第75話 緊急事態にはハリセンです♪
本日は100話目です☆
次回は9月30日更新です!
せっかく、あたし的には楽しい“お話し合い”をしてたのに、レイヴァンさんに呼ばれたあたしは、一路、魔術師達が集う職場へと向かってます。
寄りにもよって、緊急事態発生ですよ!!
せーっかく、ソウ兄に会えたのに、邪魔しちゃってくれてっ!!
「こちらです!」
案内役のレイヴァンさんが、怒り心頭のあたしにびびりまくっているけど、まーったく気にもならないわ。
「あら、サキ様! ようこそおいで下さいました!」
部屋に入って真っ先にあたしに言ったのは、魔術師長さん。まさかの女性がここでは長をやってます。女だと思っていると、痛い目を見る相手です。隣では、頭を抱えたブラオさん。
一体全体、何をやらかしたわけ? あのブラオさんが、頭を抱える事態って、どういう事よ!?
怪訝そうにあたしが周りを見ると、あたしと視線があった二人がビクッと怯えた。
「「サキ様! 申し訳ありません!!」」
まさかのいきなり土下座。うん、こいつらか。今回の騒動の理由は!!
「で、あたしを呼ぶ程の“何か”をやらかしたんでしょう? 一体全体何をやらかしたの??」
とりあえず、話を聞かない事にはどうにもならない。二人は土下座に必死で、此方に説明する余裕は無さそうなので、レイヴァンさん、説明プリーズ!
「実は、本日は見習い達に結界の補修作業を回したんですが………」
かなり言いにくいみたいで、視線がチラチラと魔術師長へと向かっている。視線があった魔術師長様、何とも言えない微妙な顔になってます。
「ほら、ちゃっちゃと言いなさい? これはわたくしの管理ミスですし………」
管理ミス………? この人が?
おもいっきり不信感ありますよ? この女傑が、そんな凡人ミスやるかしら? 更に怪訝に見るあたしに、申し訳なさ全開で、魔術師長は視線をそらした。レイヴァンさん、お願い。続き言って?
「じ、実は………結界補修の中でも、見習いには任せない部分があるんですが、間違ってそこに彼らは干渉してしまったんです」
「は?」
レイヴァンさんが神妙な顔で言った内容は、別に緊急であたしを呼ぶ必要の無いもの。見習いさんにお願いするのは、表面層の結界。それより中は、中級魔術師になってから触る…………ん?
結構ヤバイ事実に、あたしの背中が一気に冷えた。嫌な汗が滴り落ちる。
「まさか、触っちゃったの………? 結界構造体に?」
止めて、マジで止めて! あたしだってアレは干渉しないようにしてるんだから!! 表面層だけならまだしも、結界の元となる結界構造体にまでは触らないわよ!? この結界構造体は、結界の大元であるために、触る時はマジで緊張する物なんです。故に、見習いと呼ばれる、配属一年目の子達は、絶対に触らせないものなんですよっ!
それをこの二人、気付かないで触っちゃったのね?
「因みに、触っちゃった所はどこ?」
恐る恐る聞いたのは仕方ない。あたしを呼んだくらいなんだから、厄介な場所だけは確か。
あぁ、ソウ兄にお別れする時間くらい、取れるかしら………。
「それが………、内部の深い所でして…………」
……………終わった。ソウ兄とのお別れどころか、徹夜が決定した。
「で、どこなの?」
あたしの死んだような笑顔に、目の前の二人は、更に深く土下座し、あたしに聞かれたレイヴァンさんは、サッと視線をそらした。因みに魔術師長様は、罪悪感があるらしく、ペコペコと頭を下げてました。
だったら自分達で治せよっ!
「中心部に近い、予備の動力付近です」
「…………はぁ!? 何でそんな所に見習いが単独で入ってるのよ!? そこは上級魔術師の紫色しか入れない場所でしょう!?」
あたしが悲鳴をあげたのも、こればかりは仕方ない。今回、彼ら見習いさんズが触ったのは、中心部に近い予備の動力付近。これは結界構造体を支える中心部に異常があった場合に使う場所で、普段は関係者意外立ち入り禁止になっている場所。見習いがまず、入れるはずが無い場所なのだ。
「それがね? 今回は、わたくしが書いた依頼状が、通行証になっちゃったのよ………」
「あー………」
つまり、だ。本来ならあり得ない見習いさんズに、この依頼状が何かの拍子に渡り、そのまま誰も気が付かないうちに、あれよあれよと内部に入ってしまい、気付かないうちに触っちゃった、と。
「普通は気付きそうなものだけど?」
思わずジト目で魔術師長を見れば、冷や汗をかきつつ、視線をそらした。そんな彼女を庇ったのは、意外にも先程まで頭を抱えていたブラオさん。
「実はその書類を渡すのは、上級魔術師の印付きの方々なんですよ」
「どういう事よ?」
「魔術師長は、許可をしたに過ぎず、この書類を配ったのは、別の人物なんですよ」
しかし、ね?
