第78話 犯人確保です!
次回は10月28日更新です。
来週は、『僕等は夢から醒める』と『夢渡りの姫』を更新します!
「そんな所で、何をしてるのかしら?」
城の廊下のど真ん中。そこで動けなくなった、その人物へと、あたしは声をかけた。
「動けなくなったみたいね? 貴方の他に侵入し、当人に成り済ましていた奴らは捕獲して、今は牢屋に入ってるわよ? 勿論、貴方も行ってもらうわ」
牢屋と聞いて、その人物は顔を引きつらせる。
さて、何でこんな事態になっているかと言えば。時刻は少々遡り、フランツ殿下が部屋から退出した後に戻るわね?
◇◇◇◇◇
「で、動きがあったって、どういう事よ? 確かにすぐに効果はあるかもだけど、対象者は一人じゃないの?」
てっきり犯人は一人かと思ってた。話を聞く限りじゃ一人って聞いてたんだけど?
「わたくしもそう思っておりましたが、どうも他に侵入した者達がいたみたいなのですわ」
魔術師長様の言葉に、唖然としつつ、はたと思い出す。
あぁ、穴か! 塞いだからすっかり忘れてたわ。あれから入った奴らがいた訳だ。
「あれ? でも知らない人とかいたら、普通は気付かない?」
普通は気付くと思うんだけど。だって自分の職場に知らない人物がいたら、普通は気付くよね? 王宮は確かに多くの人が働いているけど、同僚かは判断出来るし、身分証とかが発行されているから、身分詐称をするなんて、普通は出来ない。
しかし、質問した相手の魔術師長様、何故に目をうろうろとしてるのかしら??
「それがどうも、既にいる人物に成り代わっていたようで………」
………………はっ?
今、あり得ない言葉を聞いたわよね? 思わず、フリーズしちゃったわよ!!
「成り代わるって…………、簡単に言うけど、出来るもんなの?」
それこそ一卵性の双子とかならまだしも、別人に簡単になれる訳無いじゃない。 既に頭は混乱気味になってるんですけど!?
これには、前にいる魔術師長様とレイヴァンさんが苦笑い。悪かったわね! 変な顔で!!
でも、まさかの大失態を起こしたんだから、恐らく魔術師長様も中々に危うい立場な訳だ。勿論、解決してしまえば、どうとでもなるんだけどね(笑)
「あのですね? どうもそいつらは魔法で成り代わっていたみたいで、すぐには分からないくらい完璧だったみたいです」
そう答えたレイヴァンさん。魔法だからか、目がキラキラしてた。はあ、知らない魔法についての知的好奇心だからか、魔術師って奴等は…………。
「へー、レイヴァンさんも出来るの?」
思わず、冷たい反応になったけど、気にはしないでね? ちょっと頭痛がするだけだから。主に、レイヴァンさんについて!
「いえ、残念ながら、これは高度な闇魔法で、私には無理でした…………属性がそもそも違いますからね」
本当に心から残念なのが分かる位の落ち込みよう! うん、あんまり突っ込まない方がいいわね?
「取り敢えず、侵入者は捕らえましょうか、既に誰かは判断出来るみたいだしー?」
そう、あたしが行った罠は、侵入者に対してと、裏切り者に対してのもの。まあ、最初は裏切り者だけのつもりだったんだけど、まさかの侵入者にも効果があったもよう。まさかの幸運に思いっきり乗っかってやるわよ♪
「そんじゃ、騎士の方と、魔術師長様付きで行きましょうか? 裏切り者と侵入者さんには、たーっぷりと楽しんでもらいましょ?」
ニヤリと笑ったあたしに、魔術師長様はウンウンと頷いて、レイヴァンさんは何故か盛大にビビっていた。全く、肝の小さい男だね〜。こんなので楽しまなくてどうするよ?
「サキ様とは違います!!」
何故かキッパリとレイヴァンさんに言われた。何か釈然としないんだけど……………。
◇◇◇◇◇
と言う訳で、一人一人確保して行きますよ〜♪
「はい、一人目発見!!」
そして見つけた第一容疑者。何で分かるかって? そりゃ直ぐに分かるわよ(笑)
だって。
「廊下のど真ん中で固まっていたら、誰だって分かるわね〜(笑)」
そう、侵入者、更に犯人は、廊下に出た瞬間、動けなくなる。どんな場所から来ようと、必ず一度は廊下に出なければならない構造の、この城だから出来る罠なわけ。
つまり、だ。
「侵入者は皆、間抜けな格好で、廊下に固まってる訳だ(笑)」
これを笑わずにはいられないわよねぇ?
