第83話 この子は一体、誰でしょう?
次回は12月9日更新です!
年末用リクエストも募集中ですよ♪
取り敢えず、春のお陰で、少女はようやく落ち着いてくれました。心から、ほっとしたのは言うまでもないでしょ。あんな、カオスな現場を見なくて済むんだから、本当に良かったわ。
だって考えてみてよ? 野郎共が、可愛らしいぬいぐるみやら、可愛くデコレーションされたお菓子を持って、必死に泣く子をあやしてるのよ? もう、目の毒だわ!
『よしよし、恐かったのですね? もう大丈夫ですよ』
優しくのんびりした声は、春らしく、綺麗な透き通るような声。羨ましいって、何回思ったかしらね〜。なんて、遠い目をしているうちに、春はすっかり少女に懐かれてました。
「春、あたしらも話したいんだけど、大丈夫かな?」
念のために聞くと、少女はあたしらがいるのに初めて気付いたのか、また警戒したように顔が強ばってしまう。
あらら……………。
「はじめまして、あたしは咲希」
「私は優香だよ」
一応、自己紹介してみる。勿論、盛大にびびられたけどね! ケッ! 何でかねー? あたしか? あたしが悪いのか!?
「サキ様、落ち着いて下さいませ」
ジュビアン神官に言われ、はたと気付いた。ヤバイ、相手は子供よ? 大人みたくしたら、あぶないじゃない! 慌ててそちらを見てみれば……………。
「うっ……ひっく……」
げっ!? な、泣きそう!?
「ちょっ!? ほ、本当に大丈夫よ? ほら、泣かないで? ね?」
『大丈夫ですよ? こちらのお二人は、怖い人ではありません』
春が、自分にしがみ付く少女に、そっと頭を撫でながら言うと、少女は不安そうに春を見ながら、戸惑うようにあたし達を見た。その瞳に、明らかな怯えを写しながら。
はぁ〜、春がいてくれて、本当に良かったわ。
『そうですわ、御名前を教えてくれますか?』
そっと頭を撫でながら聞く春に、少女は何故か、顔を強ばらせる。何か得体の知れない物に出会ったかのように、握り締めた手から血の気が引いていた。
「…………わかん…ない…」
ん? 僅かに聞こえた少女の声に、あたしも優香ちゃんもジュビアン神官も、誰もが頭を傾げた。
わかんないって、何が?
「……名前……わかんない……の………」
はい?
もしやのもしやですか? 俗に言う、記憶喪失?
『咲希様、どうやらこの子は本当に、分からないようです』
えー、それは、どうしよう??
「ジュビアン神官、この子を見て、何か気付いた事はない??」
あたしも優香ちゃんも、この世界には詳しく無い。ここは博識なジュビアン神官に頼むしかないわ。
「そうですなぁ………」
しばらく少女を見ていたジュビアン神官は、突然、眉根を寄せ、顔を険しくさせる。あ、何か分かったのね? けどさー? お陰で少女が、また涙目になっちゃったじゃない!?
「ジュビアン神官? 何か分かったんですか?」
優香ちゃんの問いにも、ジュビアン神官は険しい表情のまま。はぁ、何をやっているのやら。
「ジュビアン神官? ジュビアン神官てばっ!!」
あたしが何度か呼び掛けて、ようやく此方に気付いたみたい。はぁ、勘弁してよ?
「っ! あ、申し訳ありません、少々、気になる事を思い出したので」
「気になること?」
何かしら? あたしの前にいるのは、緑色がかった銀髪で、年頃は8歳位の少女。着ている物は、最初の簡素なワンピースのまま。肌は白く、目の色は緑色。あたしが分かるのはこれくらい。後は、本当に無し。
でもこれは、異世界から来たあたし達だから。
「ねえ、教えて、何が気になるの?」
問うと、ジュビアン神官は険しい表情のまま、答え始めた。あの、表情は戻してもらえないだろうか?
「実は、銀の髪は、エルフ一族の特徴なのです」
「「エルフ〜!?」」
あたしも優香ちゃんもビックリしちゃったよ!! まさかこの世界、エルフがいるなんて♪
「エルフは、本来は、大森林がある西の大陸に住んでいるため、人間が暮らすこちらには、滅多に来ません、そのエルフの特徴が銀髪なのです」
しかし、それを前提とするなら、おかしい事があるわよね?
「んじゃあ、何で子供のエルフがここにいるわけ?」
………………………あれ? 辺りがシーンってなっちゃったわよ?
「わたくしめには何とも……………、ただ、一つ言えるのは、この子は間違いなく、何らかの事件に巻き込まれているはずです」
だよねぇ〜。エルフの子供が、一人で外の世界に出れる訳がないんだよねぇ〜……………。
やっぱり来たか、厄介事!!
流石に、勇者が3人も揃ってたら、やっぱり来ますよね〜。アハハ…………本当に厄介事の星に愛されてるわよね?
「でも、名前が無いと困るよね? 何て呼ぼう?」
優香ちゃん、可愛い感じに首を傾げて、こっちを見ないでよ…………。そんな期待した目をされると、無視出来ないじゃないか!!
「うん、確かにね?」
必要だよね? そうだよね? けどさぁ、今、必要なのかな??
「そうですな、確かに呼び名は必要でしょう」
ワオ、ジュビアン神官までオッケーだしちゃった!?
