此方こそ、宜しく頼むよ」


二人が騎士さんから、模擬試合用の刃を潰した模擬刀を受け取り、皆が見守る中、草も生えていないむき出しの土の訓練場で、二人が向き合う。審判役の騎士さんは、旗を持ち二人にルールの説明を始めてた。


「どちらかが戦闘不能、もしくは辞退、過度な怪我をさせた場合等は、戦闘は中止します、どちらかが一本取った方が勝ちとします、フィールドはこの場のみとします、では、構えて下さい」


審判に言われ、構える二人。一心さんは普通の剣だね。中段に構えてる。対する翔太は、大きな剣で、下段に構えている。二人共、真剣そのものだわ。


「よーい、始め!」


号令と共に始まった試合、先に動いたのは一心さん。真っ直ぐに翔太に狙いを定め、勢いよく突進し、上段に振りかぶる。翔太はそれを、剣ではねのけると、後ろへと跳んだ。翔太が一瞬前いた場所に、一心さんの剣が突き刺さる。その後も、打ち合いは数度あるものの、翔太に剣は届かず、いたちごっこになってる。

こちらからしたら、緊迫した試合なんだけど、当事者たる一心さんは当たらない事に苛々しはじめてるし、翔太は何度か首をかしげてた。


「翔太くん、本気出してない? どうしたんだろう?」


優香ちゃんの呟きに、あたしの方が混乱してるわよ? あたしは剣は、素人だしね。


「翔太、本気じゃないの?」


そう聞いたら、近くにいた騎士さん、勿論あたしらの侍従たるファイさんが、あたしの質問に答えてくれた。


「ショータ様の普段のスタイルは、避ける事より攻撃ですからね、避けているという事は、何かお考えがあるのかもしれませんね」


へー、翔太って、攻撃派だったんだぁ。ん? じゃあ、避けてるのって、何で?


「もしかしたら、一心さんの力を試してるのかも、あっ、ほら、翔太が攻撃を入れ始めた!」


和磨君も槍の稽古をしてるからか、あたしよりも詳しいわ。くぅ、弓なら使えるのにっ!!

悔しく思いつつも、翔太達の試合に視線を戻すと、確かに先程と違って、翔太が攻撃を仕掛けてた。中段の横凪ぎ、そこからの下から掬いとるように上へと向かう剣先。紙一重で躱す一心さんは、最初の頃の翔太のような、余裕で躱すという訳では無く、その顔に余裕は一切無い。


「っ、強いね!」


「そりゃ、どうも」


既に息が上がってる一心さんとは対照的に、翔太は全くと言っていいけど、息一つ乱していない。

勝負はついたようなものかもしれない。


「イッシン様は、随分と素直な剣を使われますね」


ファイさんの呟きに、優香ちゃんもこくりと頷いた。流石、剣道の申し子。それくらいは分かりましたか。


「うん、まるで基礎基本を素直になぞってるみたい………」


………………結構、ぐさりと言いますね、優香ちゃん。


「試合止め! ショータ様の勝ちです!」


うん、いつの間にか、翔太によって剣を飛ばされちゃったみたい。こりゃあ、十分負けね、一心さん。これでよく魔物退治してたわ。


…………はぁ、明日から大丈夫かしら?


はい、読了、お疲れ様でした!


本日は、如何でしたでしょうか?

神様視点のお話は、昔の活動報告に載せてあるんで、興味のある方は、発掘してみて下さいね(笑)


さて、そろそろアンリちゃんの方も、問題発生のようなので、次回はそちらへ行くようです。本当に、咲希ちゃん、問題に愛されてない?? ちょっと作者も、引く勢いですよっ!?


「あたしの所為じゃないもん! つーか、問題が勝手に寄ってくんのよ!!」


……………咲希ちゃん、それが問題に愛されるって事だよ(;^_^A


「NO〜〜〜〜〜〜!」


どうやら咲希ちゃん、しばらく大変みたいですね。

では次回、お会いしましょう。

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