「ぶふっ…………ふふふふふ、ふぁっはっはっは……バカだ、バカすぎるわよっ!!」
思いっきり、ツボに入っちゃった! 笑いが止まらなくて、結局、お腹が笑いすぎて痛くなるまで笑ってた。イヤー、いい笑いを提供してもらっちゃった☆
笑われた彼は、顔を真っ赤にしてたけど(笑)
「サキ様、いくらなんでも笑いすぎでは?」
「俺もそう思うよ、な? ローグ」
「あぁ、同感だよ、ジーク」
何やら近くで、引きまくっている三人。えぇ、名前を見りゃ分かります。ファイさんに、双子のジークさんとローグさんが、騎士の中に交ざっています。
あたしの侍従だからねぇー、これ幸いとくっついて来たみたいよ? あたしと会った時の三人の顔が、キラキラしてたから直ぐに気付いたわ。何を期待してるのやら……………。
これは普通の取り締まりなんだけどなぁ。
「さあ、捕まえてちょうだい」
「はっ!」
騎士さん方がきびきびと動いて、可笑しな格好で固まっている犯人を手早く確保していく。うわぁ、凄い。流れるような動きで、思わず見とれちゃうほど。まあ、実際はヤロウがヤロウをとっ捕まえている図なんだけど。
因みに、あたしはただ見てるだけ。テヘッ☆
「さあ、次々行くわよ!」
てな訳で、固まっている人を片っ端から確保。勿論、きちんと確認した上でやるんだけど。でもさ?
「ちょっと多すぎない?」
既に10名を越した辺りで、違和感を覚える。明らかに、変じゃない?
「侵入者は廊下で固まってるのは分かる、でもさ?」
この数日間でよ? 穴から侵入し、成り代わっていた奴等が、多すぎる。
「中に手引きした奴がいるのは確定ね、残念ながら」
動かしていた足を止め、あたしは目を細めて、ため息を吐く。それだけで、兵士の一部がビビっていたけど、気にはしなかった。
多分、それなりに権限がある奴が、成り代わっているか、最初からか。裏切り者に変わりはないけど。
「サキ様、また一人発見されたようです」
ファイさんに促され、其方に急行すれば、案の定。
「うっわー………」
まさかの人物に、あたしは久方ぶりに固まった。何ていうか、御約束なお方だった。
「全身真っ黒とか………」
逆によく今まで見つからなかったな、おい。突っ込みまで入れたくなったわ!
頭から足の先まで、見事に真っ黒。見えるのは、鋭い光を放つ緑色の瞳だけ。残念ながら、年とかは分からないわ。背格好から男性なのは分かるけど。
「忍者だ………」
思わず呟いたあたしに、ファイさんが反応した。
「サキ様、よくご存じで」
え? 何、その反応。普通は訝しむんじゃない??
キョトンしたあたしに、ファイさんや周りの目が途端に、生暖かい物になる。え?? いきなりなんなのさ!?
「この世界にも、忍ぶ者がいると言う事ですよ、確か発祥は昔の勇者様じゃないですかね?」
………………………………
……………………
……………
…。
昔の勇者っ! なにやってんのよ〜〜〜〜〜〜〜〜!!??
内心、絶叫ものよ!? 何か? 時代劇被れの勇者がいて、密かに自分の忍者を作ったら、広まった結果がこれか!? ざけんなよっ! 普通に悪役に悪用されてちゃ、ダメでしょっ!!
あー! 当時の勇者にハリセンかましてやりたいわっ!!
「あの、サキ様? 大丈夫ですか?」
心配そうなファイさんや双子で、はたと我にかえる。いやだ、取り乱しちゃった。
「さあ、次いきますか………」
何だか力が抜けたけど、気にしてはいれなかった。だって、冒頭に戻るんだもの。
「まさか、貴方が裏切り者だったとはねぇ? “副魔術師長様”?」
あたしの言葉に、顔を強ばらせる彼は、魔術師長様の腹心の一人で、穴が開いてた事も、あたしがこんがらがった結界構造体を直した事も知っている人物であり、立場にあった。
ただ一つ、あたしが罠を張った事だけ知らないのよ、この人は。
「そりゃ、副魔術師長様なら、結界構造体に触れる事も、書き直す事も、ましてや人を入れ替える事も簡単に出来るわよね?」
彼の立場なら出来る、出来てしまうのだ。
あの時を思い出して欲してみよう。魔術師長様の他、副魔術師長様は二人来ていたわ。一人はバリバリに会話に入っていたけど、何故か彼は終始、一言も発していない。つまり、最初から彼は犯罪に加担しており、隠していたのだ!
「取り調べる前に、成り代わっていた本物の当人は何処にいるの?」
これは早急に救出しなければならない事態ね。命すらかかっているんだから。
「さあ、話して貰うわよ?」
お札を片手に、本気で問うあたしに、副魔術師長に成り代わっている男は、ニヤリと笑っただけ。
…………ほう。言うつもりはないと?
だったら、あたしも本気でヤルだけだ。お札を正面に構え、押さえていた霊力を一気に解放する。ついでに、殺気も。
男が顔色を変えたけど、今更よ?
さあ、あたしと一緒に遊びましょうね♪
読了お疲れ様でした!
本日は先程完成した、出来たてホヤホヤです☆ 犯人への伏線いれてたらこんがらがってしまって、時間がかかってしまいました。
てな訳で、とは申しませんが、来週はテンシロはお休みです。申し訳ありませんm(__)m
活動報告には書いたのですが、来週は新作の『僕等は夢から醒める』と、お待たせしている『夢渡りの姫』を更新致します。どちらもタイミング良く完成しましたので、来週は二本まとめての更新です☆
どうか宜しくお願いしますm(__)m
では次回、10月28日にお会いしましょう♪