「うーん、何かいい名前あるかな?」
優香ちゃん、考えて無かったんだね。まあ、可愛いから許すけど。
「咲希ちゃんも考えてよ!!」
「え、うん」
あまりの勢いに、思わず頷いちゃったわ。少女を観察してみますか。そしたら、何かいいアイディアが浮かぶかも??
「ん〜〜〜〜〜、ミドリちゃん? ハイミドリちゃん? んーと、ミーちゃん?」
優香ちゃん、ぶつぶつと名前の候補を言うのはいいんだけど、何故ミドリから離れないのかな?? つーか、優香ちゃん? そこから離れようよ!!
「咲希ちゃんは? 何かいい名前ない??」
イマイチしっくり来なかったからか、優香ちゃんはあたしまで巻き込むつもりらしい。
「ん〜〜〜〜〜」
しっかりと少女を見つめる。よく、式神様を降ろし、彼らの名前を名付ける時に使う方法なんだけど。もしかしたら、少女の無くした記憶が、教えてくれたりして…………なんていう、淡い期待もあったり。
勿論、じっと見てたら、少女とバッチリ目が合う。でも、何だかさっきとは感じ方が違うんだよね。一種のトランス状態とでも、言えばいいかしら。
「大丈夫だよ、いい名前を付けてあげるから期待して待ってなさいな」
そう言えば、少女は意外だったのか、キョトンとしてあたしを見た後、僅かに頷いた。それが何だか認められたように感じて、ちょっと嬉しくなる。
そして同時に、さっきまで曖昧にしか見えなかった少女の周りが、えっと、オーラとでも言えばいいかしら? それが、少しずつ、形を成していく。あ、もう少し、もう少しで、見えそう!
「……………アン? アイ? んーと、アンリかな?」
多分だけど、読めたのは、少女があたしを認めてくれたんだと思う。だから、無くした記憶が、より鮮明に呼び掛けてくれた、のかもしれない。だってこれ、あたしの憶測だし。
「………アン…リ…?」
ちょっとビックリしたように、呆然としたかのように呟く少女。悪いけど、これ以上は読めなかったわ。何か、拒否されたかのように、アンリと呼んだ後、霧散してしまったから。もはや、跡形も無し。
「凄い! 咲希ちゃん、素敵な名前! どうやって思い付いたの!?」
………………いや、純粋に喜んでくれるのは、あたしも嬉しいんだけど、何か恥ずかしいわ。
「えっと、この子の内側から読んだ?」
自分でも半信半疑だし、疑問符でいいよね?
「うん、アンリなの♪」
少女、アンリも気に入ったのか、嬉しそうに笑った。
「あ! 今、笑ったよ♪ 咲希ちゃん!」
「うん――――改めて宜しくね、アンリちゃん」
最初に優香ちゃんに同意して、アンリちゃんに向けて、笑顔で自己紹介。アンリちゃんも、遠慮がちではあるが、また微笑んでくれた。うわっ、可愛い♪
「はいなの! えーっと、何て呼べばいいの?」
可愛らしく首をかしげたアンリに、既にこの場はメロメロ…………。勿論、あたしもだけどね☆
「あたしの事は“サキ”でいいわよ?」
小さな子に、無茶を言うつもりはない。あたし達、勇者の名前は、いいにくいらしいからね。
「う? サキお姉ちゃん?」
「勿論! それでいいわ!!」
可愛らしくアンリに言われたら、オッケーしか出ないわよ!!
「私はユーカよ、アンリちゃん♪」
優香ちゃんが、そっと近寄ろうとした、まさにその時、今までご機嫌だったアンリちゃんは、何故か春にしがみ付いて、優香ちゃんをかわしてしまった。勿論、あたしも優香ちゃんもジュビアン神官も、とっさの事にビックリしたわ。
「やっ!」
えっ?? アンリちゃん??
「アンリちゃん? どうしたの? 優香ちゃんは怖くないよ?」
あたしには平気になったのに、どうして優香ちゃんがダメなんだろう? 反対ならあっさりと納得いくのに………………あ、自分で自分の傷を抉るとかないわ(涙)
「いやっ!! あのお姉ちゃんは怖いから、いやっ!」
…………………え〜、怖い?
「優香ちゃんが怖いの?」
あたしが聞けば、アンリちゃんは素直に頷きましたよ。こ、子供って残酷だわー…………。あ、優香ちゃんが凹んじゃったよ!?
さてさて、この状況、どうしましょうかねぇ〜。
読了、お疲れ様でしたm(__)m
新キャラたるアンリちゃんを宜しくお願いしますね? この子も色々とある子なので、これからが楽しみです♪
さて今現在、テンシロではリクエストと質問を募集しております♪ 年末……正確には、12月23日にスペシャル版として、書かせて頂きます!!
リクエストや質問を出すのは簡単ですよ?
感想かメッセージにて、秋月宛てに送って下さるだけ! そこに、年末企画と名前だし可否を、必ず書いて下さいね。
既に何名かの方から、秋月では考えつかないようなリクエストも来てまして、嬉しい限りです☆ 参加下さっている皆様、本当にありがとうございます!! 勿論、一人で複数リクエストは可としてますので、どしどしどうぞ♪
締め切りは12月20日ですので、お早めに。
こちらのリクエストは、本編に閑話として出させて頂こうかと、考えております。
皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
では次回、お会いしましょう。