「部下のミスは、上司のミス………当然の事よ?」
やった人物を処罰は勿論だが、上司たる彼女にも、行くのだ。その責任が。
「で、お二人さん? どこまで触ったのかしら?」
それによるのよ? あなた方の罰も。
「ヒッ………あ、あのっ、………間違っていた場所の一つだけ、です!」
「あ、後は、我々では分からなかった為に、報告したら、こうなりました!」
あら、意外とまともな子達だったようだ。
「すいません! 配属されたばかりで、あそこが入ってはいけない場所なんて知らなくてっ」
「「申し訳ありませんっ!!」」
んー? 配属されたばかり?
あたしは気になり、ブラオさんを見るが、此方も険しい顔をしている。
「あなた方は、配属されたばかりと言いましたね? 中級魔術師が教師役として着いていたはずですが?」
あ、ブラオさんの顔に青筋が………。
「至急、この二人の教師役を呼びなさい!」
近くにいた他の魔術師が慌てて部屋から出ていく。どうやら、問題発生のご様子です。
さて、問題人物が来る前に、この魔術師団の説明でもしようかしら?
まずは階級。魔術師見習いが一番下。彼らは、入団したてで、一年間を見習いとして、ここの基礎を学ぶ。この時は茶色のマントである。二年目でようやく下級魔術師のマントである緑色を支給され、雑用と、ようやく魔術の実戦が出来る。で、力ある場合、中級の青、上級の紫と上がる訳だ。中級魔術師は、見習いの教師役も仕事に入る。因みに、どの色にも、それをまとめる存在がおり、そう言った存在は、刺繍付きと呼ばれるそうです。
あ、考えている間に、ちょうど来たみたい。
呼びにいった人の後ろで、訝しげに此方を見る、中年の男性。頭が残念な事になっているが、まあ、言わなくていいよね?
「魔術師長、勇者様、お呼びと事ですが………」
あれ? こいつ呼ばれた理由さえ分かってない?
「ギョルン殿、貴殿はこの二人の教師を任されていたな?」
ギロリとブラオさんから睨まれたギョルンと言う名の魔術師は、おもいっきり挙動不審である。落ち着かないし、辺りをキョロキョロと見てるし。何か隠してるって、バレバレですよ?
「何故、教師役の貴方が、彼らに付き添っていないのです? 見習いが実習する場合は付き添いの義務があったはずですが?」
ぶ、ブラオさん? こっちまで怖い位の迫力なんですが!?
「え、実習!? は、はい、勿論ですが、今日は結界の補修ですので、私目は近くに陣取って自分の仕事をしながら分からない部分を聞く形でやっておりまして」
つらつらと言い訳をしてきたので、無言であたしはイーリスをハリセンに変える。何だか最近、イーリスをハリセンに変える事態が多すぎる気がするよ。
「ヒッ…!」
「サキ様、怒る気持ちは分かりますが、殺気は押さえて下さいませ」
あら、また無意識に殺気を出してたみたい(笑) テヘッ☆
「見習いの実習の場合は、仕事を免除されていたはずですが?」
こいつ任務放棄して、逃げたわね?
「ヒッ、も、申し訳ありません! 何せこの二人、あまりに優秀で、わ、私目には勿体ない程の生徒なのです!」
「だからって、基本的な事を教えなかったら意味ないでしょうが………」
こいつ、勉学しか教えてなかったのか!
パシッパシッ
「ねえ、魔術師長様? あたしね? 隣国の勇者様の接待してたの、その中に、あたしの兄がいたからね? 凄く久し振りの再会だったの、それを邪魔したこの子達の師匠がちょっと、あたしの怒りを受けてもらっても構わないわよね? それでチャラにしてあげるから♪」
パシッパシッ
「あ、あの、サキ様?」
魔術師長は既に涙目。まあ、殺気も出してるから、当然なんだけど☆ テヘッ♪
パシッパシッ
「なーに?」
パシッパシッ
「そ、その手にある物は?」
パシッパシッ
「ん? ハリセンだよ? 紙で出来てるから、特に痛くはない」
パシッパシッ
「あ、許可します、が、ここには重要な物もありますので、何とぞ外でお願いします!」
結構必死な魔術師長様より、許可頂きました! さあ、あたしの貴重な時間を無駄にしやがったテメェには、たーっぷり八つ当たりしてやるわ!!
その日、魔術師達の集う仕事場に、場違いな悲鳴が天高く上がったのであった……………。
ふ〜〜〜〜〜〜、スッキリした♪
読了、お疲れ様でした!
本日は記念すべき100話目でございます☆
活動報告の方に記念小話を載せておりますので、宜しければどうぞ。
いやー、頑張りましたね、秋月。ここまで行くと凄いと自分でも思いますよ。凄い、100話ですよ、100話!!
完結まで頑張りますので、宜しくお願いしますm(__)m
ではでは、次回にお会いしましょう♪